痛風治療のABC 山中寿(東京女子医大 膠原病リウマチ痛風センター)

 

 

 

はじめに:

 痛風はリウマチなどの膠原病とは異なるジャンルの病気です。

 

一括りにされる理由は痛風の関節炎症状(痛風発作)がリウマチ性疾患

の一つであると認識されてきたからです。

 

高円寺南診療所はリウマチ科も専標榜しているのですが、

痛風とその原因は高尿酸血症を代謝性疾患として診療しています。

 

それは高尿酸血症を脂質異常症、糖尿病などのメタボリック症候群と

同列に位置付けているからです。

 

 

高円寺南診療所は全国的にも早い時期に関節超音波検査を導入し、

迅速な対応による初期効果を挙げてきました。

 

しかし、問題は、発作後の管理中断例が多いことです。

 

少なからざる患者さんが治療中断による痛風発作を繰り返して、そのたびに再来院されています。

 

これは痛風に限らず、発作性の病気の患者さんにありがちな傾向です。

 

激烈な痛みから解放された高尿酸血症の状態にある患者さんをどのように支援していくか、

という課題は真剣に取り組まなくてはならないと考えています。

 

 

 

 

講演サマリー:

 

<総論>

 

痛風は一般の検診項目に含まれていることから早期の薬物療法が可能である。

 

他方、難治性痛風が大問題になっている。

 

 

高尿酸血症・痛風の診療の2側面

 

1)痛風関節炎の正しい診断・治療

 

2)高尿酸血症に対する正しい認識・治療

 

 

 

<各論>

 

高尿酸血症・痛風発症に関する遺伝子の多くは尿酸の排泄を司る遺伝子である

 

関節の超音波検査は有用である

 

血清尿酸値を6.0mg/dl以下にする

 

血清尿酸値の長期適正維持により痛風関節炎の再発・腎障害の進展が防止できる

 

新薬フェブキソスタット(新規キサンチンオキシダーゼ阻害薬)が使えるようになった

 

 

腸内細菌叢と疾患のABC 竹田潔(大阪大学 免疫制御学)

 

 

 

はじめに:

腸内細菌叢が私たちの健康維持、免疫系の発達、さらにさまざまな疾患と係っています。

 

このことについては、先週の日本内科学会のダイジェストですでに紹介しました。

 

腸内細菌叢は、リウマチ学会でも取り上げられていました。

 

このテーマは、高円寺南診療所に通院中の多くの皆様に関係が深いため今後も注目していこうと思います。

 

 

 

 

講演サマリー:

 

<総論>

 

腸内細菌叢は私たちの健康維持に極めて重要な役割を担っている。

 

様々な疾患で多種類存在する腸内細菌叢の割合は健常人と異なる。

 

これをdysbiosisという。

 

 

<各論>

 

腸内には1,000種類を超える細菌種(腸内細菌叢:microbiota)が存在する。

 

腸内細菌の遺伝子(microbiome)総数は、ヒトが持つ遺伝子総数の約400倍になる。

 

腸内細菌の遺伝子産物の中に、私たちの健康維持に必要な栄養素を作り出す酵素が含まれている。

 

摂取した食物成分から腸内細菌により作り出される代謝産物は、ヒトのエネルギー源、栄養となり、

また腸管免疫系に関与する。

 

dysbiosisが認められる疾患:炎症性腸疾患、多発性硬化症、肥満などの代謝疾患、

自閉症などの神経発達疾患

 

膠原病と皮膚病変 藤本学(筑波大 皮膚科)

 

 

 

はじめに:

高円寺南診療所は内科なのに、なぜ皮膚の診療もするのでしょうか?

 

リウマチ専門医は内科医ですが皮膚に深くかかわります。

 

リウマチ専門医は関節リウマチをはじめとする膠原病の診療に当たります。

 

膠原病は免疫の異常であり、免疫力が低下している患者さんが多いので注意が要ります。

 

その膠原病でもっとも症状が出現しやすい臓器が皮膚だからです。

 

膠原病のうちで全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎などの皮膚症状には特徴があります。

 

 

 

高円寺南診療所はリウマチ疾患のみならずアレルギー疾患を専門的に診療しています。

 

