日本人の貧血の頻度は、成人男性7~10%、成人女性20%弱です。

 

男性は70歳以上、女性は40歳代で最も多いです。

 

貧血の原因として最も重要なのは鉄欠乏です。

 

鉄欠乏の目安は、血清フェリチン値が15ng/mL未満です。

 

鉄欠乏の男性は4%、女性で約20%です。

 

もっとも、これらのデータは一般人口における割合ですから、

 

病院を受診する方の割合はグーンと高くなるわけです。

 

このように、女性を診たら貧血を忘れてはならないのが、少なくとも内科医の心得です。

 

とくに40歳代の女性では、鉄欠乏が40%台にも登り、月経のある女性の半数が鉄欠乏であることは、余り意識されていないようです。

 

鉄欠乏性貧血に関しては日本鉄バイオサイエンス学会が作成した「鉄剤の適正使用による貧血治療指針改定第3版」が公表されています。

 

 

<鉄欠乏性貧血について高円寺南診療所で説明していること>

 

①男性および閉経後の女性では消化管出血が原因であることが多いです。

 

②悪性腫瘍が原因であることもあるので、消化管およびその付属臓器(肝・胆・膵)のスクリーニング検査をお勧めします。便潜血検査、上部消化管造影検査、腹部超音波検査

 

③治療薬として経口鉄剤を用いることがありますが、その副作用として、悪心、便秘、腹部膨満、腹痛、下痢、嘔吐などがあります。

 

④経口鉄剤には向き不向きがあるので、必要に応じて内服薬の変更や服用時間の変更(朝から就寝前など)を工夫する必要があります。

 

⑤内服薬で改善しない場合は、鉄剤の静脈内投与が必要となる場合があります。

 

⑥出血による鉄欠乏性貧血の場合、出血が持続していなければ、貧血は2か月以内に改善します。

 

⑦貧血は表面的には改善されても、鉄の貯蔵をはかるために、さらに3~6か月間鉄剤を内服する必要があります。

 

➇貧血改善後にも再発することが多いです。

 

 

通常であれば3か月に1回、最低でも半年に1回は血液検査を行う必要があります。

 

なお鉄分の多い食事については、臨床栄養学のテキストをご参考になってください。

 

1)  食物と栄養学基礎シリーズ10 臨床栄養学

吉田勉監修、飯嶋正広・今本美幸 編著 2013 学文社

(9疾患・病態別栄養ケア・マネジメント/9・10血液系の疾患・病態/

 9・10.1 貧血 192頁)定価(本体3000円+税)

 

2)わかりやすい臨床栄養学 第5版

吉田勉監修、

飯嶋正広、井上久美子、今井克己、近江雅代、恩田理恵、小林三智子 共著

三共出版 2017年3月10日 第5版

(各論編 11血液系疾患/1貧血 鉄欠乏性貧血 179頁)

定価(本体2900円+税)

急性肝炎のほとんどは自然経過で肝不全に至ることなく治癒します。

 

そのため、補液などの対症療法で経過観察をします。

 

しかし、急性肝不全など肝不全に移行した場合にはきわめて予後不良になります。

 

そのためにも、急性肝炎では肝予備能を厳重に観察し、劇症化の徴候を見落さないことが必要です。

 

劇症化の徴候としては、身体所見(悪心・嘔吐の持続、傾眠)、血液検査所見(PT延長、間接型ビリルビン優位のビリルビン上昇)などがあります。

 

また、原因によっては慢性化のリスクもあります。

 

 

急性肝不全症例では専門医療機関にて肝移植を含めた治療が必要になります。

 

こうした肝機能低下例では、肝移植も治療の選択肢となり得るため、少なくとも肝移植の適応の判断を含め肝不全の治療については肝臓専門医が行うか、もしくは併診とすることが望ましいと考えます。

 

 

実際には、ステロイドパルス療法や血漿交換・持続濾過透析などの集学的治療を行い、生体肝移植のドナー候補の確認や脳死肝移植登録を行います。

 

 

近年、治療適応や薬剤選択が複雑性を増しています。

 

それでは、一般には、どのような場合に肝臓病専門医に紹介すべきでしょうか。

 

 

以下は、高円寺南診療所の指針です。

 

紹介先は大学病院のなかでも特定の高度医療機関に限られます。

 

1)急性肝炎の場合、急性肝不全に移行する可能性が高い例

(血清ビリルビンが持続的に高値、プリトロンビン時間が40%未満

 

2)B型・C型慢性肝炎、肝硬変で抗ウイルス療法を検討する場合

 

3)肝硬変症で合併症をスクリーニングする場合

 

4)肝炎ウイルス以外の慢性肝障害で原因が不明な場合

 

 

医学の専門領域には、実際上明確な壁はありません。

 

専門領域を区分するのは研究者の都合上のことであって、患者さんのためには必ずしもなっていないようです。

 

私は、まず

①症状の現れる場所に、かならずしも病気の原因が同時に存在するとは考えてはいません。

 

②体に症状が現れたからといって、かならずしも身体疾患であるとは考えていません。

 

③心の相談を受けていても、背景に体の病気が潜んでいる可能性を常に意識しています。

 

④病気の原因は必ずしも一つであるとは限りません。

 

⑤患者さんの訴えの原因となる病気は必ずしも一つだけではないと考えています。

つまり、患者さんが気付いていない合併症の可能性にも注意を払っています。

 

 

以上の様な視点が無いと、的確に診断できない病気がたくさんあります。

 

それが、アレルギー科、リウマチ科が関与する病気です。

 

