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「水氣道における個別性の原則」について

 

個別性の原則とは「個人の特性や能力に合わせたトレーニングをしましょう」という経験則に基づく原則です。 たしかに、自分に合ったやり方がわかれば、効率的に体を鍛えることができ、継続意欲にも繋がりやすいことは経験的にもイメージし易いと思います。

 

水氣道は団体で行うプログラム運動です。水氣道が団体であるということは、一定の目的のために、人々が集まって一つのまとまりとなったものであり、二人以上の者が共同の目的を達成するために結合した集団であるということを意味します。

 

これに対して、集団とは、何らかの相互関係によって結ばれている人々の集まりを意味するに過ぎません。つまり、団体は集団より明確な共通目的があり、またそれによって相互関係の結び付きが強い人々の集まりということができるでしょう。

 

それでは、水氣道では個別性の原則は重視されないということになるのではないか、という疑問が生じても不思議ではありません。ところが、水氣道は、年齢、性別、体力、身体組成(筋肉量、体脂肪率、骨量など)、生活環境、習慣、性格など会員や入会予定者の条件を考慮してプログラムされているということは、水氣道を始めた方であれば誰もがご存じの通りです。

 

原則として、3カ月に1回(つまり、四季折々に)、会員のフィットネスチェック(体組成・体力検査)を行っています。水氣道の稽古の身体面での有効性は、このようにして個別に評価されています。また、その地道な科学的積み重ねが、他に類例を見ない水氣道ならでは稽古プログラムを確立してきたということができるでしょう。

 

それから、個別性の原則というのは、他の原理や原則と無関係に独立した原則ではありえません。水氣道の理論体系において、個別性の原則は、意識性の原則、弱点優先の原則、専門性の原則とともに<特異性の原理>を構成する一原則としています。そして、特異性の原理も<統合性の原理>や<集団性の原理>との均衡関係の中で成立するものと考えています。つまり、二者択一的で排他的な性質の原則ではないということです。

 

人は誰でも加齢に伴って生じる生理的老化から免れることはできません。しかし、それを遅らせたり、病理的老化に対して予防策を講じたりすることはできます。水氣道は理想の生涯エクササイズを追求していく中で見出すことができた健康活動ですが、残念ながら、将来、要支援状態や要介護状態に至る可能性をゼロにすることまでは望めません。そこで、むしろ、こうした現実を謙虚に受け止めることによって、まずは要支援状態に至っても継続できる身体鍛錬法であるべきことを想定して水氣道のプログラムは組み立てられてきました。

 

水氣道は、一種の集団リズム運動であると見ることも可能ですが、「要支援・軽度要介護高齢者に対する集団リズム運動が心身機能にもたらす効果」について発表された原著論文(杉浦令人ら、理学療法科学2010 年 25 巻 2 号 p. 257-264)があります。

この論文は、要支援・軽度要介護高齢者が行える『安全・楽しく・長く』を念頭に構成した集団リズム運動を、個別運動プログラムに加えた場合に、高齢者の心身機能にどのような効果をもたらすのかを検証しています。

 

その結果、個別運動プログラムだけでも下肢筋力が有意に改善しましたが、集団リズム運動を加えると、バランス能力、歩行能力、精神機能にも有意な改善がみられました。そこで集団リズム運動は高齢者の身体機能,精神機能の改善に有益な運動療法の一つになる可能性を示唆しています。

 

この論文は、個別運動プログラムという個別性の原則に基づく介入に留まることなく、集団リズム運動を加えた複合的なプログラムによる多面的な効果を示しています。

 

水氣道もこれと同様に個別運動と集団リズム運動との複合プログラムであることから、個別性の原理を包含する運動であると理解することができると思います。

『安全・楽しく・長く』を念頭に、という考え方は水氣道においても共通するスローガンです。

 

また、「自閉症児の水中運動における個別支援活動と課題達成の関連性」という興味深い実践研究論文(藤澤智子ら、水泳水中運動科学2007 年 10 巻 2 号 p. 31-37)があります。

 

この研究グループは、水の運動が自閉症スペクトラム障害(ASD)児の社会性だけでなく運動能力のエンパワーメントにつながるという仮説のもと,水治療法を推進していました。

その結果、ASDの子どもたちの達成度は、初級クラス、中級クラスともに健常者の達成度とほぼ一致するという結果をえています。これらの結果は、水治療法のように、個別支援と課題の順序付けの活動が実践的な方法であることを示唆しています。

 

水氣道における個別性の原則に基づく個別運動は、集団運動に対立する概念ではなく、むしろ両者が相互に補完関係にあるなかでの原則であると理解していただくのがよろしいです。

 

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 水氣道稽古の12の原則(13)個別性の原則(その1)


人には個人差(年齢・性別・体力・体格・目的・経験など)があります。団体スポーツや集団訓練の参加者全員の一人一人が違っています。

ですから、トレーニング内容は、その個人差をよく考えたうえで決めなければいけないということになります。残念ながら「こうすれば、誰もが等しく成果を挙げられる!」というトレーニング方法はないと思ったほうがよいでしょう。

 

そこで、体力トレーニングを行っていく際には, 個人の体力特性に応じたトレーニング課題を設定してトレーニング処方することは大切になってきます。

このことは個別性の原則として知られています。

 

簡単にいえば、「個人の特性や能力に合わせたトレーニングをしましょう」という原則です。

 

