パリ協定に加盟すべき否か、地球温暖化を支持するか否かということは地球の平和と繁栄の維持という目的達成の上で大切な議論であることについては、たしかに争いはないでしょう。

しかし、より本質的な課題は、パリ協定に加盟して、CO₂排出削減による地球温暖化抑止を高らかに宣言している国々の具体的な取り組みの姿勢とその成果であると考えます。

すでに実績を挙げている国の負担がさらに大きくなるばかりであれば、不公平で理不尽である、という考え方も成り立つのではないかと思います。

 

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を2060年までに実質ゼロにすると大見得の宣言をした習近平氏の向こうを張って、何と菅義偉首相は初の所信表明演説で2050年までに実質ゼロにすると表明しました。

 

排出量ゼロの実現には大規模な投資やコストの低減化も併せて必要で、高い壁が立ちはだかる上に、実情としては、CO2排出量ゼロの電源である原子力発電所の増設に向けての先手を打ったに過ぎないように思われてなりません。

 

過大なマニフェストを掲げる前に、現状での実績を反省することから始めるべきではないでしょうか。

パリ協定に加盟していなくとも、また地球温暖化を否定していたとしても、実質的にCO2排出量の削減に成功している国の指導者は正当に評価され、敬意をもって扱われるべきだというのが私の考え方なのですが、皆さまは、どのようにお考えでしょうか。

 

そういえば気候変動への国際的対処について話し合う気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が2019年12月2日からスペインの首都マドリードで開催されて、ようやく1年を経過したところです。そこで、ここでは、COP25の概要と残された課題をまとめてみました。

なお、参考資料として引用した記事はフランスのル・モンド紙です。

 

 

1)パリ協定6条

COP21(2015年)で採択されたパリ協定では、2020年以降の各国の取り組みに関する基本ルールが定められていますが、それを実施するための詳細ルールが定められていませんでした。そのため、昨年のCOP24では100頁超にわたる実施指針が採択され、パリ協定は予定通り2020年からスタートする準備が整っています。

 

しかし、COP24では、「パリ協定6条」のルールだけは合意できず、先送りとなっていました。6条では、複数の国が協力して両国の合計の排出量を減らしていく制度が想定されています。

国家間の排出量取引制度などの市場メカニズムもここに含まれます。

 

しかし、これにはデメリットもあります。多くの途上国は2030年目標として、排出量を絶対量で掲げておらず、「何も対策をとらなかった時と比べて〇%」や「先進国の支援があればさらに〇%」といった相対的な目標のみを立てています。そうなると、排出削減努力が両国でダブルカウントされ、帳簿上では減っているのに実際の地球全体の排出量は増えるといったことになりかねません。
 

COP25では、6条を積極的に活用して自国の2030年排出削減目標をより達成しやすくしようと試みたブラジルやオーストラリア、中国などと、利用を最小限度に抑えるべきとした欧州や小島嶼諸国等との間で歩み寄りが見られず、来年に持ち越されました。

 

日本はすでに「二国間クレジット制度」(Joint Crediting Mechanism : JCM)という独自の制度を2013年に開始し、モンゴルやバングラデシュなど17か国(2019年6月現在)と署名を交わし、相手国の削減分を日本側にも取り込めることを目指していましたが、この実現も翌年に持ち越しされました。

 

 

2)2030年目標の見直し

パリ協定では、長期的には2℃より十分低い気温上昇幅を目指し、さらに1.5℃に向けて努力することとなっています。今年に入り、2030年目標をより厳しいものに改定すべきだという声が高まっています。

 

COP21決定では、2020年までに、2030年目標を見直すことが求められているため、COP25では、来年に向けてできるだけ多くの国が2030年目標を見直すよう呼びかける文案が議論されました。

ここでも小島嶼国などは、すべての国に対して目標の見直しを強く求める表現を希望しましたが、今から2030年目標を国内で協議する予定がない国も多く、「チリ・マドリード行動の時」と題された最終合意文書では、shall(しなければならない)といった強い表現は用いられず、COP21決定に言及し、目標見直しを推奨するに留まる表現となりました。

 

 

3)ロス&ダメージに関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)

これは、COP19にて気候変動枠組条約の下に設置された組織で、今回この活動のレビューが実施されました。現在すでに海面上昇等の影響で被害(ロス&ダメージ)が出ている小島嶼諸国は、このメカニズムの下で、被害を補填する資金を求めています。

 

また、パリ協定の8条でも、ロス&ダメージ対応としてWIMが言及されていることから、WIMをパリ協定の下に位置づけようとする米国と、条約の下に設立された経緯を重視する途上国との間で、ガバナンスが問題となりました。ロス&ダメージの議論は、原因者(加害者)としての温室効果ガス排出大国(先進国)と、被害を受けている途上国との間の南北問題の性格を有しています。

 

後述のとおり米国は1年後(当時、すなわち今年)のパリ協定離脱を通告しており、過去の最大の排出国である米国としては、ロス&ダメージに関して批判される立場にあるWIMから抜け出せることは望ましいことになります。逆に、途上国からしてみれば、この議論は米国抜きではできず、あくまで条約の下で議論を続けたいということです。

 

 

 

COP25 交渉外の出来事

 

1)市民の声

スウェーデンの16歳少女グレタ・トゥンベリさんの行動が広まり、世界各地で若い世代がスクールストライキや気候マーチを実施しました。COP25でもグレタさんが登壇し、各国の交渉担当者に対して、対策を前倒しするよう呼びかけました。今後、この声はさらに大きくなっていくことが予想されます。

 

 

2)米国のパリ協定離脱通告

COP25が始まる1か月前に離脱を正式に通告しニュースとなりました。交渉会議と並行して行われた様々なサイドイベントでは、パリ協定に賛同する米国議会の議員たちが米国内でのさまざまな取り組みをアピールしていました。米国の離脱は来年の大統領選次第であり、その結果を見てから国際交渉の妥協点を決めても遅くないという気持ちが多くの交渉担当者にあったのではないかと思われます。

 

つまり、トランプ大統領が落選し、民主党政権に移行すれば、米国がパリ協定に復帰する見通しが立つということでしょう。(しかし、これは単純すぎる安易な見通しです。米国の有権者は、日米の主流メディアの偏向報道に騙され続けるほどナイーブではないものと見込んでいます!必要とされるのは、バイデン氏、習氏や菅氏のような、はったりや美辞麗句ではなく、トランプ大統領のような責任感と愚直な実行力だということを彼らは再認識しつつあるからです。)

 

 

3)日本について

日本国内では、国際交渉の争点よりも、日本が2回NGOから「化石賞」(*1)を受賞したことが話題となりました。いずれも日本の石炭火力発電所に対するスタンスが受賞の理由となっています。まず、国内では、新規の石炭火力発電所を建設する計画が多数あります。従来の石炭火力と比べると発電効率が良いということが強調されていますが、いくら効率が高くても石炭を燃やす限り二酸化炭素が排出されることには変わりなく、炭素回収・貯留(CCS)などと併せて進める必要があります。

 

*1)「化石賞」とは?:
地球温暖化対策に前向きな取り組みを見せない国に対して、NGOがバッドジョークとして与える「不名誉な賞」
なので「しょうも無いでしょう」という賞なのです。1999年のCOP5(ドイツ・ボン)において始められ継続的に実施されています。「化石」とは化石燃料を指すとともに、化石のような古い考え方との揶揄も入っています。

 

 

 

La Chine, les Etats-Unis, l’UE et l’Inde ont produit plus de la moitié des émissions de CO2 depuis 2010

 

中国、米国、EU、インドは2010年以降、CO2排出量の半分以上を排出している

 

 

Par Audrey Garric
オードリー・ガリック

 

 

Publié aujourd’hui à 11h00, mis à jour à 12h31
本日11時00分発行、12時31分更新

 

 

 

Centrale au charbon, à Hejin, dans le centre de la Chine, le 28 novembre 2019. Sam McNeil / AP

 

石炭火力発電所、中国中部・河津、2019年11月28日
サム・マクニール/AP

 

 

Les quatre principaux pollueurs – la Chine, les Etats-Unis, l’Union européenne (comptée avec le Royaume-Uni) et l’Inde – sont responsables de plus de la moitié (55 %) des émissions globales de gaz à effet de serre sur la dernière décennie (2010-2019), indique le Programme des Nations unies pour l’environnement. La Chine, qui représente un peu plus du quart du total mondial, a vu ses rejets carbonés augmenter de 3,1 % en 2019, tirés par un usage accru du charbon. La très rapide croissance, dans les années 2000, des émissions de l’empire du Milieu a toutefois ralenti au cours de la dernière décennie.

