水気道体験生のためのご案内

 

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序章 ようこそ、水気道へ

 

水気道体験は、単なる体験教室ではなく、「静・動・流」の原理を身体で感じ取り、
次の段階である訓練課程へと進むための第一歩です。この「ご案内」は、そのための「安全と呼吸法の入門ガイド」です。

 

水気道は、生命の安全と調和を根本原理とし、「水・呼吸・動作・心」の一体化を通して心身の恒常性を回復する動的心身統一術です。2000年の創始以来、水気道は四半世紀にわたり、心身医学・リハビリテーション・芸術療法の分野と共鳴しつつ発展してきました。

 

その哲学的基盤は「静・動・流」の三態による安全性の原理(Principium Fundamentale)であり、ここからすべての稽古法と教育体系が派生し、実践を続けています。

 

 

水気道の非競技性と教育的目的

 

水気道は、競技スポーツではありません。その目的は、他者との優劣を競うことではなく、自らの身体と心を調和させることにあるからです。したがって、特定の体力や技能を極端に伸ばすことを直接の目標とはしていません。むしろ、定期的に実施されるフィットネスチェックや医学的評価の結果を総合的に活用し、個々人のウィークポイント(弱点)を明確にして、それを補強するアプローチを採用しています。

 

この方法によって、最小限の努力で最大限の効果を引き出すことができます。
水気道の稽古は、過剰な鍛錬を求めず、心身の全体的な平衡を回復することを目指す共同体の活動です。その過程で、仲間との関係性における創造的な調和が育まれ、生産的なリーダーシップやマネジメントのスキルが自然に身についていきます。

 

すなわち、水気道は「勝つための道」ではなく、「共に生き、共に育つための道」なのです。

 

 

第1章 水気道とは何か

 

水気道は、水中において心身を整える行法であり、泳ぐためではなく「整えるため」に行います。基本理念は「水中で整え、陸上で支える」です。
水の浮力と抵抗を用い、呼吸と動作を調和させながら、身体機能と精神安定を総合的に回復させることを目的としています。
水気道の稽古は、個と場、静と動、内と外をつなぐ統合性の原則の実践です。

 

個人運動と集団運動の限界、そして水気道の段階的調和体系

 

水気道は、個の努力を越えて、集団がひとつの生命体として呼吸し、互いのリズムを共鳴させることによって成り立ちます。この共同体的ダイナミクスこそが、教育・医療・芸術の各側面を結びつける全人的修養の場である。一般に、個人的エクササイズには生涯エクササイズとしての限界があります。それは、自らの感覚や意識の枠内で完結しやすく、身体・心理・社会的次元における全人的な健康を育むには不十分であるからです。他者との相互作用を欠く運動は、自己満足的・機械的反復に陥り、長期的には動機づけや持続性を失いやすいです。

 

一方、団体エクササイズであっても、段級制のような有機的な成長構造を欠く場合、
参加者は集団の中で受動的存在となりやすく、その結果、身体的充実や精神的高揚を一時的に得ても、教育的深化や人格的成熟にまで至ることは少ないです。水気道の共同体エクササイズの体系は、身体のみならず、心と社会の調和を育む共同体エクササイズの実践なのです。

 

さらに、段級制を導入しても、それが競技化・序列化すれば、水気道が目指す健康の本質的要素――調和・平衡・共鳴――は失われてしまいます。競争意識が高まるほど、心身は緊張し、呼吸は浅くなり、生命の自然なリズムが損なわれてしまうからです。

 

水気道は、これらすべての限界を超えるために設計された体系です。段級制は「優劣を示す等級」ではなく、「成長を可視化する有機的構造」であり、体験生・訓練生・修錬生・支援員・指導員・監督指導者といった各段階は、競い合う関係ではなく、互いに補い合う生命の螺旋として結ばれています。

 

水気道の段級制は、競技化を防ぎながら、教育・医療・芸術を統合する実践的枠組みであり、個と集団の双方が調和的に成長するための有機的教育体系(organic hierarchy of harmony)なのです。

 

 

第2章 稽古の構造(体験クラス:約45分)

 

水気道の稽古は、根本原理に基づき「静 → 動 → 流」の順に展開されます。
以下の流れは、体験生が安全性・意識性・統合性の三段階を実感できるよう構成されています。

 

1-2

 

この構成は、意識→成長→教育の循環的構造に対応しており、水気道の哲学を体験的に理解する導入課程となります。

 

 

 

第4章 安全性の原理(根本原理)

 

安全性の実践

 

安全はすべてに優先します。訓練生は常に安全を第一に考え、場全体の安定を守る自覚と責任を負うことになります。
水の流れ、周囲の人、そして自分自身の呼吸と動作の調和を感じ取り、安心して稽古できる環境を創ることが訓練生の大切な役割です。

 

  • 自他の距離感に注意し、動作を急がず穏やかに行いましょう。
  • 水中での声かけや動作のリズムを整えることを心掛けることによって、体験生が安心できる雰囲気をつくっていきましょう。
  • 安全は静止ではなく、「動きながらの安定」であることを理解し、常に軸と呼吸を意識することがより高度な実践的安全の確保になります。

 

安全性は、水気道におけるすべての修練の基盤です。
体験生は、まず静的安全 → 動的安全 → 流動的安全の三段階を通じて、安定を内面化していきます。

 

  1. 静的安全の原理

呼吸と重心を整え、静止の中に安定を見出す段階。外的支援による受動的安全を学びます。体験生の期間中は以下の禁忌が守られなければなりません。
禁忌三原則:跳ばず・反らさず・捻らず。

 

  1. 動的安全の原理

浮力と抵抗を利用して、動作中に安定を維持。過負荷準則に基づき、負担を漸進的に調整します。

 

  1. 流動的安全の原理

水流と呼吸の変化に即応し、環境との調和を保つ。共鳴呼吸によって安全を「生きた力」として体得します。

 

 

第5章 稽古に必要なもの(統合性の実践)

 

  • 動きやすい保温性水着
  • 白色スイムキャップ(統一性の象徴)
  • 水分(スポーツドリンクは不可)
  • タオル・バスローブ(可逆性の確保)
  • 歩行用シューズ(アクセス=稽古の一部)

 

これらの準備は「心身統一の準則」に対応し、稽古全体を連続した流れとして支えます。

 

 

第6章 水気道の効果(五大原則の体現)

 

2-2

 

これらはすべて、最終的に「音楽性の原則(Principle of Musicality)」に収斂します。呼吸・動作・心拍・水流のリズムが共鳴し、生命の交響が生まれます。

 

 

終章 あなたの第一歩

 

水はあなたを映す鏡であり、心の状態をそのまま返してきます。
水気道の稽古は、他者との競争ではなく、自己との対話です。
「静・動・流」の三相を通じて、あなた自身の本来のリズムを取り戻し、
心身の調和を生きる道を歩み始めましょう。

 

なお、水気道の修練は、静を養う「養生法」、動を鍛える「鍛錬法」、そして両者を調和させる「養生鍛錬法」の三法から成り立ちます。体験生の稽古はその第一歩として、この三法の原理を自然に体得する導入課程にあたります。

 

水気道の体験を終えた方には、より深く学びたい意欲に応じて「訓練課程」への道が開かれています。訓練課程では、体験で得た静的安全を、動きの中で磨き、
まずは、呼吸と意識の一致を実践する「動的安定」の学びが始まります。

 

水気道理論体系

 

水気道理論体系PDF

 

本稿は、水気道理論体系を「基礎体系篇」と「統合体系篇」の二部構成として再編し、理論から哲理への連続性を明確にするとともに、「学・技・芸」を統合する方術がもたらす「楽」による生命の道としての完成を示すものである。

 

序文 本書の位置づけと使用法について


本書『水気道体系』は、入門者のための手引きではない。ここに述べられる内容は、個々の技法や稽古法を示すものではなく、水気道の根幹をなす思想と構造を体系的に示したものである。したがって、読者には一定の実践経験、あるいは指導的立場にあることを前提としている。


水気道は単なる運動法ではなく、心身と環境、生命と意識の統合を目指す行法である。本書が扱う「静・動・流」「二相統合」「三法五元」などの諸概念は、稽古場での体験を通じて初めて真に理解される。ゆえに、ここに記された理論を直接理解してからただちに実践へ適用しようとすることは推奨しない。

 

理論は、実践によって照らされ、実践は理論によって深化する。その相互往還の中にこそ、水気道の真の理解が育まれる。


読者は本書を、体験と省察のあいだに架けられた橋として活用していただきたい。


稽古の中で生じる疑問や直感、あるいは心身の変化を見つめ直す際に、ここに記された理論的枠組みが「なぜそう感じたのか」「何が変化しつつあるのか」を示す地図となるであろう。


本書は、水気道全体の体系を見渡すための“航海図”であり、個々の段階書――体験生、訓練生、修錬生、支援員、指導員、監督指導者――を理解するための根本座標である。実践者は、ここに記された理念を道しるべとして、それぞれの段階書と照らし合わせながら、自身の稽古と精神を深めていっていただきたい。


そこで、一定の実践経験に達していない、すなわち指導的立場に至っていない稽古者のための道標を以下の序章で描写しておきたい。

 

序章 気を得た後に水に立ち戻る道

 

人は、母の胎内で最初の呼吸を学ぶ。


水に包まれた静寂のなかで、鼓動と共に生命のリズムが刻まれはじめる。


水気道とは、その原初の記憶へ還る道である。


無重力に近い感覚の中に身を委ねていた胎生期の記憶は、意識の精神世界にまでは浮上せずとも、無意識の身体世界に深く沈潜し、それを再び覚醒させる。


現代の生活は、常に「外」に向かっている。


速さを競い、声を張り、結果を求めるうちに、呼吸は浅くなり、心は自らの音を聴き取ることを忘れてしまった。


水気道は、その忘れられた内なる響きを取り戻すための行法である。


水の中では、重力がやわらぎ、身体は自らの輪郭を曖昧にしながら、世界とひとつになる。


この無重力の感覚の中で、人は「静」を知り、流れに身を委ねるとき、「動」と「流」がひとつに融け合う。


それは、意識と身体が再び調和を取り戻す瞬間である。

 

