東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

< 虚・実の見分け方 >

 

中国伝統医学の中医学理論では、とは、病人の正気と邪気(病邪)との相互の勢力関係を表すものです。

 

これは外感病といって急性感染症などを対象とする場合には有用な理論です。

 

 

この理論では、正気とは病邪に対する身体の抵抗力です。

 

邪気が盛んであれば<実>、正気が奪われれば<虚>とされます。

 

わかりやすく言い直すと、体の正気が不足していて生理機能が衰弱しているものは虚証であり、病邪が充実していて邪気と正気が激しく闘争して、顕著な臨床症状を呈しているのが実証です。

 

 

虚証と判断すれば、病人の正気を補う治療(補法)を行い、実証と判断すれば、病邪を攻撃し排除する治療(瀉法)を行います。

 

 

さて、伝統的な日本漢方では、虚実とは体力の質的な充実度を示す基準になっています。

 

一般的に気・血が充足しているものを実、気・血が不足している者を虚、としています。

 

このような虚・実の概念は、慢性病などを対象とする場合には有用な理論です。

 

 

虚証か実証かを簡単に見分けるためには、伝統的な方法がありますが、発声法を聞き分けるのが便利です。

 

これは、毎日の診療や聖楽院のヴォイストレーニングで

 

 

発声法は、姿勢、呼吸、発語の特徴を観察するのが便利です。

 

 

虚証の人の発声法

 

姿勢は、全体的に弛緩していて緊張に乏しく、肩が下がり、前屈みです。

 

表情は暗く、顔色が悪く、無気力で、目の輝きに乏しく、口角が下がり気味です。

 

呼吸は緩徐で浅い極端な胸式呼吸タイプです。

 

発語は、細く、小さく、発音が不明瞭です。

 

発声は、舌や喉が弛緩し過ぎで、口ごもりがちで、声に力が無く、歌声のピッチは低めですが、歌い続けると音程はずり上がります。

 

歌い方は、消極的で静的で、表現のメリハリに乏しいです。

 

 

実証の人の発声法

 

姿勢は、全体的に過緊張で柔軟性に乏しく、肩が上がり、反り気味です。

 

表情は明るく、顔色が良く、目に輝きがあり、口角は上がり気味です。

 

呼吸は急峻で深く過度な腹式呼吸タイプです。

 

発語は、太く、大きく、発音が明瞭です。

 

発声は、舌や喉が過緊張で、早口で、声に力みが入り、歌声のピッチは高めですが、歌い続けると音程がずり下がります。

 

歌い方は、積極的で衝動的で、表現のメリハリが大げさです。

 

 

<健康的で芸術的な発声法>理想的な発声法は、虚証タイプでも実証タイプでもなく中庸でバランスが取れていてリラックスしている状態での発声です。

 

リラックス状態とは、弛緩状態とは全く異なるものであり、明確に区別されるべきです。

 

リラックス状態とは、固定した状態ではなく、緊張と弛緩の間にあってダイナミックな状態です。

 

つまり、適度な緊張と弛緩の間を自由に行き来できている状態です。

 

これを臨機応変に調節できる準備が整った状態が真のリラックス状態です。

 

 

この理想的な状態を獲得すると、健康増進や潜在的能力の活性化にとても役に立ちます。

 

水氣道聖楽院の活動は、このような能力を獲得するための具体的なメソッドであるといえます。

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<一過性全健忘>

 

健忘とは、過去の一定期間の出来事を思い出せない状態をいいます。

 

 

健忘症とは、陳述記憶の障害を指します。これには前向性健忘(新しいことが覚えられない)と逆行性健忘(発症以前に覚えたことを思い出せない)があります。

 

追想できる範囲により、全健忘部分健忘に分けられます。

 

 

一過性全健忘は、突然誘因なく発症し、発作中は意識清明であるが、前向性健忘と逆向性健忘の両症状を主徴とする症候群です。

 

発作は平均5~6時間続き、24時間以内に消失するといった予後良好な経過をたどります。

 

 

50~70歳代には75%と多いですが、40歳未満の発症は稀です。

 

 

見当識は保たれるが、近時記憶障害のため、同じ質問を繰り返します。

 

