心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。
それは日本心療内科学会のHPです。
心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。
Q&Aは、想定した事例です。
Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。
※「質問」をクリックするとが表示されます。
と書かれています。
高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。
そこで、「質問」「答え」の後に、<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。
「質問4」
仕事をなかなか人には任すことができず、全部自分でしないと気が済まない性分です。
しかし、風邪をこじらせてから、頭重感がとれず、仕事に集中できません。
さらに、下痢と便秘が繰り返されています。
市販の頭痛薬や整腸剤を服用していますがなかなか良くなりません。
どうしたらいいでしょうか?
「答え」
(年齢,性別が不詳なので回答が困難ですが,一般的な対応について述べます)。
風邪をこじらせ頭重感などの身体症状が市販薬ではなかなか良くならないとのことですが,まずきちんとした診療を受けるため内科を受診して下さい。
微熱や咽頭痛,咳,痰などの症状が長引いていれば,咽頭炎・気管支炎などの上気道の呼吸器系感染症やその他の病気について精査し,早目の適切な治療が必要です。
場合によっては抗生物質などの服用も必要かもしれません。
また長引く頭重感も単に風邪のこじれによるものなのか,あるいは高血圧や脳の血流不全,糖尿病,肝臓・腎臓などに異常が潜んでいるためなのかの鑑別診断 (かんべつしんだん)が大切です。
下痢や便秘についても同様に,何らかの胃や腸などの異常はないのかを,きちんと内科的あるいは外科的に診察してもらってください。
日頃から貧血,体力低下のある人や糖尿病,メタボ,あるいは高血圧や動脈硬化,その他内蔵の病気や喘息,免疫不全,癌などの基礎疾患をもっている方とか,とりわけ高齢者には,身体医学的な診断治療が第一に必要です。
一応,身体的には問題ないのに、問い合わせのような症状があらわれている方では,心療内科的診療が必要となります。
一応,頭重感,下痢便秘,仕事に集中困難が長引き,睡眠障害や食欲不振,だるさ,気分不良,意欲減退や億劫,大儀,面倒くさいなどがみられるようならば,身体的疲労の蓄積だけではなく脳が疲れていることが考えられます。
脳の疲れが心身の症状としてあらわれる心気症や身体表現性障害などのストレス関連疾患や,軽いうつ状態 (うつ病性障害) なども考えられますので,心療内科的に診断してもらい,その場合には,適切な薬物療法や心理療法を受ける必要があります。
なかなか仕事を他人に任すことが出来ず,全部自分でしないと気がすまない性分は,真面目で責任感旺盛とはいえ,過剰適応の結果,心身の疲労とストレスを抱え込み蓄積させるおそれがあり,対処方法をこのあたりで考える必要があります。
自分の性格や行動を少しでも改善するには,認知行動療法などの心理療法があります。また,ストレス解消には自律訓練法なども有効ですので,心療内科医に相談してみて下さい。
(石津 宏)
<高円寺南診療所の見解>
「質問4」は、心療内科のQ & Aに相応しい相談だと思います。
相談というのは、原則として患者さん本人からのものですが、心療内科では、しばしば家族をはじめとする重要他者からのものであることもあります。
「質問4」のような相談は、患者さん本人からというよりは、配偶者をはじめその他のご家族からしばしば受けることがあります。
もし、患者さん本人であるとしたら、以下のように単純に相談することが多いでしょう。
『風邪をこじらせてから、頭重感がとれず、仕事に集中できません。さらに、下痢と便秘が繰り返されています。市販の頭痛薬や整腸剤を服用していますがなかなか良くなりません。どうしたらいいでしょうか?』
つまり、冒頭から『仕事をなかなか人には任すことができず、全部自分でしないと気が済まない性分です。』と自己開示できるようなタイプの人はとても少ないということです。
このように、身体症状のみならず、心理社会的な情報まで提供してくれる患者さんばかりであれば、一般の内科医でも、もっと当たり前のように心療内科外来をはじめることができると思います。
それを上手に聞き出すし、自己洞察を深めていただけるようにサポートするのが心療内科専門医の腕の見せ所ということです。
さて、回答者の石津宏先生は琉球大学医学部の名誉教授です。
石津先生のアドバイスの要点は、まず①内科を受診して身体疾患についてきちんと診てもらうこと、そして、②身体的には問題ないのに、問い合わせのような症状があらわれている方では,心療内科的診療が必要、ということです。
石津先生の「答え」では、「質問4」のような症例では、第一段階で内科受診、第二段階で心療内科受診、ということになりますが、多少なりとも誤解を招きかねないので、私が少し解説を加えることにします。石津先生の「答え」の背景には、内科医(多数の一般内科医)、心療内科医(希少な超専門医)という現実があると思われます。
もし、あなたの主治医が心療内科専門医であれば、最初からその心療内科専門医を受診することをお勧めします。
なぜならば、心療内科専門医は、内科医(多数の一般内科医)と同等以上の資格と経験を持っているからです。
わたしはすべての一般内科医が優秀な心療内科医を目指して研鑽を続けていけたら、日本の医療崩壊の根本原因の一つを解決に導けるものと確信しています。