最新の臨床医学 5月8日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

 

糖尿病は認知症の促進因子です。

―糖尿病性認知症に注意!-

 

 

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに重要なトピックを紹介します。

 

 

シンポジウム1.

生活習慣・生活習慣病と認知症・アルツハイマー病

特に、糖尿病性認知症について

 

高齢化に伴い、認知症や軽度認知障害の人の数が急増しています。認知症には有効な治療手立てが確立していません。認知症の原因の約6割はアルツハイマー病で、その他にも血管性認知症やレヴィ―小体型認知症があります。

アルツハイマー病は脳組織の変性性疾患であるため、生活習慣病との関連は乏しいと考えられがちでした。しかし、近年、運動不足や不適切な食事といった不健康な生活習慣および糖尿病や高血圧等の生活習慣病が、血管性認知症ばかりでなく、アルツハイマー病のリスクであることが報告されるようになってきました。

糖尿病と認知症発症の関係を調べた疫学調査では、糖尿病群は正常群と比べ、認知症、特にアルツハイマー病の発症リスクが有意に高いことが判明しました。さらに、生活習慣との関連では、中年期から老年期の持続喫煙および老年期の短時間・長時間睡眠は、アルツハイマー病および血管性認知症発症の有意な危険因子でした。

 

血管性病変やアルツハイマー病態よりも糖代謝異常が深く関与している認知症の病型として、糖尿病性認知症が注目されるようになってきました。これは血糖コントロールの不良例が多く、進行は緩やかですが近時記憶障害よりも注意・遂行機能障害がみられるのが特徴であるため発見されづらいことが問題になると考えられます。

 

上述の疫学調査の結果によると、定期的な運動習慣があり、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類ならびに牛乳・乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ないという食事パターンの人では、認知症(アルツハイマー病、血管性認知症のそれぞれ)の発症リスクは有意に低いものでした。

 

そのため杉並国際クリニックとしては、本格的な認知症以前の段階である軽度認知障害の早期発見、可能であればその予防のための一層の対応が急務であると考えています。

 

将来の認知症発症を予防するためには、高血圧および糖尿病の予防と適切な管理に加え、禁煙、適切な睡眠、和食+野菜+牛乳・乳製品を中心とした食習慣ならびに定期的な運動を心がけることが大切になります。

 

 

高円寺南診療所30年の臨床経験による診療指針の正しさが次々と証明されてきていることは大きな励みです。禁煙指導、生活習慣指導、水氣道、トータルフィットネス・チェック、メディカル・チェック(区検診など)の総合的・抜本的な活動推進は、ますます重要性を増していると考えます。