日々の臨床 4月29日土曜日

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:原発性アルドステロン症

 

 

<片頭痛がして、力が入りにくくなったので、血圧を測ってみたら高くて、

 

心配になったので診てください。>という中年女性。

 

初診時の血圧も確かに高く、尿検査では糖も陽性でした。

 

すると、<尿が近くて、特に夜何度もトイレに起きるので、利尿剤系の降圧剤は要りません。>と畳みかける。

 

ここまでで、診断のための多くのヒントを得ることができました。

 

 

頭痛専門医タイトル取得に向けて勉強しているせいか、

 

頭痛はいろいろな専門領域の病気にかかわりがあり、

 

その訴えには注意を要することが多いことに気づかされます。

 

まず多くの場合《片頭痛》は、患者さん用語です。

 

《片頭痛》と診断されたのはいつかをお尋ねすると、

 

たいていは専門的診断ではなく自己診断です。

 

自己診断の根拠をお尋ねすると<頭の片方が痛いから>とか、

 

甚だしい例としては<変な頭痛だから>とか仰います。

 

なぜ、単純に<頭が痛いです。>とか<頭痛がします。>とか言ってくださらないものかと思います。

 

この患者さんの《片頭痛》も自己診断でした。

 

しかし、この頭痛は高血圧と関連があるため、診断のため重要な手掛かりになりました。

 

 

この患者さんの夜間頻尿は、多飲のためでした。

 

多飲の分だけ多尿となるのは自然の成り行きですが、

 

とくに夜間の多尿は、体液量の増加を疑わせます。

 

 

これらの因果関係をまとめると、体液量増加⇒高血圧⇒頭痛

 

さて、それでは、なぜ体液量が増加するのかが問題になります。

 

塩分の過剰摂取、つまり、ナトリウムが体に貯留すると体液量が増加しますが、

 

この方は、降圧剤を飲みたくないので、しっかりと減塩食を続けています。

 

 

そこで、ナトリウムが貯留する食事以外の原因を考えてみます。

 

これはナトリウム代謝に関連するホルモンが重要です。

 

ホルモンを産生する臓器は限られていますが、副腎皮質から分泌されるアルドステロンは、

 

これが過剰に分泌されると高血圧や低カリウム血症による症状があらわれます。

 

何らかの原因疾患があって生じる高血圧を二次性高血圧といいますが、

 

その二次性高血圧の中で最も頻度が高いのが原発性アルドステロン症という病気です。

 

 

少し専門的な説明になりますが、原発性アルドステロン症は

 

副腎の皮質の球状層の細胞が腺腫または過形成となり、

 

アルドステロンを過剰に分泌して、これが腎臓の尿細管に作用した結果、

 

ナトリウム蓄積カリウム喪失を来します。

 

高ナトリウム血症は、高血圧、頭痛、夜間頻尿、低カリウム血症は筋力低下、尿糖などの症状をもたらします。

 

 

この患者さんの精密検査のための紹介先の病院のCT検査で

 

左の副腎に直径7mmの腫瘍が検出されました。

 

直径が小さかったため超音波検査では発見できませんでした。

 

 

この患者さんは最初は利尿剤を拒否していましたが、

 

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬という一種の利尿降圧剤を使用して安定しています。