緊張型頭痛(抗うつ剤と水氣道のイキイキ体操が有効であった症例)

 

緊張型頭痛とは、片頭痛とともによくみられる一次性頭痛の代表です。これは頭の周りや首の後ろから肩、背中にかけての筋肉が緊張するために起こる頭痛です。 痛みは後頭部を中心に頭の両側や首筋にかけて起こり、「頭をバンドで締め付けられているよう」とか、「頭に大きな荷重がかかっているような感じ」などと表現されます。

 

緊張型頭痛に対する治療は、①急性期(頭痛発作時)の頓挫療法と、②発作間欠期も含めた予防療法に分けられます。

 

① の頓挫療法としては、鎮痛薬あるいは非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の頓用が行われます。ただし、これだけを続けていくと、鎮痛剤の使用方による頭痛である薬物依存性頭痛をもたらすおそれがあるため、①単独での対応はお勧めできません。そこで、

 

② の予防療法が意味をもってきます。予防療法には、薬物療法と非薬物療法とがあります。
杉並国際クリニック受診中の緊張型頭痛の患者さんに多いタイプは、すでに過労状態に陥っていて頭部ばかりではなく全身におよぶ慢性の筋緊張を伴い、本人も自覚していない程度の抑うつ傾向があり、入眠困難などの不眠症を伴うものです。

 

 

そのようなケースでは、まず、薬物療法をはじめます。三環系抗うつ薬であるトリプタノール®(アミトリプチリン)からはじめると奏功することが多いです。

この処方で、うつ傾向や不眠症が解消すると頭痛が軽減します。

 

筋緊張が持続する場合は、筋弛緩剤としてテルネリン®(チザニジン)の処方を加えると効果的です。

 

抗うつ薬から筋弛緩剤単独で症状が軽快するようであれば、漢方薬とビタミン剤の組み合わせに変更することが多いです。頭痛の漢方薬としては、五苓散、釣藤散が有効であり、虚弱で冷え性の方には、呉茱萸湯、さらにめまいを伴う場合には半夏白朮天麻湯が使いやすいです。

 

ビタミン剤としてはビタミンB群を併用すると、慢性的な疲労感が軽減し易いです。そして、薬物療法の治療評価には3カ月(最大6カ月)を目安に判断し、投薬の続行か中止あるいは変更などを考慮することが一般的です。

 

しかし、実際のところ3カ月も待ってくれるような患者さんはほとんどいません。そこで、大きな助けになるのが非薬物療法です。

 

 

非薬物療法としては、筋電図バイオフィードバック療法(推奨度A)、頭痛体操(推奨度B)があります。杉並国際クリニックで現在も実践中の水氣道®の準備体操であるイキイキ体操は頭痛体操のスキルも盛り込んでいるためか、筋緊張性頭痛には著効をしめします。

 

また、鍼灸療法と併用すると効果出現までの時間が短縮できます。

 

水氣道は陸上でのエクササイズとは異なり、水中で行うため様々な感覚を刺激し、フィードバックを容易にすること、集団で行うため、対人緊張に伴う緊張性頭痛の寛解・治癒にとても役に立ちます。

 

半年ほど定期的に継続参加することによって、抗うつ薬や筋弛緩剤を減らしたり、終了したりすることも難しくはありません。

 

 

緊張性頭痛の非薬物療法としては、水氣道®、鍼灸療法の他に自律訓練法もお勧めです。いずれも杉並国際クリニックにおいて経験と実績のある統合的メソッドです。

<はじめに>

 

 

前回は「難聴」についてお話しました。

 

 

「温溜(おんる)」は肘を直角に曲げたときにできるシワの中央と手首の親指 側にある骨との真ん中にあり、

 

 

「耳門(じもん)」は耳の穴の前にある突起(耳珠)のやや上にあるくぼみにあり、

 

 

「合谷(ごうこく)」は親指と人差し指の間にあります。

 

 

 

今回は「口内炎」についてお話しましょう。

 

 

<口内炎に効果のあるツボ>

 

