日々の臨床⑤:12月14日木曜日<皮膚に現れる内科の病気:予後不良の皮膚筋炎の早期鑑別>

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<皮膚に現れる内科の病気:予後不良の皮膚筋炎の早期鑑別>

 

皮膚筋炎(DM)は、特徴的な皮疹によって容易に診断できるが、治療は難しいことがあります。

 

 

治療の第一選択は副腎皮質ステロイドです。ステロイド抵抗例にはアザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなどの免疫抑制薬が併用されます。

 

さらに抵抗性を示す難治性例では免疫グロブリン大量療法が適応になります。

 

 

DMの診断基準は、まず(1)皮膚症状です。ヘリオトロープ疹、ゴットロン丘疹、ゴットロン徴候のうちの1項目以上を満たすことです。

 

ついで、経過中に、以下の項目中4項目以上を満たすものです。

 

(2)上肢または下肢の近位筋の筋力低下、

(3)筋肉の自発痛または把握痛、

(4)血清中筋原性酵素(クレアチニンキナーゼまたはアルドラーゼ)上昇、

(5)筋電図の筋原性変化、

(6)骨破壊を伴わない関節炎または関節痛、

(7)全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、または赤沈亢進)、

(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性、

(9)筋生検で筋炎の病理所見(筋線維の変性及び細胞浸潤)

 

なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは無筋症型皮膚筋炎とされます。

 

 

抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体:抗aminoacyl-tRNA synthetase抗体)陽性例は、臨床的には、筋炎、間質性肺炎、発熱、レイノー現象、関節炎、機械工の手などが特徴です。

 

間質性肺炎はステロイドに反応するものの、再燃を繰り返しつつ慢性的に経過するため、カルシニューリン系の免疫抑制剤を併用することが多いです。

 

 

抗Jo-1抗体陽性例は再発しやすいが、副腎皮質ステロイドに対する治療反応性は良好です。

 

 

2016年から、抗Mi-2抗体・抗TIF1ɤ抗体・抗MDA抗体(抗CADM-140抗体)検査が保険収載され、DMと確定診断された患者のみ測定できるようになりました。

 

 

抗Mi-2抗体陽性例は、皮膚症状が強い一方、肺病変や悪性腫瘍が少ないタイプのDMであり、ステロイド療法に反応し予後は良好です。

 

 

抗TIF1ɤ抗体陽性例は、悪性腫瘍合併DMの約半数で陽性になります。

 

 

抗MDA5抗体(抗melanoma differentiation-associated gene 5抗体)陽性DMでは、とくに、急性進行性間質性肺炎を合併しやすいことが知られています。

 

この抗体はDMの15~30%で陽性になり、抗Jo-1抗体よりも高頻度に出現する一方、抗MDAA5抗体は多発性筋炎(PM)では陽性になりません。

 

 

抗MDA5抗体陽性DMの特徴は、筋症状に乏しいCADM(clinically amyopathic DM),皮膚潰瘍を伴うゴットロン徴候、間質性肺炎の合併、血清フェリチン高値などがあります。

 

約半数の患者では、間質性肺炎は急速進行性の経過をたどります。

 

致死率が高く、ステロイドパルス療法に加え、早期より積極的に免疫抑制薬を併用する必要があります。