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内科認定医、心療内科指導医・専門医 アレルギー専門医 

 

飯嶋正広

 

呼吸器病学とアレルギー学の接点

 

アレルギー舌下免疫療法の適応と限界と総合アレルギー専門医の役割(前編)

 

花粉症の季節になりました。花粉症以外に、アトピー性皮膚炎、喘息など複数のアレルギー疾患で困っている方の中には、精神的に参っているせいもあってか、不安、いらいら、攻撃性、抑うつ、神経過敏になりがちなようです。

 

ある30代の男性の症例を紹介します。この男性は、以前からアトピー性皮膚炎と喘息があるため、皮膚科と呼吸器内科を受診していました。5年前から2月になると鼻汁、くしゃみ及び目のかゆみで悩まされるため、耳鼻咽喉科と眼科も受診し、さらに熟眠障害を来したため、心療内科(実際には精神科)も受診していました。

 

そこで、5科の通院が困難なため、耳鼻咽喉科と眼科と呼吸器内科のかわりに、アレルギー内科を受診し、フェキソフェナジン(アレグラ®)を服用していました。

しかし、眠気のために仕事に支障がでるため、3年前に大学病院のアレルギー専門外来で、スギ花粉抗原による舌下免疫療法をはじめました。しかし、「季節の症状が一向に改善しないので、舌下免疫療法を止めて、眠気の出ない有効な治療法をはじめて、次の季節は楽に過ごしたい」との相談を受けました。

 

なお、当クリニック初診時には、鼻汁、くしゃみに加えて、両側の鼻閉を確認しました。

 

免疫血清学的所見:

IgE 135U/L(基準170以下)、特異的IgE検査(RAST):ハンノキ(クラス0)、スギ(クラス3)、ヒノキ(クラス2)、カモガヤ(クラス0)、ダニ(3)

 

大学病院のアレルギー専門医は、スギ花粉による花粉症の症状であると判断してスギ花粉抗原舌下免疫療法を開始したものと推定することができます。

スギ花粉症に対しては、多くの場合は、いまだに対症療法が広く用いられていて、症状のコントロールには有効性を発揮しています。外用剤としては抗アレルギー点眼薬、副腎皮質ステロイド点鼻薬、内服薬としては抗アレルギー薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)が選択肢となります。

 

この症例では、以前、抗アレルギー内服薬は鼻汁、くしゃみに有効でした。また、眼のかゆみに対しては抗アレルギー点眼薬が有効であったようです。

 

最初の担当医は、抗アレルギー薬のなかでも眠気の副作用が少ないことが特徴であるフェキソフェナジン(アレグラ®)を処方したにもかかわらず、服用により仕事に差し支える程度の眠気が生じています。そこで、スギ花粉症の原因療法であるスギ花粉抗原舌下免疫療法は確かに良い適応になります。

 

それでは、この症例では、なぜスギ花粉抗原舌下免疫療法が有効でなかったのでしょうか?そのような場合には、どのような対処法があるのでしょうか?

 

一つだけ言えることは、この症例は単なるスギ花粉症ではないということです。

スギ花粉症のある人の約7割にヒノキ花粉症が合併しますが、この症例も例外ではありませんでした。そのため、スギ花粉抗原舌下免疫療法だけでは、十分に花粉症を根治することはできません。

 

また、スギやヒノキなどの季節性花粉症だけではなく、通年性のダニアレルギーも合併しているため、年間を通して慢性アレルギー性鼻炎が基盤にある可能性があります。

そのようなタイプの方は、花粉症のシーズン以外の時期においてのアレルギー性鼻炎の症状に関しては鈍感になっている傾向があるように観察されます。特に鼻閉を伴う例では、その傾向がより明らかであることを多数経験しています。

 

次回は、この課題に対して、検討を加えていきたいと思います。

 

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臨床産業医オフィス

 

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

産業医による就業上の措置に関する意見のあり方について(No3)

 

―手順や判断基準に関する課題-

 

産業医は、精密検査の結果に基づいて、医学的に「要治療」、「要保健指導」、「要観察」(これには、一定期間後の血圧測定、血液生化学検査などの指示も含まれます)、「特別な対応不要」、に仕分けします。しかし、この業務は、企業外の外部の健康診断サービス機関の医師が既に判定済であることがほとんどです。
 

