前号では、「骨粗しょう症」の診断において、骨量だけでなく骨質の評価が大切であることについてご紹介いたしました。そこで、骨質を評価する上で重要な「善玉架橋」と「悪玉架橋」について述べました。
丈夫な骨の構造は、以上の他に、骨を作る“骨芽細胞”と骨を壊す“破骨細胞”がお互いに協調し合って働くことにより骨の構造がバランス良く綿密に作られています。このバランスが崩れたりすると骨の構造が破綻し始めます。
悪玉架橋は加齢とともに増えるほか、糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病により動脈硬化の原因として知られるホモシステインの酸化作用や糖化(AGEs:最終糖化産物)が亢進される状態でも増える(過形成)ことが分かっています。非生理的架橋の本態は、このAGEs(最終糖化産物)架橋です。
ホモシステインは、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸などの栄養成分によって代謝が促進されます。
加齢により通常でもコラーゲンは徐々にさびていきますが、生理的なさびであればそれほど骨には影響しません。骨量が十分なのに骨折する患者は、コラーゲンが過度にさびるということが明らかになってきました。生活習慣病の患者さんでは、骨密度検査で正常範囲や高値という結果が出ても骨折リスクが高いことがあります。
骨粗しょう症により骨折しやすい部位は、
背骨(脊椎椎体)、脚の付け根(大腿骨近位部*)、手首(橈骨)、腕の付け根(上腕骨)です。
*大腿骨近位部は、骨折すると歩行が困難になり要介護状態になるリスクが高くなる骨折部位です。大腿骨近位部骨折の85%は転倒が直接の原因となっていますので、骨粗しょう症の治療とともに転倒予防も重要です。
背骨が体の重みで押し潰れてしまうことを「圧迫骨折」と言い、背中や腰が曲がるなどの原因となります。
圧迫骨折が生じても、単なる腰痛として見過ごしていたり、痛みを感じないていなかったりする場合もあります。
1ヵ所骨折すると、その周囲の骨にも負担がかかり、連鎖的な骨折につながりやすいため、早期発見・早期治療が重要です。
骨質の評価のためには、系統的に骨の構造を確認しておくことが有用です。
主たる観察部位:下線は特に骨折しやすい部分
1)足部-足関節-下腿部(脛骨・腓骨)-膝関節-大腿骨-股関節-骨盤部(仙腸関節など)-脊椎(腰椎-胸椎-頚椎)、
2)肩関節-上腕骨-肘関節-前腕部(橈骨・尺骨)-手関節-手部
なお、丈夫な骨の構造は、以上の他に、骨を作る“骨芽細胞”と骨を壊す“破骨細胞”がお互いに協調し合って働くことにより骨の構造がバランス良く綿密に作られています。
こうした骨代謝のバランスが崩れたりすると骨の構造が破綻し始めます。
そこで骨粗鬆症の診断ばかりでなく、治療効果の評価のために役立つのが骨代謝マーカーです。次号では、骨粗鬆症の予防と効果的な治療の指針となる骨代謝マーカーについての話題となります。