心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。
それは日本心療内科学会のHPです。
心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。
Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。
※「質問」をクリックするとが表示されます。
と書かれています。
高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、
<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。
「質問15」
心療内科での女性受診者の訴えにはどのようものがありますか?
「答え」
女性特有の身体症状と言えば、やはり月経関連の症状となります。
無月経(摂食障害など)や更年期障害、月経前緊張症(月経前に様々な心身の不調をきたし月経が始まると症状が軽減)などです。
あとの身体症状については特に男女差はないと思われますので、ここではその背景にある女性患者の悩みで、多いものを紹介いたします。
既婚女性ではまずパートナーさんとの夫婦関係の悩みがあげられます。
「亭主関白の夫に長年連れ添ってきたが、自分も年をとってきて家事も負担になるし、もうこれ以上はがまんできない」と積年の思いを訴える方や、最近ではパートナーさんに発達障害があり「コミュケーションがうまくとれない」という方も増えてきております。
お姑さんとの関係での悩みも多く見られますが、どれだけパートナーさんが協力してくれるかが重要なポイントです。
子育ての悩みもよく聞かれます。子どもさんが不登校であったり、何らかの疾患や障害を持たれているような場合もよくあります。
さらに不妊に関する悩みや、出産後の育児ストレスなども女性特有の悩みと言えるでしょう。
未婚女性では、20代では進学や就職などの環境の変化により周囲に適応できないケース、30代~40代では独身でいることの先行きの不安や、キャリアウーマンでは職場でのセクハラやパワハラなどによるストレスの訴えが聞かれます。
既婚・未婚問わず、「親の介護ストレス」も女性受診者の大きな問題と言えます。
未婚者の場合は親との関係性が密接で愛着も強く、親が亡くなった後の悲嘆も強い傾向にあります。
既婚者の場合は自身の親だけでなく、夫の親の介護ものしかかってくることになり、「自分の親なのに夫が全然協力してくれず私にすべて任せてくる」などの不満も聞かれます。
昔に比べると、女性の社会進出も進み、女性差別も減ってはきているようですが、まだまだ「女性ならではの悩み」というのは数多くありそうです。
(村上典子)
<高円寺南診療所の見解>
回答者の村上典子先生は、神戸赤十字病院心療内科部長を務める心療内科専門医です。専門分野は災害におけるメンタルケア、グリーフケアとのことですが、「女性ならではの悩み」の相談に対して女性の心療内科専門医は、とても貴重な存在だと思います。
村上先生が挙げられた例はとても具体的でわかり易いので、話の都合上、以下のように分類してみました。
タイプⅠ:女性特有の身体症状
タイプⅡ:夫や姑など家族関係に関する悩み
タイプⅢ:不妊、出産、育児など子供に関する悩み
タイプⅣ:学校・職場などの社会的ストレス
タイプⅤ:親の介護ストレス
この分類をもとに高円寺南診療所の現場をふり返ってみました。
タイプⅠ:
月経関連の症状のみならず、その延長としての閉経後の骨粗鬆症や関節リウマチ、変形性関節症、線維筋痛症をはじめとする慢性疼痛の相談が多いです。
これらの病気については、リウマチ専門医でもある心療内科専門医・指導医としてチーム医療を率いており、さらに水氣道などの独創的で時代の先端を行くアプローチで良好な成果を築きあげています。
タイプⅡ:
家族関係の悩みばかりでなく、ご家族が自分の病気のことを理解してくれない、あるいは誤解している、という悩みを多くお聴きしています。
さらには、有名ブランド病因志向の高いご家族がいらして、高円寺南診療所を信頼してくださらず、そのため診療継続に必要なご家族の協力が得られにくいという患者の皆様が、少なからずいらっしゃいます。これは、とても残念なことです。
しかし、そのような現実は、当然ながら患者の皆様の責任ではなく、私共の至らなさが原因です。ご家族からの信頼を得ることも治療効果を挙げるうえで無視できない重要因子です。
開院以来30年近くの間、様々な努力を続けて参りましたが、世間様に対するアピール力がまだまだ不足しているという現実を謙虚に受け止め、反省し、工夫と改善を続けるだけでなく、思い切った刷新をはからなくてはならない時期が近づいていることを認識し始めているところです。
タイプⅢ:
子供の不登校ばかりでなく、成績不振に悩む親御さんも増えて参りました。
お子様本人は、何ら困っていないのにもかかわらず、親御さんが一方的に子供の将来を憂いているケースを経験しています。多くの場合、お子様より、親御さんのサポートやケアが必要なのですが、それを認めたがらないのが、
こうしたケースの親御さんの特徴です。
特に、受験や進学など、大切なイベントが目前に迫っていることが多く、切羽詰まった段階で駆け込んでこられる方もありますが、自分の意に添わぬ子供を病人にしたてて無料で、手っ取り速く解決させたいとの本音が透けて見えることもあります。
こうした考え方や行動は、甚だしく筋違いで危険なものであることに早く気づいていただきたいものです。
タイプⅣ:
学校・職場などの社会的ストレスは、単なる悩みだけ終わらず、身体症状化したり、行動異常が生じたりすることがあります。
高円寺南診療所では毎日のように、このタイプの相談に応じています。
学校や職場へ提出する診断書や意見書の作成頻度も増えてきました。職場の産業医との連携がますます必要になってきているのを感じます。
さて高円寺南診療所は、高円寺南労働衛生コンサルタント事務所の所在地でもあります。国家資格である労働衛生コンサルタント資格をもつ医師は、終生の産業医であることが認められていますが、労働衛生問題の多くが事故やけがによる労災よりも過労死やストレス管理が中心になってきているため、労働衛生コンサルタント資格をもつ心療内科専門医は、重要な役割を発揮できる立場にあります。
高円寺南診療所が杉並国際クリニックと改称した後も、『高円寺南労働衛生コンサルタント事務所』はそのまま継続する予定です。
タイプⅤ:
親の介護中は気が張っているせいか、ご自分の体調や気分を忘れがちです。
親御さんの介護が一段落してから、病状が一気に増悪して心身共にボロボロになっている自分を発見する、というようなケースが増えているので、要注意です。
介護は、一旦はじめてしまうと思いのほか長く続くものです。中には予め、長期戦を想定して、支え手であるご自分自身の心身のメンテナンスの重要性に気づき、必要なサポートを取り付けることができる賢明な方もいらっしゃいます。
<支えられる側より支える側の健康管理がより重要>
<人を支える人を支えることこそが全体を支えること>
<人を支えている人や団体の邪魔しない行政の在り方を望むこと>
以上の3件は、高円寺南診療所から杉並国際クリニックに相続させるべき財産であると考えています。