水気道の稽古。


それは自然体の起立二足歩行を基本とし、強迫的な「泳ぎ(水泳)」ではない。


呼吸を聴き、流れを感じ、動作を整える。


そこに競争はなく、紛争もなく、ただ自分自身との対話がある。


自分自身との対話は水気を共有する共同体という環境において支えられ、また自分自身も水気とともに共同体という環境を構成することになる。


「静・動・流」の三相の実相は、外的な技法ではなく、生命そのものが持つ律動の姿である。


静は内観を育て、動は生を躍動させ、流は両者を結ぶ。


それらは「安全」と「調和」を軸に、心身を再び生命の中心へと導く。


やがて陸と水は一つの世界として結ばれる。


水中で整えられた呼吸と姿勢が、陸上での在り方へと還元される。
この往還が「二相統合」の学びであり、その連鎖が「養生・鍛錬・養生鍛錬」――三法の根となる。


水気道は、身体技法であると同時に、生き方の哲学である。


それは、自然の摂理に従いながら、個と全体の調和を体得し、再び「心・意・気が整った原初の身体」へと還る道。


この体系は、その全体像を描き出す試みであり、自然治癒を促す方術である。


それは、水という無限の鏡を通して、生命の真理を見つめ直すための案内である。

 


第Ⅰ部 基礎体系篇:安全・意識・成長の楽理


第1章 根本原理(安全性の原理)


水気道の出発点となる「静・動・流」の安全原理を提示し、心身と環境の調和による生命の安定を探究する。


水気道の全体系は、生命の維持と調和を目的とした安全性の原理に基づく。


静・動・流の三態によって、心身と環境の均衡を保ち、「生きた安定」としての安全を体得する。


この原理は全体系の学理的・倫理的出発点である。これは単なる危険回避を超え、心身と環境の動的均衡を保ちながら稽古を成立させるための基盤となる。

 


1. 静的安全の原理:

姿勢・重心・呼吸の安定を確保し、静止状態での安定性を保証する。稽古開始前の心身の整え、呼吸統制に適用される。


2. 動的安全の原理:

動作中の転倒防止、負荷制御、筋緊張の調整を行う。水圧と浮力の相互作用を利用し、運動時の安定性を高める。


3. 流動的安全の原理:
水流や浮力の変化に柔軟に対応し、環境と調和して安定を保つ。水との共生を通じて安全を「生きた力」として身につける。


根本原理は、「静・動・流」の三態によって水気道全体系の基礎を支える「安全の哲学」である。

 


【安全創造SOP ― 安身・安心・安定の三原理】

安全性は「守る」ものではなく、「生み出す」ものと定義する。水気道の安全創造は以下の三位一体構造によって支えられる。


1. 安身(身体的安全):
 間隔1.5m以上、肘軽屈・体幹主導、「打つ」ではなく「流す」動作。


2. 安心(心理的安全):
 非競技・非序列を明示し、未熟や失敗を許容する静かな場を形成。


3. 安定(環境調和):

 水温・水深・照明・音量・テンポを統合設計し、全体の調和を保つ。
これらは「静・動・流」の三態安全に呼応し、生命活動の恒常性を支える哲学的実践である。

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第2章 三大原則とその準則(意識・成長・教育)


意識性・漸進性・教習一致の三原則を通じ、心身の成長と教育の循環を理論化し、稽古の実践的枠組みを構築する。


三大原則は、根本原理から直接派生し、水気道の稽古を「意識・成長・教育」の循環的構造として支える。これらは、それぞれ、意識性の原則・漸進性の原則・教習一致の原則から成り、各原則には、それぞれ運動生理学的および教育心理学的な準則を伴う。

 

  1. 意識性の原則(Principle of Mindfulness)

 

定義

呼吸・動作・感情・意識を統一的に観察し、心身の安定を導く。

「覚醒と休息」「活動と回復」のリズムを保つことで、深い集中と内的静寂をもたらす。

 

休息の準則

稽古における緊張と弛緩のバランスを保ち、休息を積極的に取り入れることで心身の再生を促す。


可逆性の準則

稽古による機能的適応は可逆的であることを理解し、自己観察と継続的実践によって恒常性を維持する。

 

意識性の原則は、「休むこと」と「保つこと」を通じて、心身の安定を自覚的に維持する力を養う。

 

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2. 漸進性の原則(Principle of Gradual Progression)


定義:

身体的・心理的負荷を段階的に高め、持続的な成長を導く。
安全性を基盤に、リズム的学習と適応力を育む。

 

反復性の準則

同一動作の反復により、神経・筋の協調を促進し、
動作の精度を高める。


過負荷の準則

安全を前提に、徐々に負荷や動作範囲を増やすことで、
心身の適応力を高める。

 

漸進性の原則は、「反復と適応」の継続的サイクルを形成する。

 


【体験フェーズと五大原則の対応(半稽古:45分プロトコル)】


水気道体験課程(約45分)は、「静・動・流」の根本原理を体感的に学び取る導入プロトコルである。各フェーズは、五大原則における準則構造と対応し、体験生の安全・意識・成長を支える設計となっている。

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禁忌三原則(跳ばず・反らさず・捻らず)を体験段階で徹底し、「静→動→流」の順序学習を守ることが、安全と成長の両立に不可欠である。


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3. 教習一致の原則(Principle of Learning through Teaching)


定義:

教えることと学ぶことを一体化し、共鳴を通して教育を深化させる。
稽古場における対話的学習の循環が、自己と他者の成長を同時に促す。

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教習一致の原則は、「共鳴的学び」と「目的適合性」によって教育の成熟を支える。


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第3章 高次原則:統合と音楽性による全体調和

統合性と音楽性の二原則を基軸に、動と静、個と全体の調和を生命リズムとして再構築し、芸術的完成へ導く。


三大原則を超え、水気道を芸術的領域へと昇華させる理念として、統合性の原則と音楽性の原則が置かれる。これらは心身一如・動静調和の哲学的完成を象徴する。

 

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1. 統合性の原則(Principle of Integration)


定義:

個と場、心と身体、動と静を統合し、生命全体のリズムを再構築する。
部分的訓練を超え、全体的学習・包括的成長を目指す。

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統合性の原則は、「全体としての自己」を再構築するための理念である。

 

  1. 音楽性の原則(Principle of Musicality)

定義

稽古全体を音楽的構造としてとらえ、呼吸・動作・情動・水流のリズムを調和させる。
水気道の動作美と精神的静寂を融合させ、生命の音楽を体現する。

4-1

音楽性の原則は、水気道を「呼吸と動作と心の交響」として昇華する美学的理念である。

 

 

【用語・記号・最小キット】

  • 記号:S=静、D=動、F=流、BPM=呼吸テンポ、R=吸吐比
  • 携行物:白キャップ、水、保温タオル、ローブ、歩行靴
  • 原理対照:静=準備、動=展開、流=調和
  • 理念語:「安全は静止ではなく流れの中にある。」

 

これらの記号・携行物・理念を統一することが、水気道共同体の秩序と美学を形成する。

 

第4章 体系の階層構造(根本原理と五大原則の構造図)

 

安全から音楽性に至る理論的階層を図示し、水気道全体の教育・芸術構造を一貫した哲学体系として提示する。


根本原理・三大原則・高次原則を統合し、水気道の全体像を体系的に示す。


安全→意識→成長→統合→音楽性の流れが「教育と生命の螺旋構造」として形成される。

 

根本原理(安全性)
 ├─ 静的安全の原理
 ├─ 動的安全の原理
 └─ 流動的安全の原理
   ↓
三大原則
 ├─ 意識性の原則
 │ ├─ 休息の準則
 │ └─ 可逆性の準則
 ├─ 漸進性の原則
 │ ├─ 反復性の準則
 │ └─ 過負荷の準則
 └─ 教習一致の原則
   ├─ 個別性の準則
   └─ 特異性の準則
   ↓
高次原則(五大原則)
 ├─ 統合性の原則
 │ ├─ 全身性の準則
 │ ├─ 全面性の準則
 │ └─ 心身統一の準則
 └─ 音楽性の原則
   ├─ 律動準則
   ├─ 旋律準則
   └─ 調和準則

 

 

【教育三層(支援員・指導員・監督指導者)KSAマトリクス】

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修養の中心は五問法+第六問(呼吸一致)。
すべての階層で、呼吸の一致が共鳴教育の基礎となる。

 

総括

  1. 根本原理(安全性)は、水気道の哲学的基盤であり、「静・動・流」の三態で心身の恒常性を守る。
  2. 三大原則は、「意識→成長→教育」の循環を形成し、稽古を通じた人間的成長の枠組みを提供する。
  3. 統合性と音楽性の高次原則は、水気道を科学から芸術へと昇華させ、身体と精神、個と社会の調和を実現する。
  4. 準則体系は、運動生理学・心理学・教育学を統合し、心身相関を理論的に裏づける実践構造を形成している。

 

この最終体系は、水気道を「安全の学」「意識の学」「共鳴の芸術」として位置づける包括的理論モデル

 

第Ⅱ部 統合体系篇:三法・五元・楽の哲理

第Ⅱ部では、第Ⅰ部で確立された安全・意識・成長の体系をさらに発展させ、生命・意識・芸術を統合する哲学的構造を探究する。ここからは、水気道を身体技法にとどめず、生命そのものの教育体系として再定義する“生命哲学篇”に移行する。

 

【二相統合モデル(陸↔水)の運用規範】

 

二相統合モデルは、「陸上の重力環境」と「水中の流体環境」を連続的に結び、往路(集中)→稽古(水)→帰路(再統合)の三相循環を形成する。

 

環境条件

理論水温32〜34℃(実践水温30℃程度)、胸下水深、低〜中強度の持続運動(100㎝、110㎝、120㎝の3段階)を標準とする。

 

往路(陸)

歩行と呼吸テンポを合わせ、集中と準備を行う。


水相(稽古)

浮力と抵抗を活用し、動きながら安定を学ぶ。


帰路(陸)

呼吸を整えつつ、重力への再適応を図る統合段階とする。

 

