日々の臨床 ⑦:12月16日 土曜日

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

< 虚・実の見分け方 >

 

中国伝統医学の中医学理論では、とは、病人の正気と邪気(病邪)との相互の勢力関係を表すものです。

 

これは外感病といって急性感染症などを対象とする場合には有用な理論です。

 

 

この理論では、正気とは病邪に対する身体の抵抗力です。

 

邪気が盛んであれば<実>、正気が奪われれば<虚>とされます。

 

わかりやすく言い直すと、体の正気が不足していて生理機能が衰弱しているものは虚証であり、病邪が充実していて邪気と正気が激しく闘争して、顕著な臨床症状を呈しているのが実証です。

 

 

虚証と判断すれば、病人の正気を補う治療(補法)を行い、実証と判断すれば、病邪を攻撃し排除する治療(瀉法)を行います。

 

 

さて、伝統的な日本漢方では、虚実とは体力の質的な充実度を示す基準になっています。

 

一般的に気・血が充足しているものを実、気・血が不足している者を虚、としています。

 

このような虚・実の概念は、慢性病などを対象とする場合には有用な理論です。

 

 

虚証か実証かを簡単に見分けるためには、伝統的な方法がありますが、発声法を聞き分けるのが便利です。

 

これは、毎日の診療や聖楽院のヴォイストレーニングで

 

 

発声法は、姿勢、呼吸、発語の特徴を観察するのが便利です。

 

 

虚証の人の発声法

 

姿勢は、全体的に弛緩していて緊張に乏しく、肩が下がり、前屈みです。

 

表情は暗く、顔色が悪く、無気力で、目の輝きに乏しく、口角が下がり気味です。

 

呼吸は緩徐で浅い極端な胸式呼吸タイプです。

 

発語は、細く、小さく、発音が不明瞭です。

 

発声は、舌や喉が弛緩し過ぎで、口ごもりがちで、声に力が無く、歌声のピッチは低めですが、歌い続けると音程はずり上がります。

 

歌い方は、消極的で静的で、表現のメリハリに乏しいです。

 

 

実証の人の発声法

 

姿勢は、全体的に過緊張で柔軟性に乏しく、肩が上がり、反り気味です。

 

表情は明るく、顔色が良く、目に輝きがあり、口角は上がり気味です。

 

呼吸は急峻で深く過度な腹式呼吸タイプです。

 

発語は、太く、大きく、発音が明瞭です。

 

発声は、舌や喉が過緊張で、早口で、声に力みが入り、歌声のピッチは高めですが、歌い続けると音程がずり下がります。

 

歌い方は、積極的で衝動的で、表現のメリハリが大げさです。

 

 

<健康的で芸術的な発声法>理想的な発声法は、虚証タイプでも実証タイプでもなく中庸でバランスが取れていてリラックスしている状態での発声です。

 

リラックス状態とは、弛緩状態とは全く異なるものであり、明確に区別されるべきです。

 

リラックス状態とは、固定した状態ではなく、緊張と弛緩の間にあってダイナミックな状態です。

 

つまり、適度な緊張と弛緩の間を自由に行き来できている状態です。

 

これを臨機応変に調節できる準備が整った状態が真のリラックス状態です。

 

 

この理想的な状態を獲得すると、健康増進や潜在的能力の活性化にとても役に立ちます。

 

水氣道聖楽院の活動は、このような能力を獲得するための具体的なメソッドであるといえます。