 

国連環境計画によると、過去10年間(2010年~2019年)の世界の温室効果ガス排出量の半分以上(55%)を中国、米国、欧州連合(英国を含む)、インドの4大汚染国が占めている。世界全体の4分の1強を占める中国は、石炭利用の増加に牽引され、2019年の炭素排出量が3.1%増加した。しかし、2000年代の中華帝国からの排出量の非常に急速な伸びは、過去10年間で鈍化している。

 

 

L’Inde (7 % du total mondial) a également connu une hausse de ses émissions mais moins rapide qu’auparavant (+ 1,4 %), grâce au développement des énergies renouvelables, à un recours accru à l’hydroélectricité du fait d’une mousson record et en raison d’une croissance économique qui faiblit.

 

インド(世界全体の7%)もまた、再生可能エネルギーの開発、記録的なモンスーンによる水力発電の利用増加、経済成長の鈍化により、排出量は増加しているが、増加率は以前よりも緩やかなペースだ(1.4%増)。

 

 

A l’inverse, les Etats-Unis, deuxième plus gros pollueur avec 13 % des émissions globales, ont enregistré une légère baisse de leurs émissions depuis dix ans, et particulièrement l’an dernier (− 1,7 %), grâce à la transition du charbon vers le gaz et les renouvelables. Il en est de même pour l’Union européenne et le Royaume-Uni, responsables de 8,6 % des émissions mondiales, qui sont parvenus à diminuer leurs rejets de 3 % en 2019.
Ramenées à la population, les émissions territoriales des Etats-Unis, avec 20 tonnes par habitant, sont toutefois trois fois plus élevées que la moyenne mondiale (6,8 tonnes), et deux fois plus que les émissions chinoises (9,7 tonnes) ou européennes (8,6 tonnes). Surtout, lorsque l’on inclut les émissions de CO2 générées par la production des biens et services que nous importons, un Européen pollue un peu plus qu’un Chinois. Contenir le réchauffement à 1,5 °C impliquerait de réduire les émissions à entre 2 et 2,5 tonnes équivalent CO2 par habitant d’ici à 2030.

 

逆に、世界の排出量の13%を占める第2位の汚染国である米国は、石炭からガスや自然エネルギーへの移行により、過去10年間で排出量が若干減少しており、特に昨年(▲1.7%)は減少している。世界の排出量の8.6%を占める欧州連合(EU)と英国も同様で、2019年にはなんとか3%の削減に成功している。しかし、人口の観点から見ると、米国の領土排出量は住民一人当たり20トンで、世界平均(6.8トン)の3倍、中国(9.7トン)や欧州(8.6トン)の2倍となっている。何よりも、輸入した商品やサービスの生産によって発生するCO2を含めると、中国人よりもヨーロッパ人の方が少しだけ汚染している。1.5℃の温暖化を抑制することは、2030年までに一人当たりのCO2換算で2~2.5トンの排出量を削減することを意味する。

 

 

La grande majorité des émissions de gaz à effet de serre proviennent de la combustion des énergies fossiles (charbon, pétrole et gaz) pour la consommation d’énergie (dans les transports, les bâtiments ou l’agriculture), ainsi que de l’industrie et des cimenteries. Le reste est principalement lié à l’élevage et à la gestion des déchets, ainsi qu’aux changements d’utilisation des terres, comme la déforestation ou l’artificialisation de terres agricoles.

Audrey Garric

 

温室効果ガス排出の大部分は、エネルギー消費のための化石燃料(石炭、石油、ガス)の燃焼(輸送、建物、農業)、産業やセメント工場からの排出だ。残りは主に畜産や廃棄物処理、森林伐採や農地の人工化などの土地利用の変化に関するものである。

 

オードリー・ガリック

 

前回はこちら

 

昨年の3月にウィーンで開催された第1回の線維筋痛症の国際学会に参加してきましたが、残念なことに日本人医師は私一人でした。第2回の今年は、Covid-19パンデミックのため延期に加えてバーチャルでの開催となりました。


 
本日紹介する演題は、線維筋痛症の治療法として近年有望視される非薬物療法の紹介とその効果についての実証的研究についてです。

 

タイトルとサマリーの内容は厳密には一致していませんが、収縮期消退訓練(SET)、圧受容器訓練(BRT)、行動療法(OBT)などが有酸素運動とともに取り上げられています。技術的にはバイオフィードバック療法(註)の技法が用いられているようです。

 

註:バイオフィードバック(BF)とは、普段気付きにくい生体内の変化や反応を工学的手段(BF装置)により測定し、その結果を、形や色、あるいは光や音などの人間が知覚し易い情報に置き換えて時々刻々生体にフィードバックすることによって、最終的にはBF装置の助けを借りることなく自己制御できるようになることを目的とします。用いられる生体反応は筋電図、脳波、皮膚温、血圧、脈拍数などです。

 

 

圧受容器の活動は、痛みネットワークの体性感覚、認知、情動、行動に影響を与えることが知られていることから、認知行動療法(CBT)の有効性が示唆されますが、収縮期消退訓練(SET)、圧受容器訓練(BRT)などの物理的刺激を用いた訓練によって疼痛の情動および認知成分が、治療前に有意に高い反応を示すようになることが示されています。

 

そのメカニズムとしては、圧反射感受性(BRS)を増加させ、疼痛ネットワークの感覚的、感情的、認知的、行動的構成要素を変化させ、結果として長期的な疼痛緩和がもたらされるとしています。

 

水氣道は水中有酸素運動であり、認知行動療法の技法も包含し、しかも陸上とは異なり、大きな水圧の影響下でのエクササイズであることから、絶えず圧受容体を刺激していることになります。線維筋痛症に対して水氣道が有効である背景の一つとして圧受容器刺激を想定することができるのではないかと考えています。

 

 

 

Altering the Brain Through Alternative Methods (CBT, Movement – Meditative Treatments etc.)

 

代替的方法(認知行動療法、動作-瞑想療法など)を介して脳を変化させる

 

 


Kati Thieme

(カーティ・ティエーメ)

 

University of Marburg, Germany

(マールブルグ大学、ドイツ)

 

 

Summary 

 

Kati Thieme1 Delia Hirche1 Marc G. Mathys1 Stephen Folgers2
1Medical Psychology, Philipps University Marburg, Germany, Germany
2Department of Physical Therapy Education, Elon-University, USA
Background. Pain and cardiovascular interaction is an important component of the pain regulatory system. This interaction is influenced by baroreflex sensitivity (BRS). Baroreceptor activity through the dorsal medial tractus solitarius (dmNTS) influences somatosensory, cognitive, affective and behavioural components of the pain network.
Objectives. This study tested if 1) Systolic Extinction Training (SET) a combination of baroreceptor training (BRT) and Behavioural Therapy (OBT) would increase BRS, (2) BRS increases central inhibitory changes, and (3) if treatment reduces pain intensity and to what amount.
Methods. Forty-six FM patients and 30 healthy controls (HC) were investigated with a baroreceptor training (BRT) protocol consisting in two 8-minutes-trials where 3 different and randomized electrical stimuli (50%, 75% of individual pain tolerance, and non-painful stimuli) were administered immediately after systolic and diastolic peak of the cardiac cycle. Additionally to BRT, 20 patients were treated with aerobic exercise (AE) and 26 with OBT. Evoked potentials, theta-and alpha-band activity measured with EEG, blood pressure and BRS were measured during treatment sessions before, post, and 12 months after therapy.
Results. The affective (P260) and cognitive (P390) components of pain, but not the attention (N50) and sensory (N150) components, showed significantly greater response in FM vs HCs before therapy (p = 0.005). Post SET and in the 12 months follow-up, the EEG components reversed and showed higher theta band activity. SET eliminated pain in 82% (BRS increased 48%) at the 12-month follow-up and BRT+AE reduced pain by 50% in 14% (BRS increased by 11%) of patients.
Conclusion. Alternative methods in FM increase BRS and change sensory, affective, cognitive and behavioural components of pain network resulting in long-lasting pain remission.
 