そこで、産業医の業務は「通常勤務」、「就業制限」、「就業禁止」のいずれに該当させるかという就業区分において意見を述べることが中心になります。その際、判定の前提として、労働者の考えや希望を聴取しておくことは不可欠であるとされています。しかし、実際にこれを実践することは容易ではありません。

 

産業医は産業医学及び臨床医学の面から情報を収集していますが、いずれも十分な情報は存在せず、産業医は自らの経験を基に就業上の措置について判断しているのが現状です。

 

なお就業区分は、産業医の意見を尊重すべきものですが、最終的には事業者が決定するものであり、健康診断の事後措置として法的な意義をもちます。

 

このような背景からすれば、産業医の行う、有所見であることの説明、精密検査を受けることの勧奨、精密検査の結果に基づく医学的措置に関する指導は、事業者としても軽視できない枢要な措置であるということができます。

 

一般健康診断の有所見者に対して疾病の診断や治療を受けさせるまでの法的義務は事業者にはありません。

しかしながら、労働安全衛生法では、健康診断の実施義務者が事業者になっているので、健康診断結果については、事業者がそのすべてを知ることができます。

ただし、労働安全衛生法第104条では「健康診断の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知りえた労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはいけない」と規定されており、違反行為者のみでなく、事業者にも6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになっています。
 

わが国の産業医のほとんどを占めているのは、常勤の専属産業医ではなく、非常勤の嘱託産業医です。

嘱託産業医は、企業との契約内容にもよりますが、自身が担当するほぼすべての事業所の労働者の健康診断結果を確認しています。そのうえで、医学判定の確認と見直しを行い、医療職による保健指導を行う対象者、受診勧奨を行う対象者、リスクが高く就業制限を含めた措置が必要な可能性があるため面談等による介入が必要な対象者に面談を行っています。

 

なおリスクが高い労働者に対しては、就業上の措置に関する意見を述べる必要があります。そのため、いったん就業判定を保留にし、受診結果を確認した後に「就業可」とする等の手順を踏むことが多いです。

また「就業制限」をかける際には、深夜業や出張の多さ等業務の有害性の程度を考慮し、またこれまでの健診データの推移や、本人の自己管理能力にも考慮しながら介入をします。また 事業所の個別性にも対応し、安全衛生体制の成熟度や担当者の姿勢、産業医活動可能時間に合わせてさまざまな介入方法を工夫しています。

 

中小企業における産業保健サービスの提供は、産業保健以外に専門分野を持つ医師(日本医師会認定医、非専業産業医)や健康診断実施機関として事業所と接点の多い労働衛生機関の医師がどの位の数の労働者に、どの程度の質で事後措置に関与できるかが今後の課題であると思われます。

なお、このような技術は具体的な手順な留意点について解説した教科書やマニュアルは周知のものとなっていないため、主にOJTの中で経験的に学んでいく場合が多いのが現状です。

 

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茨城の天才(その1)


2月19日、これぞまさに神童(prodigy)という少女に生まれて初めて出会いました。

 

そこは、水戸市郊外の佐川文庫コンサートサロンでした。

 

言葉を失ってしまうくらいの素晴らしさです。

 

海外からのコメントで「もうバイオリンやめる。」という投稿がありましたが、おそらく音大生以上の若手バイオリニストの正直な感想だったのでしょう。

たしかに、感受性豊かな中高生の中には「今更、バイオリンなど始めなくても良い。」と思わせてしまうくらいのショックを与えてしまいかねない天才的演奏でした。

 

Prodigy: a young person who is unusually intelligent or skilful for their age

 

村田夏帆Natsuho MURATA

 

2007年茨城県水戸市生まれ。3歳からヴァイオリンを始め、現在は水戸市内の中学校に通う2年生。

 

今回は小学校5年生までの実績を紹介します。(以下は、トッパンホール・アーティストプロフィールからの引用)

 