内科医であっても、目や鼻、皮膚、関節、筋肉を見なければ膠原病(≒全身性自己免疫疾患)の診療は不可能だからです。

 

患者さんから未だに、「先生は眼科も耳鼻科も皮膚科も整形外科も精神科も、いっぺんに見るのですか」と驚かれることがあります。

 

それはまだ良い方であって、必要な診察であっても「それは、大学の専門医の先生に診ていただいているので結構です。」と言い放たれてしまうと、とても消耗します。

 

しかし、それにもかかわらず数か月後、その大学の先生から逆紹介されることなど、けっして珍しくはありません。

 

 

多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)は骨格筋を障害する原因不明の炎症性疾患です。

 

原因不明とされてはいますが、高頻度に特異的自己抗体を認めることから、全身性自己免疫疾患とされます。

 

筋症状以外にも多彩な全身の臓器病変を合併することが多い疾患です。わが国における患者数は約2万人と推定されています。

 

 

筋症状:

躯幹近位筋に有意の筋力低下が特徴で、咽頭筋・喉頭筋が障害されると嚥下障害を来たし、嚥下性肺炎の原因となります。

 

全身臓器病変:

間質性肺炎(IP)はPM/DMの約半数に認められ、予後を左右する重要な合併症の一つです。また悪性腫瘍の合併が5~10%に認められます。

 

 

PM/DMの診断・治療ガイドラインに関しては、厚生労働省自己免疫疾患研究班の筋炎分科会により、膠原病内科、皮膚科、神経内科の各分野の専門家が合同で検討を重ねています。

 

 

PM/DMの約3分の1は初回治療で寛解します。

 

しかし、残りは再燃と寛解を繰り返します。

 

とくに、悪性腫瘍合併例、抗SRP抗体陽性例、IBMは治療反応性が不良です。

 

また、筋委縮が強いと、血清CK値が高値でなくとも筋症状の回復は遅いとされます。

 

 

生命予後も病型によって異なります。

 

悪性腫瘍合併例、IP合併例、嚥下障害例は予後不良です。またDMはPMよりも予後が悪いとされます。

 

その理由の一つが合併するIPの治療反応性の違いによると考えられています。

 

 

筋炎全体の5年生存率は70%とされてきましたが、近年では予後の改善が認められています。

 

行き過ぎた細分化臓器別医療に歯止めが掛かるようになれば、もっと成績が良くなるのではないかと期待しています。

2015年の厚生労働省の人口動態統計によれば、わが国における心疾患による死亡数は19万6千人強で、悪性新生物の37万人に次いで死因第2位となっています。

 

その中で、急性心筋梗塞の死亡数は4万人弱であり、その他の虚血性心疾患の死亡数3万4千人強と併せると、虚血性心疾患の死亡数は心不全と並んで循環器系死亡のトップを占めると報告されています。

 

わが国では1990年代後半から、日本循環器学会を中心に診療ガイドラインが発表されています。その中から、まず高円寺南診療所の日常診療に関するものを挙げてみます。

 

 

しかし、これだけのことを勉強しても、患者の皆様に判りやすくお伝えすることは並大抵の工夫と努力では達成できません。

 

また、一般の方に専門的な理解を求めることも限界はあるのではないかと思います。

 

近年、やたらセカンド・オピニョンという言葉が医療現場に登場しますが、セカンド・オピニョンというカタカナの意味するところに誤解が多く、患者さんの身勝手な思い込みが先行していることもあるので苦慮しています。

 

なるべくカタカナは使用せずに、自分の言葉で具体的にご要望を伝えてくださるよう、是非ともお願いしたいところです。

 

 

一言申し上げておきたいのは、心筋虚血の検査に関しては、診断のためのガイドラインは存在しますが、虚血性心疾患患者のフォローに関する明確な基準はない、ということです。

 

つまり、症状出現、悪化時にはもちろんですが、安定している患者さんにおいても定期的な検査施行が望ましいことは明らかであり、その期間は個々のリスクに応じて考えなければならないのにもかかわらず、外来患者の混雑等の特に大學病院側の都合で、漫然と3か月に1回だけの受診、しかも薬の処方だけということで急変し、お亡くなりになった方が多数いらっしゃいます。

 

身近なかかりつけ医(主治医)の判断を軽視していることの証左でもありますが、普段診ている医師が必要であると判断した場合、最小限の問診や検査等は、従順に受けていただきたいと思います。

 

全人的な信頼関係が構築できていることによって、生命にかかわる異変が早期に発見し、大學病院等に診療情報提供書を提出し、危機を脱出できた患者さんは枚挙に及びません。

 

 

診療一般ガイドライン:

 

①「非ST上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」

 

②「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)」

 

③「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)」

 

<要点>労作性狭心症では、軽労作でも胸痛が生じるなど、発作が起こりやすくなってきた場合には、速やかに医師に相談しなければなりません。なお冠攣縮性狭心症は、投薬の減量・中止に関しては特に慎重でなければなりません。

 

 

検査ガイドライン:

 

①「慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン(2010年改訂版)」

 

②「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン」

 

<要点> 初診時に必要な検査として1)12誘導心電図、2)胸部エックス線検査、3)心エコー、4)血液生化学検査が推奨されています。

 

これらは、高円寺南診療所ですべて実施可能ですが、初診時にこれらすべてを行うことはほとんどありません。わたしは、日本人の場合には、頚動脈エコーは必須であると考えていますが、その理由は別の機会に譲ります。

 