1フィリップス大学マールブルク校(ドイツ)医学心理学

 

2アメリカ・エロン大学理学療法教育学部

 

 

背景。痛みと心血管系の相互作用は、痛み調節系の重要な構成要素である。この相互作用は、圧反射感受性(BRS)によって影響を受ける。背側内側路索(dmNTS)を介した圧受容器の活動は、痛みネットワークの体性感覚、認知、情動、行動に影響を与える。

 

目的。この研究では、1) 収縮期消退訓練(SET)と圧受容器訓練(BRT)と行動療法(OBT)を組み合わせて行うとBRSが増加するかどうか、(2) BRSは中枢抑制性変化を増加させるかどうか、(3) 治療によって痛みの強さが軽減されるかどうか、またその程度を検証した。

 

方法。FM患者46人と健常者30人の対照者(HC)を対象に、心周期の収縮期と拡張期のピークの直後に3種類の異なる無作為化された電気刺激(個人の痛み耐性の50%、痛みを伴わない刺激の75%)を加える8分間の試験を2回行う圧受容体訓練(BRT)プロトコルを用いて調査した。BRTに加えて、20人の患者を有酸素運動(AE)、26人をOBTで治療した。誘発電位,脳波で測定したシータバンド(θ帯)およびアルファバンド(α帯)活性,血圧およびBRSを治療前,治療後,12ヵ月後の各セッションで測定した。

 

結果。注意(N50)および感覚(N150)成分ではなく、疼痛の情動(P260)および認知(P390)成分が、FM vs HCで治療前に有意に高い反応を示した(p = 0.005)。SET後および12ヵ月後の追跡調査では、脳波成分は逆転し、より高いシータバンド活性を示した。SETにより12ヵ月フォローアップ時に82%(BRSは48%増加)の患者で疼痛が消失し、BRT+AEにより14%(BRSは11%増加)の患者で疼痛が50%減少した。

 

結論。線維筋痛症(FM)における代替療法は圧反射感受性(BRS)を増加させ、疼痛ネットワークの感覚的、感情的、認知的、行動的構成要素を変化させ、結果として長期的な疼痛緩和をもたらす。

 

 


以下に、収縮期消退訓練と圧感受性に関する論文を添付しました。

 

Efficacy of Systolic Extinction Training in Fibromyalgia Patients With Elevated Blood Pressure Response to Stress: A Tailored Randomized Controlled Trial

 

ストレスに対する血圧反応が上昇した線維筋痛症患者における
収縮期消退訓練の有効性:調整された無作為化対照試験

 

Kati Thieme et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2019 May.
. 2019 May;71(5):678-688.
doi: 10.1002/acr.23615.
Authors
Kati Thieme  1 , Tina Meller  1 , Ulrika Evermann  1 , Robert Malinowski  1 , Marc G Mathys  1 , Richard H Graceley  2 , William Maixner  3 , Dennis C Turk  4
Affiliations

 

1 Institute of Medical Psychology at Philipps-University Marburg, Marburg, Germany.

 

2 Center for Pain Research and Innovation, University of North Carolina, Chapel Hill.

 

3 Center for Translational Sciences, Duke University, Durham, North Carolina.

 

4 Center for Pain Research on Impact, Measurement, and Effectiveness, University of Washington, Seattle.
PMID: 29882635
DOI: 10.1002/acr.23615

 

 

 

Abstract
抄録

 

Objective: An intrinsic pain regulatory system is modulated by both cardiovascular dynamics that influence baroreflex sensitivity (BRS) and is diminished in fibromyalgia (FM). Baroreceptors relay cardiovascular output to the dorsal medial nucleus tractus solitarius reflex arcs that regulate pain, sleep, anxiety, and blood pressure. The aim of this study was to evaluate the effects of systolic extinction training (SET), which combines operant treatment (OT) with baroreflex training (BRT). BRT delivers peripheral electrical stimulation within a few milliseconds of the systolic or diastolic peak in the cardiac cycle. In addition, we compared SET to OT-transcutaneous electrical stimulation (TENS) independent of the cardiac cycle and aerobic exercise (AE)-BRT in FM patients with elevated blood pressure responses to stress.

 

目的。内在性の疼痛調節系は、圧反射感度(BRS)に影響を与える心血管ダイナミクスと線維筋痛症(FM)では減少している心血管ダイナミクスの両方によって調節されている。圧受容器は、痛み、睡眠、不安、血圧を調節する背内側核路索反射アークに心血管出力を中継する。本研究の目的は、オペラント治療(OT)と圧受反射訓練(BRT)を組み合わせた収縮期消極訓練(SET)の効果を評価することであった。BRTは心周期の収縮期または拡張期のピークから数ミリ秒以内に末梢に電気刺激を与えるものである。さらに、ストレスに対する血圧反応が上昇したFM患者を対象に、心周期に依存しないOT-経皮的電気刺激(TENS)と有酸素運動(AE)-BRTをSETと比較した。

 

 

Methods: Sixty-two female patients with FM were randomized to receive either SET (n = 21), OT-TENS (n = 20), or AE-BRT (n = 21). Outcome assessments were performed before treatment (T1), after 5 weeks of treatment (T2), and after the 12-month follow-up (T3).

 

方法。FM患者の女性62人をSET(n=21)、OT-TENS(n=20)、AE-BRT(n=21)のいずれかの治療を受けるように無作為に割り付けた。アウトカム評価は治療前(T1)、治療5週間後(T2)、12ヵ月後(T3)に実施した。

 

 

Results: In contrast to patients receiving OT-TENS or AE-BRT, those receiving SET reported a significantly greater reduction in pain and pain interference (all P < 0.01) that was maintained at the 12-month follow-up. Clinically meaningful pain reduction at T3 was achieved in 82% of patients in the SET group, 39% of those in the OT-TENS group, and only 14% of those in the AE-BRT group. Patients in the SET group showed a significant increase (57%) in BRS following treatment, while neither the AE-BRT group or the OT-TENS group showed significant changes over time.

 

結果。OT-TENSやAE-BRTを受けた患者とは対照的に、SETを受けた患者では、疼痛と疼痛障害が有意に大きく軽減することが報告された(いずれもP < 0.01)が、12ヵ月後の追跡調査でも維持されていた。T3における臨床的に意味のある疼痛の軽減は、SET群では82%、OT-TENS群では39%、AE-BRT群では14%の患者で達成された。SET群では治療後のBRSの有意な増加(57%)が認められたが,AE-BRT群,OT-TENS群ともに経時的に有意な変化は認められなかった。

 

 

Conclusion: SET resulted in statistically significant, clinically meaningful, and long-lasting pain remission and interference compared to OT-TENS and AE-BRT. These results suggest that BRS modification is the primary mechanism of improvement. Replication of our results using larger samples and extension to other chronic pain conditions appear to be warranted.

 

結論。SETはOT-TENSやAE-BRTと比較して、統計的に有意で、臨床的に意味のある、長期的な痛みの寛解と干渉をもたらした。これらの結果は、BRSの修飾が改善の主要なメカニズムであることを示唆している。より大きなサンプルを用いて我々の結果を再現し、他の慢性疼痛状態にも拡張する必要があると思われる。

 

 

 

 

The Effect of Physical Resistance Training on Baroreflex Sensitivity of Hypertensive Rats

 

高血圧ラットの圧反射感受性に及ぼす体力トレーニングの影響

 

 

Moisés Felipe Pereira Gomes,* Mariana Eiras Borges,* Vitor de Almeida Rossi, Elizabeth de Orleans C. de Moura, and Alessandra Medeiros
Moisés Felipe Pereira Gomes
Universidade Federal de São Paulo (UNIFESP), São Paulo, SP - Brazil
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Received 2016 Jun 15; Revised 2017 Jan 16; Accepted 2017 Jan 24.
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Abstract
抄録

 

Background:
背景

 

Baroreceptors act as regulators of blood pressure (BP); however, its sensitivity is impaired in hypertensive patients. Among the recommendations for BP reduction, exercise training has become an important adjuvant therapy in this population. However, there are many doubts about the effects of resistance exercise training in this population.

 

圧受容器は血圧(BP)の調節因子として作用するが、高血圧患者ではその感受性が低下している。血圧を下げるための推奨事項の中で、運動トレーニングはこの集団における重要な補助療法となっている。しかし、この集団における抵抗性運動トレーニングの効果には疑問が多い。

 

 

 

Objective:
目的

 

To evaluate the effect of resistance exercise training on BP and baroreceptor sensitivity in spontaneously hypertensive rats (SHR).

 

自然発症高血圧ラット(SHR)における抵抗性運動トレーニングの血圧(BP)および圧受容体感受性への影響を評価する。

 

 

Method:
方法

 

 

Rats SHR (n = 16) and Wistar (n = 16) at 8 weeks of age, at the beginning of the experiment, were randomly divided into 4 groups: sedentary control (CS, n = 8); trained control (CT, n = 8); sedentary SHR (HS, n = 8) and trained SHR (HT, n = 8). Resistance exercise training was performed in a stairmaster-type equipment (1.1 × 0.18 m, 2 cm between the steps, 80° incline) with weights attached to their tails, (5 days/week, 8 weeks). Baroreceptor reflex control of heart rate (HR) was tested by loading/unloading of baroreceptors with phenylephrine and sodium nitroprusside.

 

実験開始時の生後8週齢のラットSHR(n = 16)とウィスター(n = 16)を無作為に4群に分けた:鎮静型コントロール(CS、n = 8)、訓練型コントロール(CT、n = 8)、鎮静型SHR(HS、n = 8)、訓練型SHR(HT、n = 8)。抵抗運動訓練は、尾部にウエイトを装着したスターマスター型の装置(1.1×0.18m、段差間2cm、傾斜80°)で行った(5日/週、8週間)。フェニルフリンとニトロプルシドナトリウムを用いた圧受容器の負荷/免荷により、心拍数(HR)の圧受器反射制御を試験した。

 

 

 

Results:

結果

 

Resistance exercise training increased the soleus muscle mass in SHR when compared to HS (HS 0.027 ± 0.002 g/mm and HT 0.056 ± 0.003 g/mm). Resistance exercise training did not alter BP. On the other hand, in relation to baroreflex sensitivity, bradycardic response was improved in the TH group when compared to HS (HS -1.3 ± 0.1 bpm/mmHg and HT -2.6 ± 0.2 bpm/mmHg) although tachycardia response was not altered by resistance exercise (CS -3.3 ± 0.2 bpm/mmHg, CT -3.3 ± 0.1 bpm/mmHg, HS -1.47 ± 0.06 bpm/mmHg and HT -1.6 ± 0.1 bpm/mmHg).

