12月18日 切除不能膵がんへの化学療法No3

遠隔転移の一次化療:2レジメン推奨、3レジメン提案
 

膵がんの確定診断後、病期診断を行いますが、まず切除可能か否か、切除不能であれば、遠隔転移があるかどうかで病期が決定します。

 

遠隔転移を有する膵がん(ステージⅣ)の一次化学療法としては、抗癌化学療法のみで、抗癌化学放射線療法の選択肢はありません。

 

FOLFIRINOX療法およびGEM+nab-PTX併用療法の2レジメンを"推奨"、GEM単独療法、S-1単独療法、GEM+エルロチニブ併用療法の3レジメンを"提案"としました(表3)。

 

表3.遠隔転移膵がんに対する一次化学療法

表

 

明日への提言では、「患者年齢や腫瘍のバイオマーカーなど客観的な患者情報に基づいて、最も益と害のバランスの取れた治療法を推奨」することを課題としました。

 

また、GEM+nab-PTX併用療法およびFOLFIRINOX療法(modified FOLFIRINOX療法を含む)について、「どちらを優先するべきか」が不明であり、「現在、わが国で比較試験が実施されている」ことも記載されました。ちなみに、この「比較試験」に該当するのがJCOG1611 です。

 

同試験では、遠隔転移を有するまたは再発膵がん患者を対象に、GEM+nab-PTX併用療法、modified FOLFIRINOX療法、S-1+イリノテカン+オキサリプラチン併用療法(S-IROX療法)の有効性と優越性が検証されます。

 

ただし、FOLFIRINOX療法は、日本人の第Ⅱ相試験において、骨髄抑制が強く、特に発熱性好中球減少症が22.2%と高率に発現しました。また、悪心・嘔吐などの消化器毒性、四肢のしびれなどの末梢神経障害など副作用も強いです。

 

そのため、フルオロウラシル急速静脈注射を削除し、イリノテカンを減量した第Ⅱ相試験を行ったところ、発熱性好中球減少症が8.7%と低下し、奏効割合や生存期間の有効性もほぼ同様であるため、そのレジメンを代替法として用いる選択肢があります。
 

このように、平均余命が1年に満たない切除不能膵がんの患者さんに、これほどの激しい副作用で苦しめる治療法しか選択肢がない、という現実と向き合っていくことは、甚だ辛く切ないことです。