<アレルギーを知ろう>

 

アレルギー反応

私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとこれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギー反応も広くは免疫反応の一部ですが、異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合をアレルギー反応と呼んでいます。

 

アレルギー反応を演ずる役者は、たくさんいます。主な役者は、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなどのタンパク質や化学物質です。これらの役者たちが、連携してさまざまな種類のアレルギー反応を演じています。

 

 

アレルギー反応をもう少し詳しくみてみましょう。

 

私たちの皮膚や粘膜には、外からやたらに体の中に物質が入ってこないようにするバリア機能と呼んでいる仕組みがあります。

このバリア機能が何らかの原因で破綻するとそこから、体のなかにウイルス、細菌、アレルギーの原因となる、ダニ、ほこり、花粉、食物などが入り込みます。

侵入してきた物質は、抗原と呼ばれ、アレルギーの原因になるものは特にアレルゲンと呼んでいます。

抗原やアレルゲンが侵入すると、皮膚や粘膜の直下にいる抗原提示細胞がそれらを見つけて異物として認識します。

 

抗原提示細胞からの情報はリンパ球に伝えられます。

抗原の種類や状況、免疫のバランスによってこの後の反応が変わってきます。細菌やウイルスに対しては、形質細胞がIgG抗体やIgM抗体を産生し、侵入してきた細菌やウイルスを攻撃し排除します(免疫反応)。

アレルゲンに対しては、形質細胞がIgE抗体を産生したり、リンパ球が直接反応するようになります。

 

 

産生されたIgE抗体は、血液中を流れて皮膚や粘膜にいるマスト細胞の表面にくっついて待機しています。

この状態を「感作(かんさ)」と呼んでいます。

感作されただけではアレルギー反応はおこりません。感作された状態で、再びアレルゲンが侵入してマスト細胞上のIgE抗体と反応するとマスト細胞から、ヒスタミン、ロイコトリエンが放出され様々なアレルギー症状をおこします(即時型アレルギー反応)。

 

また、リンパ球が反応した場合は、再度のアレルゲンの侵入によって、様々な活性化物質や、細胞間伝達物質などが放出されます(遅発型アレルギー反応)。

 

 

この他にもいくつかのアレルギー反応の経路があることがわかっています。

 

即時型アレルギー反応の代表的な疾患が、花粉症、気管支喘息、食物やハチ毒でのアナフィラキシーです。遅発型アレルギー反応の代表的な疾患には、接触性皮膚炎があります。

 

 

<補足説明>

アレルギー反応は特殊な免疫反応です。免疫とは、私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとこれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みです。そして異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合を特にアレルギー反応と呼んでいます。

 

私たちの皮膚や粘膜には、外からやたらに体の中に物質が入ってこないようにするバリア機能と呼んでいる仕組みがあります。そのうえで、免疫という身体の働きがあり、それ自体は本来有益なものなのです。しかし、アレルギー反応は、アナフィラキシー反応のように、かえって生命を脅かしてしまうものまであるので問題となります。

 

私たちを取り巻く環境の中には、アレルギー反応を引き起こす異物がたくさんあり経年的に増加していることが推定されます。そのうえに、私たちの身体のバリア機能は、いろいろな原因によって弱まっている可能性があります。これらの問題点が解決されない限り、アレルギーを減らすことは難しくなりますが、実際に、アレルギーは国民病といわれるまでに増えてきています。

 

環境改善とバリア機能の強化という二つの側面を踏まえた養生法や鍛錬法を実践することは、実に理に適っているはずです。水氣道®は、アレルギー反応を引き起こす細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などの異物の少ない水中での有酸素運動であり、温度や湿度も維持された環境にあり、水着着用により、皮膚や粘膜などのバリアに対する傷害も少ないためアレルギー体質の患者さんにとっては理想的な鍛錬法の一つであるということができるでしょう。

 

アトピー性皮膚炎の患者さんに対して、入浴やプールでの運動を制限する皮膚科の先生もいらっしゃいますが、短期的な見立てにすぎないと思われます。

長期的な展望に立てば、アトピー性皮膚炎の患者さんも気管支ぜんそくの患者さんと同様に、水氣道の鍛錬によって改善が得られています。また、花粉症に至っては、運動不足も好ましくない反面、花粉散布量の多い屋外の運動は続けにくいものがありますが、屋内の温水プールを活用すれば、安心して運動不足を解消できることでしょう。

 

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート②>

 

4月14日(日)

