からだの健康(心身医学)

 

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内科認定医、心療内科指導医・専門医 アレルギー専門医 

 

飯嶋正広

 

呼吸器病学とアレルギー学の接点

 

<慢性に進行する鳥飼病と夏型過敏性肺炎>No2

 

67歳の女性。3カ月前から空咳が続いているため来院。

 

現病歴:

3カ月前から乾性咳嗽が持続するため、総合病院を受診した。胸部単純CTで間質性陰影を認めたため

 

既往歴:

特記すべきことはない。

 

家族歴:

特記すべきことはない。

 

喫煙歴:

ない。

 

職業暦:

夜間飲食業および雀荘経営

 

ペット飼育歴:

ない。

 

粉じん吸入歴:

ない。

 

 

現症:

意識は清明。身長156㎝、体重68㎏。体温36.0℃。脈拍70/分、整。血圧160/96㎜Hg. SpO₂ 97%(室内大気)、表在リンパ節を蝕知しない。心音と呼吸音とに異常はない。

下腿浮腫はない。

 

 

検査所見:

(ゴチックは決め手となった検査項目)

 

血液所見:

赤球球410万/μL,Hb13.5g/dL,Ht38%、白血球9,300/μL、血小板17万/μL

 

血液生化学検査:

AST25U/L,ALT20U/L,LD220U/L(基準115~245)、γ-GT85U/L,
BUN15㎎/dL,Cr0.9㎎/dL,随時血糖94㎎/dL, KL-6 2,990U/mL(基準500未満)、
SP-D430ng/mL(基準110未満)

 

免疫血清学所見:

CRP1.1㎎/dL、

トリコスポリン・アサヒイ抗体CAI:0.43(基準0.15未満)

 

 

【代表的な過敏性肺炎の種類と抗原】

 

1. 夏型過敏性肺炎・・・居住環境中のトリコスポロン(真菌)

<クリニックの近所の日中日当たりのよくない飲食店で発生。その古い建造物は、すでに取り壊されています。>


2. 農夫肺・・・干草や飼料中の好熱性放線菌

 

3. 塗装工肺・・・イソシアネート

 

4. 空調肺・加湿器肺・・・真菌

<新型コロナ禍以前は、しばしば診療しました。>

 

5. 鳥関連過敏性肺炎(鳥飼病)・・・羽毛、鳥の糞など

<先月、数年ぶりで現在栃木県在住のK氏から連絡あり。鳥の飼育歴はないかと、私が問診したことを契機として慢性咳嗽の原因が羽毛布団の羽毛であったことが判明とのこと。問題の羽毛布団を処分したら、急速に回復した模様。>

 

近年、IPFと診断されていた症例の中に羽毛布団による慢性過敏性肺炎が存在することが注目されています。

 

 

治療としては、以下が標準的です。

 

1. 抗原回避:転居、寝具の交換、本人に関与させない大掃除

 

2. 薬物療法:副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤
抗原回避が基本であり、薬物療法は補助的に用いられますが、しばしば著効を呈します。