こころの健康(身心医学)

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医


飯嶋正広

 

 

専門医でも迷うリウマチ関連疾患の診断(その2)

 

素人診断は無視せず、しかも惑わされぬべし!

 

伝染性単核症の診断のためには、病歴聴取、身体診察と共に急性期はまずVCA-IgG、VCA-IgM、EBNAを測定します。またサイトメガロウイルス(CMV)も原因の5-10%を占めるため、CMV の抗体(IgMおよびIgG)の測定も検討します。

 

これらの検査は、総合病院で行われていて、急性期での測定ではなかったのですが、これらのウイルス感染症は否定的でした。

 

そこで、その他のデータを確認することにしました。

 

検査データ:

白血球数13,000/μL(好中球79%、好酸球2%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球12%)

赤沈40㎜/1時間、CRP13㎎/dL、リウマトイド因子陰性、抗核抗体陰性、CH₅₀60.0U/mL(基準:25~50)、IgG1,900㎎/dL(基準:900~1,700)、AST35U/L、ALT50U/L、LD480U/L(基準:125~250)

 

 

本人の訴えである「薬疹」ですが、医師の診断ではなく、市販の感冒薬を内服したことが原因であるとの思い込みが確信となり、「薬疹」と自己診断していたことが、対話を通して判明しました。

 

たしかに、この方に限らず、一般外来診療で治療薬を処方することは日常茶飯ですが、その経過中に皮疹が発生すると、「薬疹ではないのですか」と質問されることは少なくありません。

 

ただし、薬剤中止後も皮疹が持続あるいは再発するか、発熱に伴って皮疹が悪化するかどうかを確認することが判断の手掛かりになります。

 

このケースの場合、軽度の肝機能障害を伴っているため、発熱に対して自己判断で内服したのが解熱剤(消炎鎮痛剤)であったため、肝機能障害は薬剤性である可能性も考慮はしなければなりません。

 

それよりもむしろ、首(頸部)と腋の下(腋窩)のリンパ節腫脹や脾臓の腫大(脾腫)が生じている場合には、全身性リンパ節腫脹を来す疾患を整理しておく必要があります。

 

1.感染症:伝染性単核球症、トキソプラズマ症、風疹、結核、梅毒、HIV(エイズ)など

 

2.膠原病・アレルギ―:全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、     混合性結合織病(MCTD)、薬剤アレルギー、血清病など

 

3.悪性疾患:リンパ腫、白血病など

 

4.その他:サルコイドーシス、H鎖病など

 

すべての感染症を除外することはなかなか容易ではありません。ただし、梅毒、HIV(エイズ)、伝染性単核球症は除外できました。

 

リウマチ専門医としては、また関節痛や筋肉痛の訴えがあると、念のために関節リウマチに特異性が高い自己抗体である抗CCP抗体を調べたくなります。しかし、関節リウマチでは一般的に高熱は見られないので、直ちに検査する必要はありません。しかし、内科系リウマチ専門医の守備範囲であるとはいえ、膠原病の診断は必ずしも容易ではありません。

 

そのためにも、予め悪性リンパ腫やリンパ性白血病などをはじめ、悪性腫瘍に伴う症状ではないかと疑い、除外診断を済ませておくことが肝要です。

 

さて、ここで大切なことを思い出しました。それは、皮疹の所見です。日常の外来診療では直接、簡単に確認できるのですが、リモート診断の場合は、画像の解析度が高くないと判断がつきにくくなります。しかし、「百聞は一見に如かず」とは、臨床医の座右の銘とすべきでしょう。

 

そこで、なるべく見やすい画像を準備して、送っていただくことにしました。