2019-12-17 14-36

 

 

今回は「衝陽(しょうよう)」「太白(たいはく)」「女膝(じょしつ)」を紹介します。

 

 

「衝陽」は足の第二指と第三指の間で足の甲の出っ張りの真上にあります。

 

 

「太白」は足の親指の内側、骨が出っぱっているところの後ろにあります。

 

 

「女膝」は踵と足首の間のくぼみでアキレス腱のいちばん下にあります。

 

 

特に「女膝」は効果が高いツボです。熱さが伝わるまでお灸をするのが良いでしょう。

 

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

また昨年12月21日に、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)に対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブの単剤療法」が薬事承認されました。

 

膵がんにおけるMSI-Highの頻度は1~2%と低いものの、ペムブロリズマブの高い奏効率が期待できることから、同ガイドラインでも切除不能膵がんに対する二次化学療法の選択肢として「MSI-Highであればペムブロリズマブ単剤療法を提案」が加わりました。
 

 

さらに化学療法の継続期間については、局所進行例および遠隔転移例とも「投与継続困難な有害事象の発現または病態が明らかに進行するまで」の投与が"提案"されました(LC3、MC3)。
 

 

次回のガイドライン改訂に向けた課題として、がん遺伝子検査の適切な方法とタイミング、その結果に基づいた治療選択の明記が挙げられ、「切除不能膵がんの予後は、今なお不良のままです。

 

関連学会と連携し、理解を深め、ゲノム医療という新しい枠組みの中で診断~治療を定義することが重要である」ことが強調されています。
 

 

ただし、これらの臨床試験における治療成績は、全身状態の良好な限られた患者が対象となるため、実臨床での成績より良好な傾向があります。個々の患者の全身状態や合併症などにより、予後は大きく変わることを考えておく必要があります。

二次化学療法:局所進行、遠隔転移で同一ステートメント

 

前述したように、局所進行例(ステージⅢ)および遠隔転移例(ステージⅣ)の両者に対し、一次療法不応後の二次化学療法の施行が推奨され、レジメンのステートメントも同一としています(表4)。

 

4.切除不能膵がんに対する二次化学療法

表4

 

(表1~4とも『膵癌診療ガイドライン 2019年版』を基に編集部作成)


 

GEM関連レジメン後のフルオロウラシル関連レジメンとして、フルオロウラシル+フォリン酸(FF療法)+ナノリポソーム型イリノテカン(MM-398)併用療法が含まれています。

 

その根拠となったのが、GEMベースの一次治療を受けた転移を有する膵がん患者を対象に行われたオープンラベル国際第Ⅲ相ランダム化比較試験の成績です。

 

同試験では、MM-398単独療法、FF療法、MM-398+FF併用療法の3群で有効性を比較しました。全生存期間(OS)中央値において、FF療法群の4.2カ月に対し、MM-398+FF併用療法群では6.1カ月と有意な延長が認められました〔ハザード比(HR)0.67、95%CI 0.49~0.92、P=0.012〕。
 

 

このような複雑な医学研究の議論を傍観していると、少しでも早く膵がんの発見ができないものかと考えてしまいます。

 

そこで、膵がんの危険因子を調べてみたのですが、膵がんの家族歴、慢性膵炎、糖尿病および肥満などがリストアップされます。

 

これらに該当する患者さんに対して、造影CT検査を実施することは現実的ではないにしても、腹部超音波検査を入念に行うことは有意義であると考えます。

遠隔転移の一次化療:2レジメン推奨、3レジメン提案
 

膵がんの確定診断後、病期診断を行いますが、まず切除可能か否か、切除不能であれば、遠隔転移があるかどうかで病期が決定します。

 

遠隔転移を有する膵がん(ステージⅣ)の一次化学療法としては、抗癌化学療法のみで、抗癌化学放射線療法の選択肢はありません。

 

FOLFIRINOX療法およびGEM+nab-PTX併用療法の2レジメンを"推奨"、GEM単独療法、S-1単独療法、GEM+エルロチニブ併用療法の3レジメンを"提案"としました(表3)。