定期検査としては、リスク因子のコントロールの観点から必要です。また、チエノピリジン系抗血小板薬服用者では、副作用のため肝機能などのチェックが必要です。

 

 

治療ガイドライン:

 

①「安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版)」

 

②「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2012年改訂版)」

 

<要点>坑血小板薬としてのアスピリンは原則として一生継続していただきます。ステント留置後は金属が露出しているためにアスピリンにチエノピリジン系抗血小板薬を加えた2剤併用療法(DAPT)を行います。

 

 

予防ガイドライン:

 

①「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)」

 

②「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)」

 

<要点>1)日常生活指導、2)定期的検査、3)抗血小板薬の使用などが強調されています。1)では、喫煙者では禁煙の指導を行うこと、これは受動喫煙の観点から家人の禁煙も必要です。定期的な運動習慣と体重のコントロールも重要です。病態・合併症に応じた食事指導も行うべきです。服薬による再発予防が重要であり、自己判断で休薬・中止しないなど、服薬遵守を指導しなければなりません。

 

 

《 まとめ 》虚血性心疾患について、現在では、日常の外来診療におけるケアがより重要性を増しています。冠危険因子のコントロールが重要な予後規定因子です。患者さんの生活習慣の改善や定期的な検査、良好な服薬コンプライアンスの維持をはかることがとりわけ重要です。

日常の診療で定期的に行っている血液検査の項目のなかで、最近、とみに重要性を増しているグループの一つが電解質(ミネラル類)です。

 

それは、超高齢社会のもとで、高血圧それもより重症例が増えているのと、慢性腎臓病(CKD)の増加によるものであると、私は考えています。

 

とくに血清カリウムの動向、とくに高カリウム血症には注意を要します。

 

 

高カリウム血症といえば、高血圧症の治療で降圧剤であるRA系阻害薬とミネラルコルチコイド(MR)受容体拮抗薬の併用で生じやすいので、副作用の早期発見が必要です。

 

またCKDステージが進むと代謝性アシドーシスが起こります。そうなると血清カリウム(K)値も上昇するため、定期的なチェックが必要です。

 

腎機能低下により腎臓からの酸排泄量が低下すると、血液中の重炭酸イオンが消費され、アニオンギャップ(AG)正常の高塩素(Cl)性代謝性アシドーシスとなります。

 

また、さらに腎機能低下が進行し、硫酸やリン酸などの不揮発酸の排泄低下が加わると、AG開大性の代謝性アシドーシスも合併します。

 

このように代謝性アシドーシスでは、基本的の高カリウム血症を来します。

 

 

やや特殊な病態として尿細管性アシドーシス(RTA)があります。RTAの中でも(Ⅳ型)は高カリウム血症を来しますが、下痢やRTA(Ⅰ型、Ⅱ型)の場合、下痢の場合と同様、低カリウム血症を来します。

 

RTAでは、血液中の重炭酸イオン濃度が低下し、塩素イオン濃度が増加しますが、それ以外の陰イオン(アニオン)に変化はないので、AG(アニオンギャップ)は増加しないことが、他の代謝性アシドーシスとの鑑別に役立ちます。

 

 

RTA(Ⅰ型)は、遠位尿細管性アシドーシスで、この型が多いです。

 

骨からのカルシウム遊出、尿細管内クエン酸低下などにより腎石灰化を来します。

 

また、シェーグレン症候群などがこれに含まれます。

 

とくにシェーグレン症候群の患者さんで四肢麻痺が見られたら、低カリウム血症を疑います。

 

一般に、RTA(Ⅰ型)では、尿中へのナトリウム排泄が増加することにより、細胞外液量が減少します。

 

その状況に反応してアルドステロンというホルモンの分泌が増加することによって低カリウム血症がもたらされます。

 

低カリウム血症になると、筋脱力、四肢麻痺、尿濃縮力低下による多尿を呈します。

 

治療方法は、代謝性アシドーシスを補正するためクエン酸カリウムが有効です。重曹などの炭酸水素ナトリウムを1.5~3.0g/日を投与して、血清重炭酸イオン濃度を20mEq/L以上を目標にします。

 

(高円寺南診療所では痛風の患者さんが多いため、ウラリット®という尿アルカリ化剤を使用している患者さんが多いです。その理由は、痛風の原因が高尿酸血症であって、尿酸自体が不揮発酸であり、この酸の尿中への排泄を促すために重炭酸イオンによって、尿のアルカリ化をはかる必要があるからです。)

 

 

RTA(Ⅱ型)は、近位尿細管性アシドーシスで、ファンコーニ症候群などがこれに含まれます。

 

ファンコーニ症候群の原因は、重炭酸イオンの再吸収障害であり、他に低リン血症、汎アミノ酸尿症を来します。

 

このように、定期的な血液検査で血清カリウム濃度が高い場合、治療薬による副作用は無いか、腎機能が低下していないか、代謝性アシドーシスの状態に陥っていないかなど、そのつど検討しています。

 

輸血は、それをヒト由来の血液または血液成分で補う治療法の一種です。

 

血液は、赤血球、白血球や血小板といった細胞成分と血漿成分からできています。

 

そして、それぞれが独自の働きを持っています。十分な血液を作れない場合や、出血が大量なために、生命に危険が生ずる場合や、血液を固めるタンパク質(凝固因子)が足りず、出血の危険がある場合に、それらを適切に補う必要があります。

 

輸血で補うことができる成分は、主に赤血球、血小板、血漿成分および凝固因子です。輸血は、それぞれの状況に適した血液製剤を選んで輸血します。ただし、これには副作用を伴うことがあります。

 

 