これまでに、川又くみこ、原田幸一郎、ザハール・ブロンらに師事。

14年第24回日本クラシック音楽コンクールヴァイオリン部門小学校低学年の部第3位(1位、2位なし)。

16年第1回白寿こどもバイオリンコンクールカテゴリー2第1位。

17年第71回全日本学生音楽コンクール小学校の部東京大会第1位、同全国大会第1位。

18年には、イタリアのイル・ピッコロ・ヴィオリーノ・マジコ国際コンクールで優勝し、併せて最年少出場、聴衆賞を受賞。また、東京交響楽団、スピヴァコフ指揮/モスクワ・ヴィルトゥオーゾ室内管弦楽団と共演した。使用楽器は株式会社日本ヴァイオリンから特別貸与されているニコラ・アマティ。

 

海外での反応もコメントで寄せられていますが、すべてのコメントが適確といって良いくらいです。彼女の演奏を聴いた海外の人々のレベルも並みではないことがうかがわれます。

 

引き続き引用:

すらるど - 海外の反応 : 海外「天才だ!」日本の若きバイオリニスト、村田夏帆さんの演奏を見た海外の反応 (blog.jp)

<はじめに>

 

 

前回は「腹部の不調」に効果のあるツボを紹介しました。

 

「商陽」は手の人差し指の爪の生え際の親指側にあり、

 

 

「太谿」は内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあり、

 

 

「合谷」は手の親指と人差し指の間にあるというお話でした。

 

 

 

今回は「痔」に効果のある「二間(じかん)」「大敦(だいとん)」「孔最(こうさい)」のツボを紹介しましょう。

 

 

 

<二間>

 

Pasted Graphic 9

 

 

手の人差し指の親指側を指先から手首側に滑らせて指が止まるところにあります。

 

<大敦>

 

Pasted Graphic 1

 

 

足の親指の爪の生え際で人差し指側にあります。

 

<孔最>

 

Pasted Graphic 10

 

 

手のひら側の肘のしわの親指側と手首をむすんだ線から指4本分手首側にあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

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路面電車の二人の車掌の間で、死亡した同僚についての噂話が展開していきます。

 

・・・Tu as bien connu Camps, disait l’un.
・・・Camps?Un grand avec une moustache noire?
・・・C’est ça. Il était à l’aiguillage.
・・・Oui,bien sûr.
・・・Eh bien, il est mort.
・・・Ah!et quand donc?
・・・Après l’histoire des rats.
・・・Tiens!Et qu’est-ce qu’il a eu?
・・・Je ne sais pas, la fièvre. Et puis, il n’était pas fort. Il a eu des abcès sous le bras. Il n’a pas résisté.
・・・Il avait pourtant l’air comme tout le monde.
・・・Non, il avait la poitrine faible et il faisait de la musique à l’Orphéon. Toujours souffler dans un piston, ça use.
・・・Ah!termina le deuxième, quand on est malade, il ne faut pas souffler dans un piston.

「カンのことはよく知っていたよね」と一方が言った。
「カン?黒い口ひげを生やした背の高いヤツ?」
「そいつさ。転轍機係(註1)だったんだが。」
「うん。たしかに。」
「それがね、死んでしまってね。」
「はあ!いったいいつのことなんだい。」
「ネズミ騒ぎの後なのさ」
「へえ!いったい何が起こったというのだ。」
「よくわからんが、熱病だろう。それにやつは丈夫な質ではなかったからな。腋の下に膿瘍(はれもの)がいくつか(註2)できたんだそうだ。それに持ちこたえられなかったようだ。」
「皆と変わらない様子に見えたのだが」
「いや、彼は胸が虚弱(註3)で、オルフェオ(註4)で楽器演奏をやっていた(註5)んだ。いつもコルネット(註6)に息を吹き込んでいれば、くたびれもするさ。」

二人目の男が「病気のときはコルネットを吹くものではないってことよ」といって話を締めくくった。

 

 

(註1)転轍機係<Il était à l’aiguillage>宮崎訳:転轍のほうをやってたがな

l’aiguillageとは鉄道のポイントのこと。死亡した男性はポイント切り替えに従事していたものと解釈しました。

 

(註2)膿瘍<des abcès>宮崎訳:腫物(できもの)

医学的には膿瘍(のうよう)と訳すのが相当でしょう。炎症を伴って形成され、内部に膿(うみ)を貯留したできもの・はれものを意味します。単独か複数かも重要ですが、フランス語原文からすれば複数型なので、「幾つかの」というニュアンスを明確にすることは重要かと思われました。

 