これらを一つの「稽古」として扱い、アクセス行動を含めて評価対象とする。


体験カードには、呼吸テンポ・顔色・姿勢・目線を記録する欄を設け、自己観察と指導評価の共有基盤とする。

 

 

第5章 三法体系と五元構造による統合理論


<統合的拡張:陰陽・虚実と三法体系による五元統合モデル>

 

養生・鍛錬・養生鍛錬の三法を陰陽・虚実の哲理で統合し、水・気・道の循環を生命哲学として体系化する。

 

本章では、第Ⅰ部(第1~4章)で体系化された水気道理論をさらに発展させ、この統合モデルは、水気道を身体技法にとどまらず、生命・意識・芸術の三位一体として位置づける理論的基盤となることを示す。


養生法・鍛錬法・養生鍛錬法の三法を、陰陽・虚実の哲理に基づき再構成する。


この三法は水(環境)・気(生命)・道(体・心・意の統合)の五元に対応し、水気道の実践体系を生命哲学へと昇華させる。

 

1. 三法体系と陰陽・虚実の相関

 

水気道の三法体系は、以下のように陰陽および虚実の哲理に対応する:

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2. 五元構造:水・気・道(体・心・意)

五元構造とは、水(環境・流動)、気(生命エネルギー・呼吸)、
道(体・心・意の統合)を中心とした循環体系である。


各元は互いに依存・反映し合い、次のような相互関係を形成する:

- 水:生命環境。流動性・適応・柔軟性を象徴する。
- 気:生命活動。呼吸・代謝・感情エネルギーを担う。
- 道:心意気が整った身体。体・心・意の統合的現れ。


水は気を育み、気は道を導き、道は水に調和をもたらす。
この三者の循環が、水気道の稽古体系における根本的な「生命の音律(リズム)」である。

 

 

3. 陽・虚実循環図の解釈


養生法(陰・虚)と鍛錬法(陽・実)は対極に位置するが、
養生鍛錬法はそれらを循環させる「道」としての中庸を担う。
すなわち、陰は静の中に潜む力、陽は動の中に宿る調和。

虚は実を受け、実は虚を生かす。


この循環は、単なる対立構造ではなく、相互補完的な変化のリズムであり、心身の成長・回復・覚醒を連続的に導く。

 

4. 道体の概念:心意気が整った身体

 

【緊急・頻発事象プロトコル(現場対応3行法)】

 

現場で頻発する症状への即応指針を以下に定める。

 

  • 筋けいれん:止まる→温と補水→呼気を長く。
  • 腰痛/仙腸関節痛:膝打ち=骨盤後傾、踵打ち=前傾誘導。
  • 肩関節障害:肘軽屈→体幹先行→「流す」意識。

 

これらは単なる救急法ではなく、自己調整能力を再教育するための「学習介入」である。

 

水気道の「道」は、心(感受と調和)と意(方向と意志)が身体を通して統合された状態を示す。これは「心意気が整った身体」であり、心が澄み、意が定まり、体が応ずるときに現れる。この状態を「道体」と呼び、養生法・鍛錬法・養生鍛錬法の往還を通じて体得される。道体は動中の静・静中の動を併せ持ち、水気道の究極的目的を体現するものである。

 

5. 統合的結語


水気道は、陰陽・虚実・水・気・道の五元構造に基づく生命調和体系である。


三法の往還を通じて心意体が整い、個体と環境、動と静、内と外が一つに融け合う。
その最終目標は、道体の実現にある。

第6章 終章:学・術・芸・楽の統合による生命の道

 

水気道の方術は、学(知)・技(意識)・芸(共鳴)を統合して楽(調和)をなす。

 

「楽」は、水気道は人間存在の「生命の道」として完結させる。


本章では、「安全の学」「意識の技」「共鳴の芸」を統合し、「学・技・芸」の三位一体の「楽」によって<生命の道>を完成させる。


ここでの「学」は知の秩序、「技」は意識の技法、「芸」は共鳴の表現、そして「楽」はそれらが循環し調和する全体的リズムを意味する。

 

水気道は、学によって身体を守り、技によって心を導き、芸によって生命を奏で、
そして楽としてすべてを循環的に調和させる。


これが道体であり、生命の道としての水気道の到達点である。

 

水気道がもたらす「楽」の方術は無形の「薬」の働きに通じるのである。

 

5. 統合的結語

水気道は、陰陽・虚実・水・気・道の五元構造に基づく生命調和体系である。
三法の往還を通じて心意体が整い、個体と環境、動と静、内と外が一つに融け合う。
その最終目標は、道体の実現にある。

 

第6章 終章:学・術・芸・楽の統合による生命の道

 

(意識)・芸(共鳴)を統合して楽(調和)をなす。

 

「楽」は、水気道は人間存在の「生命の道」として完結させる。

 

本章では、「安全の学」「意識の技」「共鳴の芸」を統合し、「学・技・芸」の三位一体の「楽」によって<生命の道>を完成させる。


ここでの「学」は知の秩序、「技」は意識の技法、「芸」は共鳴の表現、そして「楽」はそれらが循環し調和する全体的リズムを意味する。


水気道は、学によって身体を守り、技によって心を導き、芸によって生命を奏で、水気道は、学によって身体を守り、技によって心を導き、芸によって生命を奏で、そして楽としてすべてを循環的に調和させる。


これが道体であり、生命の道としての水気道の到達点である。

 

水気道がもたらす「楽」の方術は無形の「薬」の働きに通じるのである。

 

1. 安全の学:生命の安定原理


安全の学は、水気道の科学的基盤であり、生命の恒常性を守るための原理である。
静・動・流の三態によって、身体の安定、心理の落ち着き、環境との調和を維持する。


それは単なる危険回避ではなく、「生きた安定(living stability)」を学ぶための科学である。

2. 意識の技

意識の術とは、理論ではなく実践であり、観照と操作を一体化した「覚の技」である。
呼吸・姿勢・内省・無念の稽古を通して、心身の境界を溶かし、「意識そのものを整える術」を体得する。
ここでの意識とは、思考を超えた「感じ・察し・応じる力」であり、道を歩む者の中核的技法である。

 


【観察と判断の共鳴化 ― O–O(Observe as One)】

 

観察とは「見る」行為ではなく「感じる」行為である。
O–O(Observe as One)とは、観察者と被観察者が同一の呼吸リズムを共有しながら状態を読む手法である。

 

観察四徴:顔色・姿勢・呼吸・目線。

これらをテンポ(呼気長)で束ねて把握し、即座にテンポ調整(例:吐気を2拍延長)を返す。判断とは分析ではなく、共鳴的理解の瞬間である。

 

3. 共鳴の芸:生命の交響


共鳴の芸は、水気道を「呼吸・動作・情動・水流」の共鳴体系として昇華させる。
リズム(律動)、旋律(情動の流れ)、調和(場の一体感)の三要素によって、水気道は「生命の音楽」として具現化する。


共鳴とは、自己と他者、個と全体が同じ波動で呼吸する現象であり、この瞬間にこそ、道体が顕現する。

 

4. 学・術・芸の楽への統合


水気道における「学・術・芸」は統合して「楽」を成し、
知・意・感・調の四つの力が循環する動的構造として存在する。
7-1

【評価ルーブリック ― 成長の見える化】

水気道の評価は、「定量(Q)」と「定性(L)」の四象限で行う。

  1. Q-身体:可動域/テンポ持続/歩数当量
  2. Q-自律:呼気/吸気比(理想:2:1)、心拍回復時間
  3. L-心理:集中・安心・共鳴感の自己評定(0–10)
  4. L-社会:場への貢献・協調性・共鳴創出力

体験生は(2)と(3)を中心指標とし、上級者は(4)の社会的共鳴を重視する。

※評価は個人比較でなく、過去自己との差異によって行う。

 

 

5. 結語:生命の道としての水気道


水気道とは、
「安全の学」により身を守り、
「意識の技」により心を導き、
「共鳴の芸」により命を奏でる術の体系である。
すなわち、学と技と芸が「楽(rhythmos)」の術として統合し、
人間存在そのものが一つの音楽となる—

 

【カリキュラム雛形(12回=1ターム)】

 

1–3回:親水・静的安全・呼吸テンポの聴取
4–6回:動的安全・左右往還運動
7–9回:展開課題・特異性
10–12回:統合・音楽性・共鳴体験

 

各回記録項目:

  • 呼吸テンポ(吸拍/吐拍)
  • 安全観察(顔色・姿勢・呼吸・目線)
  • 帰路タスク(5分歩行・鼻呼吸)

 

毎回の稽古の修了目標は、姿勢・呼吸・動作の安定維持と心理的安全・身体的覚醒の自覚である。

 

以上により、水気道は生命の道としての総合体系を成す。

 

—それが生命の道としての水気道である。

 


1. 水気道とは


水気道は、水中環境という「擬似胎内環境」を活かし、出生後に衰弱・忘却された身体機能と感覚統合を自然に回復・再統合させる身体訓練体系です。


水の浮力・圧力・抵抗が、姿勢・呼吸・動作を無意識のうちに整え、
身体本来のリズムと調和を取り戻します。


__________________


図1:水気道の理念構造図(模式)


― 生命は、水の中で再び調和を思い出す ―


水気道の核心は、胎内の静けさを現代に取り戻すこと。


浮力と水圧に包まれた環境は、心と身体を再びひとつに整える。


無意識の力が目覚めるとき、呼吸と姿勢は自然に調和し、生命そのものが“自らを整える”プロセスを再開する。

 

表1

 

_______________________

 

2. 理論的背景 — 胎内還元モデル


胎児は母体の羊水の中で、センソリーラーニング(感覚学習)とモーターラーニング(運動学習)を無意識のうちに繰り返しながら成長します。
水気道はこの「胎内学習の再現環境」を提供し、忘れられた感覚と運動の記憶を呼び覚ますことで、心身を再び統合へと導きます。

________________


 図2:胎内学習と水気道の対応関係

 

― 胎児の記憶が、水の中で蘇る ―


胎児は母体の羊水の中で、重力から解放された世界を体験する。


そのとき培われた浮力感覚、圧力感覚、運動と感覚の統合。


水気道は、それを再現する“第二の胎内”として、人間が持っていた原初の学習回路を呼び覚ます。


胎児期(羊水中) → 水気道(温水中)