10:40~11:40am

 

ACL3:リウマチ・膠原病医に知って欲しい妊娠前、妊娠中、授乳期における産婦人科的知識と診療

    

演者:斎藤 滋 先生(富山大学産科婦人科)

 

リウマチや膠原病は女性に発病することが多い疾患である。

 

40歳以降になると妊娠しづらくなり、体外受精でも出生率は5%、流産率も50%を超えるようになる。

 

疾患の活動性が高い状態で妊娠すると、流産、死産、早産、妊娠高血圧症候群、子宮内退治発育不全等の合併症を引き起こすことになる。関節リウマチの女性の不妊率は31.5%と高率である。

 

リウマチは寛解に達したら妊娠可能であり、妊娠率も向上する。

 

妊娠時には禁忌となる薬剤から許容できる薬剤に切り替えることが必要

しかし、計画妊娠する前に薬剤変更を行うべきである。

 

メトトレキサートは女性でも男性でも妊娠計画の少なくとも3か月前には中止することが推奨される。なお精子形成期間は90日である。

しかし、薬剤添付書に妊娠時や授乳時に禁忌と記載されている薬剤がほとんどであるので問題となる。

そのなかでも、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリンの妊娠中禁忌が、有益性投与に変更になった。授乳中の禁忌はメトトレキサートのみである。抗TNF抗体製剤は母乳保育を中止する必要がないことが記載されるようになった。

 

 

<まとめ>

少子化は日本社会の抱える大きな課題の一つですが、妊娠・出産に対する過剰な制限が、こうした社会現象に拍車をかけているのであれば、医療者の責めは決して小さくはありません。

 

高円寺南診療所時代の30年間に、リウマチの診療は劇的な大変革を遂げましたが、妊娠希望のリウマチ患者さんには、東京女子医大をはじめとする高度専門医療機関を紹介せざるを得ませんでした。

 

幸い、新たな情報と指針に基づいくことによって、妊娠可能な女性のリウマチ治療薬の選択と支援は、杉並国際クリニックにおいても充分に対応することができるようになってきたことは、とてもありがたいことだと感じております。

 

 

糖尿病は認知症の促進因子です。

―糖尿病性認知症に注意!-

 

 

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに重要なトピックを紹介します。

 

 

シンポジウム1.

生活習慣・生活習慣病と認知症・アルツハイマー病

特に、糖尿病性認知症について

 

高齢化に伴い、認知症や軽度認知障害の人の数が急増しています。認知症には有効な治療手立てが確立していません。認知症の原因の約6割はアルツハイマー病で、その他にも血管性認知症やレヴィ―小体型認知症があります。

アルツハイマー病は脳組織の変性性疾患であるため、生活習慣病との関連は乏しいと考えられがちでした。しかし、近年、運動不足や不適切な食事といった不健康な生活習慣および糖尿病や高血圧等の生活習慣病が、血管性認知症ばかりでなく、アルツハイマー病のリスクであることが報告されるようになってきました。

糖尿病と認知症発症の関係を調べた疫学調査では、糖尿病群は正常群と比べ、認知症、特にアルツハイマー病の発症リスクが有意に高いことが判明しました。さらに、生活習慣との関連では、中年期から老年期の持続喫煙および老年期の短時間・長時間睡眠は、アルツハイマー病および血管性認知症発症の有意な危険因子でした。

 

血管性病変やアルツハイマー病態よりも糖代謝異常が深く関与している認知症の病型として、糖尿病性認知症が注目されるようになってきました。これは血糖コントロールの不良例が多く、進行は緩やかですが近時記憶障害よりも注意・遂行機能障害がみられるのが特徴であるため発見されづらいことが問題になると考えられます。

 

上述の疫学調査の結果によると、定期的な運動習慣があり、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類ならびに牛乳・乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ないという食事パターンの人では、認知症(アルツハイマー病、血管性認知症のそれぞれ)の発症リスクは有意に低いものでした。

 

そのため杉並国際クリニックとしては、本格的な認知症以前の段階である軽度認知障害の早期発見、可能であればその予防のための一層の対応が急務であると考えています。

 

将来の認知症発症を予防するためには、高血圧および糖尿病の予防と適切な管理に加え、禁煙、適切な睡眠、和食+野菜+牛乳・乳製品を中心とした食習慣ならびに定期的な運動を心がけることが大切になります。

 

 

高円寺南診療所30年の臨床経験による診療指針の正しさが次々と証明されてきていることは大きな励みです。禁煙指導、生活習慣指導、水氣道、トータルフィットネス・チェック、メディカル・チェック(区検診など)の総合的・抜本的な活動推進は、ますます重要性を増していると考えます。

Q7

心房細動に対してカテーテルを使った治療法があることを知りました。どのような患者さんが選択できる治療法なのですか?