(註3)彼は胸が虚弱で<il avait la poitrine faible>

宮崎訳:やつは胸が弱くてこれが具体的にどのような状態を意味するのかは想像するしかありません。胸部の基礎疾患のために呼吸器症状(咳・痰・呼吸困難など)を伴っているのか、呼吸器感染症にかかりやすいことなのか、たとえば喘息なのか、結核なのか、は読み取れません。単に肺活量が少ないという意味にも取れないことはないのではっきりしません。

 

(註4)オルフェオ<l’Orphéon>宮崎訳:男声合唱隊

Orphéonオルフェオ男性合唱協会:フランスの音楽教育家ビレムGuillaume Louis Wilhem(1781‐1842)がパリに創立した。オルフェオは大文字の固有名詞であるため、名称を省略しない方が良いのではないかと考えます。イギリスに結成されたグリー・クラブなどとともに今日の合唱音楽にもたらした役割は大きい。日本では明治の中ごろに関西学院大学と同志社大学にグリー・クラブが誕生し,1902年に慶応義塾大学ワグネルソサエティが結成され,おもに大学合唱団が中心になっていたが,29年に創立された東京マドリガル会などをはじめ,同好の士による合唱団が生まれている。

 

(註5)楽器演奏をやっていた<il faisait de la musique>宮崎訳:音楽をやっていた

男声合唱団で「音楽をやっていた」というのは合唱をしていたのではなく、伴奏楽器を演奏していたと解釈して訳出した方が分かりやすいのではないかと考えました。

 

(註6)コルネット<un piston>宮崎訳:管

これは音楽用語としては、管楽器の音栓であるピストンバルブを意味することもありますが、コルネットという小型のトランペット様の金管楽器を意味することもあります。コルネットのピストンはトランぺットと同様に3本です。フランス語原文では単数形なので、「一つの管楽器」を意味すると解するのが自然ではないかと考えました。

 

 

 

Après ces quelques indications, Tarrou se demandait pourquoi Camps était entré à l’Orphéon contre son intérêt le plus évident et quelles étaient les raisons profondes qui l’avaient conduit à risquer sa vie pour des défilés dominicaux.

こうしたいくつかの情報を得て、タルーは、カンがなぜ彼自分の最も明白な利益に反してまでオルフェオに参加したのか、日曜日のパレードに命を賭けるに至ったより深い理由は何だったのか、と考えたのだった。

 

コメント:

死亡したカンという鉄道ポイント切り替え係員の胸が虚弱であるということの内容が気管支喘息のような疾患であれば、管楽器の演奏は適切に実施するならば治療上も有意義です。喘息ではないようですが、逆に結核のような呼吸器感染症の患者が管楽器の演奏を許されることは、この時代の医学の常識から察しても考えられません。カンという男は単に息切れし易い、あるいは風邪をひきやすい体質であったのではないかと想像することは可能だと思います。ただし、車掌同士の対話の内容からすれば、単なる虚弱体質ではなく、業務に従事可能な何らかの軽症の呼吸器系の基礎疾患をもっていたようにも推測することもできるでしょう。

 

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聖楽院主宰 テノール 

飯嶋正広

 

御師匠様からいただいたメッセージ

 

これは私の大切な御師匠様の岸本力先生からいただいた私信のメールなのですが、決してプライベートな内容ではなく、多くの皆様と共有したい大切なメッセージです。

 

なぜ、私がこの御師匠様に入門したのか、拙い説明をするよりも明快な御報告になるものと思います。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

飯嶋正広様

昨日のNHKニュース、で昨日のコンサートの様子がインターネットでながれました。

3/9(水)、夕方のNHKニュースで紹介されました。

ウクライナ危機、一日も早い事態の終息と平和の回復を祈っております


https://www3.nhk.or.jp/

shutoken-news/20220309/

1000077647.html

(現在はリンク切れ)

 

で一度試して下さい。

 

岸本力

 

・・・・・・・・

 

私は早々に上記のアドレスで岸本先生の動画を視聴しましたが、残念ながら期間限定であったようです。

 

しかし、現在でも以下の情報のみは閲覧できます。

 

日本・ロシア音楽家協会が演奏会“音楽を通して平和への祈りを” | NHK

 

 

 

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

 

専門医でも迷うリウマチ関連疾患の診断(その3)

 

遠隔診療の落とし穴

 