輸血の副作用には、大きく分けて、溶血性副作用と非溶血性副作用とがあり、感染症(輸血後感染症)も問題になります。

 

溶血性副作用には即時型の溶血性副作用としてABO不適合型輸血などがあるほか、遅延型溶血性副作用があります。

 

非溶血性副作用が大多数を占め、主なものは、発熱、アレルギー反応、TRALI/TACO

 

輸血後GVHD(輸血後移植片対宿主病)、輸血後鉄過剰症、高カリウム血症、などがあります。とくに輸血後鉄過剰症では血清フェリチンの増加がみられ、鉄キレート剤を投与します。

 

頻回の赤血球輸血によって生じた輸血後過剰症に対しては、鉄キレート療法としてデフェロキキサミンメシル酸塩(デスフェラール®)、デフェラシロクス(エクジェイド®)が用いられます。詳細については「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」が出されています。

 

 

TRALI/TACOについての詳細:

TRALI(Transfusion-related acute lung injury:輸血関連急性肺障害)は、低酸素血症、両側肺野の浸潤影を伴う急性の肺障害(肺傷害・肺損傷)を呈し、呼吸困難等を伴うこともあります。ほかの原因による肺障害を除外するため、診断基準が2004年のConsensus Conferenceで定められました。TRALIの基本的病態は非心原性の肺水腫(肺障害)であり、循環過負荷によるものは除外されます。急性肺障害の危険因子がある場合には、輸血が原因かその病態自体が原因かはっきりしないためpossible TRALIとして区別しています。

 

TACO(Transfusion associated circulatory overload:輸血関連循環過負荷)は1940年代から言及されていた輸血の合併症でした。最近ではTRALI との鑑別の重要性から、基本的病態についての検討が進み、輸血や輸液の過剰な量負荷もしくは過剰な速度負荷と、患者の心、腎、肺機能の低下などにより、呼吸困難をきたすは心不全の病態とされます。

 

 

感染症としては、ウイルス、細菌、原虫などがあります。

 

詳細は、日本赤十字社の医薬品情報(http://www.jrc.or.jp/mr/reaction/

 

が最新の情報を提供しています。

 

そこには、輸血用血液製剤における遡及調査について「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」に基づき解説しています。

 

また輸血後副作用にも副作用等報告制度があり、輸血用血液製剤による重篤な副作用や感染症が発生した場合の報告制度について解説しています。とりわけ、輸血副作用の救済制度には、輸血用血液製剤を介した感染症による健康被害についての救済制度があります。

 

この他、生物由来製品感染等被害救済制度という最近の医学の進歩にともなう医療による被害者救済制度も制定されています。

 

また、日本赤十字社ではへモビジランス(血液安全管理体制)を中心に海外の状況についても紹介しています。

 

 

このように、医学の進歩は病人に多大な利益をもたらす反面、実際の医療では避けることのできない副作用など、不利益をもたらすことがあります。

 

こればかりは、個々の医師がどんなに研修しても皆無にすることは不可能です。

 

しかし、万が一の事態が生じた場合でも、様々な被害者救済制度が整備されつつあるのはせめてもの救いです。

 

しかしながら、多くの人々はその存在すら知らず、制度の恩恵に浴することができません。

 

 

臨床医としては、このような制度についても、従来以上に注意と関心を払っておかなければならないことを痛感します。

C型急性肝炎(HCV)は感染すると、健康成人の感染であっても、急性の経過で治癒するのは30%であり、感染例の慢性化率は60~70%で持続感染が続き、特に輸血後肝炎に多く、またウイルスの自然消失は年率0.2%とまれです。

 

日本での一般人口におけるHCV抗体陽性率は2%、約200万人存在するとされています。

 

C型肝炎はほぼ100%ウイルスの永続的な排除が期待できる疾患です。

 

非代償性肝硬変例、肝細胞癌治療中の症例、併存疾患のため予後不良の症例を除き、原則として全例が治療適応になります。

 

HCVキャリアが無治療のとき、慢性肝炎60~70%、肝癌25%、肝硬変15%に進展します。

 

C型肝炎の治療目標は持続的なウイルス陰性化を可能な限り目指すことが治療の基本となりました。

 

HCV持続感染によって惹起される肝硬変、肝臓癌の抑制にあります。わが国の肝細胞癌の原因として最も多いのがC型肝炎ウイルスです。

 

C型肝炎の発癌リスク因子には、高齢、糖尿病、肝線維化、肝脂肪化が挙げられます。

 

C型肝炎ウイルスの肝外病変として、クリオグロブリン血症、慢性唾液腺炎、慢性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、心筋症、慢性甲状腺炎、扁平苔癬、間質性肺炎などがあります。

 

 

まず行う検査は腹部超音波検査とHCVのRNA定量です。C型肝炎の治療方針決定に際し、ウイルス量とgenotypeは治療方針に大きく影響します。

 

 

インターフェロン治療は、わが国では1992年からC型肝炎に対する治療で、一般臨床で使用開始されました。

 

インターフェロン単独療法からリバビリン併用療法、さらにペグインターフェロンとリバビリン併用療法が標準的抗ウイルス療法となったことより著効(SVR:sustained virological response)率は向上しましたが、難治性であるHCVゲノタイプ1型・高ウイルス量の症例では同療法においてもSVR率が40~50%でした。

 

日本におけるC型肝炎はインターフェロンが効きにくいgenotype1b型が多いです。

 

 

インターフェロン単独療法の効果が良好なのは、

①RNA量が少ない、

②genotype2a/2b、

③線維化が軽度、

という条件があります。

 