 

A

不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。

そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。

 

最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。

 

 

杉並国際クリニックからの回答

症候性発作性・持続性心房細動はアブレーション治療の適応です。この場合、抗不整脈薬の使用は問いません。また、徐脈頻脈症候群、左心室収縮不全を伴う慢性心不全に合併した心房細動も適応になります。ただし、無症候性長期持続性心房細動は積極的適応とはなりません。

 

平成の30年間と共に歩み続けてきた高円寺南診療所の総括と、積み残してきた課題、そして令和とともに始める杉並国際クリニックの新たな役割と使命

 

3回シリーズ(3/3)

 

Ⅲ 令和とともに始める新しい「杉並国際クリニック」の役割と社会的使命

 

 

1.少子超高齢化対策の立ち遅れに対する取り組み

 

寝たきりや認知症、長期の入院や要介護に至らないようにサポートします。

 

そして、超高齢者になっても自立した生活を維持できるようにサポートします。

 

さらに、超高齢者になっても社会参加ができるような準備をお手伝いします。

 

実際に高齢者を支えている現役世代の皆様が、仕事を継続しながらスムーズに受診できるように可能な限りのサポートをします。

 

心身の不調がある人でも就職できるよう、結婚ができるよう、仕事や家事や育児が両立できるよう、生きがいと希望をもって生活できるようトータルな健康管理の視点からサポートします。

 

杉並国際クリニックは、自らを助ける意思のある皆様を、優先的に支援いたします。

 

 

 

2.大規模災害の原因追及の不徹底という現実に対しての取り組み

 

身体面で体質改善や体調管理、さらには体力(行動体力のみならず防衛体力)向上のお手伝いをします。

 

精神面で気質向上や気分調整、さらには気力(集中力のみならず創造的生産力)向上のためのカウンセリングやアドバイスをします。

 

引きこもりや孤立を防ぎ、信頼できる安定的なコミュニティに参加し、自助・互助・協働といった団体における防災行動能力を楽しく養成できる日常の機会を提供します。

 

杉並国際クリニックは、隣人のための支援や奉仕を志す皆様を、優先的に支援します。

 

 

 

3国際化への対応の遅れに対しての取り組み

 

杉並国際クリニックは、新時代対応型クリニックとして、杉並区のモデルにとどまらず、先進国首都型のモデルクリニックを目指します。

 

「患者中心の医療」モデルの先を見越した「脱患者医療」モデルを提唱し、受動的・消極的な<患者>意識から能動的・積極的な<健康会員>意識への脱皮を図り、さらには「健康創成共同体」モデルに向けて互恵的・創造的な<健康創成共同体>意識への昇華を目指せるように支援します。

 

クリニックの運営方針や事業展開は、当クリニックの基本的診療価値観を共有する「健康会員」資格をもつ皆様から選任した健康事業評議員(任期1年、定数4)をはじめ、主だった患者会の皆様と協議の上、誠実かつ堅実に実行していきます。

 

従来の「診察券」に加えて、「健康会員証」さらには「健康創成クラブ会員資格認定証」を順次発行して、合理的な受診者区分を行うことにより、差別ではなく目的別の効率的な個別化医療サービスを提供します。

 

海外出張や渡航のための医療が必要な皆様の安全と健康管理のサポートをします。

 

英語等の外国語による外国人診療に対して積極的に展開していきます。

 

日本を愛し、自らとご家族の将来を日本に託して毎日を送っていきたいと願う外国からの隣人の皆様の安全と安心を医療面からサポートしていきます。

 

国際的水準の医療の実現のため、今後も海外での医療研修を継続し、かつ、成果を国際社会に発信していきます。

 

杉並国際クリニックは、外国人の方に対しても親切で敬愛の心で接することができる皆様を、優先的に支援いたします。

 

平成の30年間と共に歩み続けてきた高円寺南診療所の総括と、積み残してきた課題、そして令和とともに始める杉並国際クリニックの新たな役割と使命

3回シリーズ(2/3)

 

 

Ⅱ 平成時代30年間の未解決な先送り課題

それでは、未解決なままの国家的、しかも日常的な国民的課題とは何でしょうか。

 