 

抵抗運動トレーニングはHSと比較してSHRのヒラメ筋量を増加させた(HSは0.027±0.002 g/mm、HTは0.056±0.003 g/mm)。抵抗運動トレーニングはBPを変化させなかった。一方、圧反射感受性については、HS(HS -1.3 ± 0.1 bpm/mmHg、HT -2.6 ± 0.0.2 bpm/mmHg)と比較して、TH群で徐脈反応が改善した。 2 bpm/mmHg)であったが、抵抗運動では頻脈反応は変化しなかった(CS -3.3 ± 0.2 bpm/mmHg、CT -3.3 ± 0.1 bpm/mmHg、HS -1.47 ± 0.06 bpm/mmHg、HT -1.6 ± 0.1 bpm/mmHg)。

 

 

Conclusion:
結語

 

Resistance exercise training was able to promote improvements on baroreflex sensitivity of SHR rats, through the improvement of bradycardic response, despite not having reduced BP.

 

抵抗性運動訓練は、血圧の低下を伴わないにもかかわらず、徐脈反応の改善により、SHRラットの圧反射感度の改善を促進することができた。
Keywords: Hypertension, Exercise, Heart Rate, Baroreflex, Muscle Hypertrophy
キーワード:高血圧、運動、心拍数 高血圧、運動、心拍数、圧反射、筋肥大


代表の橋本裕子さんは、<NPO法人 線維筋痛症友の会>の創設者で、永らく初代理事長として貢献された方です。

 

同会の理事長退任後、現在は、新たに「きんつう相談室」を主宰され、線維筋痛症の患者さんのために、社会への啓発活動に加えて、より身近で具体的な臨床家としての活動を精力的に続けていらっしゃいます。

 


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Mit dem Aufbauplan entscheidet sich Europa nicht nur dafür, die Schäden zu beheben, Erholung für das Heute zu erreichen und all diejenigen zu unterstützen, die am härtesten von der Krise getroffen wurden, sondern auch dafür, seine Versprechen einzulösen und die Grundlagen für eine bessere Lebensweise in der Welt von morgen zu schaffen. Der Schwerpunkt wird auf nachhaltigen Investitionen und Reformen liegen, wobei 37 % der Mittel der Aufbau- und Resilienzfazilität für den grünen Wandel und mindestens 20 % für Investitionen im Bereich Digitales aufgewandt werden sollen. Wir werden den Mitgliedstaaten nach Kräften bei der Erstellung und Umsetzung ihrer nationalen Aufbau- und Resilienzpläne helfen. Darüber hinaus wird die Kommission dafür sorgen, dass von den 750 Milliarden EUR, die im Rahmen von NextGenerationEU zur Verfügung stehen sollen, 30 % über grüne Anleihen aufgenommen werden. Und wir werden die gesetzgebenden Organe dabei unterstützen, eine zügige Einigung über das 1,8 Billionen-EUR-Gesamtpaket zu erreichen, damit dies so rasch wie möglich die gewünschte Wirkung entfalten kann. Auch wird die Kommission ehrgeizige Vorschläge zu neuen Einnahmequellen für den EU-Haushalt unterbreiten.

 

復興計画により、欧州は、被害を修復し、今日のために復興し、危機で最も被害を受けたすべての人々を支援するだけでなく、約束を果たし、明日の世界でより良い生活を送るための基礎を築くことを選択します。持続可能な投資と改革に焦点を当て、成長と復興促進の資源の37%を緑化に、少なくとも20%をデジタル部門への投資に充てています。我々は、加盟国が国の復興・回復力強化計画を準備・実施する際に、加盟国を全力で支援します。また、欧州委員会は、次世代EUで利用可能となる7500億ユーロのうち30%を緑の国債で調達することを確保します。そして我々は、立法機関が1.8兆ユーロのパッケージについて迅速に合意に達するのを支援し、一日も早く望ましい効果が得られるようにします。欧州委員会はまた、EU予算の新たな財源についても意欲的な提案を行います。

 

 

Die Investitionen, die unsere Visionen und Ambitionen Wirklichkeit werden lassen können, sind also möglich. Aus diesem Grund ist das Arbeitsprogramm der Kommission für 2021 durch eine Verlagerung von strategischer Planung hin zu praktischer Umsetzung gekennzeichnet, denn die letztjährigen Planungen für die sechs übergreifenden Ziele werden nun konkret in Angriff genommen, wobei das Hauptaugenmerk auf neuen Legislativinitiativen und der Überarbeitung bestehender Rechtsvorschriften liegt. Diese Initiativen sind den Anhängen I und II zu entnehmen.¹ Darüber hinaus werden wir auch Initiativen durchführen, die ursprünglich für 2020 geplant waren, wegen der Pandemie aber verschoben werden mussten.²

 

1 An welcher Stelle eine Initiative in den Anhängen genannt wird, hat keinen Einfluss auf die in den Mandatsschreiben von Präsidentin von der Leyen an die Kollegiumsmitglieder festgelegten Verantwortlichkeiten.

 

2 Angepasstes Arbeitsprogramm 2020 der Kommission (COM(2020) 440 final).

 

そのため、ビジョンや大望を現実に変えることができる投資が可能です。そのため、2021年に向けた欧州委員会の作業計画は、戦略的な計画から実践的な実施へと移行しているのが特徴である。これらの取り組みは、附属書ⅠおよびⅡに記載されています¹。
また、当初2020年に予定していたがパンデミックの影響で延期となった取り組みも実施していきます²。

 

1 附属書でイニシアチブが言及されている場所は、フォン・デル・ライエン大統領が合議体のメンバーに送る委任状に記されている責任とは関係がありません。

 

2 適合委員会作業計画2020(COM(2020) 440 最終版)。

 

 

 

Richtschnur unseres Handelns nach innen wie außen ist und bleibt die Agenda 2030 mit den darin festgelegten Zielen für eine nachhaltige Entwicklung sowie das Pariser Übereinkommen.

 

私たちの内外での行動の指針となる原則は、持続可能な開発目標とパリ協定を含む協議事項2030です。

 

 

Bei der Umsetzung dieses Arbeitsprogramms wird die Kommission sich auch nach Kräften darum bemühen, ihr Handeln nach außen zu erklären und den Standpunkten der Bürgerinnen und Bürger Rechnung zu tragen. Vor diesem Hintergrund ist es nun wichtiger denn je, mit der Diskussion über die Konferenz zur Zukunft Europas zu beginnen. Die im Laufe des vergangenen Jahres angesprochenen Probleme – angefangen bei der Notwendigkeit einer stärkeren europäischen Gesundheitsunion bis hin zu den bleibenden Veränderungen, die die Pandemie für unser Zusammenleben mit sich bringen könnte – lassen sich nur lösen, wenn alle zu Wort kommen und wir auf unseren gemeinsamen Erfahrungsschatz und unsere gemeinsame Expertise zurückgreifen.

 

この作業計画を実施するにあたり、欧州委員会はまた、その行動を外部に説明し、市民の意見を考慮に入れるよう努力する。このような背景から、今、欧州の未来を考える会議の議論を始めることが、これまで以上に重要になってきています。欧州保健連合の強化の必要性から、パンデミックが私たちの共存にもたらす可能性のある永続的な変化まで、この1年間に提起された問題は、全員が発言し、私たちが共有してきた経験と専門知識を活用して初めて解決することができます。

 

 

Angesichts des geopolitischen Umfelds und des langfristigen und transformativen Charakters der geplanten Initiativen werden wir unsere Arbeit auch künftig auf strategische Vorausschau³ stützen. Die erste strategische Vorschau hat gezeigt, wie wichtig Resilienz für die Erholung ist und dass wir unsere Politik auf Fakten stützen und zukunftsfest machen müssen. Dieser Ansatz kann uns auch dabei helfen, uns auf neue Herausforderungen und Chancen vorzubereiten, die es im kommenden Jahr unweigerlich geben wird, und die wir antizipieren und annehmen müssen.