 

表3.遠隔転移膵がんに対する一次化学療法

表

 

明日への提言では、「患者年齢や腫瘍のバイオマーカーなど客観的な患者情報に基づいて、最も益と害のバランスの取れた治療法を推奨」することを課題としました。

 

また、GEM+nab-PTX併用療法およびFOLFIRINOX療法(modified FOLFIRINOX療法を含む)について、「どちらを優先するべきか」が不明であり、「現在、わが国で比較試験が実施されている」ことも記載されました。ちなみに、この「比較試験」に該当するのがJCOG1611 です。

 

同試験では、遠隔転移を有するまたは再発膵がん患者を対象に、GEM+nab-PTX併用療法、modified FOLFIRINOX療法、S-1+イリノテカン+オキサリプラチン併用療法(S-IROX療法)の有効性と優越性が検証されます。

 

ただし、FOLFIRINOX療法は、日本人の第Ⅱ相試験において、骨髄抑制が強く、特に発熱性好中球減少症が22.2%と高率に発現しました。また、悪心・嘔吐などの消化器毒性、四肢のしびれなどの末梢神経障害など副作用も強いです。

 

そのため、フルオロウラシル急速静脈注射を削除し、イリノテカンを減量した第Ⅱ相試験を行ったところ、発熱性好中球減少症が8.7%と低下し、奏効割合や生存期間の有効性もほぼ同様であるため、そのレジメンを代替法として用いる選択肢があります。
 

このように、平均余命が1年に満たない切除不能膵がんの患者さんに、これほどの激しい副作用で苦しめる治療法しか選択肢がない、という現実と向き合っていくことは、甚だ辛く切ないことです。

 

局所進行の一次化療法:4レジメン提案
 
 

膵がんの予後として、2012年の日本膵臓学会の全国集計による国際対がん連合(UICC)ステージ別の生存期間が報告されています。
 

生存期間中央値はそれぞれ、

ステージⅠa, Ib:100~120カ月

ステージⅡa,Ⅱb:15~24カ月

ステージⅢ(局所進行切除不能):9.3カ月

ステージⅣ(遠隔転移):5.3カ月
 

 

また、5年生存率はそれぞれ、

ステージⅠa, Ib:60~68%

ステージⅡa,Ⅱb:13.3~30.2%

ステージⅢ(局所進行切除不能):4.7%

ステージⅣ(遠隔転移):2.7%
 

 

切除不能膵がんの予後が極めて不良であることがわかります。

膵がんの診断を受け、切除不能とされた段階で、平均余命は1年にも満たないという事実は、とてもショッキングなはずです。

 

今回、局所進行切除不能膵がんに対する一次化学療法として、GEM単独療法、S-1単独療法、FOLFIRINOX療法、GEM+nab-PTX併用療法(表2)の4レジメンが"提案"されました。

GEM+エルロチニブ併用療法が推奨から除外されました。

 

その理由は、海外で行われた局所進行膵がんに対する第Ⅲ相試験LA-07の結果、GEM単独療法よりむしろ成績が劣っていたためです。

 


表2.切除不能局所進行膵がんに対する一次化学療法

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このCQに対する"明日への提言"では、「PSなどの全身状態が良好であれば、FOLFIRINOX療法やGEM(ゲムシタビン)+nab-PTX(ナブパクリタキセル)併用(GnP)療法が優先的に選択されているのが現状」と記載しており、今後は「どのような患者にどの治療を選択すべきかを明らかにしていく必要がある」とされた。
 

現在、この提言に呼応する形で、局所進行膵がん患者を対象にmodified FOLFIRINOX療法とGEM+nab-PTX併用療法の有効性および安全性を検討する第Ⅱ相ランダム化比較試験JCOG1407が進行中です。

この試験の研究代表者は「将来的には化学放射線療法も加え、より有望な治療法の検討を行っていきたい」と述べています。


つまり、現在の医学水準では、切除不能膵がんに対しての治療は決して満足のいく結果が得られていないということになります。

今月のテーマ/切除不能膵がんへの化学療法

 