またインターフェロンの副作用として、インフルエンザ様症状、血球減少、精神症状(抑うつ症状があり、自殺例もある)、自己免疫現象、間質性肺炎、心筋症、眼底出血などの問題がありました。

 

 

ゲノタイプ1型の高ウイルス量HCVにおいて3剤併用(ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビル)が適応になります。

 

リバビリンは腎機能低下例(Ccr≦50mL/分)や透析患者には禁忌であることをはじめ、副作用として脳出血、溶血性貧血、催奇形があります。

 

またシメプレビルは高ビリルビン血症による死亡例が報告され、ビリルビン上昇に注意する必要があります。

 

 

C型肝炎ウイルスに対する治療は2014年以降、従来のインターフェロン中心の治療から、経口直接型抗ウイルス薬(DAAs:Direct Acting Antivirus)によるインターフェロンフリー治療へと大きく転換しました。

 

DAAsは単独投与では耐性ウイルスが出現しやすいため、異なる種類のDAAs2剤または3剤併用療法が基本となります。

 

インターフェロンフリーの直接型抗ウイルス薬(DAA)NS5A阻害薬であるダクラタスビルとNS3・4Aプロテアーゼ阻害薬であるアスナプレビルとを併用した経口療法は2014年に承認され、従来のインターフェロン不適格例や無効例に対する治療が可能になり、SVR率も80~90%に達しました。

 

新たなインターフェロンフリーの直接型抗ウイルス薬DAAであるNS5A阻害薬(レジパスビル)/NS5B阻害薬(ソホスブビル)配合薬はゲノタイプ1型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対して承認され、ウイルス量に関係なく使用します。

 

この場合リバビリンは兼用しません。12週でのSVR率は99%まで向上しました。

 

ゲノタイプ1型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対するインターフェロンフリー治療としてハーボニー®(各種PPI併用注意)及びヴィキラックス®(カルシウムチャンネル拮抗薬に併用禁忌・注意)に加えて、2016年にはグラゾプレビル+エルバスタビル併用が承認され、2017年には抗C型肝炎ウイルス薬グクラタスビル塩酸塩・アスナプレビル・ペクラブビル塩酸塩配合(ジメンシー®)も承認されました。

 

 

ゲノタイプ2型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対する第一選択はソフォスブビル+リバビリン併用でしたが、2016年にはゲノタイプ2型のC型慢性肝炎に対してヴィキラックス®+リバビリン併用が承認されました。

 

 

2017年に、すべてのゲノタイプ(パンゲノタイプ)のC型慢性肝炎及び代償性肝硬変に対する治療薬として、グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル配合の抗C型肝炎ウイルス薬グレカプレビル水和物・ビブレンタスビル配合(マヴィレット®)が承認されました。

 

 

HCVによる肝硬変では肝移植後にほぼ全例で再発していましたが、近年C型肝炎の治療向上により、SVR率も向上しています。

 

参照:C型肝炎治療ガイドライン(第54版)(日本肝臓学会,2017

SScでは爪上皮に出血点を認め、中指や環指に生じやすいです。非特異的ですが石灰化も認められます。

 

合併症として食道蠕動運動の低下による逆流性食道炎、食道拡張、偽性腸閉塞、腸管嚢状気腫症、腸内細菌の過剰増殖により10~30%に吸収不良や、下痢、脂肪便、体重減少など吸収不良症候群、間質性肺炎、心伝導障害などが見られることがあります。

 

また高血圧を来す場合は高レニン血症を伴う悪性高血圧を疑う必要があり、強皮症腎による腎不全(強皮症腎クリーゼ)を来すことがあります。

 

強皮症腎の腎病理組織所見では、小葉間動脈壁肥厚(小葉間動脈周囲のムコ多糖増加による内膜肥厚)、onion-skin lesionがみられます。

 

 

2013ACR/EULAR SSc分類基準に含まれているのは、皮膚硬化、指尖部病変、毛細血管拡張、爪周囲の毛細血管異常、間質性肺疾患または肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症)、レイノー現象、SSc関連特異的自己抗体(Scl-70抗体抗セントメア抗体RNAポリメラーゼ抗体)などです。

 

 

またSScの心筋障害には、微小冠血管攣縮(心臓レイノー症候群)が関与します。そのため、早期診断には、冠動脈造影ではなく、負荷心筋血流シンチグラフィ―が有用とされます。

 

SScの心筋症の評価において、遅延造影MRIは心筋の線維化の評価に有用です。ガドリニウム(Gd)投与後約15分後のT1強調画像が線維化の評価に有用です。

 

 

レイノー現象、皮膚潰瘍などの血管病変に対して血管拡張作用のあるカルシウム拮抗薬プロスタグランジン(プロスタサイクリン)、エンドセリン受容体拮抗薬が用いられます。

 

エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタンは、肺高血圧症の治療薬として開発されましたが2016年に難治性皮膚潰瘍にも保険適用となりました。

 

なお、エンドセリン受容体拮抗薬は間質性肺炎があると、換気血流比(V/Q)不均衡を引き起こし、呼吸不全を悪化させることがあるために注意を要します。

 

 

強皮症腎、特にクリーゼには抗RNAポリメラーゼⅢ抗体が関与します。

 

強皮症腎ではACE阻害薬を用います。

 

ステロイドパルス療法など副腎皮質ステロイドは強皮症腎クリーゼの誘発因子になりため、治療のためには原則プレドニゾロン換算で20mg/日以下です。

 