 

3 Strategische Vorausschau ³ 2020 (COM(2020) 493 final).

 

地政学的な環境と、計画されているイニシアチブの長期的かつ変革的な性質を考慮して、私たちは引き続き戦略的展望³に基づいて仕事をしていきます。第1回目の戦略プレビューでは、復興に向けた回復力の重要性が示され、エビデンスに基づいた政策をベースに、将来に備えたものにしていく必要性が示されました。また、このようなアプローチは、来年に必然的に発生するであろう新たな課題や機会を予測し、それに対応するための準備をするのにも役立ちます。

 

3 戦略的展望³ 2020(COM(2020)493最終版)。

 

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水氣道稽古の12の原則(6)全面性の原則(2)

 

全面性の原則

 

全面性の原則とは、一般的にはトレーニングをする際は、同じ部位や種目に偏ったものではなく、バランスよく全面的に強化しなければならないという原則です。
 

例えば、胸の種目だけ行うのではなく、脚や背中など全身をまんべんなく鍛えることが大切です。偏りのあるトレーニングでは、怪我や技術の低下にも繋がってしまいます。
 

水氣道の稽古の流れは基本的に「全面性の原則」に従って体系化されているため、体験生や訓練生の間は、この原則を知らなくても「全面性の原則」に則った稽古ができるようになっています。

しかし、稽古というものは、時と場所と参加者などの変数によって、臨機応変にプログラムが修正されていきます。修錬生ともなれば支援員等の指示によって、一定の技法を訓練生や体験生の先頭に立って展開していくことがあります。その場合は、「全面性の考慮」が大切になってきます。

 

 

水氣道における「全面性の原則」
 

水氣道での「全面性の原則」の特徴は、簡単に言うと「偏らずにバランスよくトレーニングしましょう」ということに留まらず、「心身をバランスよく鍛えることが大事ですよ」ということが含まれているということです。

 

さらにはメンタルトレーニングや集団内での社会的能力の向上も必要です。「頭ばかりでも、体ばかりでもダメ」ということに他なりません。また、体力だけでなく気力も養うのですが、それだけでは一般のスポーツや従来の武道と変わることはありません。

 

水氣道で養うのは行動体力だけでなく防衛体力も視野に入れています。つまり、病気にならない体力、病気になっても回復できる体力である「防衛体力」を養うことも水氣道の目的の一つです。

 

このように、体力を複眼的に捉えて鍛錬することも「全面性の原則」に含まれていると理解しておいてください。

また、運動器と感覚器は切っても切れない相互補完的な関係があります。

 

水氣道は稽古を勧めていく過程で、身体の五官をすべて動員することになります。

感覚には表在感覚(温・冷覚、触・圧覚、痛覚)の他に深部感覚(位置覚、振動覚)などがあります。水氣道の稽古では、これらの感覚を訓練することで脳にとって有益な刺激を与えることができ、また、それによって磨かれた感覚によって緻密で正確な判断や行動が可能になっていくのです。

 

 

「全面性の原則」に基づいた稽古の基本

 

「全面性の原則」には多くの要素が含まれています。そうすると、いろいろな要素がある中で、いったい何から始めたらよいのか、という疑問が生じます。その答えは、すべてのスポーツや競技の基礎となる体力的基礎となる訓練をしっかりとやることであると考えてよいでしょう。


もっと簡単に言えば、人間は直立二足歩行をする動物であって、左右交互運動を行うことが基本であることから稽古を考えていくことになります。

 

人は直立しているだけで運動をしています。重力に逆らって姿勢を保持するために、下肢の筋肉や体幹の脊柱起立筋が絶えず活動状態にあります。また、それ以前に、呼吸するための呼吸筋(呼気筋と吸気筋)が休みなく働いています。

ですから、私たちが水氣道で水に入るだけで、水圧に抗して呼吸するため呼吸筋の負荷運動を行い、また、水中では浮力や水流・波などの流体力学的作用により、姿勢を保持するための筋緊張は亢進することになります。

呼吸筋、姿勢保持筋という基礎の上に立って、移動などの動作をするための筋肉が水の抵抗や粘性により負荷を得て自ずと鍛えられることになります。

 

多くのスポーツや武道と水氣道の決定的な違いは、基本的に一切の道具を使用しないことと、他者と直接接触しないことにあります。

そして、運動は常に左右交替制であり、対称的運動を行うということにあります。

 

水氣道における「全面性」とは左と右を等しく鍛えることも含んでいます。

 

多くの球技のように左右の機能の分化をはかるのではなく、脱分化・均等化をはかるのです。もちろん、完全に等しく鍛えることはできませんが、前進運動があれば、後退運動も行うことによってバランスのとれた稽古を心がけます。これも水氣道の「全面性の原則」に含まれています。

 

稽古計画を立てて、なるべく計画的に参加できるように工夫して調整することも稽古の一環です。そして、稽古に通う往来での時間配分や、食事のタイミングやその内容を吟味することも「全面性の原則」に含めて考えてください。それから、毎日の生活も水氣道の延長であり、それが一体となったならば「全面性の原則」は最大限に生かされることになるでしょう。

 

一回の稽古の中で、地味ではあるが効果的な基本エクササイズを全身バランスよく実施して、柔軟性や筋力・筋肉量の向上を図り、体力向上に繋げていけるように水氣道の体系は構成されています。

その中で個々人にとって特に弱い・硬い・動かしづらい部分に関しても各人が少しずつ気づいていくことになります。

多くの場合、適切な時期と機会に、個別に、あるいは仲間や上級者と共にしっかりとアドヴァイスを受け、より望ましいアプローチが可能になっていきます。

 

このように、水氣道では、強いところや優れたところをさらに強化していくことよりも、極端に弱い部分や苦手な部分があればまずそこを改善して、全体のパフォーマンスを低下させてしまうような目立った弱点をなくすことを大切にします。そうした弱点を全体の中から探していく姿勢も「全面性の原則」に則った水氣道の稽古の方向性です。

 

「全面性の原則」は日常生活においても応用範囲が広いです。

語学習得の場合も単語を憶えるだけでなく、文法も、リーディングも、リスニングも、スピーキングも,ライティングもすべてバランスよく勉強することで、高い語学スキルが鍛え上げられるものなのです。

 

いろいろな側面を訓練することは時間も労力も要するために敬遠する人も少なくないようですが、それも当面の間だけのことです。全面性の原則に従って学習していけば、学習効率が加速度的に高まっていきます。

 

全体を見通す事を忘れずに:目標を達成するためには全体を見通す力が必要
部活動でレギュラーを取れる人や就職活動で引く手数多な人、仕事で結果を残せる人など人生を成功させている人たちは決まって正しい方向性をもった行動をとる能力が優れているのです。

 

「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、物事の細部に気をとられてしまい本来の目的を見失っている人が多いように感じます。 

 

私にも苦い経験がありますが、例えばあなたも次のような人を見かけたことがあるのではないでしょうか?

 

• 健康になることを目的として禁煙をしているのに家族が見ていないところでタバコをもらう人


• 理想のボディを手に入れたいと思ってダイエットを始めたのに体重を落とすことだけにとらわれて、骨や筋量を減らし、脂肪を増やし、プロポーションを崩してしまう女性

 

• 舞台の上での見栄えを良くしたいがために、腹筋を鍛えすぎて身体を固めてしまった結果、柔軟なベルカント唱法を困難にしてしまった声楽家

 

• 打球の飛距離を伸ばすために体重を増やそうと食事の摂取量を増やしたがお腹周りに肉がつきすぎてスイングが遅くなってしまう野球部員

 

• 走力向上のために筋力トレーニングを始めたにも関わらず、いつのまにかスクワットの重量を上げることが主たる目的となってしまい(膝上の筋肉がつきすぎて)結果的に総力を落としてしまったランナー

 

• 将来の実生活に役立つ知識・知恵を身につけるために勉強をしているはずなのに定期テストの問題をカンニングする学生

 

• 子供中心に物事を考えるあまり子供以外の人のことが目に入らなくなって、かえって子供に恥ずかしい思いをさせてしまう親

 

以上の例は本末転倒です。

もし、結果が伴っていなかったり心当たりがあったりするのなら一旦今の悪習慣を中断して、その時間を有効に利用し目標を再確認しましょう。

 

目標を達成できる人は全体を見通す能力が高い人たちなのです。

 


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昨年の3月にウィーンで開催された第1回の線維筋痛症の国際学会に参加してきましたが、残念なことに日本人医師は私一人でした。第2回の今年は、Covid-19パンデミックのため延期に加えてバーチャルでの開催となりました。

 

本日紹介する演題は、まず

1)痛みの本質に関連する提言であり、「痛みとは何か」ということを線維筋痛症の患者さんと理解を深めるうえでとても大切な内容です。

ついで2)線維筋痛症に対する非薬物療法(物理療法や補完療法)の治療効果を科学的に評価することの現時点においての問題点が指摘されています。

 

1) について、私は、「痛み」という症状を否定的にばかりは考えておりません。「痛み」の役割を理解するためには、もし「痛み」が無かったら、健康で幸福な生活を続けていくうえでどのような障害がもたらされ、またどのような不都合が生じるかについて研究すると良くわかります。

その点、私は「先天性無痛無汗症」の患者さんの感覚障害について研究し、東京大学から博士(医学)の学位を受けました。

ですから、「痛み」の本質的な役割についての重要性はより深く認識することができるようになったと思います。

それ以前に、大切なのは、「痛み」の本質をより良く理解することが、治療促進に繋がるということです。

 

