最新の臨床医学:4月28日 <肝細胞癌>

肝癌は、国立がん研究センターの2016年報告によると、がん部位別罹患数第6位、死亡数5位の癌腫です。

 

罹患数は横ばいで、死亡数は減少傾向であり、わが国のがん診療への取り組みの成果の一つとされます。

 

しかし、肝癌は切除しても再発し易い癌腫であることが問題です。

 

 

原発性肝癌には、肝細胞癌(肝細胞由来)、肝内胆管癌(胆管細胞由来)などがあり、わが国では肝細胞癌が肝癌の90%を占めています。

 

わが国の肝癌の診断、治療には肝癌診療ガイドライン2017年版(日本肝臓学会)が重要です。

 

 

診断:

 

①腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ)

 

②画像診断(超音波検査、dynamicCT、Gd-EOB-DTPA造影MRI)

 

 

治療:「肝細胞癌治療アルゴリズム」

 

5因子(肝予備能、肝外転移、脈管侵襲、腫瘍数、腫瘍径)により設定され、肝予備能評価はChild-Pugh分類に基づいて行われます。

 

肝切除を考慮する場合はICG検査を含む肝障害度を用いた評価が推奨されます。

 

切除焼却は腫瘍径3cm以内、腫瘍数3個以下、脈管侵襲・肝転移がなく、肝予備能Child-Pugh分類A,Bを満たすことが条件ですが、腫瘍径が3cm超では、切除塞栓の適応です。

 

さらに腫瘍数が4個以上になると、塞栓、動注/分子標的薬、さらに脈管侵襲があれば、塞栓/切除/動注/分子標的薬、さらに肝転移があれば分子標的薬が適応になります。

 

これらに対して、肝予備能Child-Pugh分類Cでは、ミラノ基準内であれば移植、移植不能であれば緩和医療となります。

 

肝癌の外科療法の対象は、したがって、腫瘍数3個以内で、腫瘍径は問題としません。

 

また、放射線療法は骨転移、脳転移に対してのみ「強い推奨」です。

 

 

薬物療法は、分子標的薬ソラフェニブ(ネクサバール®)が、PS良好なChild-Pugh分類Aの症例に対し、推奨されています。

 

これを投与後に増悪した肝癌の二次治療として、レゴラフェニブ(スチバーガ®)が使用されます。

 

 

経過:肝切除後の再発率は年率10%以上で5年後には70~80%に達します。

 

治療後2~3年までは最低でも超高危険群に準じた厳密なサーベイランスを行い、その後は高危険群に準じたサーベイランスが必要です。