発作中の記憶は永久に欠落します。ただし、数唱などの即時記憶、自分の生い立ちなど遠隔記憶は保たれ、意味記憶手続き記憶も保たれるので、車の運転、料理も可能です。

 

 

診断基準(1990年、Hodgeら)

 

1)発作中の情報が、その間ほとんど目撃した目撃者から得られる

 

2)発作中、明らかな順行性健忘が存在する

 

3)意識障害は無く、高次脳機能障害は健忘に限られる(失語や失行はない)

 

4)発作中および発作後に神経学的徴候はない

 

5)てんかんの特徴がない

 

6)発作は24時間以内に消失する

 

7)最近の頭部外傷や活動性のてんかん(治療中、過去2年間に発作があったもの)のある患者は除外する

 

 

原因は未だ不明で、従来から両側の海馬障害によると考えられています。

 

片頭痛、脳血管障害、代謝異常および脳静脈灌流異常などが推測されている他、精神的ストレスなど情動的なもの、入浴、水泳およびバルサルバ負荷が誘因になることが報告されています。

 

 

画像診断では、頭部単純MRI拡散強調像で、発症直後に異常はないが、6~72時間で海馬CA1領域を中心に小さな異常信号を検出でき10日後までに消失するのが観察できることがあります。

 

これは、一過性全健忘の特徴といわれ、診断の一助になります。

 

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<皮膚に現れる内科の病気:予後不良の皮膚筋炎の早期鑑別>

 

皮膚筋炎(DM)は、特徴的な皮疹によって容易に診断できるが、治療は難しいことがあります。

 

 

治療の第一選択は副腎皮質ステロイドです。ステロイド抵抗例にはアザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなどの免疫抑制薬が併用されます。

 

さらに抵抗性を示す難治性例では免疫グロブリン大量療法が適応になります。

 

 

DMの診断基準は、まず(1)皮膚症状です。ヘリオトロープ疹、ゴットロン丘疹、ゴットロン徴候のうちの1項目以上を満たすことです。

 

ついで、経過中に、以下の項目中4項目以上を満たすものです。

 

(2)上肢または下肢の近位筋の筋力低下、

(3)筋肉の自発痛または把握痛、

(4)血清中筋原性酵素(クレアチニンキナーゼまたはアルドラーゼ)上昇、

(5)筋電図の筋原性変化、

(6)骨破壊を伴わない関節炎または関節痛、

(7)全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、または赤沈亢進)、

(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性、

(9)筋生検で筋炎の病理所見(筋線維の変性及び細胞浸潤)

 

なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは無筋症型皮膚筋炎とされます。

 

 

抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体:抗aminoacyl-tRNA synthetase抗体)陽性例は、臨床的には、筋炎、間質性肺炎、発熱、レイノー現象、関節炎、機械工の手などが特徴です。

 

間質性肺炎はステロイドに反応するものの、再燃を繰り返しつつ慢性的に経過するため、カルシニューリン系の免疫抑制剤を併用することが多いです。

 

 

抗Jo-1抗体陽性例は再発しやすいが、副腎皮質ステロイドに対する治療反応性は良好です。

 

 

2016年から、抗Mi-2抗体・抗TIF1ɤ抗体・抗MDA抗体(抗CADM-140抗体)検査が保険収載され、DMと確定診断された患者のみ測定できるようになりました。

 

 

抗Mi-2抗体陽性例は、皮膚症状が強い一方、肺病変や悪性腫瘍が少ないタイプのDMであり、ステロイド療法に反応し予後は良好です。

 

 

抗TIF1ɤ抗体陽性例は、悪性腫瘍合併DMの約半数で陽性になります。

 

 

抗MDA5抗体(抗melanoma differentiation-associated gene 5抗体)陽性DMでは、とくに、急性進行性間質性肺炎を合併しやすいことが知られています。

 

この抗体はDMの15~30%で陽性になり、抗Jo-1抗体よりも高頻度に出現する一方、抗MDAA5抗体は多発性筋炎(PM)では陽性になりません。

 

 