たしかに、年齢、性別、体力、身体組成(筋肉量、体脂肪率、骨量など)、生活環境、習慣、性格、運動の嗜好など自分に合ったやり方がわかれば、効率的に体を鍛えることができ、継続意欲にも繋がりやすいことは経験的にもイメージし易いことでしょう。

 

ですから、自分の身体組成や体力や健康状態などの個別条件を前提として、それぞれの目的にあわせて《個人に合ったトレーニングメニュー》や《負荷設定》を行うことで、効率的かつ効果的なトレーニングを設計することができます。

つまり、個人差を踏まえて練習方法を決めることが肝要になってきます。

 

しかし、この個別性の原則は、全面性の原則や意識性の原則と同様に、経験則、すなわち、経験的に知られている原則であって、科学的なデータで確認はされていません。

 

そこで、私たちの更なる健康増進のための訓練メソッドとして、個別性の原則を全面性の原則や意識性の原則といった、未だ科学的に十分に実証されていない原則をどのように理解して、活用するかという積極的な試みが求められてくるものと考えます。

 

水氣道は、組織された団体で継続的に稽古を実践することによって、従来の各種のスポーツや健康法を凌ぐ優れた効果を希求しています。

そのような中で、個別性の原則と水氣道は互いに矛盾しているのではないか、という見方も可能であるかもしれません。

そこで、次回は、「水氣道における個別性の原則」について考えてみたいと思います。

 

 

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心や精神と身体の繋がりは、心身医学や身体心理学(身心医学)で研究されています。心理学(心や精神の機能の科学)と生理学(身体の機能の科学)の境界も明確ではなく、むしろ連続性があります。

 

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今回は、身体心理学に関して皆様にお勧めの一冊をご紹介いたします。

 

動きが心をつくる<身体心理学への招待>

 

春木豊 著

 

講談社現代新書 

 

定価:本体860円(税別)

 

この本は、私の著書ではなく、しかも、水氣道に関する本でもありませんが、水氣道を理解する上で有益な基礎知識を比較的平易な表現で説明しています。水氣道の本質を理解していただく上で、皆様のお役に立つ本です。

 

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運動生理学おける古典的な基本法則として、ルー(Roux)3原則 が知られています。

 

これは「身体(筋肉)の機能は

①適度に使うと発達<活動性肥大の原則>し、

②使わなければ委縮(退化)<不活動性萎縮の原則>し、

③過度に使えば障害<長期にわたる過剰活動による器官の特殊能力減退の原則>をおこす」という3つの原則を束ねる法則として、ルー(Roux)の法則と呼ぶにふさわしいものです。
  

 

意識性の原則をトレーニングに活かすには、目的(ゴール)を明確にしおことが重要になります。

 

何よりもトレーニング計画を生み出すのは意識に他なりません。そして「トレーニング計画の立案」とは、トレーニングの目的を明らかにし、トレーニングの期間および内容(運動強度、運動時間、頻度)を決定するものです。
  

 

まずは目的を意識してそれを明確にします。たとえば、運動のパフォーマンス(重量挙げやジャンプの距離の記録)を高めるには外部(目指す結果)に集中すると結果が良く、筋肉の発達を高める為には内部(自分自身や筋肉の動き)に集中するのが良いようです。

 

次に、意識の方向性を明確にします。たとえば、筋肉量を増やしたいボディビルダーがベンチプレスをする時に胸の筋肉に意識を向けるように指導されます。

 

しかし、同じベンチプレスでも高重量を扱いたい訓練者は筋肉ではなくバーベルのシャフトや動きの軌跡に意識を向けたほうが目標を達成しやすいことになります。

 

さらに、意識の焦点を明確にします。トレーニング効果を最大化するには、パフォーマンスや動き・筋肉それぞれ必要なときに意識の集中を使い分けられることが重要です。

 

水氣道の稽古では、トレーニングの目的別に意識を変えていきます。水氣道の稽古では目的に応じて臨機応変に意識を切り替える方法を習得することになります。その場合、意識の焦点を必要に応じて、内部と外部両方に集中することが自在にできるようになることでパフォーマンスを最大化することができます。

 

 

内部に焦点を当てる方法(量の増大:補陰)

 

一般的なスポーツ理論では、筋肉量の増大が望ましい目標である場合、アスリートは内部に集中すべきであるとしています。

 

水氣道の稽古では、内部集中を促進させるために、筋肉の緊張、体の動き、テクニック、フォームに集中するよう指示することがあります。その理由は、内部集中を高めると、筋肉の発達や動作の学習に効果を高めることができるからです。

 

内部に注意する利点は、通常、筋肉の成長または筋力の増加を目的とするトレーニングプログラムに有効です。

 

水氣道の稽古やスポーツに限らず、高齢者の機能訓練や入院後のリハビリなどでも、ただ動作を伝えるだけでなく意識するべき筋肉や動作のポイントを口頭で伝えることでトレーニングの成果を高められる可能性があります。

 

『強く』とか『パワフルに』などの声かけは、内部的に注意を向けるよう指示する役割を果たします。

 

 

 

外部に焦点を当てる方法(質の向上:補陽)

 

外部に注意を向けたい場合には、外部に焦点を当てる必要があります。具体的には外部(パフォーマンスや結果)に意識を集中させます。重量挙げの記録や他の競技パフォーマンスは、特定の焦点または内部焦点よりも、外部集中を高めることによって精度が向上することがいくつもの研究で示されています。 

 

外部に焦点を当てるための具体的な方法としては、一般的には鏡を設置して自分の動きが確認できるようにしたり、ビデオ録画を行ったりする方法が有効です。しかし、水氣道では、水に身も心も委ねることができるために、鏡などを用いなくても、直接自分の身体感覚を通して、自分の動きを確認することができ、録画によって行為の後に確認するのではなく、動作中にリアルタイムで自分の姿勢や動きを感受することができるという利点があります。