 

浮力環境   → 浮力による関節・筋保護
母体圧力刺激  → 水圧による体幹安定
自発的運動   → 無意識的動作最適化
感覚統合発達  → 感覚・運動の再統合

図2

 

_______________

 

3. 無意識の最適化 — 身体が「自ら整う」

表1

 

これは胎児期に形成された「無意識的自己調整能力」が再び作動している証です。


___________________


図3:無意識最適化の相互関係図


― 姿勢が呼吸を導き、呼吸が動作を導き、動作が循環を整える ―


この循環こそが「生命の自然調律」。

水の中では、努力せずとも姿勢が整い、呼吸が深くなり、動作がしなやかに流れ、循環が目覚める。

水気道は、無意識の中で進行する“自己最適化のダンス”である。

 

姿勢→呼吸→動作→循環
  ↑     ↓
(体幹安定) (恒常性維持)

 

図3


______________________


4. 稽古体系(Training System)


水気道の稽古には型式(かたしき)があり、
水中における動作・呼吸・心身統合の一連の流れを
「航法(こうほう)」と呼びます。


訓練体系は段級制による系統的な組織運営のもと、
目的とレベルに応じて段階的に進行します。

 

• 本稽古(90分):姿勢・呼吸・動作の完全統合を目指す本格セッション
• 半稽古(45分):導入・体験・リハビリ・メンテナンス向けの短時間稽古

 

稽古は室内温水プール(水温約30℃)で行われ、
安全で安定した浮力環境が保たれます。


________________________________________

 

図4:航法システム(体系図)


― 水の旅を通して、心身は再びひとつになる ―


親水・準備・基本・展開・整理という五つの航法は、まるで“胎児から再生へ”の進化の航路のよう。
静から動へ、そして再び静へ。呼吸・意識・動作が調和していくプロセスそのものが、水気道における心身再統合の旅である。


親水航法 → 準備航法 → 基本航法 → 
 ↓    ↓      ↓    

身体慣化  姿勢調整    呼吸統合   
環境順応 体軸安定 胸郭・腹腔活性化

 

→  展開航法 → 整理航法

  ↓      ↓

 動作展開   動的心身統合

四肢協調   個体調和

図4

 

 


※整理航法は、水中運動を終えて静止するのではなく、呼吸・動作・意識を動的に統合する「心身統一の完成段階」を意味します。


________________________


5. アンチエイジングへの応用


水気道は、年齢とともに衰弱しやすい
姿勢・平衡感覚・呼吸・筋協調などの機能を
安全かつ自然に回復させます。

 

• 関節への負担を軽減
• 心肺機能・血流の改善
• 自律神経の安定化
• 慢性ストレスの緩和


これらの効果により、老化の進行を穏やかにし、
内なる若さと生命力を取り戻す道が開かれます。


________________________________________


図5:水気道のアンチエイジングモデル


― 老化とは、忘却。再生とは、記憶の再起動。 ―


胎内還元環境は、神経と筋に眠る“生命の記憶”を呼び起こす。
水の力が神経・筋・感覚を再活性化し、代謝と循環を整える。
それは単なる若返りではなく、
生命そのものの再構築(Reconstruction of Vital Harmony)。
時間に抗うのではなく、生命の原点に戻るアンチエイジング。

 

[胎内還元環境]

神経・筋の再活性化

感覚・運動統合の回復

代謝・循環の改善

老化抑制・恒常性強化

図5

 


______________


6. 胎内記憶の再生 — 身体の原初的知性を呼び覚ます


胎児期に集積された無意識の記憶(姿勢・呼吸・動作)は、
出生後の生活環境で徐々に忘れられます。


水気道は、この記憶を水中という胎内還元空間で再活性化し、
「失われた感覚を取り戻す」「忘れた動作を思い出す」
という形で、生命の記憶を呼び覚まします


______________________


図6:胎内記憶の再生モデル


― 水は記憶している。あなたが生まれる前のリズムを。 ―


胎児期に培われた感覚と運動の統合は、
出生とともに忘れられ、成熟とともに衰えていく。
しかし、水気道という胎内還元の環境で、
その記憶は再び目を覚まし、身体が“原点”を思い出す。
それは単なる運動ではなく、記憶と存在の再統合の儀式である。

胎児期 → 出生後 → 成熟期 → 水気道

             (胎内還元)
↓     ↓     ↓     ↓

感覚統合 記憶退化 機能衰弱 記憶再活性

             再統合

 

図6

 

 


_______________________


7. 現代への意義


水気道は、単なる水中運動を超えた
総合的身体教育・健康法・芸術訓練としての可能性を持ちます。


• 医学的:リハビリ・慢性疲労・自律神経調整
• 教育的:感覚統合・姿勢教育・呼吸訓練
• 芸術的:能・舞踊・声楽などの身体表現の基盤形成

_____________________


結語


「成長は胎内で進み、老化は出生後に顕在化する」


水気道は、この生命の理を現代に再統合する技法です。
水の中で、身体は再び学び始めます。
成長と老化の境界を超えて、
生命の記憶が甦る場 —— それが水気道です。


_____________

 

補記

 

• 監修:飯嶋正広(M.D., Ph.D.)


• 所属:Suginami International Clinic / Institute for Medical Science of Modern Diseases


• キーワード:胎内還元モデル、水中有酸素運動、センソリーラーニング、モーターラーニング、航法体系、動的心身統合

現代病医科学研究所(IMSMoD)発足のお知らせ


Institute for Medical Science of Modern Diseases (IMSMoD)

_________________

 

現代病医科学研究所(IMSMoD)設立の趣旨


このたび、評議員のご推薦を賜り、日本臨床免疫学会 正会員として正式に承認されたことを契機に、ここに「現代病医科学研究所(Institute for Medical Science of Modern Diseases:IMSMoD)」を正式に発足いたします。


これまで研究所発足が躊躇されてきたのは、国際医学雑誌に論文を投稿するにあたっては、多額の投稿料が必要とされていたために、論文を発表することが極めて困難だったことが主要な理由でした。しかし、この度、日本臨床免疫学会の正会員資格が授与されたために、活路が開かれたことで、本格的な研究所設立の名乗りを上げることが可能となりました。


日本臨床免疫学会の学会誌は、Immunological Medicine(略称ImmMed)として、2018年より完全オンラインのフリーアクセス英文ジャーナルとなり、年間4回発行されています。


投稿料は1,680米ドルを令和7年10月11日時点の為替レート(1 USD ≒ ¥152.37 を用いて計算)で日本円に換算すると、約 ¥255,300です。これは、国際医学誌としては比較的安価ですが、スポンサーのない個人研究者にとっては研究継続の障壁でした。しかし、日本臨床免疫学会の正会員は掲載料が無料となるのは、大きな特典であり、本格的な研究継続が可能となる道筋が確保されました。

 


2025年9月3日

2025年度(2025年9月~2026年10月)、学会員はオープンジャーナル機関誌(Immunological Medicine)の掲載料(USD1,680.00)が無料(学会負担)となります。


投稿の際に学会員専用のDiscount Codeが必要となります。投稿準備ができましたら事務局までご連絡ください。


<学会評議員からの推薦状>

Screenshot_20251011-130030_(1)

 

<入会手続き完了>令和7年10月11日

会員番号:008712


本研究所は、慢性低度炎症(CLGI)を基軸に、
精神・免疫・炎症・腫瘍を貫く統合的医科学の確立を目的とする学際的研究拠点です。


IMSMoDは、理論研究としての新規分野である精神炎症学(Psycho-inflammatology)の体系化を進めるとともに、その実践的展開として、次の二つの柱を中心に据えます。


1. 心身免疫実践医科学(Psychoneuroimmunological Practical Medicine)
 – 心身相関の医科学的理解をもとに、臨床実践・産業保健・予防医学に応用する。


2. 音楽芸術実践医科学(Musico-artistic Practical Medicine)
 – 芸術表現・声楽・音楽療法の臨床的意義を探究し、創造性と健康の調和を実践する。


さらに、これらの諸領域を結ぶ理論的枠組みとして、
精神炎症学と既存の精神腫瘍学の統合を通じ、炎症学と腫瘍学を包括する一般理論の構築を目指します。

 


IMSMoDは、医療・心理・芸術・教育・社会活動の協働を通じて、人間の健康と創造性の調和を追求し、21世紀の新しい医科学=「実践的統合医科学」の礎を築くことを使命とします。


_________________


【English Version】


Mission Statement of the Institute for Medical Science of Modern Diseases(IMSMoD)
Following Dr. Masahiro Iijima’s formal approval as a Regular Member of the Japanese Society of Clinical Immunology, upon recommendation by a board member,the Institute for Medical Science of Modern Diseases (IMSMoD) is hereby established as an academic and clinical research institute affiliated with Suginami International Clinic.


Grounded in the paradigm of chronic low-grade inflammation (CLGI),
IMSMoD aims to develop an integrative medical science that unifies mind, immunity, inflammation, and tumor biology.


The institute advances the theoretical framework of Psycho-inflammatology,
and builds upon two pillars of applied and practical study:

 

1. Psychoneuroimmunological Practical Medicine — applying the psychosomatic-immune interface to clinical, preventive, and occupational health practice.


2. Musico-artistic Practical Medicine — exploring the medical and creative significance of music, vocal art, and artistic expression as pathways toward psychophysical harmony.


Through the integration of Psycho-inflammatology and Psycho-oncology,
IMSMoD seeks to contribute to a unified theory of inflammation and oncology,
while promoting interdisciplinary collaboration across medicine, psychology, the arts, and education.


Its mission is to advance a practical and integrative medical science
that harmonizes human health and creativity,and to serve as a bridge between clinical medicine, culture, and the future of holistic scientific thought.

杉並国際クリニック―現代病研究所―


【研究進捗状況リポート】


この度は、独立研究者の研究活動の厳しい現状を多くの皆様に知っていただくことの重要性を痛感しております。

この記事は、財政的なご支援をお願いするものではなく、私の研究の歩みをご紹介するものです。

今回の論文投稿の経緯を踏まえ、現在は発表の形態を見直しながら活動を続けております。大学や研究機関に所属されている若手研究者の皆様の今後のご活躍に大きな期待を寄せつつ、私の取り組みが些かなりとも研究のヒントとなれば本望です。


2025年9月17日更新


飯嶋正広Ph.D.,M.D.