抗MDA5抗体陽性DMの特徴は、筋症状に乏しいCADM(clinically amyopathic DM),皮膚潰瘍を伴うゴットロン徴候、間質性肺炎の合併、血清フェリチン高値などがあります。

 

約半数の患者では、間質性肺炎は急速進行性の経過をたどります。

 

致死率が高く、ステロイドパルス療法に加え、早期より積極的に免疫抑制薬を併用する必要があります。

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<総合アレルギー診療から統合医療へ、No1>

 

 

今回は、総合アレルギー科的アプローチによって、良好な経過をたどっているM.Iさんからいただいたリポートをご紹介するとともに、解説を加えたいと思います。

MI

 

 

M.Iさんのイニシャルは偶然私と同じなので印象的でした。

 

都内X大学医療センター関連病院からいただいたM.Iさんの紹介状では、

 

①症状:主に両手、両足と顔や体の一部に痒みを伴う隆起した発疹が多数できている。

 

②診断名:リンパ腫様丘疹症

 

③経緯等:5,6年前より両手、両足を中心に発疹ができ始め、数が増加する一方のため複数の病院にかかるが治らず。X大学医療センター皮膚科でパッチテスト等各種検査を行い、一応「リンパ腫様丘疹症」と診断される。

(とりあえず診断名をつけるとすれば、という感じ)そこで何回か光線療法を行うが仕事の関係で通院不可能になり一旦治療中止。その後内科系も診てもらうが特に問題なしとの診断。

一昨年くらいからYにあるZクリニックに通い光線療法等を行い一時的に数が減ったが、しばらくするとまた復活。

光線療法が実質平日しか受けられない為、昨年秋から通院断念。

今年の6月よりまた通院(光線療法含む)再開するが、症状は変わらずすこしひどくなっていて痒みで夜寝られない状態になっている。

 

 

処方薬リスト

 

錠剤19種類、塗り薬15種類、貼り薬1種類、漢方8種類

 

※処方された薬で特に利いたというものは無し。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

以上は、忠実に(医療機関名、所在地は匿名とし、薬剤名等は省略)写し書きしました。

 

とても丁寧な紹介状で、検査データ等も添付され、受け手としては申し分なく、感謝しています。

 

 

ところで、M.Iさんと多数の専門医の先生方が、長期に亘って格闘してこなければならなかった理由はどこにあるのでしょうか?

<諸外国語と私>

 

何らかの教養を身につけたいと思う方に私がお勧めしたいのは、音楽と語学です。

 

この二つは特別に裕福でない人でも手軽に始められるからです。

 

 

音楽も凝りだすと音学になることもありますが、語学もゆっくり味わいながら続けていくと語楽になります。

 

一番注意しなければならないのは、音が苦、語が苦にならないようにすることだと思います。

 

 

私の場合は、音楽と語学に境界線を設けてはいません。

 

音楽と語学は二つで一つだからです。

 

私にとって音楽のメインは声楽なので、必ず歌詞、つまり言葉を伴います。

 

これが外国の曲であれば、当然ながら外国語の歌詞になります。

 

とくにクラシック声楽に親しむ上では、外国語とのお付き合いはとても大切です。

 

どのような言語で歌うかというと、頻度順にイタリア語、ドイツ語、フランス語あたりでしょうか。

 

これは、私に限った話ではなく、声楽家にとって、ごく一般的な傾向のようです。

 

 

ここでお気づきかもしれませんが、英語の歌というのは、ジャズやポップスと比較するとクラシック声楽では少数派です。

 

むしろ、スペイン語やロシア語の方が活躍しているかもしれません。

 

英語の詩が少ないということは、今後のクラシック声楽の普及についていえば決してプラス要因ではないと思います。

 

英語以外の外国語で歌を歌っても、大抵の場合、観客に言葉の意味が通じないというハンディを背負うことになるからです。

 

 

しかし、圧倒的な影響力のある英語は、事実上、世界を席巻している言語であるということができますが、人類の遺産の継承と発展のためには、英語だけで事足れり、というわけにはいかないと思います。

 

国連の公用語は、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の他、中国語やアラビア語もあります。

 

