最新の臨床医学 5月10日(金)アレルギー・感覚器系疾患

<アレルギーを知ろう>

 

アレルギー反応

私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとこれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギー反応も広くは免疫反応の一部ですが、異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合をアレルギー反応と呼んでいます。

 

アレルギー反応を演ずる役者は、たくさんいます。主な役者は、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなどのタンパク質や化学物質です。これらの役者たちが、連携してさまざまな種類のアレルギー反応を演じています。

 

 

アレルギー反応をもう少し詳しくみてみましょう。

 

私たちの皮膚や粘膜には、外からやたらに体の中に物質が入ってこないようにするバリア機能と呼んでいる仕組みがあります。

このバリア機能が何らかの原因で破綻するとそこから、体のなかにウイルス、細菌、アレルギーの原因となる、ダニ、ほこり、花粉、食物などが入り込みます。

侵入してきた物質は、抗原と呼ばれ、アレルギーの原因になるものは特にアレルゲンと呼んでいます。

抗原やアレルゲンが侵入すると、皮膚や粘膜の直下にいる抗原提示細胞がそれらを見つけて異物として認識します。

 

抗原提示細胞からの情報はリンパ球に伝えられます。

抗原の種類や状況、免疫のバランスによってこの後の反応が変わってきます。細菌やウイルスに対しては、形質細胞がIgG抗体やIgM抗体を産生し、侵入してきた細菌やウイルスを攻撃し排除します(免疫反応)。

アレルゲンに対しては、形質細胞がIgE抗体を産生したり、リンパ球が直接反応するようになります。

 

 

産生されたIgE抗体は、血液中を流れて皮膚や粘膜にいるマスト細胞の表面にくっついて待機しています。

この状態を「感作(かんさ)」と呼んでいます。

感作されただけではアレルギー反応はおこりません。感作された状態で、再びアレルゲンが侵入してマスト細胞上のIgE抗体と反応するとマスト細胞から、ヒスタミン、ロイコトリエンが放出され様々なアレルギー症状をおこします(即時型アレルギー反応)。

 

また、リンパ球が反応した場合は、再度のアレルゲンの侵入によって、様々な活性化物質や、細胞間伝達物質などが放出されます(遅発型アレルギー反応)。

 

 

この他にもいくつかのアレルギー反応の経路があることがわかっています。

 

即時型アレルギー反応の代表的な疾患が、花粉症、気管支喘息、食物やハチ毒でのアナフィラキシーです。遅発型アレルギー反応の代表的な疾患には、接触性皮膚炎があります。

 

 

<補足説明>

アレルギー反応は特殊な免疫反応です。免疫とは、私たちの体には、自分の体の成分と違う物、例えば、細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などが体の中に入ってくるとこれを異物として認識して攻撃し排除する仕組みです。そして異物に対して反応する際に自分の体を傷つけてしまう場合を特にアレルギー反応と呼んでいます。

 

私たちの皮膚や粘膜には、外からやたらに体の中に物質が入ってこないようにするバリア機能と呼んでいる仕組みがあります。そのうえで、免疫という身体の働きがあり、それ自体は本来有益なものなのです。しかし、アレルギー反応は、アナフィラキシー反応のように、かえって生命を脅かしてしまうものまであるので問題となります。

 

私たちを取り巻く環境の中には、アレルギー反応を引き起こす異物がたくさんあり経年的に増加していることが推定されます。そのうえに、私たちの身体のバリア機能は、いろいろな原因によって弱まっている可能性があります。これらの問題点が解決されない限り、アレルギーを減らすことは難しくなりますが、実際に、アレルギーは国民病といわれるまでに増えてきています。

 

環境改善とバリア機能の強化という二つの側面を踏まえた養生法や鍛錬法を実践することは、実に理に適っているはずです。水氣道®は、アレルギー反応を引き起こす細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉などの異物の少ない水中での有酸素運動であり、温度や湿度も維持された環境にあり、水着着用により、皮膚や粘膜などのバリアに対する傷害も少ないためアレルギー体質の患者さんにとっては理想的な鍛錬法の一つであるということができるでしょう。

 

アトピー性皮膚炎の患者さんに対して、入浴やプールでの運動を制限する皮膚科の先生もいらっしゃいますが、短期的な見立てにすぎないと思われます。

長期的な展望に立てば、アトピー性皮膚炎の患者さんも気管支ぜんそくの患者さんと同様に、水氣道の鍛錬によって改善が得られています。また、花粉症に至っては、運動不足も好ましくない反面、花粉散布量の多い屋外の運動は続けにくいものがありますが、屋内の温水プールを活用すれば、安心して運動不足を解消できることでしょう。