診察室から:8月21日(火)RSさんの希望(難病克服)のメッセージ③

RSさんのメッセージを3回(3週)にわたってご紹介いたします。

 

 

 

RS3

 

第3回:「継続は力なり」の巻

 

=苦手意識の克服⇒体力増強⇒気力向上⇒可能性の拡大=

 

RSさんは昨年の11月初旬に初診、11月下旬には順調に鍼治療も開始できたのにもかかわらず、表面的な初期の治療成績は芳しいものではありませんでした。

 

慢性疼痛の患者さんの中には、症状の季節変動があって、秋から年末にかけて悪化するタイプの人がいます。

 

それは、主に気温の低下が関係しているように思われます。

 

治療の初年度であれば適切な治療を行っても効果が現れにくい時期です。

 

逆に言えば、極寒の季節まで辛抱して治療を続けていければ、その後の長期的な回復が見込めることが多いです。

 

線維筋痛症では、J-FIQスコアを病気の活動性や治療効果の客観的指標として用います。

 

 

RSさんのスコアは以下の通りでした。

 

2017・11初旬 J-FIQ 56.7(疾患活動性:中等度)

 

2017・11下旬 鍼治療開始

 

2017・11下旬 J-FIQ 58.4(疾患活動性:中等度)

 

2017 12初旬J-FIQ 69.9(疾患活動性:中等度)

 

ちなみに、J-FIQ 70以上では線維筋痛症の疾患活動性は高度、と評価されます。

 

 

RSさんはご家庭の様々な事情もあり、必ずしも治療計画通りには通院できてはいないのですが、それでも諦めることなく信じて、一歩一歩前進を続けてきました。

 

そのような方の多くは、結果を急ぐあまりに「これだけ努力しているのに少しも良くならない」と悲観的に受け止めがちです。

 

しかし、RSさんは何と「驚きである。」との感想を記されています。現代人はややともすれば疑い深く、性急に結果を手に入れようとしがちですが、こうした態度は慢性的な病気の治療には、大抵の場合、逆効果です。

 

なぜなら、自然な完治のためには、気づき、驚き、そして感動が不可欠だからです。

 

 

「初めて水氣道に行ったのは2月半ばだった。」

 

RSさんが、水氣道を始めるまでの間は、さまざまな障壁がありました。

 

自分でその気の無い人に対して、いくら時間とエネルギーを費やして説得してもなかなか決断していただけないことがほとんどです。

 

その場合は、しかるべき時期が到来するのを祈って待つほかはありません。自己決定というのが、自然治癒には不可欠です。

 

 

「泳ぎは苦手、身体中は痛い、果たしてついていけるかな?と思ったが、まず、先輩方に優しく親切に接して頂き、安心した。」

 

水氣道は泳ぎではありません。しかし、プールでのトレーニングというと、多くの人は泳ぎと同一視してしまう傾向があります。

水氣道は、水泳とは異なり、水中での立位での律動的有酸素運動です。

 

泳ぎには得手不得手があったとしても、未だ経験したことが無い水氣道に最初から苦手意識をもつのはナンセンスです。

 

ただし、泳ぎの得手不得手以外に、身体運動そのものが痛みを伴うものであると決めつけてしまっている人にとっては、水氣道に限らずあらゆる身体活動が脅威であることは理解できます。

 

そういう方は、日常生活の中でも絶えず痛みを味わっているのですから無理もありません。

 

ただし、発想を変えて、身体活動がどのみち痛いものなのであれば、新しい方法でそれ以上に痛くならなければラッキーであるくらいに思えればしめたものです。

 

動いたら痛む、と思い込んだまま運動したら、サイドブレーキを引っ張りながら、アクセルを踏むようなことになってしまいます。

 

水の中では、身体のサイドブレーキが緩みます。

 

そのため、サイドブレーキが解除された人は、楽に、痛まずに体が動くことを体験して驚くのです。

 

RSさんは「水中では、思いのほか体が動かせてびっくりした。」

と述べていますが、彼女も無意識のうちに常に引っ張っていたサイドブレーキが、水氣道の稽古中に、いつの間にかブレーキが解除されていたことを経験できた一人なのです。

 

彼女は、体を動かすと痛いもの、という永年の固定観念に支配されていたため、体を楽に動かすことができたことが予想外でした。

 

期待していた以上の経験ができたのでびっくりしたのでしょう。その結果、「楽しかった。」という感想で、快癒へ向けてのスイッチが入りました。

 

快癒のスイッチが入るためには、いくつかの条件があるように思われます。

 

それを列記してみます。

 

1)あるがままの自分を受け入れ、あるがままの自分を開示することによって、治療者との信頼関係を築くための覚悟をもつ。

 

2)希望へと繋がる勇気を育んで治療を継続する。

 

3)自分が愛され意味ある存在であることを実際に体験し、それを楽しめるようになる。

 

そして、持続的な回復というものは、何らかのきっかけがあってスイッチが入ったとしても、劇的に治癒することはまずありません。

 

たとえ症状が劇的に改善しても、多くの場合、再発が避けられません。

 

再発しない確実な治癒のパターンは、ごく自然な流れで軽快していきます。

 

その自然な流れとは、まさに「薄皮が一枚一枚はがれていく様に少しずつ良くなってきている。」(第2回レポート)というような治療経過です。

 

持続的な回復といっても一直線ではありません。

 

実際には、日によっては、少し悪くなるような揺り戻しもあり、短期的には波動を伴いながらも、中長期的にみれば改善のトレンドが形成されていくのが普通です。

 

RSさんも水氣道による典型的な改善のトレンドをたどってきました。

 

① 「通うにつれてだんだん足の筋肉がついてくるのが実感できている。」

②「病院での治療と、水氣道のおかげで、体調が少しずつ良くなってきている。」

③「気力も前よりついてきた。(こうして文章が書ける!)

④「薬の副作用からも解放された。」

⑤「日常生活でできる事が少しずつ増えてきた。」

 

そして、最後に「(感謝!)」

 

思いもよらぬ達成感、それに伴う感動が感謝を生みます。

 

この感動を忘れないで、稽古を継続していけば、再発することなくなることでしょう。

 

いずれ、RSさんからは、後日譚のレポートがいただけることを、今から期待しております。

 

 

第1回:ポリファーマシーの巻(2018・8・7)

 

第2回:新療法を巡る葛藤の巻(2018・8・14)

 

第3回:「継続は力なり」の巻(2018・8・21)