残念ながら、それでもクラシック声楽でのいわゆる公用語ともいうべき、イタリア語、ドイツ語は日本語と同様に国連の公用語ではないのです。

 

クラシック声楽にとって、言語の問題は少なくないと思います。

 

 

私は、年末には諸言語メドレー形式のコンサートを企画しています。

 

ラテン語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語そして日本語の曲でプログラムを組み立てます。

 

今後は、英語やロシア語も加えることを試みたいと考えています。

 

年に1ないし2回程、海外に出張する時に、言葉が通じる、あるいは言葉に親しみや愛着が持てるということは、とても大きな恵みをもたらしてくれます。

 

 

声楽をとおして外国語に親しむということは、まだまだ計り知れない多方面での効用があることが推測されます。

テーマ:日常診療に役立つヤマト言葉の音(オノマトペ)①

 

 

日本語には、深い情感を表わす語が豊富に育まれてきたという特質があります。

 

それは日本人が深く心にしみわたる豊かな情感を表わす語を好んできたという事情があるのだろうと思います。

 

これは、日常の診療においてとても大きな力を発揮してくれることを、最近になって再認識しました。それをご紹介いたします。

 

 

このオノマトペ(仏:onomatopee、onomatopée)とは擬声語を意味するフランス語です。英語では onomatopoeiaでありオノマトペアとも言います。

 

 

擬声語とは擬音語擬態語の総称のことです。自然界の音・声、物事の状態や動きなどを音(おん)で象徴的に表した音象徴語です。

 

日本語にはこうした音象徴語(オノマトペ)がとりわけ豊かで英語その他の欧州の諸言語より豊富に存在するようです。

 

オノマトペは、言葉の中に潜む音楽的な要素のひとつとして、音色・音感だけで様子や情感を伝えることができます。

 

 

とりわけ日本語のオノマトペの文法上の品詞は,副詞に限らず品詞論的に多様な振舞いをすることがこれまで多数の研究において指摘されています。

 

この事実は日本語のオノマトペが実感を伝える力に秀でた言葉であることと無関係ではないと思います。

 

さらには日本語の起源がオノマトペに発したものとする見解も可能足らしめているのではないかとも考えます。

 

石黒広昭(1993)もオノマトペの発生が言語起源論にかかわることに着目していました。

 

石黒は言語の起源を「自然の叫び声」から「模倣音」にかわることとし、最終的に「共同の同意」に基づいて「音声の文節化」が行われると述べています。

 

石黒広昭1993「オノマトペの発生」(『言語』第 22 巻第 6 号)

 

 

それでは、なぜヤマト言葉の音そのもので様子や感じが伝わるのでしょうか。

 

ヤマト言葉には言霊(ことだま)が宿っているとはこのことなのでしょうか。

 

 

科学的に見方をすれば擬音語の場合は聴こえる音を聞こえるままに仮名で書き起こしていることで説明がつきます。

 

しかし、擬態語の場合はどうでしょうか?なぜ私たちは同じ痛みでも、「きりきり」は刺すような鋭い痛み、「ずーん」は重苦しい鈍い痛みだと感じるのでしょうか?

 

 

この主観的な感覚表現の違いは、痛みを中枢神経系である脳に伝える末梢神経の種類の違いに対応しています。

 

感覚は末梢神経の太さによって、いくつかに分類され、それぞれ伝える刺激が違います。

 

痛みの刺激を受け持つのは、少し太めのAδ線維と細いC線維です。

 

Aδ線維は痛みを一瞬で感じ取り、素早く中枢神経に伝え、C線維はやや遅れて痛みの刺激を送ります。

 

ケガをした時、「イタッ!」と反射的に痛みが走り「きりきり」と刺すように痛むのはAδ線維、しばらくして湧いてくるジーンと焼けるような、あるいは「ずーん」とする重苦しい鈍い痛みあるいは痛みはC線維が脳に伝えるからです。

 

日々の臨床12月11日もご参照ください

 

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

< 循環器疾患診断の進歩―PET >

 

医学の進歩は日進月歩。その恩恵を受けて、診療所の外来診療で対応できる守備範囲が急速に広がってきたとともに、後方支援病院への協力を要請すべき領域も増えています。

 