リウマチ体質のみならずアレルギー体質の方も、皮膚症状をきたしやすいのと、内科は患者さんの全身を診療することを旨とするので、皮膚も大切に拝見させていただくことになるのです。

 

 

 

 

講演サマリー:

 

<総論>

膠原病は、皮膚症状から重要な情報を読み取ることができ、しかも初発症状のことも多い。

 

膠原病患者では、膠原病と関係ない皮疹がでることもある。

 

 

 

<各論>

1)  膠原病の皮疹(皮膚症状)は、早期発見・早期治療に重要である。

 

2) 膠原病の皮疹は疾患活動性(病気の勢い)の評価に役立つ場合がある。

 

3) 膠原病患者は薬疹が生じやすい。

 

4) 感染症による皮疹との鑑別が必要である。

 

妊娠・授乳期におけるリウマチ性疾患の診療 村島温子(国立成育医療研究センター)

 

 

 

はじめに:

関節リウマチは30~50代の女性に多い病気です。30歳以前に発症するケースも少なくありません。

 

そこで、抗リウマチ薬を使用中に妊娠の計画を立てたり、妊娠が判明したりした場合には、多くの女性が薬の中止を希望されるため、積極的に相談に応じてきました。

 

高円寺南診療所では、生物学的製剤のうちIgG製剤は胎盤移行性が高いため妊娠中は避けるだけでなく、妊娠可能年齢の女性には、なるべく生物学的製剤は使用せず、非生物学的製剤のうち奇形リスクや胎児毒性が疑われる抗リウマチ薬を慎重に減量する方針でサポートしています。

 

 

 

講演サマリー:

<総論>

慢性疾患患者の妊娠において重要なことは「原疾患の治療を優先すべきだが、妊娠を先送りしない」ということ。妊娠を計画するならば、疾患の管理と妊娠を両立させるような戦略をたてる。

 

 

 

<各論>

○関節リウマチ患者の妊娠においては妊孕性(にんようせい)の確保、妊娠中の寛解維持、良好な妊娠結果のためにも疾患活動性を抑えて妊娠に持っていくことが最重要

 

○年齢的に余裕がある場合には、早期治療で病気の進行を抑えてからドラッグフリーを目指して積極的な治療を行う。

 

○妊娠12週を過ぎると奇形のリスクはなくなる。

 

○胎盤が完成する15週以降は胎児毒性について注意が必要

 

○産後は高率に再燃するが、その際には母乳栄養が可能で即効性のある薬剤を選択する。

 

○なお全身性エリテマトーデスの例ですが、アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムスの催奇形性は否定的なので、ステロイド剤とこれらの免疫抑制剤の併用が選択肢となりうる。

 

○昨年から本邦でも使用可となったヒドロキシクロロキンを妊娠中に使用することで生じるリスクは否定的であるばかりか、ベネフィットさえある可能性がある。

 

 

 

コメント:

挙児を急がなくて良い場合には『早期治療で病気の進行を十分に抑えてからドラッグフリーを目指して積極的な治療を行う。』ことが疾患の管理と妊娠を両立させるという原則にマッチするのではないか、と考えています。

前回の投稿

それには、2つ考えられます。

 

1.「痛み」が軽くなると、仕事、家庭等の悩みに向き合わなければならず「苦悩」が浮上する。

2.「痛み」がある間は、「苦悩」に向き合わずにすむ。つまり、「痛み」に専念できる。

これは、”疾病利得”として心療内科の世界ではよく知られています。

 

これはどういうことでしょうか?

 

「痛み」とは身体を媒体として「苦悩」を自他に見える形にしたものであり「痛み」を通して自分自身の存在を感じる。

また、「苦悩」がある状況は、「痛み」に伴う「疼痛行動」として表現することにより他人に理解してもらいやすくなります。

 

つまり、「苦悩」は、「痛み」の原因になるということです。

 

「痛み」を取ることだけを考えて「苦悩」を置き去りにしていませんか?