私は、以下の3点を挙げるべきだと考えています。

1、少子超高齢化対策の立ち遅れ

2、大規模災害の原因追及の不徹底

3、国際化への対応の遅れ

 

以下、それぞれについて述べてみます。

 

 

1、少子超高齢化対策の立ち遅れ

平成の初年度には、すでに高齢者の医療費の更なる増大を予想できていたはずなのにもかかわらず、日本は予防医学を国策として取り入れてきませんでした。

 

厚生労働省の推計によると、年金を含む社会保障給付費総額(自己負担は除く)は、2025年に150兆円に迫る見通しで、社会保障制度を維持していくには給付と負担のバランスの見直しが喫緊の課題となっています!

 

日本では、医療や年金・介護などの財源となる「社会保障制度」は基本的に賦課方式を採用しています。これは、いま人口が減少している現役の若い人たちが一生懸命に払い込んだお金を、現在の肥大化した高齢者の医療に支給する仕組みです。そのため、少子超高齢化による人口構造の変化に伴い、この制度を維持できる社会保障費の確保が難しくなり、次代を担う若い人たちの負担が募るばかりです。

 

高円寺南診療所の反省点は、平成元年の開設以来、受診者の平均年齢が比較的若かったため、超高齢化社会を視野に入れた具体的な長期的事業計画を立てることなく30年を経過してしまったことです。往診を含む在宅医療や介護支援などの事業を展開することができる資金を調達することは叶いませんでした。

 

 

2、大規模災害の原因追及の不徹底

大規模災害には自然災害も人災も含まれますが、原因を徹底的に追求せず、抜本的な対策もなされずに問題を先送りしている間に、災害が再発したとしたら、それは自然災害であったとしても人災としての意味合いが大きくなります。

 

主だった企業の経営破綻も人災の要素が大きいです。日本人は、都合の悪い現象にはカタカナにして、当事者としての責任の関与から逃れようとする傾向があるので反省が進みません。

たとえば、バブル経済、リーマン・ショックなどのキーワードだけが独り歩きして反省と共に分析や考察が進んでいないのも大問題だと思います。

 

医療にとって身近な問題の例としては、禁煙やインフルエンザの予防接種などのトピックスです。これらは東京などの人口稠密な大都市で生活をする上では、私たち一人一人の生活者が意識を高めて実践できる必須のマナーであると考えます。

 

3、国際化への対応の遅れ

医療界もグローバルな視点を要する領域であり、かつ未来を見据えた視点からの改革にむかって、大胆に舵を切るべきでした。それが先延ばしされてしまったため国民の生活に直結する日本の医療の危機管理は致命的に立ち遅れてしまいました。

 

たとえば「健康保険証」の文字は、まったくもって欺瞞であり、「健康保険証」をもって有名病院に行けば健康になれるような錯覚を国民に与えてしまいました。私たちの手もとにある「健康保険証」はせいぜい「疾病保険証」にすぎません。

なぜなら、健康な人や、健康の維持増進や予防のためには「健康保険証」はまったく使えないシステムだからです。

 

その結果、残念ながら、未解決な重要な国家的課題を先延ばしにしたまま令和の時代を迎えるに至ってしまいました。

 

このように高円寺南診療所30年の歴史を振り返ってみても、大きな反省材料を見出すことができます。

 

反省点1)

「医療費・社会保障費の確保が危機的状況に」

」超高齢化社会が進むにつれて、これらの問題はさらに顕在化し、その結果、個人に責任が向けられることは必然です。それらを積極的に活用し、保険診療で足りない部分は、自ら補っていく必要があります。未だ多くの国民の危機感が希薄であることこそが大問題なのです。

 

反省点2)

「医療保険でカバーされない予防と治療」

予防医学という考え方については、日本の医療制度・医療提供者・患者の全てにおいて世界と遅れをとっています。これからは病院に行く前段階や、介護予防のための医療サービスが発展させざるを得なくなってくるものと考えられます。

保険医療に頼れないアメリカ医学会は「食」「ストレス」「運動」「環境」にフォーカスを当てた「ライフスタイル医学 」を推進しており、患者さんだけでなく医療者の教育にも力が入れられています。

 

保険が効かないのは「予防」に限った話ではありません。たとえば、国内に200万人以上と推定されている慢性の難治性(といわれている)線維筋痛症の患者さんは、根治できる可能性が高いのにもかかわらず、健康保険医療至上主義(保険外の医療に対する根拠のない疑念や偏見)のために長く苦しんでいる方が少なくありません。

