最新の臨床医学:消化器・内分泌・代謝病学<C型慢性肝炎>

C型急性肝炎(HCV)は感染すると、健康成人の感染であっても、急性の経過で治癒するのは30%であり、感染例の慢性化率は60~70%で持続感染が続き、特に輸血後肝炎に多く、またウイルスの自然消失は年率0.2%とまれです。

 

日本での一般人口におけるHCV抗体陽性率は2%、約200万人存在するとされています。

 

C型肝炎はほぼ100%ウイルスの永続的な排除が期待できる疾患です。

 

非代償性肝硬変例、肝細胞癌治療中の症例、併存疾患のため予後不良の症例を除き、原則として全例が治療適応になります。

 

HCVキャリアが無治療のとき、慢性肝炎60~70%、肝癌25%、肝硬変15%に進展します。

 

C型肝炎の治療目標は持続的なウイルス陰性化を可能な限り目指すことが治療の基本となりました。

 

HCV持続感染によって惹起される肝硬変、肝臓癌の抑制にあります。わが国の肝細胞癌の原因として最も多いのがC型肝炎ウイルスです。

 

C型肝炎の発癌リスク因子には、高齢、糖尿病、肝線維化、肝脂肪化が挙げられます。

 

C型肝炎ウイルスの肝外病変として、クリオグロブリン血症、慢性唾液腺炎、慢性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、心筋症、慢性甲状腺炎、扁平苔癬、間質性肺炎などがあります。

 

 

まず行う検査は腹部超音波検査とHCVのRNA定量です。C型肝炎の治療方針決定に際し、ウイルス量とgenotypeは治療方針に大きく影響します。

 

 

インターフェロン治療は、わが国では1992年からC型肝炎に対する治療で、一般臨床で使用開始されました。

 

インターフェロン単独療法からリバビリン併用療法、さらにペグインターフェロンとリバビリン併用療法が標準的抗ウイルス療法となったことより著効(SVR:sustained virological response)率は向上しましたが、難治性であるHCVゲノタイプ1型・高ウイルス量の症例では同療法においてもSVR率が40~50%でした。

 

日本におけるC型肝炎はインターフェロンが効きにくいgenotype1b型が多いです。

 

 

インターフェロン単独療法の効果が良好なのは、

①RNA量が少ない、

②genotype2a/2b、

③線維化が軽度、

という条件があります。

 

またインターフェロンの副作用として、インフルエンザ様症状、血球減少、精神症状(抑うつ症状があり、自殺例もある)、自己免疫現象、間質性肺炎、心筋症、眼底出血などの問題がありました。

 

 

ゲノタイプ1型の高ウイルス量HCVにおいて3剤併用(ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビル)が適応になります。

 

リバビリンは腎機能低下例(Ccr≦50mL/分)や透析患者には禁忌であることをはじめ、副作用として脳出血、溶血性貧血、催奇形があります。

 

またシメプレビルは高ビリルビン血症による死亡例が報告され、ビリルビン上昇に注意する必要があります。

 

 

C型肝炎ウイルスに対する治療は2014年以降、従来のインターフェロン中心の治療から、経口直接型抗ウイルス薬(DAAs:Direct Acting Antivirus)によるインターフェロンフリー治療へと大きく転換しました。

 

DAAsは単独投与では耐性ウイルスが出現しやすいため、異なる種類のDAAs2剤または3剤併用療法が基本となります。

 

インターフェロンフリーの直接型抗ウイルス薬(DAA)NS5A阻害薬であるダクラタスビルとNS3・4Aプロテアーゼ阻害薬であるアスナプレビルとを併用した経口療法は2014年に承認され、従来のインターフェロン不適格例や無効例に対する治療が可能になり、SVR率も80~90%に達しました。

 

新たなインターフェロンフリーの直接型抗ウイルス薬DAAであるNS5A阻害薬(レジパスビル)/NS5B阻害薬(ソホスブビル)配合薬はゲノタイプ1型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対して承認され、ウイルス量に関係なく使用します。

 

この場合リバビリンは兼用しません。12週でのSVR率は99%まで向上しました。

 

ゲノタイプ1型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対するインターフェロンフリー治療としてハーボニー®(各種PPI併用注意)及びヴィキラックス®(カルシウムチャンネル拮抗薬に併用禁忌・注意)に加えて、2016年にはグラゾプレビル+エルバスタビル併用が承認され、2017年には抗C型肝炎ウイルス薬グクラタスビル塩酸塩・アスナプレビル・ペクラブビル塩酸塩配合(ジメンシー®)も承認されました。

 

 

ゲノタイプ2型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対する第一選択はソフォスブビル+リバビリン併用でしたが、2016年にはゲノタイプ2型のC型慢性肝炎に対してヴィキラックス®+リバビリン併用が承認されました。

 

 

2017年に、すべてのゲノタイプ(パンゲノタイプ)のC型慢性肝炎及び代償性肝硬変に対する治療薬として、グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル配合の抗C型肝炎ウイルス薬グレカプレビル水和物・ビブレンタスビル配合(マヴィレット®)が承認されました。

 

 

HCVによる肝硬変では肝移植後にほぼ全例で再発していましたが、近年C型肝炎の治療向上により、SVR率も向上しています。

 

参照:C型肝炎治療ガイドライン(第54版)(日本肝臓学会,2017