その2:認知機能研究の最前線
高齢化とともに日本で急増中のアルツハイマー病(AD)の根本治療法の確立は急務です。
今後の予防・治療の対象として重要な軽度認知障害(MCI)などの早期段階を、画像診断やバイオマーカーを用いて精密に評価する Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究が米国で進み、日本でも研究(J-ADNI)が推進されてきました。
東京大学大学院の岩坪威教授らは5月10日、J-ADNI研究によりアルツハイマー病早期段階(軽度認知障害)の進行過程を解明したと発表しました。
この研究の成果は、米科学雑誌「Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association」に掲載されました。
研究の主任研究者を務める岩坪教授らのチームは米国ADNIチームと共同でデータの比較解析が行われました。
その結果、アミロイドPET画像法などの最新技術によって診断された、ADを原因とする軽度認知障害(MCI)について、その症状や進行速度などの特徴が米国ADNIのMCIに極めて類似していることを明らかにしました。
今回の研究により、
①軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病(AD)への進行過程の自然経過に日本人と欧米人で高い共通性が示されました。
②アルツハイマー病(AD)根本治療薬の治験においても、認知症期よりもまだ進行のスピードが遅い軽度認知障害(MCI)などの早期段階で、治療薬の効果を精密に評価できる技術が確立しました。
以上により国内のアルツハイマー病(AD)の予防・治療薬開発を加速することが可能になったと研究チームは述べています。
高円寺南診療所からのコメント:東大の岩坪教授らの研究結果は、日本のデータが米国のデータと共通する結果が得られたということです。
つまり、アルツハイマー病の軽度認知障害(MCI)の進行過程には人種差が無い、ということです。
そこで軽度認知障害(MCI)などの早期段階で精密に評価する試みはこれまで以上に画像診断やバイオマーカーが利用されることになるでしょう。
画像検査としては、日米での研究で用いられたアミロイドPET画像法が推奨されることになるでしょう。
この検査は、実際にいくつかの先進的な医療機関ではすでに実施されていますが、検査費用が問題です。
実際の検査費用は多くの実施医療機関で45万円(税別)程度です。
ですから、高円寺南診療所では画像診断ではなく、2万円(税別)程度の検査費用で実施できるバイオマーカーを用いる血液検査による検診を推進するための準備に取り掛かっています。