循環器疾患では、とくに早期発見や病態把握が重要なケースが多く、患者さんの病態水準を見える化(可視化)するのみならず、数値化(定量化)できるようにしたいものです。

 

 

たとえば、PET(ポジトロン断層撮影法)とは、陽電子放射断層法ともよばれ、最近注目されている機能画像診断法です。

 

ポジトロンとは+(プラス)に荷電された電子(陽電子)を指します。

 

このポジトロンで標識された物質の体内動態をPET装置を利用して映像化する方法がPET検査です。

 

 

この装置は、心筋局所の血液の流れを画像化することで、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)の診断や血流量の定量的測定が行われます。

 

その他に、心筋のエネルギー代謝の解析、さらには神経受容体機能評価に至るまで種々の解析が進んでいます。

 

 

PETを用いた心筋血流量の評価は、単に虚血性心疾患の診断や重症度評価に限らず、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満、喫煙などの冠動脈硬化の重症度や進行過程、さらには治療効果判定などの経過観察をするうえでも有用です。

 

 

心臓のエネルギー源はブドウ糖です。そこで心筋のブドウ糖利用を映像化できる18F⁻フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いることによってPET検査で心筋の活動能力を判定することができます。

 

血流のみならず糖代謝の評価により、血行再建のための手術後の患者さんの心臓の機能回復を高い精度で予測することもできます。

 

 

心筋梗塞後の症例に、こうしたFDG-PETなどの検査によって虚血心筋の存在が正確に評価できるようになることが望まれます。

 

そうなれば、将来起こりうる虚血障害に伴う心血管イベント(事故)を予防し、予後の見込みを明るくするために、タイミングをはずさずに積極的に治療を施すことができるようになると思います。

 

 

もっとも、どんなに医学が進歩しても、一人一人の日常生活においての心掛け、すなわち、養生や鍛錬が前提にあることは、忘れてはなりません。

 

 

一人でも多くの皆様に、水氣道への参加を呼び掛けているのは、高度医療の普及は国家の医療費の圧迫に繋がり、その結果、本当に必要な患者さんのための医療提供が滞ってしますからです。

 

水氣道は、本人を助けるばかりでなく、家族や社会、そして国家をも助けることができるという自信があります。

 

 

水氣道の推奨と高度医療に対する認識を深めることは、互いに矛盾することではなく、助け合うものであることをご理解いただければ幸いです。

総合医療・プライマリケア

 

< 診断の基礎は日本語のオノマトペ >

 

日常診療において、問診はとても大切です。

 

しかし、医師としての臨床現場での経験は重ねてきたにもかかわらず、最近、患者さんの表現を正確に理解することが、少しずつ難しくなってきていると感じることがあります。

 

 

その背景をふり返って思いを巡らせてみますと、まず患者さんの言葉の使い方が大きく変化しつつあるということです。

 

それは、おそらくインターネットやスマホの普及とともに患者さんの一過性の断片的な情報や知識が増えつつあるようです。

 

その一方で、体系的な知恵の集積が乏しく、その場その場での思い込みや、根拠に乏しい自分勝手な印象や願望で判断して行動に移す傾向がみられます。

 

実際に、そうした素人判断や思い込みに基づく薬の処方を求めてこられるケースも少なくありません。

 

まさに診療所のコンビ二化現象です。そうした方々にとって、診療所とは健康保険が使えるドラッグストアに過ぎないのかもしれません。

 

 

患者さんが医師に伝えてほしい言葉は、医師が用いる客観性が高い書き言葉である専門学術用語(漢字言葉)ではなく、患者さん自身しか直接体験できない情報を伝える日常的な話し言葉です。

 

それには、主観的に体験している内容を情感豊かに表現できる日本古来のヤマト言葉(仮名言葉)が優れています。

 

とくに敬語や謙譲語や丁寧語が発達している日本語によって、日本語を使う日本人は相手の側に立って言葉を選択する習慣が形成されていくように思われます。

 

しかし、近年その美風が少しつ廃れている反面、日本人本来のサービス精神は依然旺盛であるためか、医師に対しても、知らず知らずのうちに、相談相手である医師を忖度(そんたく)してしまうためなのか、不慣れで不適切な医学用語を使いたがる傾向がみられます。

 

 

たとえば、頭が痛いときに、いきなり<へん頭痛の薬ください>とおっしゃる方がいらっしゃいます。

 

これを医師の立場で素直に受け止めると、

 

他院ですでに<片頭痛>の診断済

 

⇒ 現在内服中の治療<薬>が無くなったので継続あるいは繋ぎの処方希望か?

