最新の臨床医学 8月18日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては

一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHP

を検索してみました。

 

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

 

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

 

これに対して、慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられていると思います。

 

ただし、その記載は概ね一般的ではありますが、慶應義塾大学医学部漢方医学センター受診者を想定して書かれているようです。

 

そこで、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてご紹介を試みることにしました。

 

 

Q

西洋薬(新薬)と漢方薬は、どこが違うのですか?

 

A

西洋薬(新薬)は、人工的に化学合成された物質がほとんどで、その多くは一つの成分で構成され、強い薬理作用を示します。

 

一方漢方薬は原則として、二種類以上の天然の生薬で構成されています。

 

多くの成分を含んでいるため、一つの漢方薬で、いろいろな症状に対応することができます。

 

「例えば高血圧にはこの薬」というように、それぞれの症状に対して薬が対応する西洋医学と異なり、漢方薬の場合、体はひとつと考えて「この人にはこの薬」というように薬を選んで治療を進めます。

 

ですから時には同じ病気でも人により薬が異なったり、全く違う病気の人に対しても同じ薬が出ていたりします。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

慶應義塾大学病院漢方医学センター診療部の解説で、高血圧の薬を例に挙げています。

 

現在の高血圧診療は、西洋薬(新薬)の種類は豊富です。

 

合併症を有さない高血圧に対しては、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の4系統の薬剤のいずれかの系統の一剤が第一選択薬とされています。

 

ですから、「例えば高血圧にはこの薬」というほど大雑把な対応は過去の話です。

 

ただし、たしかに、西洋医学ではそれぞれの症状に対して、そのつど対応する薬を増やしていく傾向になりがちであるとはいえるでしょう。

 

また、漢方薬の場合、体はひとつと考えて「この人にはこの薬」というように薬を選んでいくと記述されていますが、まさにそのとおりです。

 

ただし、これも心療内科指導医・専門医の立場からいうならば、漢方薬は心身一如の薬だということを付け加えておきたいところです。

 

漢方薬は体の全身の調子を整えてくれるだけでなく、同時に心理や情緒状態をも整えてくれるものが少なくありません。体か心か、ではなく、体も心も、というのが真の漢方治療だと考えることができます。

 

その理由は、漢方医学は、近代ドイツで心身医学の基礎ができるずっと以前から、心身医学的な考え方を伝統的に発展させてきたからです。

 

漢方薬の場合

<同じ病気でも人により薬が異なったり>(同病異治)、

<全く違う病気の人に対しても同じ薬>(異病同治)は、

ごく日常的なことです。

 

ただし、これは漢方薬に限らず西洋薬(新薬)においてもしばしば行われることです。

 

ですから、漢方薬と西洋薬との使われ方の相違点をことさらに対立させるばかりではなく、西洋医学的な発想で漢方薬を用いたり、逆に漢方医学的な発想で西洋薬(新薬)を用いたりする工夫もしばしば必要になってきます。

 

中国では中西医結合といって、中医(中国伝統医学)と西医(西洋現代医学)を統合して診療する試みが続けられていますが、それぞれの医師は互いに異なる種類の免許を持った医師が担当します。

 

日本の医療が世界中の中でも特に優れている点の一つは、単一の医師免許で西洋薬も漢方薬も一枚の処方せんで同時に処方できることです。

 

一人の患者さんに対して2つのアプローチを同時に処理できる医学の素晴らしさに気づくことができた医師は幸いだと思われるし、何よりも患者さんのために大きな貢献ができることは大きな財産だと思います。

 

この偉大なるメリットを活用しない手はないと思うのですが、皆様はいかがお考えですか。