かぜを引いた後で、数日の経過で腕・手や脚・足に運動障害や感覚麻痺(感冒症状後の亜急性に四肢の運動感覚障害)が生じることがあります。

 

大多数例では、両下肢から脱力が始まり、上肢、顔面領域、最重症だと呼吸筋麻痺へと進行します。

 

このような経過は典型的なギランバレ症候群を疑う必要があります。

 

実際にカンピロバクターなどの先行感染の既往が60~70%にみられます。

 

 

第Ⅶ脳神経障害による両側顔面神経麻痺の他、複視、球麻痺、構音障害など脳神経麻痺が50~80%にみられます。

 

四肢の筋力低下、体幹筋の障害により、呼吸筋筋力低下が生じ呼吸困難を来たせば呼吸性アシドーシスとなり、人工呼吸管理が必要になることがあります。

 

腱反射消失や近位筋・遠位筋がともに障害されることが多いです。また自律神経障害も来します。

 

 

診断には髄液検査および末梢神経伝導速度検査が用いられます。

 

脳脊髄液の蛋白細胞乖離、運動神経伝導検査では発症初期から伝導ブロックを認め、発症から数週間後に伝導速度の低下は数週間後に出現します。

 

神経根に近いほど脱髄が強いため、M波高(振幅)は刺激部位が近位であるほど低下する傾向があります。

 

抗GM1抗体、抗GD1a抗体などの血清抗ガングリオシド抗体が陽性となります。

 

脱髄型と軸索型があります。

 

 

フィッシャー症候群はGBSの亜型と考えられており、外眼筋麻痺や運動失調を来します。

 

急性に発症し、発症後4週間以内に症状のピークとなります。

 

その後、徐々に改善し、数か月以内に治癒することが多いです。

 

抗ガングリオシド抗体(抗GQ1b抗体、抗GT1a抗体)が高率に陽性となります。

 

 

治療法としては、血漿交換療法(血液浄化療法)が有効です。

 

この方法によって、自己抗体である抗ガングリオシド抗体を除去することができます。

 

ただし、保険適応はHughesの重症度分類4度以上で、月7回、3ヶ月までという制限があります。

 

また免疫グロブリン大量静注療法が保険適応になりました。また、免疫抑制剤やステロイド単独投与は無効です。

高円寺南診療所では、人の居場所に着目したグローバルな医療の視点が必要と考え、家庭医学をはじめ産業医学(職場)、スポーツ医学、保養地医学などに関心を払ってきました。

 

しかし、国際社会に会って人の移動に着目した医療にも無関心であってはならないため、日本旅行医学会への入会手続き中です。

 

「旅行医学」とは、「人の移動の安全と快適性を高める医学」と定義されます。

 

日本旅行医学会のHPによると、日本旅行医学会の基本コンセプト は、統計的なアプローチを通して、科学的根拠のある具体的で分かりやすいメッセージを発信していこうということであると表明されています。

 

 

そこで、今回は日本旅行医学会のHPで解説している「感染症」のなかから、デング熱について引用してみることにしました。

 

 

病原体

デングウイルスは4種類の型があり、それぞれが免疫学的に関連しています。

 

このウイルスはプラス鎖のRNAウイルスで、フラビウイルス科のフラビウイルス属に属しており、デング熱とデング出血熱の両方を引き起こします。

 

無症候性感染もまたこのウイルスによって起こります。ある型のデングウイルスに感染すると、その型の再感染に対する免疫を生涯にわたり持続しますが、他の3つの型のウイルスに対する交叉防御免疫は長期間は持続しません(いずれの組合せの交叉免疫であっても2ヶ月以内)。

 

 

感染経路

人への感染は主としてウイルスに感染したネッタイシマカ(まれにヒトスジシマカやポリネシアヤブカ)に刺されて起こります。

 

雌の蚊がウイルス血症のヒトを刺してウイルスを宿すと、8~12日の外部潜伏期の経過後に感染状態となります。

 

感染した蚊はそれ以後はずっとデング熱ウイルスを感染させることができます(蚊の寿命は約1ヶ月)。

 

 

頻度は低くなりますが、輸血、内臓または骨髄移植、(針刺し、血液の粘膜接触等の)院内事故などによって汚染血液、内臓、その他の組織によりデング熱ウイルスに感染することもあります。

 

デング熱ウイルスが、感染した女性から子宮内の胎児へ、あるいは分娩の際に新生児へ垂直感染することもあります。

 

ヒトからヒトへの直接感染についての報告はありません。

 

 

発生地域

デング感染症は、アフリカ、南北アメリカ、カリブ海、地中海東岸、東南アジア、西太平洋の地域の100以上におよぶ諸国から報告されています(地図3-01、3-02)。

 

世界保健機構(WHO)の推定では、年間5000万件の発症があり、そのうちの50万件(1%)が入院を要するものとしています。

 

デング感染症の分布はマラリアと類似していますが、マラリアの場合と異なり、デング感染症は熱帯諸国の都市部や住宅地域での発生が多くみられます。

 

旅行をしようとする人はCDC(www.cdc.gov/dengue/travelOutbreaks/index.html)や  WHO (http://www.who.int/topics/dengue/en/)のウェブサイトを調べて、旅行を計画している国がデング感染症の流行地であるかどうか、また現在流行中であるかどうかを判断することが求められます。

 

 

1980年以来、米国本土ではデング感染症の発生が何件か認められています。

 

その中には、テキサス南部のメキシコ国境沿いの地域での7件、2001年のハワイでの1件、2009年と2010年のフロリダ南部での2件の発生が含まれます。

 