 

水氣道の上級者はまた、下級者の学習を強化するために、フィードバックすべきです。追加で情報提供することによって、フィードバックが強化される場合があります。

 

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今回の記事は高齢者や心身虚弱者、あるいは慢性的な基礎疾患を抱えている方など、運動量を最小限に抑えつつ、最大限の成果を得たいと願う皆様を想定して準備しました。

 

その他にも、トレーニングで求める結果を出したい方、より小さな運動量で効率よく成果を挙げたい方、さらにはトレーニング指導で意識の面からアドバイスをしたい方(水氣道では、ファシリテータ、インストラクタ、トレーナーなどの方)にも読んでおいていただきたいと思います。
 

 

日常的な、身近な習慣を変えるだけで心身の状態をコントロールすることができます。

 

無意識的で不健康な習慣を意識的に健康的な習慣に置き換えていくのが水氣道です。

 

心身医学の専門医としては、身体の状態が脳や心の状態に関わっていることや、逆に意識が身体に与える作用について探求することは中心的な課題です。また、同様の関心をもつ心理学には身体心理学という分野があるようです。

 

心や精神と身体の繋がりは今改めて注目されています。生理学のおける古典的な基本法則として、ルー(Roux)3原則 が知られています。

 

「身体(筋肉)の機能は適度に使うと発達し、使わなければ委縮(退化)し、過度に使えば障害をおこす」という法則です。

 

ここで、身体機能の使い方は、意識によって調節されることに注目したいと思います。身体作りをする上でトレーニング、食事、休養は「ルーの三原則」の三大要素にとなっています。ルーの三原則は、現代のスポーツのトレーニングに用いられている「トレーニングの三大原理」にそのまま対応しています。

 

 

 

意識性の原則

 

意識性の原則とは、トレーニングの効果を高める理論上の五原則の一つです。

どのような意識でトレーニングに臨むべきかを示すものです。

 

具体的にはトレーニングの目的、方法、効果などについてよく理解し、常に目的意識と向上心を持って積極的にトレーニングに取り組むこと、そうした意識の持ち方によって高いトレーニング効果を期待できるという原則です。

 

そのため「積極性の原則」と呼ぶことも可能かもしれません。それは、行おうとしている練習やトレーニングの目的はなにかを意識することです。たとえば、どこの部位を鍛えているのか意識しながら行うとトレーニング効果がアップします。
 

意識性の原則に基づき、目的を明確にしてトレーニングを行うことの意義は、多くのトレーニング指導者の共通理解であると思います。

この場合の「意識性」とは、トレーニングの内容、意味、ターゲットの部位や理想のイメージ像を持つことを意味します。また「原則」とは、トレーニングの 効率、効果を高めるための条件という意味でもあります。

 

 

実際に運動をする際、動かしている筋肉や目的に意識を集中すると、パフォーマンスや成果が変化していきます。

 

『意識性の原則』に関わる研究は多く、たくさんの学術論文があります。次回は、そのような研究の中から、水氣道の稽古で実際に応用しているものを紹介したいと思います。

 


次回からは運動するときに必要な技能と体力の関係について学習します。技能や体力を高めるときに気をつけるべき点などスポーツを行ううえでとても大切なことを学びます。今後の学習を踏まえ、実際に水氣道の稽古をはじめてみることによって、あらゆるスポーツにも通じる、より良い気づきが得られることでしょう。

 

連載中断の最後の記事は、水氣道稽古の12の原則(10)周期性の原則(その2)でした。次回は、水氣道稽古の12の原則(11)意識性の原則(その1)から再開する予定です。
 

解説再開の準備として、まず、水氣道の稽古理論体系の一覧を掲載いたします。

 

 水氣道の神髄(太極観)
<融通無碍(ゆうずうむげ)の自然愛>

 

 水氣道の三徳

 

 分析と企画(特異性の原理)

 

 進歩と調和(過負荷・集団性の原理)

 

 自己超越と自然回帰(統合性・可逆性の原理)

 

 

 水氣道実践の五原理

特異性,可塑性,適時性

 

 

〇 統合性の原理(心身統合・心技体の原則)

 

〇 集団性の原理(教学不岐・環境創造の原則)

 

〇 過負荷の原理(漸進性・全面性・反復性の原則)

 

〇 可逆性の原理(周期性の原則)

 

〇 特異性の原理(意識性・個別性・弱点優先・専門性の原則)

 

 

 

 水氣道稽古の12原則

・ 心身統合の原則
・ 心技体の原則
・ 教修不岐の原則
・ 環境創造の原則
・ 漸進性の原則
・ 全面性の原則
・ 反復性の原則
・ 周期性の原則
・ 意識性の原則
・ 個別性の原則
・ 弱点優先の原則
・ 専門性の原則

 

以上の理論体系に対して、たとえば、わが国の高等学校保健体育の教科書「現代高等保健体育」では、「練習やトレーニングによって技能や体力を向上させるためには、それまでにおこなっていた運動より難度や強度が高い運動をおこなう必要があることを採りあげています。

 

これをオーバーロード(過負荷)の原理といいます。脳や筋肉は環境の変化に適応して自分をつくり変える能力(可塑性)が高く、「この適応のしかたは動作パターンや負荷条件に対応した性質(特異性)を示すことをふまえ、練習 やトレーニングを考えることが重要です。」 と記しています。

