最新の臨床医学 8月19日(日)心療内科についてのQ&A

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

日本心療内科学会のHPです

 

心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

そこでのQ&Aは、想定した事例です。

 

Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。

 

※「質問」をクリックすると表示されます。

 

と書かれています。

 

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。

 

そこで、「質問」「答え」の後に、

<高円寺南診療所の見解>

でコメントを加えることにしました。

 

 

 

「質問3」

発達障害を疑われている息子です。

 

知らない人に会うときや、初めての場所に行った後に、必ず身体が動かないと言って布団から出られなくなります。

 

本人は、理由がわからないと言います。

 

何かいい薬などはないでしょうか?

 

 

「答え」

息子さんの場合、体が動かない、布団から出られない状況は、新しい場面に対する緊張や不安によるものと考えられます。

 

ご本人は理由がわからないようですが、新しい場面では、人や場の状況を読み取り、見通しを立てて適切に行動する事が求められます。

 

新しい場面で当惑する事がどのようなことだったのか、家庭や学校や友人関係での変化、問題となる行動の引き金や、問題行動の増減などの心理社会的背景も含めた観察が必要です。

 

ところで慣れた場面ではうまく行動できているようです。

 

これまでの家庭や学校での生活で、息子さんなりに緊張や不安に対処できるようになって慣れてきたプロセスを振り返り、息子さんの安定に役立った対処法に加えて新たに必要な対処法を身につけることで緊張や不安は軽くなると考えられます。

 

発達障害のある子どものさまざまな問題についての基本的な対応は、薬物療法というより、理解あるかかわりと環境整備や生活指導が中心となります。

 

子どもの持つ能力を伸ばし、自分で問題に対処出来るようになるために、社会技能やコミュニケーション技能の訓練などの心理教育的なかかわりが重要です。

 

しかし攻撃性、多動性、執着、常同行動、強迫行為、不安やイライラやうつなどが認められ、家庭や学校での適応に問題がある場合、自己や他者に身体的危険が及ぶ可能性が高い場合、そして本人も辛い場合には、行動上の問題を抑制、緩和し、子どもの心を安定させるために副作用に注意しながら薬による治療を併用することがあります。

 

しかし子どもの状態によって薬物の種類や効き方は異なります。

 

また心理教育的な介入も子どもの状況に合わせて導入の時期や内容を考慮する必要があります。

 

小児を診ている心療内科では子どもさんの問題や症状を心身両面から理解して、身体症状に対する治療を始めとして、子どもさんやご家族と相談しながら適切な心理教育的な治療や薬物療法を進めて行きます。

 

一度受診されて、困ったことや問題点について十分に相談されることをお勧めします。

 

(荒木 登茂子)

 

 

 

<高円寺南診療所の見解> 発達障害?

 

未成年の発達障害の対応は一般の心療内科では難しいと思います。

 

荒木先生は<小児を診ている心療内科>と簡単に解説されておりますが、私の知る範囲では、心療内科の専門医で小児の発達障害を診ている医師はほとんど存在しません。

 

心療小児科医という専門領域は十分に確立していないどころか社会的にも認知されていません。

 

近くでは、西国分寺の東京都立小児総合医療センターに児童・思春期精神科が開設されています。

 

そちらのホームページを参考にしていただければと存じます

 

 

この専門領域は、どうしても臨床心理士をはじめとする心理専門職の協力が不可欠です。

 

荒木登茂子先生は、九州大学心療内科の臨床心理士です。

 

心理専門職としてのご経験からの適切な解説ではあります。

 

ただし、相談者は障害を疑われている児童本人ではなく、多くの場合彼らの両親であるということについての言及が欲しいところです。

 

保険診療をベースとする通常の心療内科専門医の診療構造の中での対応となると、児童本人よりも、保護者対応が極めて困難になることもあることが想定されます。

 

場合によっては、心療内科について重大な誤解が生じかねないということを付言しておきたいと思います。