膵癌診療ガイドラインが3年ぶりに改訂

 

膵がんは膵臓から発生した悪性腫瘍です。膵管上皮から発生する浸潤性膵管癌(腺癌)が、その90%を占めます。

 

我が国における膵がんの年間罹患数は2013年で3万4,837人、年間死亡数は2016年で3万3,475人であり、罹患数と死亡数がほぼ同数です。

 

膵臓の厚さは2㎝程度なので、小膵がんとされる最大径2㎝以内の膵がんであっても、膵外組織に容易に浸潤してしまっている可能性があります。ですから、小膵がんであってもすでに進行がんである可能性があります。

 

切除可能な膵がんでは約3:1の割合で頭部に多いのですが、実際に膵がんの発生部位は頭部より体尾部に多いため、超音波検査で検出して早期発見することも容易ではありません。

 

一般的に膵がんでは膵管閉塞所見および尾側膵管の拡張がみられます。通常型膵管癌は乏血性(血流に乏しい)であるため造影CT検査で低吸収域となることは知られていますが、積極的に早期に検査を実施するための条件が整うことは期待できません。

 

 

以上の背景もあり、膵がんの多くは切除不能(切除不能膵がん)で診断され、切除可能例は20~30%にすぎません。切除例と非切除例を含めた5年生存率は10%未満であり、悪性腫瘍の中でもきわめて予後不良の疾患です。

 

 

2019年7月に『膵癌診療ガイドライン 2019年版』(日本膵臓学会編)が第50回日本膵臓学会の開催に合わせて3年ぶりに改訂されました。

 

第50回同学会の特別企画「膵癌診療ガイドライン2019-膵癌診療の進歩と明日への提言」では、特に改訂点が多かった化学療法の領域に関して、最近数年のエビデンスが色濃く反映された一次化学療法を中心に各クリニカルクエスチョン<臨床質問>(CQ)とステートメント<回答>について解説されました。

 

切除不能膵がん局所進行(臨床ステージⅢ)遠隔転移(臨床ステージⅣ)に分類します。

 

ステージⅢは、おもに病変が主要血管(腹腔動脈幹もしくは上腸間膜動脈)へ浸潤している場合です。化学放射線療法または化学療法が一次治療となります。

 

化学放射線療法は2年以上の長期生存率が高い傾向にあり、さらに放射線治療による局所制御や疼痛緩和の効果が期待できますが、治療が煩雑で、胃・十二指腸からの消化管出血のリスクがあるなどの不利益もあります。

 

 

ステージⅣは、遠隔転移例であり、化学療法が一次治療となります。『膵癌診療ガイドライン 2019年版』の化学療法のCQも両者を分けて設定しています。一次化学療法(LC1とMC1)では両者は個別に設定されました(表1)。

 

表1

 

 

では、なぜ一次化学療法で局所進行(LC1)と遠隔転移(MC1)のステートメントが個別に設定されたのでしょうか。

 

その理由はエビデンスの差にあります。

 

切除不能膵がんの一次化学療法の有効性について、2007年にゲムシタビン(GEM)単独療法とGEM+エルロチニブ併用療法を比較した第Ⅲ相試験、2013年にはGEM単独療法、S-1単独療法、およびGEM+S-1併用療法を比較したGEST試験の成績が報告されたが、ともに「局所進行例と遠隔転移例」を評価対象としていました。

 

その一方で、2011年にはFOLFIRINOX療法(オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウムの4剤併用療法)、2013年にはGEM+ナブパクリタキセル(nab-PTX)併用療法の有効性が示されましたが、それらの評価対象はいずれも「遠隔転移例のみ」でした。

 

以上のように、膵がん治療において、評価対象の違いから、局所進行(LC1)と遠隔転移(MC1)の一次化学療法ではエビデンスに乖離が生じています。

 