 

保健医療システムの弊害の一つが、健康増進に対する自主的な投資努力を阻む結果を招いていることがあるのは確かです。

 

「自立」して「健康」に「長く」生きることを目的とすると、予防意識をあげる必要があります。しかし、これらの問題点から、今後は好むと好まぬに関わらず国民全員が「予防」を意識しなくてはいけない時代に入ってきています。

 

反省点3)

「世界一の寝たきり大国」

健康長寿は予防の賜物であり、病気になってからでは手遅れです。また、介護状態に至るまでの様々な予防サービスが各居住エリアに存在し、まさに「アクティブシニア」でいるための水氣道®や聖楽院などの画期的なサービスを創設し、充実させていく必要があります。

 

日本の医療制度や病院を過信した「病院に定期的に通っているから安心」という考えは捨てて、「自分の命は自分で守る」という意識を徹底し、自ら健康を守る対策を講じるべきでしょう。

 

公的医療保険や介護保険制度は早晩崩壊するので、病院で入院したり、要介護状態になって長引いたりすると、非常に高額な医療費や介護費用がかかる時代になりつつあります。そのため、予防意識を徹底し、可能な限り入院加療や要介護状態を未然に防ぐ、健康維持増進活動への積極的参加が望まれます。

 

今後は日本も、個人の責任が問われる時代となります。つまり、「自分の命は自分で守る」ことを皆が自認し、自分の健康を見つめ直すことを余儀なくされるのです。

平成の30年間と共に歩み続けてきた高円寺南診療所の総括と、積み残してきた課題、そして令和と共に始める杉並国際クリニックの新たな役割と使命

3回シリーズ(1/3)

 

 

I 高円寺南診療所30年間の総括

 

皆様は平成の30年間をどのような時代であったと評価しますか?

 

私は、平成の30年間は空白の時代、さらにいえば失敗の時代だったと考えています。

 

その理由は「痛みを伴う構造改革」を行う絶好の時代を生かせなかったからです。

 

平成の初年度には、すでに新しい時代の重要課題が明確になっていたはずです。

 

それらの解決に向けての対策を誠実に着手していれば、現今のような事態には至らないで済んだのではないかと考えています。

 

しかし、それを避けてきたのは政府や経済界のリーダーたちでした。彼らの多くは昭和の成功モデルのまま遵守しようとして失敗を続けてきました。

 

失敗の原因を作ったのは、彼らばかりではありません。日本は世界に冠たる医療制度を持っているという思い込みから抜け出すことができなかった厚生労働省や日本医師会にも大きな責任があります。

 

たしかに日本での医療へのアクセスは世界で最も高水準であることは事実であり、これが今日の日本の長寿社会を可能にした大きな原動力の一つではありました。また自分で自由に病院や医師を選ぶことができる「フリーアクセス」が保証され、専門分業化が進んだ大病院志向が強いことも特徴です。

 

そして心身のトータルな健康管理を得意とする公的な「かかりつけ医」制度がないため、介護予防を含む予防医学や健康増進サポートがほとんど機能していません。

 

しかし、体力も気力も衰え、遠方の複数の大病院のはしご受診ができなくなった高齢者が行きつく先は近所の診療所です。そうした診療の仕事の多くが、重複する薬剤の整理と要介護申請業務に割かれるだけ、というようなことが増えてきています。

 

大病院の受診継続のみでは体力・気力の維持向上には役に立たないばかりか介護予防の目的も果たせません。その理由は、日本の医療保険制度のもとでは、提供される医療サービスは「診断」と「治療」にほぼ限定されていて、予防医学へは、医療費全体のほんの数%程度しか使われているにすぎないからです。

 

今後、医療費が増加していくことを考えると、ますます予防医学や維持期の公的医療サービス拡大は期待できなくなるでしょう。

 

零細な一医療機関に過ぎない高円寺南診療所でさえ反省点が浮き彫りになりました。

それは国家的な課題を解決すべきなのはあくまで行政であって一医療機関や一国民ではないという勝手な思い込みや責任逃れがあったということです。今になって気づいたことは、国家的課題と日常診療指針とはつねに密接不可分である、ということす。

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 (図1)

スクリーンショット 2019-05-03 時刻 12.50.38 

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

 スクリーンショット 2019-05-03 時刻 12.49.29

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、 17名の平均で    31.9点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効4名(32.5%)、有効7名(41.2%)、無効6(35.3%)でした。(図2)