「痛み」は一種類ではなく、また「痛み」の部位に関して脳が誤認識することがあり、しかも痛みの部位と性質を誤認識したままでは有効な治療に繋がらないことを指摘しておきたいと思います。そこで、最後に解説を加えることにしました。

 

2) について、私は一次性線維筋痛症の多くは根治可能であると考えていますが、その治療方法は薬物療法ではなく、運動療法や心身医学療法などの非薬物療法が鍵になると考えています。鍼灸療法、水氣道、聖楽療法などは、多くの線維筋痛症患者を完治させてきた実績があります。

 

 

 

HBOT, Neurofeedback, TMS and Other Stories:
The Never Ending List of Physical Therapies for Fibromyalgia

 

HBOT、神経フィードバック、TMSなどの体験談。
線維筋痛症のための理学療法の終わりなきリスト

 

 

Roberto Casale

(ロベルト・カサーレ)

 

Opusmedica, PC&R Patient, Care & Research Network, Italy

(Opusmedica, PC&R Patient,治療・研究ネットワーク、イタリア)

 

 

Summary 

 

The title of this presentation seems to be tremendously negative toward the so called physical and complementary therapies for fibromyalgia. Indeed most of the physical therapies so far used showed some benefits to the patient. What we want to stress is not the  uselessness of all these treatments that have been used and whose results have published in  authoritative journals rather that  the  substantial  similarities of results in average not exceeding 30% of positive response.
This puts the accent on some possible factors:
1)a substantial lack of aknowlwdge of the physiological mechanisms which are at the basis of the use of physical agents to control pain. For instance TENS wich is one of the most used electrical therapies is used   without a real acknowledgement of the different neural pathways activated changing intensity duration and frequency of stimulation;
2)  some therapies are “unspecific”, namely they do not have a defined target as it is for chemical compounds   we are increasingly using more selective and targeted drugs toward one or another mechanism to control pain. For instance some therapies based on mechanical stimulation have more or less the same mechanisms and the studies so far present in literature vary greatly only in the site of stimulation and in the way changes in the nervous system are recorded. In literature, the comparison data between all these techniques are very few and with not perfectly comparable data, do not allow to define which are the best parameters, including the type of stimulus.
3) Another critical point is the empirism used in the application of a physical therapy that is mainly unspecifically application on the painful site. However this way of application do not take into account referred as well as the projected pains.
Another series of criticisms come from the aetiopathogenesis of fibromyalgia. Fibromyalgia must be considered a broad label including forms of fibromyalgia where the physical symptoms are the most relevant and where a targeted physical therapy may be suggested. At the other end of the same rope, the fibromyalgic clinical picture may be dominated by psychological or even psychiatric features. In this last case physical therapies may be just prescribed as possible adjuvants.
Very promising therapies such as the use of hyperbaric oxygen (HBOT) or the use of oxygen in a mixture with ozone (O2O3) have obtained some results by means of an activation a series of broad mechanisms such as the induction of free radicals scavengers and they may be prescribed in a more extensive number of patients. In these cases the critical point is that sometime what is not correct are the parameters measured to ascertain the efficacy of a given therapy.
In this broad range of clinical presentation the prescription of physical therapies should be driven by the clinical picture of the single patient and the decision to prescribe one therapy rather than another must be shared with the patient: heating may be extremely useful in some patients while in other heating may enhance pain, a transcranial stimulation may not be accepted by the patient. Also physical activity has to be chosen in relationship to the actual physical condition of the patient as a normal exercise can be perceived as a physical overload by another patient.
As above stated physical therapies must be used as they are substantially without side effects and may relief symptoms in a non irrelevant percentage of pain. However more attention must be put on the choice of the therapy and this choice is strongly driven by the clinical picture of the single patient.

 

この演題のタイトルは、いわゆる線維筋痛症のための物理療法や補完療法に対して、非常に否定的であるように思われる。

実際、これまで使用されてきた物理療法のほとんどは、患者に何らかの効果を示していた。

 

私たちが強調したいのは、使用されているとその結果が権威ある学術誌に掲載されているすべてのこれらの治療法の無駄ではなく、むしろ肯定的な反応の30%を超えない平均の結果の実質的な類似性であることである。これは、いくつかの可能性のある要因に重点を置く。

 

 

これは可能性のあるいくつかの要因に重点を置く。

 

1) 痛みを制御するための物理的な治療手段の使用の基礎となる生理学的なメカニズムの認定の実質的な欠如。

 

註:

原文ではaknowlwdgeと表記されていますが、acknowledge(動詞:認定する)もしくはacknowledgement(名詞:認定)の誤記であると思われます。文法上は、名詞となるのが適切です。

 

 

2)いくつかの治療法は「非特異的」である。すなわち、ちょうど我々が痛みを制御するために、ある一つの、または別のメカニズムに向かってより選択的かつ、ますます的を絞った化学化合物を使用するようには、それらの治療法は特定された一つのターゲットを持っていない。

 

例えば、機械的刺激に基づいていくつかの治療法は、多かれ少なかれ同じメカニズムを持っており、これまでのところ文献に存在する研究は、刺激の部位と神経系の変化が記録される方法のみで大きく異なる。文献上では、これらのすべての技術間の比較データは非常に少数であり、完全に比較可能なデータではなく、刺激の種類を含め最高のパラメータであると定義することはできない。

 

 

3)もう一つの重要なポイントは、主に痛みのある部位への特異的ではない物理療法の適用に使われている経験論である。
 

しかし、このような適用方法では、関連痛(飯嶋註:解説参照のこと)と同様に放散痛(飯嶋註:解説参照のこと)も考慮されていない。

別の一連の批判は、線維筋痛症の病因から来ている。

 

線維筋痛症とは、幅広い一個の標識であって、それは身体的症状が最も関連性が高く、標的となる一つの物理療法が示唆されるが、様々な線維筋痛症の形態を含むものであると考えなければならない。

 

同じ一本の綱の反対側では、線維筋痛症の臨床像は心理学的、あるいは精神医学的特徴によって支配されているかもしれない。

このような場合には、物理療法が補助療法として処方されることもある。

 

そのような高圧酸素療法(HBOT)の使用やオゾン(O2O3)との混合物中の酸素の使用などの非常に有望な治療法は、フリーラジカル・スカベンジャー(飯嶋:註)の誘導などの一連の広範なメカニズムの活性化によっていくつかの結果を得ており、それらはより広範な患者の数で処方される可能性がある。このような場合に重要なのは、ある任意の治療法の有効性を確認するために測定されるパラメータが正しくない場合があるということである。

 

註:

フリーラジカルスカベンジャーは、一般的にはラジカル捕捉剤を意味する。現在、脳保護剤として脚光を浴びていて、急性の脳虚血発作や脳梗塞後の血流再開時に発生するラジカルを捕えて脳神経を保護する働きを持つ抗酸化剤でもある。

 

 

 

このような幅広い臨床症状においては、理学療法の処方は個々の患者の臨床像に基づいて行われるべきであり、ある一つの治療法ではなく、別のある一つの治療法を処方するかどうかの決定は患者と共有しなければならない:ある患者では温熱が非常に有用であるかもしれないが、ある患者では温熱が痛みを増強させるかもしれないし、経頭蓋刺激は患者に受け入れられないかもしれない。

また、通常の運動が他の患者の身体的負担として認識される可能性があるため、身体活動は患者の実際の身体状態との関係で選択されなければならない。

 

上述したように、理学療法は副作用がほとんどなく、痛みとは無関係な割合で症状を緩和することができるので使用しなければならない。しかし、治療法の選択にはもっと注意を払わなければならず、その選択は患者の臨床像によって強く左右される。

 

Bibliography

Casale, R., F. Atzeni, and P. Sarzi-Puttini. “Neurophysiological background for physical therapies in fibromyalgia.” Reumatismo 2012: 238-249.
Casale, R., Boccia, G., Symeonidou, Z., Atzeni, F., Batticciotto, A., Salaffi, F., Sarzi-Puttini, P., Brustio, P.R. and A. Rainoldi. Neuromuscular efficiency in fibromyalgia is improved by hyperbaric oxygen therapy: looking inside muscles by means of surface electromyography. Clin Exp Rheumatol, 2019: 37 (116), 75-80.