最近の臨床試験の結果では、GEMベースの化学療法と化学放射線療法の生存率に差はなかったとされています。

<はじめに>

 

前回は「頭痛」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「列缺(れっけつ)」は手首の後ろの高い骨のそばにあります。

 

 

「陽陵泉(ようりょうせん)」は膝の外側下にある骨の出っ張りのすぐ下の凹んだところにあります。

 

 

今回は「難聴」に効果のあるツボを紹介します。

 

 

<難聴に効果のあるツボ>

2019-12-10 15-04

2019-06-06 00-15

 

 

今回は「温溜(おんる)」「耳門(じもん)」「合谷(ごうこく)」を紹介します。

 

 

「温溜」は肘を直角に曲げたときにできるシワの中央と手首の親指側にある 骨との真ん中にあります。

 

 

「耳門」は耳の穴の前にある突起(耳珠)のやや上にあるくぼみに位置します。

 

 

「合谷」は親指と人差し指の間にあります。

 

 

 

特に「耳門」を指圧してみてください。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

ニューモシスティス肺炎

 

30代男性。1週間程前から37℃台の発熱で発症。その後に体温は38℃を超え、咳もひどくなったため感冒薬の処方を希望しての初診となりました。

 

問診によると、咳には痰が混じらない咳(乾性咳嗽)でした。これは、間質性肺炎を疑うべき症状の一つです。

 

身長175㎝、体重53㎏、BMI17.3体温38.9℃、血圧102/64㎜Hg、脈拍104/分・整呼吸数28/分。低栄養と発熱に伴う頻脈および頻呼吸を考えましたが、結膜に軽度貧血を認めました。咽頭発赤や頸部リンパ節を蝕知せず、上気道炎(かぜ)の所見は得られませんでした。

 

また、胸部で心雑音・肺副雑音は聴取せず、気管支炎・肺炎あるいは明らかな心疾患を疑わせる所見もありませんでした。ただし、腹部で脾臓を2横指蝕知しました。四肢・皮膚・神経系にも異常は見られませんでした。

 

発熱、貧血、脾腫の所見を認めたため血液検査と胸部エックス線検査を実施しました。

 

直ちに胸部エックス線写真を確認すると、一見正常に見え、特別な異常所見は認められませんでした。

 

しかし、乾性咳嗽という症状が続く限り、間質性肺炎の可能性は完全に否定できません。たとえば、間質性肺炎の中でもニューモシスチス肺炎という疾患では、胸部エックス線検査では正常像を呈しても、より感度の高い胸部CTやガリウムシンチグラフィーで診断がつくことがあるからです。

 

そこで、以上のことを説明した上で紹介先の病院で精密検査をすることを提案しました。

 

すると、後日になって患者さんから重要な医療情報の提供がありました。すでに1年前にニューモシスチス肺炎を発症し、エイズと診断されていたそうです。

 

ST合剤などいろいろな治療を行ったが、いずれも副作用があるため、月1回のペンタミジン吸入で予防中とのことでした。エイズの治療も開始していて安定しているという説明を担当医から受けていたそうです。

 

ペンタミジン吸入によるニューモシスチス肺炎の予防は有効ではありますが効果はやや不良であるとされています。

 

そして、ペンタミジン吸入中に発症したニューモシスチス肺炎は、典型的な画像所見が得られにくく、今回の胸部エックス線で検出できなかった要因の一つであると考えました。

 

その後、エイズ治療で通院中の病院に入院し、胸部CTやガリウムシンチグラフィーに加えて、呼吸器由来検体から病原体を特定したところニューモシスチス・ジロヴェチであることが判明しました。

 

この病原体は空気感染により伝播が起こるので、免疫不全の患者とは隔離する必要があります。

 

エイズの患者さんの日常診療では標準予防策で十分ですが、採血をする場合には、手袋を着用する必要があります。

 

今回は、患者さんからエイズである旨の告知を受けていなかったため、手袋なしで採血しましたが、針刺し事故などは起こらず幸運でした。

 