 

と暫定的に判断して、念のために患者さんに確認のための質問をいたします。

 

 

Q 『<片頭痛>の診断はどちらのドクターによるものですか?』

 

すると、A1『頭の片側だけ痛いので片頭痛で間違いないです。』 と、頭の両側が痛む片頭痛もあること、頭の片側だけ痛むのは、片頭痛とは限らないことをご存じない素人診断や、

 

A2『えっ?いつもとは違う変な頭痛なので変頭痛だと思います。』

 

など、全くの勘違いの思い込み、などもあります。

 

 

診療中の会話の中で、本来、書き言葉である漢語の医学用語を用いる場合には、医師はその言葉の医学的根拠を再検討する責任が生じます。

 

話し言葉を書き言葉に変換することを要します。上記の例でいえば、患者さんの発する<へんずつう>は、必ずしも『片頭痛』とは限らず、『変頭痛』という造語であるかもしれないからです。

 

医師は、そうした患者さんが発する医学用語もどきの根拠不明の漢語を慎重にヤマト言葉の音に翻訳するという作業を行わなければなりません。

 

ヤマト言葉の音(オノマトペ)は、患者さんの様子や感じが直接伝わりやすく共感あるいは共鳴しやすくなるため、正しい患者理解につながり、ひいては適切な診断と治療に結びつくからです。

 

 

それでは、なぜ音そのもので様子や感じが伝わるのでしょうか。

 

擬音語の場合は聴こえる音を聞こえるままに仮名で書き起こしていることで説明がつきます。

 

しかし、擬態語の場合はどうでしょうか?なぜ私たちは同じ痛みでも、「きりきり」は刺すような鋭い痛み、「ずーん、ずーん」は重苦しい鈍い痛みだと感じるのでしょうか?

 

 

この主観的な感覚表現の違いは、痛みを中枢神経系である脳に伝える末梢神経の種類の違いに対応しています。

 

感覚は末梢神経の太さによって、いくつかに分類され、それぞれ伝える刺激が違います。

 

痛みの刺激を受け持つのは、少し太めのAδ線維と細いC線維です。Aδ線維は痛みを一瞬で感じ取り、素早く中枢神経に伝え、C線維はやや遅れて痛みの刺激を送ります。

 

ケガをした時、「イタッ!」と反射的に痛みが走り「きりきり」と刺すように痛むのはAδ線維、しばらくして湧いてくるジーンジーンと焼けるような、あるいは「ずーん、ずーん」とする重苦しい鈍い痛みあるいは痛みはC線維が脳に伝えるからです。

 

 

私は、古来よりの日常用語であるヤマト言葉(はなしことば)は、現代の医療において、ますますその有用性を発揮できる言葉であるという認識を深めつつあります。

 

患者の皆様は、日頃から、ご自分の主観的な体験を漢語(書き言葉)ではなくヤマト言葉(はなしことば)で“いきいき”と表現することで“のびのび”と毎日を健やかに過ごしていただけたらと思います。

統合医学(東西医学、代替・補完医療)

 

<モーツアルトの音楽はなぜ心身の健康のために良いのか>

 

 

モーツアルトの音楽による音楽療法を考案したのは、フランスの耳鼻咽喉科医であったアルフレッド・A・トマティス博士です。

 

トマティス博士がなぜモーツアルトの音楽に着目したかについて、詳しいことは勉強中ですが、モーツアルトの音楽の特徴にヒントが隠されています。

 

 

モーツアルトの楽曲の第一の特徴は3,500から4,000ヘルツの周波数の音域が豊富であることす。

 