 

そこでは「過負荷」を基本原理とし、「意識性」「個別性」「全面性」「反復性」「漸進性」を5原則として紹介しています。

 

水氣道においては、この5原則の位置づけは、過負荷の原理のもとに、「全面性」「反復性」「漸進性」の各原則を、そして特異性の原理のもとに、「意識性」「個別性」の原則ならびに「弱点優先」「専門性」の原則を置くものとしています。

 


昨年は、新型コロナ禍によって水氣道の稽古中断が2カ月に及びました。また、今年も緊急事態宣言等により、新宿支部ハイジア会場での稽古が中止となり、三鷹支部スバル会場に振替するなど、会員の皆様にはご不自由をお掛け致しております。

 

ようやく宣言解除により、新宿支部ハイジア会場での稽古が再開しました。
今年度も、各人にとって更に充実した稽古となるよう精進するとともに、水氣道機構の健全な発展を期したいと願うものであります。

 

 

 進級検定合格者発表

 

小審査(昇級決定1名、昇級延期1名)

 

 7級(特別体験生)認定証交付(令和3年4月1日付)級外(体験生)漆正子
(審査支援員:中川良子)検定会場:新宿ハイジア
令和2年12月の審査で審査において、既に合格されていましたが、年明け後3月に稽古復帰となりましたので、3カ月の交付延期となりました。

 

 6級(初等訓練生)認定証交付予定(令和3年7月1日付)7級(特別体験生)漆弘雄 
(審査支援員:中川良子)検定会場:新宿ハイジア
令和2年12月の審査で審査において、既に合格されていましたが、年明け後3月までの稽古復帰が適わなかったため、6カ月の交付延期予定といたしました。

 

 次回の小審査は、6月に実施、合格者発表は7月1日予定
なお、小審査検定料は1,000円、ただし6級への昇級検定料は500円、
7級への入級は引き続き無料とします。

 

 

 

 

 

 

 技法検定資格取得者発表

 

ファシリテーター検定(合格者計6名)

 

のびのび体操ファシリテーター(F4):

4級/濱屋幸一(審査支援員:林亮博)

 

 

五航法ファシリテーター(F3):

 

4級/野口将成、植田栄喜(審査支援員:林亮博)

 

 

 

いきいき体操ファシリテーター(F2):

 

5級/平田範子(審査支援員:中川良子)

 

 

 

親水航法ファシリテーター(F1):

 

5級/松田要、福丸慎哉(審査支援員:林亮博)

 

 

 ファシリテーター技法検定は小審査(年4回)に併せて実施しています。

 

*ファシリテーター検定料・認定料は当面の間、徴取しません。

 

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水氣道の会員・会費区分

 

 

水氣道は生涯エクササイズを目指すものです。そこで、職業上は現役を引退し、年金生活者となっても継続可能な組織運営機構を考案しました。また稽古熱心な会員の経済的負担が軽減される会員・会費区分としています。なお令和3年から消費税(現在10%)を徴取しています。

 

 

 入会金:5,000円+税

 

 

 会員と会費区分

 

 一般参加者(単回払い制)体験生中心

 

 准会員(月払い制)訓練生(6級以上)中心

 

 正会員(年会費制)修錬生(3級以上)

 

 特別正会員(年会費制)指導員(従四段下以上)以上の特別正会員(職業水氣道家)

 

 

階級に応じた指導料を給付

 

 役員(従七段以上)は会費免除、階級に応じた顧問料を給付

 

 

 会費区分と金額

 

 単回払い制:

級外・7級2,000円+税/回
      

6級以上1,500円+税/回

 

 

 月払い制:

 

6級以上から選択可能5,000円+税/月

 

 

 年会費制:

 

准3級から選択可能36,000円+税/年

 

 

 今後の予定

 

・5月には小審査およびファシリテーター審査の受検資格者が発表されます。

 

・6月には小審査・中審査・大審査およびファシリテーターおよびインストラクター審査が予定されています。

 

・7月1日付で、進級検定合格者およびファシリテーターおよびインストラクター資格取得者が発表されます。



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水氣道稽古の12の原則(9)周期性の原則(その

 

周期性の原則は、反復性の原則と同時に説明され、「反復性・周期性の原則」というように一括りにされることが多いようです。運動プログラムは、ある程度の期間、規則的に繰り返すように計画されます。トレーニングにおいて、反復性、つまり繰り返して継続することは、テクニックを向上させるためには重要な要素だからです。

 

このように、反復性・周期性の原則とはある程度の期間を定期的にやることです。しかし、反復性の原則と周期性の原則とは区別して理解することも必要であると考えます。

 

トレーニングの効果を得るためには、一定期間、運動を規則的に繰り返す必要があります。それはスポーツに限らず、楽器の演奏や美術表現、その他、万事においてテクニックを習得するには、これが必須の条件になります。とくに筋トレ初心者の場合、一つの種目のフォームを習得するにはそれなりの時間と頻度が必要です。陸上の筋肉トレーニングであれば、通常、週に2~3回位を目安に1年計画でトレーニングしていくことが考えられます。

 

正しいフォームが再現できるようになるまで、念入りに集中的に反復することが必要です。しかし、人間が集中的に物事に取り組むことができる時間は限られています。つまり、単なる努力だけでは身体的にも精神的にも消耗を来し、その結果、疲労困憊に陥ったり、怪我に繋がったり、病気を招いてしまったりすることさえあります。

 