身体のケアを通して「苦悩」の解決を一緒に考えていきましょう。

リウマチ学会の教育研修講演のテーマ『加齢性筋肉減少症(サルコペニア)』対策

 

 

 

サルコペニアに対する基本的方術は持続的運動。

 

これを外来診療でお勧めすること自体は簡単です。

 

しかし、安全に確実に効果的に継続していただくのは簡単ではありませんでした。

 

 

 

今から思えば、とても残念なことですが、多数の失敗例がありました。

 

運動療法をお勧めした患者さんが我流で陸上の運動をはじめ、慣れないうちに

転倒し、骨折し、寝たきりになり、しまいに認知症になってしまった、というケースです。

 

 

 

こうした苦い経験に対する反省も動機の一つになって、2000年以来、高円寺南診療所では、

専門医がデザインし、直接指導する運動療法として水氣道を発展させてきた次第です。

 

 

 

水氣道の利点は、まず訓練中の事故やケガがほとんどないことです。

 

水氣道特有の水中運動により、自然に楽しみながら筋肉量や筋力を増やせるだけでなく、

効果的に平衡機能を向上させることができます。

 

ですから、80歳を超える会員であっても加齢性筋肉減少症(サルコペニア)とは無縁だということがいえるのです。

 

若いうちから水氣道を始めることができれば、さらに確実な予防が約束されることでしょう。

サルコペニアの現状と今後の課題 小川純人(東大加齢医学)

 

 

 

サルコペニアという医学用語は、聞きなれない言葉かもしれません。

大切なキーワードなので簡単に説明したあと、小川先生のレクチャーをご紹介します。

 

 

 

用語解説:

サルコペニアとは、加齢に伴い骨格筋を中心に筋量や筋力が低下した状態です。

 

加齢性筋肉減少症と訳されます。

 

特定の病気として確立したものではありあませんが、筋量と筋肉の減少の特徴は進行性で全身性であり、身体の働きや生活の質が低下し、死亡する危険性をはらむ症候群です。

 

この病態はホルモンなどの体液や栄養状態の加齢変化や

慢性炎症などの関与が明らかになりつつあります。

 

 

 

講演サマリー:

高齢者の虚弱で知られていることは、その要因が、身体・認知機能や臓器の余力低下などによること、

その結果、転倒・骨折リスクや要介護リスクが増え、寿命や生活の質に大きな影響を及ぼしていることである。

 

我が国はすでに超高齢社会であるため、対策としては早期からの介護予防や

転倒・骨折予防に取り組むことが重要である。

 

持続的運動、アミノ酸栄養、ビタミンD投与、ホルモン補充などによってサルコペニアの

予防や治療が試みられている。

 

 

 

コメント:

リウマチ専門医は加齢性筋肉減少症(サルコペニア)に対する医療的方略を持っていなければなりません。

 

サルコペニアはメタボリック症候群と同様に多くの人々に係る国家的課題です。

 

早期からの介護予防や転倒・骨折予防に取り組むことが重要であるという認識にとどまり、具体的処方がなされていないのが現状です。

 

 

⇒本日の新着情報『水氣道』をご参照ください。

 

 

4月20日の第6回『音海』聖楽コンサートに、

及川音楽事務所の及川和春代表が来場されました。

及川音楽事務所所属の多くのアーティストによる

Music Bar『音海』での身近なクラシックコンサートの機会が増える見込みです。

 

クラシック音楽の発祥はサロン文化 !  日本のサロンコンサート万歳!!

 

 

ゴールデン・ウィークを目前に控え、シューマンの傑作を歌います!

 

飯嶋正広(テノール)、ピアノ(齋藤文香)

 

 4月27日(水)   Music Bar 『音海』にて、

 

高円寺南診療所主催 /日本水氣道協会後援

 

7回『音海』聖楽コンサート

 

 開場PM6:30(開演PM7:00)

 

Music Charge 1,000円

 

コメント:

齋藤理緒さん(第5水曜日先任ピアニスト齋藤文香さんの妹)の誕生日記念コンサートです。

 

東京在住の理緒さんは宇都宮在住の文香さんの良い理解者で応援者です。

 

そんな姉思いの優しい理緒さんへ、そして多くのファンの皆様への感謝をこめての公開音楽会です。

 

どうぞお気軽にご来場くださいますように!

 

 

 

4月29日(金・祝) 文京シビック小ホールにて、及川音楽事務所主催

 

フレッシュガラコンサート第146

 

開場PM1:15(開演PM1:30)

 

全席自由 2,000円(診療所窓口でも取り扱います)

 

コメント:

私たちの本番は午後2時50分の予定ですが、どうぞ余裕をもってご来場いただければ幸いです。