楽曲の周波数は音の高さを決定します。人間の耳は、3,500ヘルツあたりが一番よく聞こえる(大きな音に聞こえる)そうですが、これは高音領域です。

 

この周波数の高音は延髄より上位の脳神経系を賦活するとされています。

 

とくに副交感神経が活性化するようです。左右12対ある脳神経のうちの第10脳神経は迷走神経です。

 

この神経は脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経です。

 

この神経は下部延髄に起こり各臓器に広く分布する多数の枝を延ばしています。

 

首から腹(消化器における下端は横行結腸右1/3)までのほとんど全ての内臓の運動神経と副交感性の知覚神経は迷走神経に支配されています。

 

 

モーツアルトの楽曲の第二の特徴は、透明感のある音によるシンプルな旋律(メロディー)による反復が多いということです。

 

これは聴く者の気分を落ち着かせ穏やかな状態へと誘ってくれます。

 

 

モーツアルトの楽曲の第三の特徴は、和音(ハーモニー)の多用です。

 

これによって揺らぎ音である倍音の効果が生まれます。私たちの聞いているほとんどの音は、基の音に対して2倍・3倍・4倍 の周波数の音が一緒に耳に届きます。

 

この倍音の付き方の違いが、音色になります。

 

そして揺らぎ効果は高周波帯の音が延髄や視床下部に効果的に作用します。

 

その結果、副交感神経系への刺激が強まります。

 

アセチルコリン、βエンドルフィン、メラトニンなどの分泌が起こり、また唾液などの外分泌も増え、それに伴い免疫蛋白質であるIgAが増加します。

 

また血流が改善することで体温も上昇し、いっそう免疫力を高めます。

 

 

ここで、共鳴や倍音に話をするために「フォルマント」について説明します。

 

基音の上にはさまざまな倍音が乗っていますが、すべての周波数に均等に分布しているわけではありません。

 

声に含まれる周波数成分の分布において特に集まっている部分をフォルマントといいます。

 

このフォルマントが3000Hz付近に集まると「よく届く声」、「共鳴している声」に聴こえます。

 

3000Hz付近は耳の蝸牛が共鳴しやすいからです。

 

逆に、届く声が出せるようにするためには「共鳴感覚」を身につける必要がありそうです。

 

 

超一流の歌手の声は、周波数が 3,000 5,000 8,000 ヘルツあたりにしっかりとした倍音を伴っているそうです。

 

これは、声の音程や声種、性別に関係なく共通です。3,000へツルの倍音を持つ声は、大きな声に聞こえますし、いくら力任せに頑張って、大きな声を出しても、ここの倍音が伴っていなければ声は遠くに届きません。

 

近くで聞く耳触りで、ちょっと離れると聞こえない、という近鳴り(ちかなり)と呼ばれる、不快で効率の悪い声になってしまいます。

 

また8,000ヘルツは、ピアノの一番高いオクターヴあたりで、この倍音がずっと鳴り続ける声は、最高の価値があるそうです。   

 

私たちは耳に聞こえない超高周波や超低周波を一緒に聞くと、脳には、リラックス時のα波、さらに、深い瞑想時のθ波が発生します。

 

超音波は脳幹に作用して、血行を促し・血圧を正常にし・免疫力を高めますが、この超高周波は、モーツアルトの楽曲を奏でる音域の広いオーケストラ、鐘の音や風鈴などの他に、鳥のさえずり・虫の声・川などの水の流れの音などからも出ています。

 

水中運動である水氣道の稽古中も、実はこうした高周波音が発生しています。

 

 私たちにとって身近なCD などの現代のデジタル音は、耳に聞こえない20000ヘルツ以上の超高周波数の音域はカットしてあります。

 

それでは、かえってリラックス作用を損なうことになってしまうことになります。

 

 

私が水氣道や聖楽院を設立した理由の一つは、もっと自然の音や生の演奏に身近にたくさん触れて、体と心、耳と脳を潤す必要があると考えてきたからでもあります。

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「列缺(れっけつ)」です。

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場所は手首の後ろの高い骨のそばです。

 

 

「感冒」「せき」「片頭痛」「顔面神経麻痺」「頚椎症」「歯痛」等に効果があります。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