 

 

解説(飯嶋):異所性痛について

 

異所性痛とは、痛みの原因となっている部位とは異なる部位に痛みが発生することで、3つの種類がある。

 

1.関連痛(Referred Pain)

痛みの原因の部位を支配している中枢神経が同神経支配下にある別の場所で感じる痛みのこと。関連痛とは、身体のある部位が原因で起こる痛みを、原因となる部位から離れた部位に感じる痛みのこと。関連痛が生じる主な原因は内臓だが、内臓以外にも筋肉や関節の障害によっても起こるとされている。関連痛は、内臓などに障害が あった場合に、そこからの痛み情報が 末梢神経を伝わって脊髄に入力される際に、同じレベルの脊髄に入力している皮膚デルマトームの領域に痛みを感じる。つまり、同じレベルの脊髄に入力する末梢神経には、内臓由来の情報と皮膚由来の情報が入力されるが、一般的に皮膚由来の痛覚神経のほうが多いため、脊髄に入力してきた 痛み情報が脳に伝達される際に、内臓ではなく、皮膚からのものであるという脳の誤認識によって引き起こされる。すなわち痛みの場所の誤認識を伴うものであるため、痛みを感じる場所に麻酔や処置をしても痛みの程度に変化は見られません。

 

2.投影痛・放散痛(Projected Pain)

放散痛とは、末梢神経などの圧迫によって末梢神経に沿って広がる痛みのことで、痛みの原因部位にある神経の延長線上で感じる痛みである。例えば腰部脊柱管狭窄症のように、腰局所の神経の圧迫などがあった場合に、それが臀部から足先に響くように痛みが広がるのが放散痛ということになる。したがって、放散痛は、誤認識による痛みではなく、神経そのものが感じている痛みであるということができる。

 

3.中枢痛(Central Pain)

中枢神経に痛みの原因があり、その神経支配下の部位で感じる痛みのこと。

 

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РОССИЙСКИЙ СОВЕТ ПО МЕЖДУНАРОДНЫМ ДЕЛАМ

 

ロシア外交評議会

 

 

Андрей Кортунов:
アンドレイ・クルノフ

 

 

Крепость или бункер?
要塞かバンカーか?

 

 

Но ожидание возникновения хаотизации в международных отношениях, системного кризиса, прежде всего, финансового, становится доминирующим. Хаос — это прежде всего абсолютное изменение парадигмы экономического и геоэкономического поведения. Конечно, стратегическая стабильность важна, но она базируется на определенной экономической составляющей. В геоэкономике и экономике абсолютно очевидна тенденция к принятию краткосрочных решений. Предхаос — это краткосрочная повестка дня. Представления о долгосрочной нет ни у кого: ни у России, ни у ее партнеров, ни у ее соперников. Это влечёт ряд последствий в военно-политической сфере. Во-первых, происходит расширение серой зоны. Взаимозависимость даже в ситуации предхаоса сдерживает все государства мира от принятия жестких военно-политических решений в отношении других государств. Начало конфликта в Карабахе — скорее исключение, которое связано с особым статусом территории. Но тем не менее ни на уровне отношений Китай-США, ни даже на уровне отношений Китай-Северная Корея принятие жестких долгосрочных решений невозможно. Тем более невозможен какой-то крупный геоэкономический, геополитический маневр. Но это же означает, что будут приниматься на вооружение и инвестироваться те виды вооружений, которые «понятны и готовы» на данный момент.

 

しかし、国際関係における混沌、主に金融を中心とした全系統的な危機への期待が支配的になりつつある。

カオスとは、第一に、経済・地理経済行動のパラダイムの絶対的な変化である。もちろん、戦略的安定性は重要ですが、それはある種の経済的要素を前提としています。地球経済学や経済学では、短期的な判断をする傾向が絶対に存在する。

プレハオスは短期的なアジェンダである。誰も長期的なアジェンダについての考えを持っていない:ロシアもそのパートナーもライバルも。

これは、軍事や政治の領域で多くの結果をもたらす。

まず、グレーゾーンが拡大している。相互依存は、プレカオスの状況であっても、世界のすべての州が他の州に対して厳しい軍事的・政治的決定をしないようにしている。

カラバフでの紛争の始まりは、むしろ例外的なものであり、領土の特別な地位と関係している。しかし、米中関係のレベルでも、中朝関係のレベルでも、長期的な厳しい判断はできない。

それ以上に不可能なのは、地政学的、地政学的な大作戦だ。しかし、これはまた、現時点で「理解して準備ができている」タイプの武器が採用され、投資されることを意味している。

 

 

Расширение серой зоны в конфликтах наиболее опасно. Мы лукавим, говоря, что живем в состоянии холодной войны.

 

紛争におけるグレーゾーンの拡大が一番危険だ。冷戦状態の中で生きていると言うことで狡猾である。

 

 

Мы живем в состоянии войны теплой, где допустимым становится весьма широкий спектр военно-силовых средств, происходит сращивание информационных манипулятивных и киберударных средств. Сфера военных средств предвоенного формата расширилась, и где граница перехода теплой в горячую войну никто не знает.

 

非常に幅広い軍事力が許容されるようになってきて、情報操作やサイバーダーツがスプラッシュアップされていく、戦争状態の暖かい日々を送っている。戦前の軍事手段の範囲が拡大し、暖戦から熱戦への移行の境界線がどこにあるのかは誰も知らない。

 

 

Говоря о перспективах стратегической стабильности, мы все понимаем, что через 5–7 лет к власти в США и России в военно-политическом руководстве придут люди, которые не имеют представления о ядерном сдерживании и вообще ядерном оружии, для которых оно — абстракция. А в военной сфере вообще будут доминировать люди, которые выросли на войнах беспилотников, где для того, чтобы убить человека, нужно просто сыграть в компьютерную игру. У этих людей другое отношение к жизни и к смерти, к войне и к миру, а значит, нет тех политико-психологических сдерживающих факторов, которые были важнейшим компонентом военно-политического «сдерживания» в период холодной войны.

 

戦略的安定性の見通しについて言えば、5~7年後には、米国やロシアの軍事・政治指導者の中に、核抑止力や核兵器について何も考えていない、抽象的な人たちが出てくることは誰もが理解している。そして一般的な軍事圏ではドローン戦争で育った人たちが支配し、人を殺すためにはコンピュータゲームをするしかない。このような人々は、生と死、戦争と平和に対する態度が異なるため、冷戦時代の軍事的・政治的な「抑止力」の最も重要な要素であった政治的・心理的な「抑止力」が存在しないのである。

 

 

Что касается российской внешней политики, мы наблюдаем нарастающее недоверие ко всем нашим партнерам. Россия не доверяет никому и правильно поступает. Это отражение глобальных тенденций. Думаю, всем очевидно не просто высокое, но нарастающее ощущение военной угрозы со стороны Запада.

 

ロシアの外交政策に関する限り、我々はすべてのパートナーに対する不信感が高まっていると見ている。ロシアは誰も信用しておらず、正しいことをしている。これは世界の動向を反映したものです。高いだけでなく、西側からの軍事的な脅威感が高まっているのは誰の目にも明らかだと思う。

アメリカはまだ大したことではないが、大量破壊兵器が散発的に使われている中途半端な戦争を合法化する路線に乗り出した。これは、彼らの軍事文書や政治エリートの発言からも明らかである。

 

 

Никакие тенденции, касающиеся российской внешней политики, не являются в полной мере уникальными. Все они в той или иной степени отражают то, что существует в мире в целом. Но в России вполне осознанным является важнейшее для нашей страны диалектическое противоречие. С одной стороны, очевидна принципиальная невозможность усиления международного влияния России без решения целого ряда социально-экономических проблем и снятия геоэкономических уязвимостей. Но, с другой стороны, снятие этих уязвимостей возможно только при условии благоприятной внешней ситуации, что требует затрат ресурсов не на внутреннем контуре политики, а на внешнем. Этот баланс будет являться главным ограничителем российской внешней политики. Это противоречие быстрее всего осознают военные.

 

ロシアの外交政策に関する動向は、どこまでも独自のものではない。それらはすべて、世界全体に存在するものをある程度反映している。しかし、ロシアでは、わが国にとって最も重要な弁証法的矛盾は、かなり理解できる。一方で、ロシアの国際的な影響力を強化するためには、社会経済的な問題全般に対処し、地政学的な脆弱性を解消することなしには、根本的に不可能であることは明らかである。しかし一方で、これらの脆弱性の除去は、外的状況が良好であってこそ可能であり、そのためには、内部ではなく、政治の外部の輪郭に資源を支出する必要がある。このバランスがロシアの外交政策の主な限界になるだろう。この矛盾を最も早く理解できるのは軍部である。

 

 

Также наблюдается глубочайший кризис внешнеполитической пропаганды. Она не умерла, но она умирает, и это отражает кризис нашего внешнеполитического контента — России нечего сказать по-крупному, с точки зрения концептуального видения будущего. Ситуация с «Северным потоком-2» показала, что мы побеждаем с точки зрения тактического контента, но для европейцев есть вечные ценности, которые они считают более важными, чем тактические выгоды. Это, прежде всего, ожидание нового атлантизма: «приедет Байден — Байден нас рассудит» и абсолютная вера в грядущее торжество атлантических ценностей, которое ничем не «перебить». Вообще вопрос о «ценностях» — тяжелый для российской внешней политики, действующей в рамках либерального мейнстрима. Нам необходимо четко понимать взаимосвязь вещей во внутренней и внешней политике России.