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。

それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、

講義録のメモ〔講義録メモ〕

をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

 

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

 

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート①>

4月14日(日)9:35~10:35am

ACL2:

リウマチ性疾患の遺伝的背景と臨床応用

 

演者:

寺尾知可史 先生(理化学研究所生命医科学センター)

 

 

〔講義録メモ〕

リウマチ性疾患は複合性疾患である:遺伝要因と環境要因

関節リウマチの遺伝率は6割(日本人で推定58%)

ヒトゲノムプロジェクト完了⇒遺伝子多型地図完成⇒一塩基多型(SNP)関連ゲノム解析

影響の強い変異はヒト白血球型抗原(HLA)などに限られ、影響の弱い多型が非常に多く存在することが判明:一部は相互作用やエピスタシス効果を示すものがある。

疾患に関わる重要な分子ネットワークやパスウェイ、細胞が明かになってきた。

 

 

1  関節リウマチの遺伝率

 

Q

「母が関節リウマチなんですけど・・・私も関節リウマチになるのでしょうか?」

 

A

「関節リウマチ発症可能性は、普通の人とほとんど変わらないか、若干高くなる程度です。」

 

 

一塩基多型(SNP)の種類

SNPは数千万個ある

遺伝子変異がどのレベル(染色体、フラグメント、塩基)で長さの変化の有無・配列変化の有無をみる

染色体におけるSNPの組み合わせのことをハプロタイプという。

 

 

目の前の患者さんの遺伝子を調べるとすれば何を調べればよいか?

そこから何がわかるか?

 

関節リウマチの場合であれば、HLA-DRB1を調べると、もっとも多い情報を得ることができる(関節リウマチの50%の遺伝子要因を説明)

 

 

2  関節リウマチの疾患感受性の遺伝学

 <関節リウマチに成り易さの予測>

HLA(ヒト白血球抗原)領域:HLAは白血球の血液型である

HLA-DRB1はACPC(+)関節リウマチとACPC(-)関節リウマチで、関連性が大きく異なる

 

ACPC(-)関節リウマチに関連するHLA-DRB1アレルが存在し、RFの有無によって遺伝的に二群に分けられる。

CCP(-)関節リウマチはHLA(DRB1とB)で説明できる。

関節リウマチ関連遺伝子は100以上:PAD14,CCR6、AIRE

メタ解析による9つの関節リウマチの新規感受性遺伝子が同定された。

人類共通の遺伝因子(欧州人と日本人)が多数存在する。

 

 

3.関節リウマチの表現型の遺伝学

 合併症、治療反応性との関連性については良い結果がでていない

 関節所見・活動性・骨破壊

 遺伝性は45-58%の関節破壊を説明する

 

HLA-DRB1*0405はDAS28と独立して骨関節破壊に関連する

リウマチ因子の陽性と力価は関節リウマチ破壊の分布に関連する

抗体力価:リウマチ因子とCCP力価に関わる遺伝子は異なる

 

 

4.遺伝学が病態解明と治療開発とを結びつけることがある

遺伝子解析は疾患の原因を同定できる

遺伝率とは、遺伝要因が説明できる分散の割合を意味する

 

 

 

<まとめ>

医学の基礎研究の努力や結果のすべてが日常診療に直接役立つわけではありません。

 

しかし、研究を続けなければ医学は発展しないことは真理です。関節リウマチの基礎研究では、生まれながらの変異に着目することによって病気の原因を突き止め易くなってきました。そして、こうした研究によって、関節リウマチは、遺伝要因だけではなく環境要因が関与する複合性疾患であることが、よりわかってきました。

 

また、関節リウマチという同一の診断でも、それぞれ異なるタイプがあり、そのタイプを見極めることによって、より効果的で安全な治療戦略を組み立てることができるようになりつつあります。

 

それから日本人とはかけ離れているように思われがちなヨーロッパの人々と共通の遺伝因子が多数発見されたことは、医学の領域を超えて、とてもエクサイティングな発見です。

 

ですから、日本人を対象とする医学研究の成果は、欧州人にも役立ち、また欧州人を対象とする研究も日本人にとって貴重な情報になる、ということを意味します。

水氣道とは、室内温水プールでの稽古に留まらず、家庭での入浴、銭湯、保養地における温泉療法などの伝統的自然療法や現代的リハビリテーション医学とも密接な関わりを持っています。

img20190501_12040043