 

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9月17日(水)に投稿しました。

 

低度炎症から慢性低度炎症(CLGI)へ―疼痛病態の再検討と漢方を基盤とした統合医学的展望

 

From Low-Grade Inflammation to Chronic Low-Grade Inflammation (CLGI):

Reappraisal of Pain Pathophysiology and Kampo-based Integrative Medical Perspectives

 

参考文献数17件

 

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以下の論文は2025年3月5日に投稿が受付けられ、
査読を通過し、2025年10月末頃「痛みと漢方」Vol.34(2025)に収録、刊行される予定であることが通知されました。以下は日本語要旨および英文Abstractです。

 

Low-Grade Inflammationに対して、はじめて低度炎症という訳語を与えた最初の論文です。

今後の私自身の研究の基盤ともなる基礎的な医学概念でもあります。複数の学術誌に投稿し、査読を受けた際に、この概念を知らない査読者がほとんどであったことも驚くべき事実でありました。

これで、わが国では遅れている、Low-Grade Inflammation(低度炎症)の研究が加速されることを期待しています。

 

・・・・・・・・

 

低度炎症と疼痛の関連:漢方を用いた統合医学的アプローチ

 

飯 嶋 正 広*

 

要旨:

【はじめに】

慢性疼痛は患者の生活の質を著しく低下させる要因であり,近年, 「低度炎症(LGI)」がその発症と持続に関与することが示唆されている.本研究では,統合 医学の視点から,LGI と疼痛の関連を整理し,漢方薬や鍼灸療法を含む治療戦略の有効性 を検討する.

 

【方法】

LGI と疼痛の関連について,炎症性サイトカインの分泌,グリア細胞 の活性化,酸化ストレスの増加,腸内細菌叢の異常といった病態メカニズムを文献レ ビューに基づき整理した.また,統合医学的介入として,漢方薬,鍼灸療法,食事・運動 療法の有効性を評価した.


【結果】

LGI は疼痛の増悪因子として働き,統合医学的治療はそ の制御に有効である可能性が示唆された.特に,漢方薬は炎症性サイトカインの調整,抗 酸化作用,血流改善を通じて疼痛の軽減に寄与し,鍼灸療法は神経伝達や自律神経の調整 を介して鎮痛効果を発揮する.


【考察】

統合医学的アプローチは,西洋医学の薬物療法と併 用することで相乗効果を発揮し,より包括的な疼痛管理が可能となる.


【まとめ】

今後の研 究では,臨床試験を通じたエビデンスの強化と,分子メカニズムの解明が求められる.

 

索引用語:
低度炎症,慢性疼痛,統合医学,漢方薬,鍼灸療法

 


PAIN AND KAMPO MEDICINE Vol.34〔2025〕

 

The Relationship Between Low-Grade Inflammation and Pain: An Integrative Medicine Approach with Traditional Japanese Medicine (Kampo Medicine)

 

Masahiro IIJIMA*   

 

Abstract:

Introduction:

Chronic pain significantly impairs patients' quality of life, and recent studies suggest that low-grade inflammation (LGI) plays a crucial role in the onset and persistence of chronic pain. This study examines the relationship between LGI and pain from an integrative medicine perspective, focusing on the potential efficacy of Kampo medicine and acupuncture therapy.


Methods:

A literature review was conducted to analyze the pathological mechanisms of LGI in pain, including inflammatory cytokine secretion, glial cell activation, increase of oxidative stress, and gut microbiota dysbiosis. The effectiveness of integrative treatments such as Kampo medicine, acupuncture, and diet and excercise interventions was also evaluated.


Results:

LGI exacerbates pain, and integrative medicine approaches may help alleviate it. Kampo medicine reduces pain through cytokine modulation, antioxidant effects, and improved blood circulation, and acupuncture provides analgesic effects via neural transmission and regulation of autonomic function.


Discussion:

Treatments of integrated medicine can enhance pain management when combined with conventional pharmacological therapies, offering a more comprehensive approach.

 

Conclusion:

Further clinical trials and molecular research are needed to strengthen the scientific evidence supporting integrative medicine approaches for LGI-related chronic pain.

 

Key words:
low-grade inflammation, chronic pain, integrative medicine, Kampo medicine, acupuncture therapy

 

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統合的脳関門理論(IBBT)研究の進捗等についてのご報告


研究の概要


私の研究「統合的脳関門理論(IBBT)」は、脳を守る二つのバリア(血液脳関門=BBBと脈絡叢関門=BCSFB)を統合的に捉え、慢性的な微小炎症(CLGI)が脳に及ぼす影響を体系化したものです。この理論は、認知症や神経難病の新しい理解や治療法の開発につながる可能性を持っています。


研究の成果


• 慢性低度炎症(CLGI)が脳バリアを破綻させる仕組みを整理


• BBBとBCSFBを「統合的脳関門理論(IBBT)」としてまとめ、疾患研究の枠組みを提案


• 神経疾患における病態生理の理解を深める新しい基盤を提示

 

 

学術的進展


• 査読通過済み:国際誌 Frontiers in Immunology(Impact Factor 8.4)


• 引用文献数:30件

 

• キーワード:BBB、BCSFB、IBBT、CLGI、Neuroinflammation

 


投稿と掲載料について


本論文は学術的に高い評価を受けましたが、掲載にあたり 総額 CHF 3,465スイス・フラン(約63万7千円) の手数料が必要でした。私は独立した立場で活動しており、大学や研究機関からの研究費支援がないため、以下の経緯をたどりました。


1. 2025年7月19日:掲載料減免措置を申請


2. 2025年7月29日:申請却下の通知を受領
「多くの申請があるため、今回は割引を認められません」


3. 2025年8月4日:特例として20%割引のオファーを受領
(CHF 3,465 → 約50万円程度に軽減)


4. 2025年8月5日:それでも自己負担が困難なため、投稿取り下げを申請


5. 2025年8月14日:正式に投稿取り下げ決定

 


現在の状況


• 学術的には大変意義深い成果を得たものの、経済的理由で掲載を断念せざるを得ませんでした。


• 私は現在65歳、資金的な後ろ盾がなく、自己資金のみで研究と発表を続けています。


• これに続く論文の投稿先を国際論文(英文)から国内論文(和文)中心に切り替えていかなければなりませんが、投稿規定が異なるため、調整に手間取っている状況です。

 

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支援者の方へのお願い


この研究は、脳と慢性炎症をつなぐ新しい枠組みを提示するものであり、認知症や難治性神経疾患の理解に直結します。

しかし、国際誌で広く共有するためには掲載料の壁があります。

もし、精神的なご支援やご理解だけでも承ることができければ、

 

引き続き、


• 再投稿・公開によって国際的に研究成果を発信できる


• 認知症や神経疾患の新しい治療法研究への橋渡しが可能になる


という大きな希望と勇気をいただくことができます。
他にも多くの課題が山積しています。問題意識だけでも皆様と共有していただければ幸いです。

 

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統合的脳関門理論(IBBT)


Integrated Brain Barrier Theory (IBBT): A Novel Framework for Understanding Chronic Low-Grade Inflammation in the CNS

 


カテゴリ:

脳・神経 | 進捗:査読通過・再投稿検討 | Impact Factor:8.4

 


この研究でわかったこと


脳を守る「関所」のバリアが、慢性の小さな炎症で壊れる仕組みを体系化しました。認知症や神経難病の理解と治療につながる可能性があります。

 

研究の背景と目的


従来、血液脳関門(BBB)と脈絡叢関門(BCSFB)は別々に研究されてきました。本研究では両者を「統合的脳関門理論(IBBT)」としてまとめ、慢性炎症による障害の全体像を捉えることを目的としました。


研究の詳細


• CLGIが脳バリアに与える影響を整理

 

• BBBとBCSFBの役割を比較・統合


• 神経疾患の病態生理に新しい枠組みを提案

 

 

キーワード

BBB、BCSFB、IBBT、CLGI、Neuroinflammation

 

 

参考文献(引用文献数:30件)

1. Iijima M. Integrated Brain Barrier Theory (IBBT): … Frontiers in Immunology, 2025.

 

執筆完了日:2025年5月16日


投稿日:2025年5月17日


査読開始日:2025年7月4日


論文掲載料通知日:2025年

 


<掲載手数料:Total/CHF3465.00>


スイスフラン(CHF 3,465.00)を日本円に換算しました。
以下の最新の為替レートをご参考にしています(2025年9月4日時点):
184〜184.5 円あたりで推移しているようです。

換算結果:CHF 3,465 × JPY 184.14 ≒ 637,693円

掲載料減免措置申請日:2025年7月19日

掲載料減免措置申請却下日:2025年7月29日

 

Thank you for your fee support application.
To provide a fair possibility for authors with limited or no available funding to publish their manuscripts in our journals, we have to prioritize among many applications with the funds we have available.
With this in mind, unfortunately we’re unable to grant you a discount in this instance.

We’re sorry we couldn’t grant your request, and we hope you continue to collaborate with Frontiers in the future.


初回投稿取り下げ願い提出日:2025年8月5日


Unfortunately, due to financial constraints and the unavailability of fee support, I am unable to proceed with the publication process. As a 65-year-old semi-retired independent researcher without institutional funding, I deeply regret this situation but must prioritize personal responsibilities.
Please confirm the withdrawal of my manuscript at your earliest convenience.

 

掲載手数料減免(20%ディスカウント)決定通知受領日:2025年8月4日


Dear Author,
I can grant you a 20% discount if this can help you.
Please let me know if you accept my offer or do you still want to withdraw.