このように、より効果的な成果を期待するためには、漫然と稽古を繰り返すばかりでは限界があります。トレーニングを効果的に継続するためには稽古を計画的に行う必要があります。つまり、計画的訓練ですが、その基本となるのが周期性です。

 

周期性の原則を活かしたトレーニングとは、基本的には1年間を通したトレーニン グ計画を立てて実践することです。日本の一年には四季がありますが、その季節に応じて最も効果的な稽古プログラムを作成することから始まります。

 

そもそも筋力をはじめとする体力は、一気呵成に向上することはありません。これに対して技術を習得する場合は、コツをつかむことによって急速に向上することがあります。ただし、コツをつかむ体験も、一回限りの経験では確かなものとして定着することは難しいです。反復するばかりでなく、定期的に点検しておかなければ、一過性の効果に終わってしまいます。それでは、「まぐれ当たり」と大差ありません。

 

またコツをつかんだつもりでいても、その後の効果の再現が得られず、上達がみられないばかりでなく、かえって後退してしまうことがあります。そのような場合の原因の一つは、誤ったフォームが、悪い癖となって身についてしまったためかもしれません。ですから、フォーム習得後も、さらなる継続を行い、周期的にチェックする必要があります。せっかく掴んだコツだからこそ、いつでも再現できるように学習して身に着けておきたいものです。このようなことからも稽古に関しても計画性の原則に則った工夫と努力が必要になってきます。

 

さらに、疾病の改善や健康づくりのための運動プログラム作成に関しては、特別に運動処方という言い方をします。安全で効果的な運動処方を行うためには、運動前の問診やメディカルチェック・体力測定を実施し、個人の潜在的なリスクや体力水準、体組成などを評価する必要があります。また運動中は定期的(周期的)な強度の監視、運動後はトレーニング効果の再検査が重要です。特にプログラムの作成にあたっては個人の特性を考慮し、各国で定められている運動処方の指針に従い、科学的に裏付けられたプログラムの作成が望まれます。

 

 

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    • 水氣道稽古の12の原則(8)全面性の原則(その3

前回は、水氣道における「全面性の原則」は、筋力トレーニングをはじめとする各種体力要素を対象とするにとどまらず、メンタル面、社会面など、より広範な次元に根ざした原則としてとらえている、ということをご紹介しました。そして、この原則についての更なる意味、そしてこの原則に基づいて、水氣道では、どのような実践に役立て、何を目標にしているのか等について、今回解説いたします。

 

繰り返しになりますが、水氣道がトレーニングするのは体力のみならず気力にも及びます。体力と気力をトレーニングするのは水氣道に限らず、多くのスポーツや武道についてもいえることです。しかし、水氣道における体力と気力の訓練は、他の種目以上に相互の関連性を重視し、より深い洞察へ導くことができるように構成されています。それは、心身相関という心身医学理論に立脚して稽古プログラムが構成されているからです。体力は主に瞬発力(パワー)持続力(スタミナ)によって支えられますが、気力もまた瞬発力(決断力)持久力(忍耐力)によって支えられます。

 

また、体力は筋肉だけでなく運動器全体が関与しています。運動器というのは具体的には骨格、骨格筋や腱、関節および軟骨、骨格筋と脳を連結する神経系などのすべてを含みます。そして、骨格筋と脳を連結する神経系には運動神経系(脳から骨格筋へ)と感覚神経系(骨格筋から脳へ)の二方向性での密接な繋がりがあります。水氣道では、従来軽視されがちであった、骨格筋以外の運動器を構成する要素に対しても配慮の行き届いた稽古プログラムを構築しています。

 

まず、安全面で大切なのは関節の保護です。関節軟骨は不適切あるいは過剰なトレーニングによって傷つきやすく、しかも修復が難しい組織です。水氣道は、水中運動であるため骨格筋ばかりでなく関節の軟骨や腱にも優しい運動を継続することができる前提が事前に与えられています。したがって、水氣道では安全性においても「全面性の原則」が活かされていることになります。

 

また、水氣道が水中運動であるもう一つの利点は、日常の陸上生活とは違った環境に身を置くことによって、運動神経系のみならず、感覚神経を刺激し、訓練することができることです。身体と触れているのが空気だけでなく、水によって包まれているという環境は、その分だけ多くの環境情報を皮膚の感覚器や深部感覚器を通して脳に伝えることになります。つまり、日常生活ではあまり刺激を受けず、用いられていない心身の諸能力が水氣道の稽古によって覚醒し、活性化させることができます。水氣道における「全面性の原則」は、こうした領域にまで及ぶものであることを是非心に留めておいてください。

 

一般のトレーニング理論は、運動生理学にもとづいて構築されていますが、「全面性の原則とは、その一環としてのみ用いられてきたことは既に説明してきたとおりです。これに対して、水氣道におけるトレーニング理論は運動生理学のみならず運動心理学、さらにいえば両者を統合した運動心身医学(註)を基礎としています。

 

(註)運動心身医学:

水氣道における独自の稽古理論。心身医学とは、患者を身体面とともに心理面、社会面(生活環境面)をも含めて、総合的、統合的に見ていこうとする医学を言います。そして、現代の心身医学の分野は医療、保健、福祉など多方面にわたりますが、基本的には人間の身体面、心理面、社会面の相互作用に関する科学的な研究成果をもとに、患者中心の生活の質を重視した全人的な医学医療のありかたを目指しています。そこで、「水氣道」という画期的な健康法の実践方法を確立して、心身医学に基づいた健康づくりを目的とする独創的な考え方によって体系的に運動理論を構築していこうとするのが「運動心身医学」なのです。