米国南東部のいくつかの州では、ほぼ年中蚊が生息し、住民は感染を受けやすく、しかも国外からの旅行者や海外からの帰国者がウイルスを持ち込む機会が多くあります。

 

しかし、住宅設備(例えば、エアコンや防虫網)や生活様式を変えることによって、これらの州でのデング感染症の流行を防げる可能性はあります。

 

 

デング熱とデング出血熱の症例は、毎年米国へ帰国する旅行者に確認されています

 

しかしながら、米国においてデングウイルス感染症について全国的に報告義務が課せられるようになったのは2009年の6月からで、2010年1月より前では症例報告が限られています。

 

熱帯地方のデング熱流行地からの帰国し、発熱の症状を示す旅行者の(血清診断による)感染率は3~8%に上ります。

 

GeoSentinel network(感染症に関するトラベルクリニックのネットワーク)のクリニックで診察を受けた罹病旅行者17,353人について最近実施された調査では、カリブ海地域、南米、南中央アジア、東南アジアからの帰国旅行者の全身性熱疾患の原因で最も多かったのはデング感染症であることを示しています。

 

また、熱帯地方からの帰国旅行者が入院治療を要するようになった原因で2番目に多いのはデング感染症(最も多い原因はマラリア)であるとする研究もあります。

 

 

デングウイルス感染によって生じる妊婦の健康状態や、母体のデングウイルス感染が発育中の胎児に与える影響について、公表されているデータは限られています。

 

母胎から胎児への垂直感染は起こりうることで、また周産期に母体が感染すると、新生児が症候性疾患を発症する可能性が高くなります。

 

文献で報告されている垂直感染の24症例では、発熱の母体発症と新生児発症の間には平均で7日(5~13日の範囲)の期間がありました。

 

すべての症例で発熱と血小板減少がみられ、また多くの症例で肝腫大と出血を認められました。

 

(以前の母体感染で生じた)母体の抗デングウイルスIgG抗体が胎盤を通して胎児に移行した場合には、生まれてくる新生児が生後6ヶ月から1歳になるまでの間にデングウイルスに感染すると、デング出血熱を発病するリスクが高くなります。

 

地図 3-01.デング熱流行地域(北中米カリブ海)

デング中南米

 

地図3-02.デング熱流行地域(アフリカ・中東)

デング1

 

地図3-03.デング熱流行地域(アジア・オセアニア)

オセアニア

 

 

 

臨床症状

発熱があり、症状が現れる2週間前に熱帯地方や亜熱帯地方に旅行したことのある人の鑑別診断の際には、デング感染症であるか検討すべきです。

 

デング感染症の潜伏期は通常4~7日です(3~14日の範囲)。

 

デングウイルスに感染しても発熱が軽微な場合にはデング熱と診断されないかもしれません。

 

旅行者が初めてデングウイルスに感染しても、他の疾患との鑑別がつかない微熱性疾患に終わるか、あるいは症状が出ないことが多くあります。

 

しかし、その後にデングウイルスに再感染した場合、ふつうは重篤性の高い疾患になります。

 

WHOによる臨床上の定義では、デング熱は、頭痛、後眼窩痛、筋肉痛、関節痛、発疹、出血症状、白血球減少のうち2つ以上の症状が該当する急性熱疾患であるとしています。

 

発疹は通常発熱が治まるにつれて現れ、2~4日間持続します。斑状または斑状丘疹性の発疹で全身に広がり、正常皮膚の小斑と融合する場合が多くあり、落屑状になり痒みが出るようになることもあります。

 

デング熱のその他の症状・徴候として、皮膚の紅潮(通常は疾患発症24~48時間後)、吐き気、嘔吐があげられます。

 

デング熱患者のおよそ1%がデング出血熱を発病します。

 

これは発熱が治まりかけた時点(通常は発熱後3~8日経ってから)で起こります。

 

別の型のデングウイルスによって再感染した場合には、病状がより重篤化することがふつうです。

 

 

血管透過性の亢進と血漿漏出がデング出血熱とデング熱とを鑑別する所見となります。

 

デング出血熱の特徴として、

(1)発熱が2~7日間続く、

(2)出血症状の所見、あるいは駆血帯試験の陽性所見、

(3)血小板減少症(100,000個/mm3以下)、

(4)血液濃縮を含む血漿漏出の所見(すなわち、ヘマトクリット値が年齢別の平均値より20%以上上昇、あるいは輸液後にヘマトクリット値がベースライン値よりも20%以上低下)、

(5)胸水、

(6)腹水、

(7)低タンパク血症、などがあげられます。

 

血小板減少症だけではデング出血熱の診断にはなりません。

 

デングショック症候群の定義は、デング出血熱の診断を満たす基準に加えて、血圧低下、脈圧の狭小化(20mmHg以下)、または循環血液量減少性ショックの所見のいずれかが認められることとされています。

 

 

診断

デング感染症の疑いがある症例については、同一血清標本に対して行われる次の検査所見の組合せによって確定します。

 

(1)デングウイルスのゲノム配列またはデングウイルス抗原の検出(非構造蛋白1[NS1]抗原)、

 

(2)抗デングウイルスIgM抗体の血清診断。デングウイルスのゲノム配列またはNS1抗原の検出は、主に急性発熱期(発症後5日以内)に行われ、抗デングウイルスIgM抗体の検査は主に発熱して5日間が経過してから行われます。

 

 

血清、脳脊髄液、剖検組織の標本の細胞培養によってデング熱ウイルスを分離することはできますが、分子生物学的診断法の時代にあっては、とりわけ有用というものではありません。

