故郷(茨城)探訪:「知られざる茨城の名湯・秘境」シリーズ

 

 

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第一弾:友の湯温泉(北茨城市)その3

 

<友の湯温泉は療養に適する温泉か?>

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「友の湯温泉」を温泉医学的にまとめてみると、冷鉱泉(湧出口での泉温15.3℃<25℃)、中性泉(pH値7.1:6以上から7.5未満)、低張泉(ガス性のものを除く溶存物質計0.553g/㎏<8g/㎏)に分類される温泉です。

 

ただし、温泉の分類はそれだけではありません。温泉医学的には、その温泉が「療養泉」に該当するかどうかも関心がもたれます。まず、友の湯温泉が低張泉であるということから「療養泉」(註)の中の「単純温泉」との異同について検討してみることにします。  

 

(註)療養泉:

温泉の中でも、特に治療の目的に供し得る温泉とされます。その定義は温度が25℃以上、または、遊離二酸化炭素や鉄イオン、水素イオン、総硫黄などの物質いずれか一つが一定以上含まれていることです。 その成分ごとに9ないし10の泉質に分類されています。

 

「単純温泉」とは、温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満かつ湧出時の泉温が25℃以上の温泉です。ここで重要なのは、、温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満または湧出時の泉温が25℃以上の温泉ではないということです。友の湯温泉は低張泉(ガス性のものを除く溶存物質計553mg/㎏)で1,000mg未満には該当しますが、泉温が25℃に達しない冷鉱泉(湧出時の泉温が15.3℃)でありため、単純温泉には分類できないことになります。また、友の湯温泉の泉質は、他の成分組成からみても、その他、いずれの療養泉にも該当しません。

 

しかし、泉温に関して、指摘しておきたいことがあります。日本は海に囲まれている海洋国であるため、本来は「塩化物泉」が一番多い泉質なのですが、次第に掘削温泉が増えるにつれ、「療養泉」の一つである「単純温泉」が日本の温泉の代表的な泉質になりました。しかし。地中を100m掘るごとに地下水の温度は2~3℃上昇するため、1,000m~1,500mも掘削(ボーリング)すれば、温泉の定義となる25℃以上のお湯が出ることになるのです。
 

 

「友の湯温泉」は、源泉で自然湧出泉であるにもかかわらず、湧出時の泉温が25℃未満であるため日本の代表的な「療養泉」である「単純温泉」には該当しません。しかし、加温することによって、「単純温泉」と同系統の特徴や効能が期待できるはずであり、掘削による「単純温泉」よりすぐれた効能効果が得られる可能性は低くはないのではないかと考えます。
 

友の湯温泉の効能効果については、以上の理由から、単純温泉が参考になるでしょう。「単純温泉」は「単純泉」と呼ばれることが多いですが、「単純温泉」が正式な名称です。単純温泉の利点はたくさんあります。まず、刺激が小さく「やさしい温泉」であるため、子供からお年寄りまで家族揃って安心して入れる温泉であるということです。単純温泉は「湯あたり」を起こしにくい代表的な泉質でもあります。温泉の刺激に不安がある方は、まずは単純温泉に入ることから始めてください。単純温泉は安心して入れる温泉なので、私は患者さんたちに対しても「温泉療養のスタートは単純温泉から」はじめることをお勧めしています。

 

なお、温泉には、人体に対する作用の刺激の強さ、すなわち「緊張度」により、次のように二大別することがあります。それは、刺激作用の強い「緊張性」温泉と、刺激作用の弱い「緩和性」温泉です。「単純温泉」は、「緩和性」温泉のひとつです。

 

なお、温泉には療養泉に共通する「一般適応症」とその泉質独特の効能といえる「泉質別適応症」がありますが、単純温泉の効能は「一般適応症」のみです。
以下に列記します。

 

一般適応症・・・神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、健康増進