医師の側から免疫不全を疑っても、いきなり「あなたはエイズにかかっている可能性はありませんか?」とまでは質問することは不可能です。

 

エイズ患者に対する偏見は避けるべきではありますが、新しい医療機関を受診する際にはきちんと告知する勇気を持っていただきたいと思いました。

 

以上をまとめますと、エイズに合併しやすいニューモシスティス肺炎の予防のためペンタミジン吸入継続中であったエイズ(HIV)感染者に発熱、咳嗽が出現し、肺炎を発症した症例でした。

 

ペンタゾシン吸入によるニューモシスティス肺炎の予防は不十分であったことになります。なお、患者さんからの報告によるとCD4陽性Tリンパ球数は300/μL未満で、極度の細胞性免疫不全の状態でした。

 

侵襲性肺アスペルギルス症

 

60代女性。1カ月以上も前から食欲不振と歩行時のふらつき感が続いているとのことで近所の整形外科を受診しました。その後、起立困難となり他の整形外科を受診し、貧血を指摘されたため、漢方薬による治療を目的として当院の受診となりました。

 

身長158㎝、体重59㎏、BMI23.6、血圧98/52㎜Hg、体温38.4℃。眼瞼結膜は貧血著明。しかし、眼球結膜の黄染なし、表在リンパ節蝕知せず、心音・呼吸音に異常なし、肝脾腫なし、神経学的所見にも異常はありませんでした。

 

そこで、血液検査と胸部エックス線検査を実施しました。胸部エックス線写真では明かな異常を認めませんでした。

 

後日、血液検査の結果から、白血球数12,000/μL(芽球75%、好中球数600/μL)、血中ヘモグロビン6.1g/dL、血小板2.2×10⁴/μLでした。生化学所見ではAST289IU/L、ALT118IU/L、LDH3,450IU/Lと増加していました。CRPは陰性でした。

 

そこで急性白血病を疑い、漢方薬治療よりも精密検査が優先されるべきであり、そのため紹介状を書くことを提案したところ、急に憮然とした態度となり、診療費も支払わず、不機嫌な態度で出て行かれました。

 

この方は、約1か月後、緊急搬送先で即日入院となり、赤血球と血小板の輸血を受けました。担当医は、たまたま私の知り合いの医師でした。学会で顔を合わせた時に、その医師から相談と報告を受けました。

 

骨髄穿刺などによる検査により、診断は急性骨髄性白血病とのことでした。入院時の発熱に対する抗菌剤投与で解熱傾向がみられたため急性白血病に対する寛解導入療法を開始すると平熱になったが、好中球数が0になる一方で、抗菌剤を続けても38℃以上の発熱が続くなどのトラブル続きであったとのことでした。

 

急性白血病患者では、基礎疾患そのものに加えて強力な抗癌化学療法により顕著な好中球減少症をもたらされますが、0というのは驚きです。

 

抗菌薬によっていったん解熱した後に再び発熱する場合には、薬剤による副作用の可能性よりも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの抗菌薬耐性の細菌感染症かアスペルギルス症かカンジダ症などの真菌感染症を疑います。

 

急性骨髄性白血病のこの患者さんは、好中球は減少したままで、依然として抗菌薬が効かないためパニック状態に陥っていました。しかし、再度の胸部エックス線で肺浸潤を認めました。そこで、喀痰培養検査が実施できれば良いのですが、好中球が0であるため、喀痰は採取できずに困ったそうです。

 

そこで、実施したのが血清診断です。真菌感染症を疑うことによって、血中β-D-グルカンや血中アスペルギルス・ガラクトマンナン抗原の測定により、アスペルギルス感染症であることが判明しました。同時に実施した胸部CT検査の結果からは、侵襲性肺アスペルギルス症の診断がつきました。

 

ようやく、ボリコナゾールという特効薬(抗真菌剤の一つ)を開始して解熱傾向が得られたが、血小板輸血不応のため脳出血を起こし、入院後1カ月足らずで死亡されたとのことでした。ご冥福をお祈り申し上げます。