 

血清あるいは血漿、脳脊髄液、剖検組織の標本からの特定のデング熱ウイルスゲノムの同定は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)を用いてルーチンの検査として行うことができます。

 

NS1抗原はウイルス血症の期間に循環血中に見い出され、これを検出する何種類かの免疫学的測定法があります。

 

組織標本からのデング熱ウイルス抗原の同定は免疫蛍光測定法または免疫組織化学的分析法を用いて行うことができます。

 

急性患者のデング熱ウイルスの血清学的診断は、主として抗デングウイルスIgM抗体を対象とします。

 

この抗体はデング熱を発症してから5日過ぎてから陽性となります。

 

 

そのほか診断確定のための方法として次の検査所見があります。

 

(1) 急性期(発熱後5日以内)標本と回復期(発熱後5日経過の後)標本の間で、抗デングウイルスIgM抗体陽性転化のセロコンバージョン

 

(2) 回復期標本では急性期標本に対し、抗デングウイルス抗原に対する抗デングウイルスIgG抗体価または赤血球凝集抑制力価が4倍以上も上昇

 

(3) 脳脊髄液に抗デングウイルスIgM抗体

 

 

旅行歴や症状からデングウイルス感染の疑いがある場合に、単一血清標本で抗デングウイルスIgM抗体が検出されると、それはデングウイルス感染が最近になって起きた可能性を示唆しています。

 

しかし、単一標本で抗デングウイルスIgG抗体が検出されても、それがずっと以前の感染である可能性もあります。

 

単一標本を用いた抗体検査(抗デングウイルスIgMまたはIgG抗体)のみで診断を行うには注意が必要です。

 

なぜならデング熱ウイルス抗体は、西ナイル熱、黄熱病、日本脳炎ウイルスなどの他のフラビウイルスの抗体と交叉反応を起こすからです。

 

このため、他の種類のフラビウイルスとの感染があった場合あるいはそのウイルスのワクチン接種を行った場合には、抗デングウイルスIgMまたはIgG抗体検査が偽陽性の結果を示すことがあります。

 

 

市販されているデング熱を診断するための検査キットがいくつかありますが、いずれも米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)の承認を受けたものではありません。

 

検査は米国疾病対策センター(CDC)でも行っています(検査依頼手続きについては、 www.cdc.gov/Dengue/clinicalLab/index.htmlの“Requesting Dengue Laboratory Testing and Reporting” を参照)。

 

急性期と回復期の血清標本を、州・準州の保健局の検査機関を通じてCDC(住所:1324 Calle Cañada, San Juan, Puerto Rico 00920-3860)へ送ります。

 

血清標本には、発症日、標本採取日、患者の最近の詳細な旅行歴などの臨床・疫学情報を記載した書類を添付する必要があります。

 

デング感染症についてさらに説明が必要な場合は、CDC Dengue Branch (787-706-2399)に問い合わせるか、ウェブサイトwww.cdc.gov/dengueを参照してください。

 

 

治療

デングウイルス感染症に対して特異的な治療法はありません。

 

発熱の間は、安静を保ち、脱水を防ぐために水分補給をするようにします。

 

解熱薬としてアセトアミノフェンを投与します。

 

頭痛、眼痛、関節痛、筋肉痛には麻薬の投与が必要になるかもしれません。

 

アスピリン剤、アスピリン配合薬、(イブプロフェンなどの)非ステロイド性抗炎症薬には抗凝固作用があるため、投与は避けるべきです。

 

アスピリンなどのサリチル酸塩は、ライ症侯群を併発する危険性があることから、小児への投与は特に避けなければなりません。

 

 

患者には熱が下がったときにデング出血熱またはデングショック症候群の前兆がないか注意を求め、次のような前兆が見られる場合には病院へ行くように指示します。

(1)発熱から低体温への急激な変化、

(2)激しい腹痛、

(3)嘔吐の持続、

(4)出血、

(5)呼吸困難、または(6)精神状態の悪化(興奮性、錯乱、無気力など)。

 

デング熱またはデングショック症候群の患者には、等張晶質液とコロイド液の静注輸液を速やかに適切に行うと転帰の改善につながります。

 

デング熱またはデングショック症候群では患者を入院させて、対症療法を施すとともに、バイタルサイン、体液バランス、血液パラメータ(ヘマトクリット値、血小板数)を厳重にモニターリングする必要があります。

 

 

予防措置

デング熱には感染予防のためのワクチンも薬剤もありません。

 

ウイルス保有の蚊に刺されると感染する恐れがあります。

 

蚊に刺されるリスクは、早朝、夜明けから数時間の間、夕方から日没にかけての時間に最も高くなります。

 

しかし、日中であればいつでも蚊は刺すものと思って間違いありません。

 

ネッタイシマカは通常屋内に生息し、大抵は戸棚、ベッドの下、カーテンの裏、浴室などの暗くて涼しい場所に潜んでいます。

 

旅行者は殺虫剤を散布してこうした場所にいる蚊を駆除するとともに、可能であれば、網戸が完備した窓やエアコンの設備がある宿泊施設を選ぶようにすべきです。

 

さらに旅行者自身も蚊に刺されないような対策を取る必要があります(Chapter 2 Protection against Mosquitos, Ticks and Other Arthropodsを参照)。

 

長期旅行者や国外居住者の場合は、さらに予防措置を講じて、宿泊施設の周囲にある(貯水槽や植木鉢のトレイなど)水が溜まる場所では水を抜いたり、消毒したり、容器に蓋をしたりします。