神経・精神・運動器
テーマ:レビー小体型認知症
<精神科の先生からいただいたお薬を飲んだら、立ちくらみがしてわけがわからなくなった>という、
こちらにとっても訳の分からないことをおっしゃる高齢男性。
なぜ精神科の先生と相談しないのか、とお尋ねすると、
<何か言うたびにお薬が増えるので困る>のだそうでした。
また、精神科では何を診ていただいているのかお尋ねすると
<内科の先生に心療内科を受診するように言われたから>とのことでした。
家族から、さらに詳しく聞き取ると、
どうやらもともとパーキンソン病の症状があって神経内科を受診していたが、
幻視(人、小動物、虫など)や、妄想などの精神症状、夢遊病などが現れたため
神経内科の先生の手に負えなくなったためだとのことでした。
精神科の先生の処方薬は、通常の処方量より、かなり控えめであったため、
まず薬に対する過敏性を疑いました。
まず、神経内科の先生は、この患者さんを
認知症合併のパーキンソン病として治療を進めていたことから出発します。
CTやMRIは正常でしたが、MIBG心筋シンンチグラフィで心臓交感神経の脱神経所見があったため、
「パーキンソン病の早期診断ができました」との説明を受けたようです。
画像検査のフィルムのコピーを持参されていたので、
私が改めてMRIを読影してみると、わずかですが海馬という記憶に関する脳領域の萎縮と、
SPECTでは後頭葉皮質の血流・代謝低下を認めたため、
レビー小体型認知症だったのではないかと考えました。
レビー小体型認知症であると仮定すると、
MIBG心筋シンンチグラフィで心臓交感神経の脱神経所見をふくめて、
これらの画像診断の所見と矛盾しません。
また、この病気は、抗精神病薬に対する過敏性が問題になっています。
この患者さんに処方されている向精神薬を中止すると、症状は軽快しました。
しかし、十分な回復が得られなかったため、漢方薬の抑肝散を処方しました。
すると、4週後には妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、無感心、易刺激性、異常行動などが顕著に改善しました。
その後は、紹介先の某大学病院の神経内科から、コリンエステラーゼ阻害薬のみの処方を受けています。
その一方で、心身のメインテナンスのため水氣道®をはじめていただいています。
姿勢が改善し、表情が明るくなり、動作も以前よりかなりスムーズになっています。