数日を経て、相談者の腕の皮疹の写真(スマホ自撮り)が数点送られてきました。

 

皮疹の所見は、鮭の切り身のような赤みを帯びた湿疹(サーモンピンク疹)、個々の湿疹の境界は不明瞭(癒合傾向)でした。

 

これを確認した瞬間に診断はほぼ確定しました。

 

成人スティル病は、発熱、皮疹、関節症状を主な症状とする全身性の炎症疾患です。発熱に伴って皮疹や関節痛がみられます。また、解熱とともに皮疹、関節痛が消失するという症状が特徴的です。

 

診断の決め手となる症状、検査所見には乏しいため、症状や所見から総合的に診断をします。

 

小児におこるスティル病(全身型若年性特発性関節炎)という疾患と同様の病像が成人(16歳以上)に起こったものと考えられています。

 

成人スティル病はリウマチ性疾患の中では稀な病気の1つであり、この病気を持つ方は人口10万人あたり2人程度です。一般的に20歳~40歳代の比較的若い成人が発症します。

 

原因はわかっていませんが、遺伝素因やウイルス・細菌の感染など環境因子が関係しているのではないかと考えられています。

 

病態としてはマクロファージという細胞が活性化しており、インターロイキン(IL)‐6,IL-1,IL-18,腫瘍壊死因子(TNF)といった種々のサイトカインが過剰に産生されているものと考えられています。

 

成人スティル病は基本的には生命予後の良い病気ですが、半数の患者さんが寛解(症状のない状態)と再燃を繰り返します。

 

スティル病の診断基準(山口基準)  (J Rheumatol.19(3):424-30,1992から引用)

 

該当診断項目この症例での該当所見

図1

 

どうやら、この症例は、成人発症型スティル病の可能性が高いことが分かりました。

 

 

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水氣道実践の五原理・・・集団性の原理(結論)その3

 

(教学不岐・環境創造の原則)

 

 

水氣道の「道」は、自己実現から自己超越へ向かうための道

 

自己超越したひとの活動は、生命が尽きる直前まで実行することができ、かつ、その自由は誰も奪いえません。水氣道が生涯エクササイズであるとする所以もそこにあります。

 

ただし、水氣道は自己実現よりも、その先を目指しています。それは「自己超越」です。自己超越とは「他者や自己を超えた存在に向けて奉仕をすること」です。

人間の本質は、自己を超えた存在、愛そのものである神のような存在が、本能的に志向されていていることにあり、だからこそ、自己超越、すなわち互いに奉仕し合う安定的な信頼関係性の中で生かされているときに、強い生きがいと幸福感を覚えるものなのではないでしょうか。

 

「自己超越」という心理状態や生きる態度に到達するためには、「自然回帰」の意義を理解して、自然そのものに委ねる中にあって、互いに教えを受け、あるいは教えを授けるといった営みを通して、環境を再創造していけるようになることが必要であると考えます。

 

人間の生きがい感の根本は、最終的に神の存在を受け入れる必要に気づくことから始まると受け止めることができれば獲得可能です。しかし、すべての人がそれを受け入れることは容易ではありません。しかし、自然回帰といって、「個」としての心身を統一して、「集団」に宿る霊性と統合することができれば、いきいきとした生命の躍動感を味わうことができます。

 

水氣道では、稽古に参加するだけで誰でも自然回帰を試みることができます。

また、水氣道の稽古に参加するということは、奉仕、利他、愛といった態度価値が育まれるために、人間に強力な生きがい感を与え、空虚感を満たしてくれることになるでしょう。

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 アレルギー専門医 

 

飯嶋正広

 

 

呼吸器病学とアレルギー学の接点

 

特発性肺線維症(IPF)

 

肺の間質に線維化がおこる病気を「肺線維症」(はいせんいしょう)とよびます。

実は、私共のようなリウマチ専門医は、関節ばかりでなく、常に全身をモニターするように教育を受けているのです。

 

肺もその一つです。リウマチ肺といって、関節リウマチで、肺にこの障害が現れることがあります。

リウマチ肺とよばれる間質性肺炎や肺線維症は、症状として息切れや空咳などがみられます。また、肺に水がたまる胸膜炎が起こることもあります。なお、リウマチの治療薬や感染症でも肺障害を起こすことがあるので、その原因についてよく調べることが重要です。