 

 

こうした運動心身医学を背景とする新しい概念である「全面性の原則」も従来の概念と基本的には相互に矛盾することはありません。ただし、水氣道での「全面性の原則」は、筋肉トレーニングのみならずメンタルトレーニングや、さらに、それらの相互関係にも及ぶ原則ことになります。ですから、水氣道における「全面性の原則」の概念には、身体面のみならず、心身両面に及び、このことだけでも従来の概念の時限を超えた発展性や成長性の可能性が内在しているということができます。

 

 

 

「全面性とは、バランスのことである」

 

とはいっても、それは広範囲に均一ということではなく、目的に応じて、それぞれに比重が異なることがあるということになります。たとえば水氣道には様々な技法(航法)が準備されていますが、すべての技法は心身両面での訓練になっています。しかし、体力面のトレーニングとメンタル面でのトレーニングの比重は一定ではなく、航法の種類やトレーニングの目的によって多種多様です。

 

繰り返しになりますが、水氣道の「全面性の原則」が、従来の「全面性の原則」と異なるのは、この原則が、単に筋肉トレーニングに限った原則ではなく、筋肉以外の体力向上全般に加えて脳神経系に細やかな配慮と工夫が必要になるからです。逆に、筋肉や身体面ばかりに注目しているならば、それは本質的に「全面性の原則」に反して、これと矛盾することになるからです。ですから、筋肉トレーニングはバランスよく行うという狭い意味での解釈を超越して、少なくとも水氣道の稽古においては、心身の統合的トレーニングは、全体のバランスよく考慮して行うという法則に拡張して理解することが大切です。

 

そのためには心身医学的アプローチに適う「全面性の原則」の考え方を織り込んだ<準備体操><整理体操>を丁寧に実施することが有用だと思います。水氣道では20年の歳月をかけて独自の<準備体操(通称:イキイキ体操)><整理体操(通称:のびのび体操)>を独自に発展・展開させてきました。いずれの体操も心身医学的な「全面性の原則」に則って体系づけられていますが、それぞれの目的が違います。つまり、「全面性の原則」というのは、目的に応じて柔軟な多様性を示しうるものだということができます。そして、いずれの体操も各自の目的に応じた「全面性の原則」に則って組み立てられているのですが、可能な限り、一回の稽古の中で<準備体操(通称:イキイキ体操)><整理体操(通称:のびのび体操)>両方の体操を組み合わせることによって、相互の効用を補完し合い、より完成度の高い稽古の基礎ができあがるのです。つまり、稽古の流れ全体を通して「全面性の原則」がより高度に完成していくものであることを理会していただきたいと思います。

 

さて人間が心身共に成長していくためには体力と気力のいずれもが必要となりますが、それだけでは不足しています。なぜなら、人間は社会的な存在であり、社会的動物であるともいわれるからです。人間が心身共に成長していくためには、新たな「気付き」が必要なのですが、個々の人間が孤立していたのであれば、多くの「気付き」の機会は失われてしまうことでしょう。そのかわり、身近にいろいろな人々と交流し、同行の友や師を得ることができれば、「気付き」の機会は加速度的に増えていくことになるはずです。

 

水氣道の稽古が個人的な鍛錬でなく「集団」あるいは「団体」として組織だって活動するように構築されているのは、まさに集団力動(グループ・ダイナミクス)によるメリットを最大限に引き出すことの重要性に根ざしているからです。人間が心身共に成長していくためには行動変容が必要であることは前回説明しました。その行動変容のためには、決断力と瞬発力の助け以前に「気付き」が必要です。そのチャンスを与えてくれるのが自分以外の人々の存在です。

 

今まで経験したことのない活動を、今までお付き合いのなかった人々と共に開始し、少しずつ開拓していくためには多少の勇気と覚悟、それから最小限の体力が必要になります。それらが揃ってはじめて質の高い「気付き」と自信が与えられるきっかけが与えられることになります。

 

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水氣道稽古の12の原則(8)全面性の原則(その2)

 

運動生理学にもとづくトレーニング理論におけるいくつかの原則の一つに「全面性の原則」があります。多くの場合は、筋肉トレーニングに関するもので、筋肉トレーニングはバランスよく行うという法則であると理解されています。またバランスとは、「必要な要素を見落とさない」ということにもつながります。ですから、「全面性の原則」には、概念自体の発展性や成長性が内在しているということができます。

 

たとえば筋肉トレーニングをする場合には、特定の筋肉や特定の身体部分の筋肉に偏らずに、全身の筋肉のバランスを考えながらトレーニングする必要があります。ただし、筋力トレーニングについていえば、全身の筋をバランスよく鍛えることを前提としつつも、大筋群を優先してトレーニングを実施することは大切です。

 

つまり、全面性とは、バランスであるとはいっても、それは広範囲に均一ということではなく、目的に応じて、それぞれに比重が異なることがあるということになります。

 

それから、トレーニングのモードとして持久力(持久力)を高める有酸素運動や筋力強化(パワー)のための無酸素運動がありますが、いずれか一方ではなく、両方のモードでトレーニングを行うことも「全面性の原則」の本旨に適うことになります。

なぜなら「全面性の原則」とは、筋肉トレーニングとはに限った原則ではないからです。

 

また、筋肉をトレーニングするためには、筋肉以外の体力向上全般に細やかな配慮と工夫が必要になるからです。逆に、筋肉だけに注目しているならば、それは本質的に「全面性の原則」に反して、これと矛盾することになるからです。ですから、筋肉トレーニングはバランスよく行うという狭い意味での解釈ではなく、少なくとも体力トレーニングはバランスよく行うという法則に拡張して理解することが大切です。