最終投稿取り下げ願い申請日:2025年8月13日


Thank you for your offer, but I would like to proceed with the withdrawal of my manuscript as previously requested.
Best regards,


投稿取り下げ最終決定受理日:2025年8月14日


最終更新日:2025年9月4日

 

 

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がんと炎症:血液バリアとDNA

 

CLGI-induced Blood Barrier Disruption and ctDNA Release: A Novel Hypothesis in Cancer Progression

 


カテゴリ:

がん・免疫 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:13.9(想定誌:Cancer Research)

 


この研究でわかったこと


慢性低度炎症(CLGI)が血液バリアを弱め、腫瘍由来DNA(ctDNA)が循環に出やすくなる可能性を示しました。これは、がんの早期発見や治療効果モニタリングの改善につながる仮説です。

 


研究の背景と目的

ctDNAの臨床利用は進む一方、体内に放出される前段階の病態は不明瞭でした。本研究はCLGIとバリア破綻を結びつけ、ctDNA動態の上流メカニズムを整理することを目的とします。

 


研究の詳細

• CLGIがタイトジャンクション/接着分子に与える影響モデル

• サイトカイン経路とバリア透過性上昇の仮説図式化

• ctDNA検出のタイミングと治療個別化の可能性

 


キーワード

CLGI, Blood barrier disruption, ctDNA, Cytokines, Cancer progression, Precision medicine

 


参考文献(引用文献数:57件)

2. Iijima M. CLGI-induced Blood Barrier Disruption and ctDNA Release…(準備中)

 

 

執筆完了日:2025年7月8日

最終更新日:2025年9月4日

 

 

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気管支拡張症と血液–気道バリア


A Novel Hypothesis: CLGI and Blood–Airway Barrier Dysfunction in Bronchiectasis

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:33.0(想定誌:ERJ)

 

この研究でわかったこと

気管支拡張症ではCLGIが上皮バリアを弱め、慢性炎症と感染反復を助長する可能性があります。バリア保護を軸とした予防・治療の見立てを提案します。

 


研究の背景と目的


従来、感染→炎症のループが強調されてきました。本研究は「バリア障害」を起点に、ループの上流制御で病態を解きほぐすことを目指します。

 


研究の詳細


• タイトジャンクションと粘液クリアランスの再評価
• CLGI関連サイトカインと上皮修復能の関係
• 抗炎症・栄養・呼吸リハの統合的介入仮説

 


キーワード

Bronchiectasis, CLGI, Airway epithelial barrier, Tight junctions, Cytokines

 


参考文献(引用文献数:34件)

3. Iijima M. CLGI and Blood–Airway Barrier Dysfunction in Bronchiectasis…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月8日

最終更新日:2025年9月4日

 

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自律神経のバランスと健康


A Balance Model of Autonomic Nervous System: Physiology and Clinical Implications

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:3.6(想定誌:Psychosomatic Medicine)

 


この研究でわかったこと


交感・副交感の「共活性」と心拍変動を軸に、自律神経の乱れを見える化しました。リラクゼーションや治療選択の客観指標づくりに寄与します。

 


研究の背景と目的


ストレス関連疾患におけるANS評価は一貫性に課題。本研究は臨床実装しやすい「バランスモデル」を整理することを目的とします。

 


研究の詳細

• HRV指標と自覚症状の対応づけ
• 共活性(co-activation)概念の図解
• 介入(呼吸法・AT等)前後の評価設計

 


キーワード
Autonomic balance, Co-activation, HRV, Relaxation, Psychosomatic medicine

 


参考文献(引用文献数:52件)
4. Iijima M. Autonomic Balance Model…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月10日

最終更新日:2025年9月4日

 

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プラセボ/ノセボと自然免疫


Placebo/Nocebo Effects on Innate Immunity: An Integrative Psychoneuroimmunology Model

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿先検討中 | Impact Factor:

 


この研究でわかったこと


「効くと思う」「副作用があると思う」という心の働きが、自然免疫にどう影響するかを研究しました。心理と免疫の結びつきを再評価しています。

 


研究の背景と目的


プラセボ効果はよく知られていますが、自然免疫系への影響は十分検討されていません。本研究は心理的影響と免疫反応を統合モデル化しました。

 


研究の詳細
• プラセボ/ノセボが免疫応答に与えるメカニズム
• 精神神経免疫学の観点から再整理
• 臨床試験設計への示唆

 


キーワード

Placebo, Nocebo, Innate immunity, Psychoneuroimmunology, CLGI

 


参考文献(引用文献数:48件)

5. Iijima M. Placebo and Innate Immunity…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月11日

最終更新日:2025年9月4日

 

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線維筋痛症と補体系


Complement Abnormalities in Fibromyalgia: CLGI as a Therapeutic Target

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


全身の痛みを特徴とする線維筋痛症では、炎症の補体系が関わっている可能性を示しました。治療の新しい道を開く研究です。

 


研究の背景と目的


線維筋痛症の病態は不明な点が多いですが、免疫異常が関与することが指摘されています。本研究では補体系異常とCLGIを結びつけました。

 


研究の詳細


• FM患者における補体活性の異常所見
• 炎症マーカー(IL-37等)の関連性
• 新しい治療標的としての補体系

 


キーワード

Fibromyalgia, CLGI, Complement abnormalities, IL-37, Inflammation markers

 


参考文献(引用文献数:26件)

6. Iijima M. CLGI and Complement Abnormalities in Fibromyalgia…(準備中)

 

 

執筆完了日:2025年7月15日

最終更新日:2025年9月4日

 

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腸–脳–免疫軸とニューロポッド細胞


Neuropod Cells as Integrative Sensors in the Gut–Brain–Immune Axis

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:19.2(想定誌:Brain, Behavior and Immunity)

 


この研究でわかったこと


腸には「脳と免疫をつなぐ細胞」が存在します。この細胞が健康や病気にどのように関与するのかを探る研究です。

 


研究の背景と目的


近年、腸–脳–免疫の三者連関が注目されています。本研究はニューロポッド細胞を鍵とし、CLGIとの関連性を探りました。

 


研究の詳細


• ニューロポッド細胞の構造と機能
• 腸–脳–免疫軸における信号伝達
• 臨床応用の可能性(精神疾患・免疫疾患)

 


キーワード
Neuropod cells, Gut–brain–immune axis, CLGI, Polyvagal theory, Psychosomatic medicine

 


参考文献(引用文献数:60件)

7. Iijima M. Neuropod Cells in Gut–Brain–Immune Axis…(準備中)

 

 

執筆完了日:2025年7月20日

最終更新日:2025年9月4日

 

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交流分析 × 感覚の統合


Transactional Analysis and Sensory Abnormalities: Trait–State Integrated Model

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


性格のタイプを分析する心理学的手法と、感覚の異常を統合的に説明しました。心と体のつながりを再構築する試みです。

 


研究の背景と目的


交流分析は臨床心理で広く使われます。本研究ではこれを感覚異常モデルと結合し、人格適応論を再構築しました。

 


研究の詳細


• Trait–Stateモデルと交流分析の統合
• 感覚異常を含む人格適応論の再定義
• 臨床応用への展望

 


キーワード

Transactional Analysis, Trait–State, Sensory abnormalities, Psychosomatic integration

 


参考文献(引用文献数:33件)

8. Iijima M. Transactional Analysis and Sensory Abnormalities…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月20日

最終更新日:2025年9月4日

 

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歌と自律神経の健康


Neurophysiological and Evolutionary Foundations of Singing: Implications for Voice Medicine and Autonomic Health

 


カテゴリ:

音楽・声 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:1.6(想定誌:Journal of Voice)

 


この研究でわかったこと

歌うことは情動調節や呼吸・心拍の同期を促し、自律神経の安定に役立つ可能性があります。声の医学的活用への土台を築きます。

 


研究の背景と目的
歌の生物学的意義は多面的ですが、臨床応用に直結する整理が不足。本研究は神経生理・進化の両面から統合し、医療応用の指針を提示します。

 


研究の詳細


• 発声器官と自律神経の機能連関
• 集団歌唱と生体同期(呼吸・拍動)
• 臨床応用(不安・睡眠・慢性痛)への展望

 


キーワード
Singing, Vocal anatomy, Polyvagal, Neuroplasticity, Autonomic health

 


参考文献(引用文献数:37件)
9. Iijima M. Singing and Autonomic Health…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月24日

最終更新日:2025年9月4日

 

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進化的神経学に基づく心身医学


Constructing a Psychosomatic Framework Based on Evolutionary Neurology

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


「心と体の病気」は、人類の進化の過程で生まれた脳の仕組みとも関連しています。この視点から新しい心身医学の枠組みを構築しました。

 


研究の背景と目的


アレキシサイミアや内受容感覚異常などの症候は進化的背景と関連づけられます。本研究は進化神経学の観点から心身医学を再構築しました。

 


研究の詳細


• 進化神経学的観点の導入
• 心身症状の新しい解釈
• 予防・治療の統合的枠組み提示


キーワード
Alexithymia, Interoception, Gut–brain axis, Evolutionary neurology

 


参考文献(引用文献数:22件)
10. Iijima M. Evolutionary Neurology and Psychosomatic Framework…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月24日

最終更新日:2025年9月4日

 

 

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スパイクタンパク質と神経バリア


Immune Response and Barrier Dysfunction in COVID-19 Spike Protein: Discrepancy between Immunity and Clinical Effects

 


カテゴリ:

脳・神経 | 進捗:投稿先検討中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


新型コロナのスパイクタンパク質が脳や神経のバリアを壊す仕組みを研究しました。免疫反応と副作用の違いを理解する手がかりになります。

 


研究の背景と目的


COVID-19後遺症や神経障害の一因として、スパイクタンパク質のバリア影響が注目されています。本研究は免疫応答との乖離を整理しました。

 


研究の詳細


• BBB・BNBへの影響のレビュー
• 免疫応答と臨床症状の不一致
• 予防・治療への示唆

 


キーワード
Spike protein, BBB, Blood–nerve barrier, CLGI, Psychoneuroimmunology


参考文献(引用文献数:114件)
11. Iijima M. Spike Protein and Neurovascular Barriers…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月24日

最終更新日:2025年9月4日

 

 

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イベルメクチン再評価と腸内環境


Re-evaluation of Ivermectin for COVID-19: Psychosomatic Perspective and Gut Microbiota

 


カテゴリ:

がん・免疫 | 進捗:投稿先検討中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


コロナ治療薬として注目されたイベルメクチンの作用を、腸内細菌や心身医学の観点から再評価しました。

 


