今回のテーマは今月中旬に参加した日本内科学会で未報告のものから選択しました。
第115回日本内科学会第1日(4月13日)
教育講演4.16 時20 分~16 時40 分(20 分) 座長 新潟大学 成田一衛
加齢と腎臓……川崎医科大学 柏原直樹
川崎医科大学腎臓・高血圧内科 柏原直樹先生のレクチャーより
高齢者は程度の差こそあれ何らかの腎機能障害を伴っていると考えるべきであり、それが高血圧との相互関係を有するため、高円寺南診療所では、血圧測定と尿検査を積極的に取り入れてきました。
高齢者の診療に当たっては、全員に必須の基礎的チェック項目とも言えるでしょう。
高齢者の腎臓の診療における留意点
①高齢者は潜在的な腎障害(慢性腎臓病)を有している。
②急性腎障害を惹起する高リスク者であり、重症化し易い。
③高齢者は水・電解質の恒常性維持機能が低下している。
加齢に伴い腎糸球体濾過率(GFR)が低下します。
GFR低下の背景には、腎実質内の血行動態変化が関係しています。
つまり、加齢に伴い間葉動脈から小葉間動脈にかけて内膜・中膜肥厚と内腔狭小化が進行します。その結果、腎間質血流が低下し、広範な組織虚血をもたらします。
また、その虚血に対する応答機構も加齢によって減弱するため、進行性腎機能低下を招来することになります。
加齢に伴い尿細管機能も変化します。
具体的には加齢に伴い尿細管におけるNa再吸収能が低下します。
塩分摂取量の低下に対する尿細管のNa再吸収亢進は高齢者では若年者よりも2倍近く遅延することが示されています。
さらに、脱水等のレニン産生刺激に対する応答やNa排泄を行うために、高齢者では低下します。
同等量のNa排泄を行うために、高齢者では若年者と比較して、より長時間を要するために、夜間の尿量増加を来しやすくなります。
高齢者では、尿の最大濃縮力が低下します。
体液量減少あるいは血漿浸透圧上昇に対するバゾプレシン分泌反応は若年者と同様に維持されますが、バゾプレシンに対する集合尿細管の反応性低下が示唆されています。
まとめ
高齢者では若年者と比較して体液量やNa濃度の恒常性維持能力が低下していることを念頭に置く必要があります。
サイアザイド系利尿薬の使用により、低Na血症を来たし、逆に飲水制限により高Na血症を惹起し易くなります。
また口渇感も低下していることが多く、容易に体液量の異常をきたしやすいです。
したがって、高齢者では少なくとも3か月に1回の血液検査では腎機能関連項目(Cr, BUN,UA)の他に血漿Na濃度を必須の項目として考慮する必要があります。