 

ですから体力とは、当然ながら単に筋力を意味するものではありません。筋力の他に、有酸素能力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることが必要です。それらを、更に具体的に列記するならば、持久力、瞬発力、敏捷性、平行性、柔軟性といったようにいろんな体力要素です。前回説明したことの繰り返しになりますが、これらの体力要素を偏りなくバランスよくトレーニングしていくことが、より本格的な意味での「全面性の原則」ということになります。

 

そのためには「全面性の原則」の考え方を織り込んだ<準備体操><整理体操>を丁寧に実施することが有用だと思います。

 

水氣道では20年の歳月をかけて独自の<準備体操(通称:イキイキ体操)><整理体操(通称:のびのび体操)>を独自に発展・展開させてきました。

 

いずれの体操も「全面性の原則」に則って体系づけられていますが、それぞれの目的が違います。つまり、「全面性の原則」というのは、目的に応じて柔軟な多様性を示しうるものだということができます。そして、いずれの体操も各自の目的に応じた「全面性の原則」に則って組み立てられているのですが、両方の体操を組み合わせることによって、相互の効用を補完し合い、より完成度の高い稽古の基礎ができあがるのです。つまり、稽古の流れ全体を通して「全面性の原則」がより高度に完成していくものであることを理会していただきたいと思います。

 

それから、前回は、トレーニングにおいては、トレーニング効果を阻んでいる好ましくない生活習慣や認知・思考や動作・行動などの『悪い癖』の発見と是正も大切だと説明しました。『悪い癖』は行動や運動の偏りをもたらすからです。

 

ですから、本来の目的を見失わず、正しい方向性をもった行動をとる能力を育む努力と工夫なしには「全面性の原則」に適ったトレーニングの目標を達することはできません。

つまり、「全面性の原則」に適ったトレーニングとともに、トレーニングの方向性の全体を見通す能力育成に心掛けていかなければならないということになります。

 

そこで水氣道における「全面性の原則」は、筋力トレーニングをはじめとする各種体力要素を対象とするにとどまらず、メンタル面、社会面など、より広範な次元に根ざした原則としてとらえています。

 

水氣道がトレーニングするのは体力のみならず気力にも及びます。体力と気力をトレーニングするのは水氣道に限らず、多くのスポーツや武道についてもいえることです。

しかし、水氣道における体力と気力の訓練は、他の種目以上に相互の関連性を重視し、より深い洞察へ導くことができるように構成されています。

それは、心身相関という心身医学理論に立脚して稽古プログラムが構成されているからです。体力は主に瞬発力(パワー)持続力(スタミナ)によって支えられますが、気力もまた瞬発力(決断力)持久力(忍耐力)によって支えられます。

 

さて人間が心身共に成長していくためには体力と気力のいずれもが必要となりますが、その鍵となり、明らかに観察できる兆しとなるものが行動変容です。

 

行動変容のためには、決断力と瞬発力の助けが必要です。今まで経験したことのない活動を開始するためには多少の勇気と覚悟、それから最小限の体力が必要になります。

それらが揃ってはじめて自信が与えられることになります。ですから、水氣道を始めることを勧められた人は、当然生まれて初めての体験をするわけですから、一定の覚悟が必要です。

 

実際に、それが一番高いハードルになっているようです。逆に言えば、どれだけ時間がかかっても、そのハードルを飛び越えることができた人は、大きな行動変容を遂げ、その結果、初めての体験を味わい、認知にも変容が及ぶことになり、自信が与えられることになります。

 

しかしながら、自信とは受動的に与えられるものではなく、能動的に獲得していくものです。このことを理解していただく上で有益な概念として「自己効力感」という言葉を紹介させていただくことにします。

 

 

自己効力感は、社会的認知理論の中で使用される心理学用語の一つで、スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士によって提唱されました。

 

同博士がさまざまな恐怖症を克服した人たちにインタビューを行うことによって、恐怖症という極めて困難な病を克服することができた人たちの中に共通点を見出したことがきっかけだとされています。

 

その共通点とは、「自分は困難を克服できる」そして「自分は現状を変えることができる」と信じるようになれたという変化を体験できたということでした。その後の継続的な研究によって自己効力感を保持する人は、「失敗」、「壁」、「困難」、「難問」に遭遇しても、「チャレンジする」あるいは、失敗しても「比較的早く立ち直る」という傾向にあることが証明されました。

 

 

私は20年に及ぶ水氣道の実践の積み重ねによって確信できたことは、まったく想像もつかない水氣道の世界に飛び込んでくることができるくらいに心身の気が熟した方たちにとって、水氣道が提供するハードルは決して高いものではないということです。

 

水氣道での「失敗」はむしろ楽しいものでさえあります。そして、ことさらに「壁」を意識することなく「壁」を乗り越えることができます。なぜならば、水氣道の稽古で提示する課題の提示の仕方に独自の工夫が施されているからです。

つまり、「困難」な急こう配と思える課題も、小分割して、なるべくなだらかな階段の数を増やすことによって「平面」に見えてくるような道程が用意されています。「難問」ですら水氣道の稽古メソッドに従って実践すれば、「快刀乱麻を断つが如し」であるといえるといって良いでしょう。

 

このように、水氣道の稽古における「全面性の原則」とは、体力のみならず気力を養い、そこから自己効力感を高めることによって、より健康的な行動変容に繋げ、各人の成長と発展に資するための指針となるものであるということができるでしょう。