研究の背景と目的

 


IVMの効果に関しては賛否が分かれています。本研究は腸内環境や心理的影響も含めて多面的に検討しました。

 


研究の詳細


• IVMと腸内細菌叢の相互作用
• プラセボ/ノセボ要因の影響
• 統合的治療戦略の提案

 


キーワード
Ivermectin, COVID-19, Psychosomatic medicine, Placebo/Nocebo, Gut microbiota


参考文献(引用文献数:57件)
12. Iijima M. Ivermectin and Gut Microbiota…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月27日

最終更新日:2025年9月4日

 

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血液脳関門の新しい分類


New Classification of Blood–Brain Barrier Dysfunction: Primary and Secondary Forms

 

カテゴリ:

脳・神経 | 進捗:投稿先検討中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


脳を守るバリアを「最初から弱い場合」と「後から壊れる場合」に分けて考えました。病気の理解や治療方針を整理しやすくする試みです。

 


研究の背景と目的


BBB障害は多くの疾患に関与しますが、発症機序の整理は未確立です。本研究では“原発性”と“続発性”に分類し、病態生理学的意義を提示しました。

 


研究の詳細


• 原発性BBB障害:発生・遺伝的要因
• 続発性BBB障害:炎症・外傷などの後天的要因
• 診断・治療における新分類の応用

 


キーワード
BBB dysfunction, Primary BBB, Secondary BBB, CLGI, Gut-brain axis


参考文献(引用文献数:20件)
13. Iijima M. New Classification of BBB Dysfunction…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月30日

最終更新日:2025年9月4日

 

 

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ワクチンと免疫の新しい視点

 

Vaccination and Variants: An Integrative Approach of Immune Evasion and Natural Immunity Enhancement


カテゴリ:

がん・免疫 | 進捗:投稿先検討中 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


新型コロナワクチンや変異株に対して、自然免疫を強める方法を含めた新しい予防戦略を検討しています。

 


研究の背景と目的


変異株の拡大に伴い、獲得免疫中心の戦略に限界が見えてきました。本研究では自然免疫強化とストレスマネジメントを組み込んだ統合的予防モデルを探ります。

 


研究の詳細

• ADEや免疫回避のリスク整理
• 自然免疫強化策(栄養・生活習慣)の統合
• 心理社会的介入を含めた予防戦略の提示

 


キーワード
ADE, Variants, Vaccination, Natural immunity, Stress management


参考文献(引用文献数:18件)
14. Iijima M. Vaccination and Immune Evasion…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月30日

最終更新日:2025年9月4日

 

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CLGIと関節リウマチの進展モデル


Reconstruction of CLGI progression: Stepwise Spread from Extra-articular Barriers to Synovial Barrier

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:構想→原稿 | Impact Factor:―

 


この研究でわかったこと


小さな炎症が関節外から関節内へ広がる様子を段階的に説明しました。リウマチの進み方を理解する新しいモデルになります。

 


研究の背景と目的


関節リウマチは多臓器の障害を伴うことが知られています。本研究ではCLGIの波及を“バリア連鎖”として捉え、進展メカニズムを再構成しました。

 


研究の詳細


• 関節外バリア(血液関節外体組織関門)の病態整理
• 滑膜バリアへの移行過程をモデル化
• 炎症進展の段階的図式を提案

 


キーワード
CLGI, Rheumatoid Arthritis, Extra-articular Barrier, Synovial Barrier, Cytokines


参考文献(引用文献数:・・・件)
15. Iijima M. CLGI progression in Rheumatoid Arthritis…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月30日

最終更新日:2025年9月4日

 

 

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感覚のしきい値とストレス


Sensory Threshold Dysregulation in Psychiatric and Stress-Related Disorders

 


カテゴリ:

心と体 | 進捗:投稿準備中 | Impact Factor:3.0(想定誌:Biopsychosomatic Medicine)

 


この研究でわかったこと

 

音や光に過敏/鈍麻といった「感覚のしきい値」の乱れは、情動回路と結びつきます。感覚と心の相互作用を見える化し、ケア設計に役立てます。

 


研究の背景と目的


従来は症状の主観評価が中心でした。本研究は多次元感覚モデルで測定と介入を結び、臨床で使いやすい評価枠組みを目指します。

 


研究の詳細


• 感覚次元(聴・視・体性感覚)と情動の接続図
• Trait–State二層での評価設計
• 介入(AT/呼吸/音楽療法)前後の変化トラッキング

 


キーワード
Sensory thresholds, Multidimensional sensing, Sensory–affective integration, Psychosomatic


参考文献(引用文献数:51件)
16. Iijima M. Sensory Threshold Dysregulation…(準備中)

 

執筆完了日:2025年7月30日

最終更新日:2025年9月4日

 

聖楽院活動再開のお知らせ

 


主宰・飯嶋正広が率いる音楽活動集団「聖楽院」は、2019年11月14日(主宰の還暦誕生日)に杉並公会堂小ホールで開催した第1回「聖楽院」音楽祭を最後に、長い休止期間に入りました。この日は、イタリア声楽のソルフェージュ曲100曲(コンコーネ50番およびトスティ50番)に、我が国の言語文化の至宝である「小倉百人一首」を歌詞として編作した作品を完成・発表した記念すべき日でもありました。


その後、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響も重なり、およそ5年間にわたり活動を停止せざるを得ない状況が続きました。


「聖楽院」は、アマチュア声楽家によるアマチュア声楽家のための音楽集団として出発し、専門的な教育を受けた音楽家やプロ声楽家の支援を得ながら活動を続けてまいりました。この休止期間中に主宰自身が専門的な教育と研究を体系的に修めたことで、従来の歌詞付きエチュード作品が、アマチュアのみならずプロ声楽家にとっても有効な訓練メソッドであることをあらためて深く認識いたしました。さらに、プロ・アマを問わず日本人声楽家が最も得意とすべきは日本歌曲であり、その源泉として美しい大和言葉から芸術的なインスピレーションを汲み取る姿勢が不可欠であることを再確認いたしました。


また、「聖楽院」は、主宰である飯嶋自身の音楽活動の拠点でもあります。飯嶋の専門性は、ロシア歌曲研究や声楽訓練法に加えて、日本古来の歌唱法の研究にも及びます。特に平安時代末期に後白河法皇によって記されたとされる『梁塵秘抄』、とりわけその口伝集の解明に取り組んでおり、AIの支援を活用しながら現代に通じる歌唱法の再発見を試みています。

 


令和7年9月16日


「聖楽院」主宰 飯嶋正広

 

 


聖楽院の組織活動の展望

 

医療 × 声楽の取り組み

主宰・飯嶋は内科医であり、とりわけ心身医学の指導医として、独自の歌唱メソッドを健康の維持・増進に活かす特別プログラムを開発・実践してきました。呼吸・姿勢・共鳴・発声を統合し、自律神経の調整やストレスケアに資する本メソッドは、今後「聖楽院」声楽塾のカリキュラムにも段階的に組み込み、一般の方にも無理なく取り入れていただける予防医療的プログラムとして展開してまいります。


さらに、わが国において、音楽大学の修士課程を修了し、心身医学の指導医資格を併せ持つきわめて稀有のテノール歌手として、音楽療法家の育成にも力を注いでまいります。

 


主宰・飯嶋正広の活動の三本柱(個人)


1. 100の編作芸術歌曲の演奏紹介
 

コンコーネ50番およびトスティ50番に「小倉百人一首」を歌詞として編作した作品群の発表と実演

 


2. ラフマニノフ歌曲の専門的演奏
 

わが国においてラフマニノフを専門的に研究し、歌唱実績をもつ唯一のテノール歌手としての演奏活動

 


3. 万葉集歌曲の創作と実演

 

特に「東歌」を歌詞とした芸術歌曲の作曲と舞台演奏

 

 

聖楽院の組織活動の展望(団体)


• 「聖楽院」声楽塾の開設
 

アマチュア声楽家のための独自メソッドを活かし、学びと実践の場を提供する声楽教育プログラムを展開します。

 


• 「聖楽院」コンサートの開催
 

塾生とプロの音楽家が共演する舞台を早期に実現し、演奏活動と文化交流の場を育んでまいります。

 


• 音楽療法家の育成
 

医療と芸術の橋渡しを担う人材を育成し、臨床・教育・地域で活躍できる音楽療法の実践力を涵養します。

このたび「聖楽院」としての活動を再開し、東京都内および茨城県をはじめとする近隣地域を拠点に活動を展開してまいります。今後も声楽芸術を通じて豊かな文化交流の場を育み、多くの皆さまと共に歩みを重ねていけるよう努めてまいります。

 

 

今後の音楽活動予定(セッションコンサート)

注:「声楽院」のセッションコンサートは、及川音楽事務所主宰のフレッシュガラコンサートのプログラム中で20分間の枠組のミニ・コンサートです。
コンサート会場は当面の間、池袋の豊島区民センター小ホールです。

 

2025年10月1日(水)昼:第1回セッションコンサート

出演者

飯嶋正広(テノール)

・トスティ作曲ソルフェージュ50番No8飯嶋編作「秋風にたなびく雲の」

・ラフマニノフ作曲「歌うな、美しい女よ!」

 

藤井夕楓(ソプラノ)

・ショーソン作曲「蜂雀」

・アルファーノ作曲「メロディ」

・ヴェルディ作曲オペラ《リゴレット》より「慕わしい人の名は」

 

森嶋奏帆(ピアノ)

 

 

2025年11月11日(火)昼:第2回セッションコンサート

 出演者

飯嶋正広(テノール)

・コンコーネ作曲ソルフェージュ50番No34飯嶋編作「深吉野の山の秋」

・ラフマニノフ作曲「捨てよう、愛する女よ」

 

藤井夕楓(ソプラノ)

・ドビュッシー作曲「星の夜」

・ロッシーニ作曲「フィレンツェの花売り娘」

・グノー作曲オペラ《ロミオとジュリエット》より「私は夢に生きたい」

 

中村優花(ピアノ)

 

 

2025年12月2日(火)昼:第3回セッションコンサート

出演者

飯嶋正広(テノール)