 

原因が不明な「肺線維症」のなかで最も多いのが「特発性肺線維症」、英語の頭文字をとった略称がIPF(アイピーエフ)です。

 

これは肺胞に“傷”ができ、その修復のためにコラーゲンなどの蛋白質が増加して間質が厚くなる病気です。

 

その結果、咳が出たり、酸素がうまく取り込めず息苦しくなったりします。特発性肺線維症は次第に進行し、肺が固くなり膨らみにくくなる(拘束性障害といいます)ため、呼吸が維持できなくなる場合もあります。初めの頃は安定していても、ある時期から急激に進行しはじめることもあります。
 

一般に肺線維症の約半数は、発症原因がわかりません。このような肺線維症を「特発性肺線維症」(特発性とは原因不明という意味です)と呼びます。しかし、喫煙が、特発性肺線維症を発症する危険因子であると考えられています。50歳以上で発症することが多く、男性に多い傾向があります。
 

特発性肺線維症は、「特発性間質性肺炎」の一種で、国の指定難病に指定されています。一定の条件を満たせば、医療費助成制度が受けられます。

 

まず特徴的な所見を確認します。そして、診断のためには詳細な病歴聴取や診察、各種検査による他疾患の排除が前提となります。

 

他疾患の除外診断を行った上で、臨床所見、病理所見、画像所見により総合的に判断します。

 

・確定診断は外科的生検によるが、急性増悪の誘因となる可能性があるため、典型的臨床像と胸部高分解CT(HRCT)で特徴的な画像所見が見られた場合には臨床的診断が可能になります。

 

主症状:乾性咳嗽と徐々に増悪する労作性呼吸困難

 

・ばち指

 

・進行例:チアノーゼ、右心不全、浮腫

 

合併症:肺癌、気胸、胃食道逆流、肺高血圧、右心不全

 


このように、リウマチ専門医は、リウマチ肺の例でも説明しましたように、関節や骨・軟骨などの運動器以外に、呼吸器、循環器、消化器その他に対しての観察と注意を怠らないように常に心がけていなければならないことになります。

 

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臨床産業医オフィス

 

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

産業医による就業上の措置に関する意見のあり方について(No2)

 

―健康管理のための制度面の課題-

 

一般定期健康診断の事後措置は、労働安全衛生法で事業者の義務として定められ、一定の指針が示されています。しかしながら、 健康診断の結果をもとに判断される業務と健診結果の関係については言及されていないという制度面の課題があり、産業医実務の実践の上での悩みを生んでいます。

 

適切な就業上の措置の実施のためには、適切な手順、エビデンスに基づく参考基準、適切な対応ができる医師(産業医)等の確保、事後措置の重要性に対する事業者の理解が不可欠です。

 

産業医による事後措置は、国内の産業保 健活動における主な日常業務の一つです。

しかしながら、多くの場合、企業文化・慣習、 医師の方針、労働者の健康状態、業務内容 などを総合的に考慮しながら実施されており、 事後措置の適用範囲、内容、手順について 共通の認識が存在しているとは言えません。

 

事業場の中で労働者の健康診断を実施し、その結果に基づく事後措置を継続いて行うことを一人の非常勤嘱託産業医が担うことは実際上、不可能です。

 

労働安全衛生法には、衛生管理者の規定があり、労働安全衛生規則第14条で、「産業医は、衛生管理者に対して指導し、もしくは助言することができる」とされています。そこで、法制度上は、健康診断とその事後措置については産業医と衛生管理者が協力して行う形になっています。

 

衛生管理者の資格は、労働安全衛生法に基づく国家資格です。この資格は都道府県労働基準局長の免許で与えられていますが、免許の要件となる資質としては、「健康診断の結果を個々の労働者に的確に返していくことができる」レベルまでは求められていません。

 

そのため、産業医と衛生管理者の組み合わせで、健康診断とその事後措置を行う体制を組む場合には、衛生管理者の健康管理に関する素養を高める仕組みや工夫が必要になります。

健康診断の事後措置では、疾病の種類や重症度の異なる有所見者に対応することができなければなりません。そのため、本来であれば、疾病に関するより高度の訓練を受けたチームを構築していくことが必要になってくるわけです。