 

水氣道の稽古における「全面性の原則」は、ここまでのお話に留まるものではありません。この原則についての更なる意味、そしてこの原則に基づいて、水氣道では、どのような実践に役立て、何を目標にしているのか等については、次回のテーマにしたいと思います。

 

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・ 水氣道稽古の12の原則(8)全面性の原則(その1)

 

運動生理学にもとづくトレーニング理論で、通常5つないし6つの原則とされるものの一つに「全面性の原則」があります。これは、一言で言えば、トレーニングはバランスよく行うという法則です。

 

筋肉トレーニングをする場合は、全身の筋肉のバランスを考えてトレーニングをすべきであるという意味で理解されているようです。これは身体の特定の筋肉のトレーニングに偏らないことが大切だということです。

 

一部分の筋肉だけを鍛え続けているとケガのリスクを高めてしまうので「全面性の原則」はスポーツ選手にとって重要な心得といえるでしょう。

 

たとえば、上半身だけ、下半身だけの筋肉トレーニングの場合は、偏ったトレーニングであり「全面性の原則」に反することになります。なぜならば、上半身と下半身のバランスが不良になるからです。

 

また、主動筋ばかりを強化すると、相対的に拮抗筋が弱まり、運動力学的にバランスを損ねてしまうため、拮抗筋の傷害につながることになります。もっとわかりやすく言えば、屈筋のみを強化すると、それに拮抗する伸筋が弱まり、それらの双方の骨格筋のバランスを支える土台である関節の軟骨を痛めてしまうことがあります。


このように、筋肉トレーニングをする場合には、特定の筋肉や特定の身体部分の筋肉に偏らずに、全身の筋肉のバランスを考えながらトレーニングする必要があります。

 

ただし、文字通り「全面性の原則」とはいっても、毎回のトレーニングにおいて、全身の筋肉をすべて均等に動かすことを意味するものではありません。筋力トレーニングについていえば、全身の筋をバランスよく鍛えることを前提としつつも、大筋群を優先してトレーニングを実施することは大切です。

 

それから、トレーニングのモードとして持久力(持久力)を高める有酸素運動や筋力強化(パワー)のための無酸素運動がありますが、いずれか一方ではなく、両方のモードでトレーニングを行うことも「全面性の原則」の本旨に適うことになります。

 

そして「全面性の原則」とは、体力トレーニングはバランスよく行うという法則です。

ここで体力と一言でいっても、それは単に筋力だけではありません。筋力の他に、有酸素能力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることが必要です。

 

それらを、更に具体的に列記するならば、持久力、瞬発力、敏捷性、平行性、柔軟性といったようにいろんな体力要素です。これからの要素を偏りなくバランスよくトレーニングしていくことが、より本格的な意味での「全面性の原則」ということになります。

 

そのためには「全面性の原則」の考え方を織り込んだ<準備体操>や<整理体操>を丁寧に実施することが有用だと思います。

すべてのスポーツや競技の基礎となるすべての体力要素を高めるトレーニングは、この準備体操と整理体操に組み入れ、体力的基礎をしっかりと確保することは可能です。

また、それ自体が「全面性の原則」に則ったトレーニングであるといえるでしょう。

 

このように、体力というのは色々な要素で構成されているので、できる限り全ての体力要素を鍛えていかなければならないということも「全面性の原則」によって維持されやすくなります。

逆に言えば、「全面性の原則」は、ある体力要素を向上させたいのであれば、トレーニングの基礎として他の体力要素も向上させなければならないという原則であるともいえます。

 

さらに、いくらトレーニングであるからといって、むやみに動いてばかりではトレーニング効果が得られません。インターバルを入れて、小休止することも大切です。

活動と休息のバランスを工夫することも「全面性の原則」に含めて理解しておくことが望まれます。

たとえば、短距離走でベストスコアを得たい場合であっても、ダッシュだけでなく、ゆっくりと動くことが大切です。

つまり、同じ部位や種目に偏ったものではなく、バランスよく強化しなければならないということを「全面性の原則」が教えてくれます。

 

競技選手の場合には、トレーニングを実施する際には、その競技種目をよく分析し、目的に適う専門的なトレーニングを積み重ねていくことになりますが、その場合でも、基礎のトレーニングとしては、ある部位に偏ることなく全面的に強化する必要があります。

なぜならば、全面的に能力を開発することで、 将来より高度なテクニックを習得する際にもさまざまな能力の幅があるため比較的早く習得できるからです。

 

 

それから、トレーニングにおいては、トレーニング効果を阻んでいる好ましくない生活習慣や認知・思考や動作・行動などの『悪い癖』の発見と是正も大切です。

 

『悪い癖』は行動や運動の偏りをもたらすからです。ですから、本来の目的を見失わず、正しい方向性をもった行動をとる能力を育む努力と工夫なしには「全面性の原則」に適ったトレーニングの目標を達することはできません。

つまり、「全面性の原則」に適ったトレーニングとともに、トレーニングの方向性の全体を見通す能力育成に心掛けていかなければならないということになります。

 

以上、「全面性の原則」について縷々説明しましたが、水氣道における「全面性の原則」は、筋力トレーニングをはじめとする各種体力要素を対象とするにとどまらず、メンタル面、社会面など、より広範な次元に根ざした原則としてとらえています。

 

それでは、水氣道における「全面性の原則」とはどのような考え方に基づいて、どのような実践に役立て、何を目標にしているのか等については、次回のテーマにしたいと思います。