・トスティ作曲ソルフェージュ50番No26飯嶋編作「わが庵は都の辰巳」

・ラフマニノフ作曲「夜更けに私の庭で」

 

五日市田鶴子(ソプラノ)

 

交渉中(ピアノ)

 

 

2026年1月13日(火)昼:第4回セッションコンサート

出演者

飯嶋正広(テノール)

・コンコーネ作曲ソルフェージュ50番No29飯嶋編作「カササギの渡せる橋に」

・ビゼー作曲オペラ「カルメン」より「花の歌」

 

亀田尚大(フルート)

・ビゼー作曲オペラ「カルメン」をもとに

「間奏曲」、「カルメン幻想曲」

 

森嶋奏帆(ピアノ)

 

研究課題1:『梁塵秘抄口伝集』の研究

 

『梁塵秘抄口伝集』巻第十二の解読(I)

――付表1〜4における段位解読と平安末期イントネーション原型の推定――

 

飯嶋正広(杉並国際クリニック・声楽院研究所)

 

要旨:

『梁塵秘抄口伝集』巻第十二付表1〜4を分析し、段位(B系列)が文末機能(断言・詠嘆・継続)に安定的に対応することを確認した。律旋法・呂旋法・半呂半律を比較した結果、低終止・高止まり・中位保持の三類型が共通して現れる。また従来平と同一視された「テ」について、本稿は「天」の略である可能性を指摘し、句頭導入機能との結びつきを示す。歌謡資料から今様歌唱および平安末期の会話イントネーション原型を推定する新たな方法を提示した。

 

キーワード:梁塵秘抄、今様、段位、文末機能、イントネーション、平安末期

 

 

 

『梁塵秘抄口伝集』巻第十二の解読(Ⅱ)

――付表5〜8における段位解読と平安末期イントネーション原型の推定――

飯嶋正広(杉並国際クリニック・声楽院研究所)

 

要旨:

本研究は、『梁塵秘抄口伝集』巻第二十に収録される八表を対象として、今様旋律の調性および無調の構造を再検討したものである。従来の研究は、今様を雅楽の律・呂旋法に基づく派生的様式とみなし、五音骨格の存在を強調してきた(田辺, 1934; 久保田, 1968)。しかし、その解釈は八表に含まれる「無調(上無調・下無調)」の存在を十分に説明することができなかった。

 

 本研究は、八表に示される「平・下無・壹越・盤渉・黄鐘」の五音骨格に加えて、双調・上無・神・鳧・壹などの臨時音が旋律に多様性を与えることを確認した。その上で、「無調」は調性の欠如を意味するのではなく、調性を相対化する別の体系であると位置づけられる。具体的には、上無調は上行旋律における拡張の自由を、下無調は下降旋律における収束と修飾の柔軟性を可能にしていた。さらに、第7表・第8表を「禁則表」とみなす従来の解釈を改め、独唱における旋律可能性を提示する枠組みとして再評価した。これにより、今様は伴奏楽器(笙・和琴)がなくても独立して成立し得る歌唱様式であったことが明らかとなる。


 以上の成果により、今様は雅楽旋法の単なる派生ではなく、「調性」と「無調」の二重構造を基盤とする独自の歌謡体系であることが示された。本研究は、中世日本音楽における旋律構造の理解を拡張し、今様研究の新たな方向性を提示するものである。

 


『梁塵秘抄口伝集』巻第十二の解読(Ⅲ)

――(「B系列符号の補充と短音階的機能 ― 表5〜8の再検討」)

 

飯嶋正広(杉並国際クリニック・声楽院研究所)

 

本研究は、『梁塵秘抄口伝集』巻第二十の表5〜8に記されたB系列符号を対象に、その構造的役割と旋律的運用を再検討したものである。従来の研究では、A系列(笙音)およびC系列(歌唱音高)が主に論じられてきた一方で、B系列は補助的・曖昧な記号と見なされることが多かった。そこで本研究は、C系列における絶対音高との対応関係を再構築することにより、B系列が旋律形成に果たした体系的役割を明らかにした。


 分析の結果、B系列は単なる和琴六弦の反映ではなく、器楽と声楽のあいだを媒介する重要な系列であったことが示唆された。上行旋律においては旋律的短音階的な推進力を担い、下行旋律においては自然短音階的な装飾性を帯びるなど、旋律方向に応じて異なる短音階的運用が確認された。これにより、今様旋律は五声音階に基づく骨格を超えて、より多層的かつ感情表現に富む音楽的体系を形成していたと考えられる。


 本研究は、和琴・笙・歌唱という三系列の相互作用の中で、今様が雅楽旋法の単なる派生ではなく独自の音楽体系を築いていたことを明らかにしたものである。B系列の再評価は、中世日本音楽における旋律構造の理解を深めるとともに、今様研究における未踏の領域を切り拓く意義を有する。

 

 

 

『梁塵秘抄口伝集』巻第十二の解読(Ⅳ)

――(「図譜の検討」)

飯嶋正広(杉並国際クリニック・声楽院研究所)

 

本研究は、『梁塵秘抄口伝集』巻第二十において、表3(壹越調・大食調の比較対照表)と表4(双調・水調の比較対照表)の間に挿入された特異な五図「五音啚鏡」を対象とし、その音楽理論的・歌唱実践的意義を解明したものである。詳細な図譜解読の結果、五音啚鏡は単なる五音構造の図示ではなく、今様歌唱における句法モデルを提示する資料であることが判明した。


図譜1から図譜3は、それぞれ 詠嘆系(Exclamatio)・断言系(Cadence conclusiva)・継続系(Continuatio) に対応し、句法三大類型を示す。さらに図譜4は「引音」と題され、継続系の装飾的変型を例示し、図譜5は「宮巡節」として、宮と羽の往復から徴に至る回旋的句法を示すとともに、「スク(すくい上げ)」と「由(揺れ)」という二大声法を秘伝的に伝授する特別なモデルであることが明らかとなった。


また五音啚鏡には、旋律的短音階の上行・下行句法が明確に反映されている。すなわち、上行句法では〈夕〉のような中間音や〈スク〉による装飾的上昇が強調され、下行句法では〈大食〉や〈ウメキ〉、「引音」といった沈潜的処理が規範化されていた。とりわけ図譜5においては、上行と下行の声法が融合し、律呂を兼ねる半呂半律的旋法に対応する普遍的句法として整理されている。


以上の分析により、五音啚鏡は、半呂半律的旋法を横断的に理解させる理論的鏡であると同時に、今様歌唱における情感表現と声法を体系化した実践的歌唱モデル集であることが確認された。したがって本資料は、雅楽旋法理論と今様歌唱実践を接合する、平安末期声楽文化の特質を解明する上で不可欠の史料である。

 

 

研究課題2:『高音発声スキルの医学的アプローチ』の研究

 

Abstract

Objective:This study investigates the distinct functional roles of velar elevation and nasopharyngeal widening in singing, with a focus on their application across vocal registers and voice types. Velar elevation is recognized as a fundamental technique for all singers, particularly for blending timbre through the passaggio, while nasopharyngeal widening is applied predominantly by high voices (soprano, tenor) in the upper head register for acuti, leaps, and climactic high notes.

Methods:A systematic literature review identified 30 key studies spanning anatomy, physiology, acoustics, pedagogy, and clinical voice science. Data on muscles, neural innervation, functional outcomes, controllability, and limiting factors were extracted and synthesized into comparative tables and schematic figures.

Results:Velar elevation primarily engages the levator veli palatini and tensor veli palatini, enabling precise velopharyngeal closure control and vowel-specific formant tuning. Nasopharyngeal widening, mediated by pharyngeal elevator muscles, expands the resonating space, enhancing projection and brilliance in high-register singing. Comparative analysis distinguished controllable domains — trainable via targeted exercises — from constraint-bound domains governed by reflexive mechanisms or anatomical limits.

Conclusions:The resulting framework offers practical guidelines for both voice pedagogy and clinical rehabilitation, facilitating targeted training in controllable domains while accommodating physiological constraints. This register-specific application model bridges artistic and clinical voice practice, with implications for optimizing resonance control, projection, and timbral consistency.

 

_________________________

 

Keywords:Velar elevation、Nasopharyngeal widening、Passaggio、Head voice


いつも当クリニックの活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。


このたび、今月私が執筆した論文が、早くも「日本疼痛漢方研究会」発行の学術誌「痛みと漢方」において採択されましたので、ご報告いたします。


新しい年度を迎える直前の吉兆として、皆様と共に承りたいものと存じます。


掲載論文の概要


論文番号:22


タイトル:「低度炎症と疼痛の関連:漢方を用いた統合医学的アプローチ」


掲載分類:レクチャー


今回の査読では修正の指摘がなく、著者校正のみとなっております。英語表記については、専門担当者が確認を行う予定です。


長年の研究を通じて、疼痛管理における漢方の可能性を追求してまいりましたが、今回このような形で研究成果が評価されたことを大変嬉しく思っております。


本論文では、低度炎症と疼痛の関連を漢方の観点から解明し、統合医学的なアプローチを提案しております。発刊後には、より詳しい内容をお知らせいたします。


今後とも、疼痛治療と漢方医学の発展に寄与できるよう、引き続き精進してまいります。


どうぞこれからもご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


杉並国際クリニック院長
飯嶋 正広


令和7年3月31日


なお、以下は実際の通知メッセージです。

 

 

・・・・・・・・・・・


飯嶋正広 先生

 

いつも大変お世話になっております。
「痛みと漢方」編集部でございます。


このたびご投稿をいただきました下記論文は編集委員会での審査の結果、
「採択」となりましたのでお知らせいたします。


※掲載分類【レクチャー】

分類について、委員に再確認したところ、【レクチャー】予定として
お知らせすることになりました。ご容赦お願いいたします。

 

論文番号:22

 

タイトル:低度炎症と疼痛の関連:漢方を用いた統合医学的アプローチ

 

査読担当者より、今回の判定で修正のご指摘はありませんでした。
著者校正時に用語等のご確認をお願いいたします。


英文については、最新原稿で英文確認の担当者に依頼いたしますので
その旨ご了承ください。

 

何卒よろしくお願いいたします。

 

「痛みと漢方」編集委員長

間宮敬子