 

外交政策プロパガンダの最深部の危機もある。それは死んでいないが、それは死んでいる、これは私たちの外交政策の内容の危機を反映している - ロシアは、将来の概念的なビジョンの面で、大きく言うことは何もない。ノルドストリーム-2の状況を見ていると、戦術的な内容では勝っていることがわかるが、ヨーロッパ人にとっては戦術的なメリットよりも重要視する永遠の価値観がある。これは何よりも、新しい大西洋主義への期待であり、「バイデンは来るだろう-バイデンは私たちを裁くだろう」と、何も「中断」しない大西洋的価値観の勝利がやってくることへの絶対的な信頼である。一般的に「価値観」の問題は、リベラル主流派の枠組みの中で動くロシアの外交政策にとって難しい問題である。ロシアの内政・外交政策における物事の関係性を明確に理解する必要がある。

 

 

В заключение отмечу, что Россия стоит на пороге окончательного снятия табу на применение военно-силовых методов осуществления политики. Пока мы этого избегали. Применение военно-силовых методов при воссоединении с Крымом носило «стыдливый характер», и мы стоим на пороге того, чтобы этот стыд отбросить. При этом есть опасения, что Россия не сможет участвовать в симметричной гонке вооружений. Как будет искаться баланс между желанием применять военно-силовые инструменты и не вмешиваться в гонку вооружений с заведомо более сильным противником (США) будет сложным вопросом.

 

結論から言うと、ロシアが政策実施のための武力行使法のタブーをついに解禁しようとしていることに注目したい。今のところ、これは避けている。クリミアとの再統一での武力行使は「恥ずべきこと」であり、私たちはこの恥辱を拒否しようとしている。しかし、ロシアが対称的な軍拡競争に参加できなくなることが懸念されている。より強力な敵対国(米国)との軍拡競争に干渉しないことと、軍事力の道具を使いたいという気持ちとの間にどのようなバランスが求められるかは、難しい問題であろう。

 

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昨年の3月にウィーンで開催された第1回の線維筋痛症の国際学会に参加してきましたが、残念なことに日本人医師は私一人でした。第2回の今年は、Covid-19パンデミックのため延期に加えてバーチャルでの開催となりました。

 

今回紹介する演題の抄録は、疾患概念のカタログのようであり、演者が言わんとすることのエッセンスはシェーマに示されているようではありますが、判別困難です。期待できる内容であるだけにバーチャル学会の限界を感じます。

 

ただし、small fiber neuropathy(小神経線維病)がキーワードの一つであることが示唆されます。

小神経細胞というのは神経線維の直径が小さい神経を意味しますが、その代表が自律神経です。

したがって、自律神経を疾患の主座として、自己免疫疾患との関連性を論じようとしているのではないかと推定します。

 

 

Autoimmune Dysautonomia

 

自己免疫性自律神経失調症

 


Yehuda Shoenfeld

(イェウダ・シェーンフェルト)

 

Sheba Medical Center, Israel

(シェバ医療センター、イスラエル)

 

 

Summary

 

Yehuda Shoenfeld MD, FRCP ,MaACR ,
Zabludowicz Center for Autoimmune Diseases, Sheba Medical Center, Tel-Aviv, Israel
Chronic fatigue syndrome, fibromyalgia, macrophagic myofasciitis, postural orthostatic tachycardia syndrome, complex regional pain syndrome, post-human papillomavirus vaccine syndrome/human papilloma virus vaccination associated neuroimmunopathic syndrome and sick building syndrome have been noted to share several major clinical features. Three of these disorders are included in the concept of autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants (ASIA), which sheds light on their autoimmune pathogenesis. In this paper we summarize the evidence regarding the role of autoimmunity in the seven outlined syndromes with respect to their genetics, autoimmune co-morbidities, immune cell subtype alterations, detection of autoantibodies and presentation in animal models. Furthermore, a symptom cluster of fatigue, dysautonomia, sensory disturbance and cognitive impairment which is common for all the syndromes is identified. We suggest a new concept of autoimmune neurosensory dysautonomia with common denominator of autoantibodies directed against adrenergic and muscarinic acetylcholine receptors with coexistent small fiber neuropathy, which might probably take part in the emergence of these symptoms. Possible modalities of therapy targeting autoimmunity and their efficiency in these seven outlined syndromes are also reviewed. Understanding the suggested concept may assist in identifying the subgroups of patients who may mostly benefit from targeted immunomodulatory therapeutic modalities.
Of therapy targeting autoimmunity in the outlined disorders. ASIA autoimmune syndrome induced by adjuvants, CFS chronic fatigue syndrome, CRP C-reactive protein, CRPS complex regional pain syndrome, FM fibromyalgia, ESR erythrocyte sedimentation rate, HPV human papilloma virus, IVIG intravenous immunoglobulin, MMF macrophagic myofasciitis, ND no data, POTS postural orthostatic syndrome, SCIG subcutaneous immunoglobulin.

慢性疲労症候群、線維筋痛症、マクロファージ性筋膜炎、体位性頻拍症候群、複合型局所疼痛症候群、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種後症候群/HPVウイルスワクチン接種関連神経免疫疾患症候群、シックハウス症候群は、いくつかの主要な臨床的特徴を共有していることが指摘されている。

 

これらの疾患のうち3つは、アジュバント(飯嶋:註1)によって誘発される自己免疫/炎症性症候群(ASIA)の概念(飯嶋:註2)に含まれており、これらの自己免疫疾患の発症機序に光を当てている。

 

本論文では、7つの症候群における自己免疫の役割に関するエビデンスを、遺伝学、自己免疫性合併症、免疫細胞サブタイプの変化、自己抗体の検出、および動物モデルでの提示に関してまとめた。

さらに、すべての症候群に共通する疲労、自律神経失調、感覚障害、認知障害の症状群を同定した。

 

これらの症状の出現に関与している可能性のある自己免疫性神経感覚障害の新しい概念を提案する。

また、自己免疫を標的とした治療法の可能性と、これらの7つの症候群におけるその有効性についても検討した。示唆された概念を理解することは、標的免疫調節療法の治療法が最も有益であると考えられる患者のサブグループを特定するのに役立つであろう。

 

概略された疾患における自己免疫を標的とした治療法について。

ASIA(自己免疫症候群)、CFS(慢性疲労症候群)、CRP (C反応性蛋白)、CRPS(複合性局所疼痛症候群)、FM(線維筋痛症)、ESR(赤血球沈降速度)、HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、IVIG(静脈内免疫グロブリン)、MMF(大食細胞性筋膜炎)、ND(データなし)、POTS(体位性頻脈症候群)、SCIG(皮下免疫グロブリン)。


註1:アジュバント

アジュバント (Adjuvant) とは、ラテン語の「助ける」という意味をもつ 'adjuvare' という言葉を語源に持ち、ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質のこと。

広義には主剤に対する補助剤を意味するが、一般的には主剤の有効成分がもつ本来の作用を補助したり増強したり改良する目的で併用される物質をいう。

 

免疫学の分野ではアジュバントは抗原性補強剤とも呼ばれ、抗原と一緒に注射され、その抗原性を増強するために用いる物質である。

 

予防医学の分野では、ワクチンと併用することにより、その効果を増強するために使用される。

 

免疫学の分野ではアジュバントとは、抗原と抗原性を共有することのないままに、免疫を強化する物質の総称である。

ただし、アジュバントは、薬剤としての効果を期待すればするほど、薬害が不可避であることが知られている。またアジュバントが引き起こす病気(症状)、いわば「アジュバント病」ともいえる状態である。

 

註2:自己炎症性疾患

自己炎症性症候群(autoinflammatory syndrome)は、自己炎症性疾患、自己炎症疾患、自己炎症症候群とも呼ばれる。体質的に発熱などの炎症症状を繰り返す疾患である。

 

周期性発熱、原因不明の発熱・炎症所見を特徴とする一連の遺伝性疾患に対して、1999年、米国国立衛生研究所のカストナーらによって提唱された疾患概念。

 

確定診断には遺伝子検査が有用。典型例では臨床症状と検査所見で診断可能であるが、非典型例が存在することにも留意する必要がある。

 

自己炎症性症候群の責任遺伝子は自己免疫関連遺伝子のことが多く、遺伝子変異を伴うものを「(狭義の)自己炎症性症候群」、伴わないものを「(広義の)自己炎症性症候群」と定義している。

後者に分類されるものとして、全身型若年性特発性関節炎、PFAPA(周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群)、成人スチル病、ベーチェット病、痛風、偽痛風、シュニッツラー症候群、Ⅱ型糖尿病、慢性再発性多発性骨髄炎がある。

 

用語解説(飯嶋):

1)疾患概念

 ASIA(自己免疫症候群:アジュバント誘発性自己免疫疾患)

正式名称は、アジュバント誘発性自己免疫 / 自己炎症症候群

(Autoimmune/autoinflammatory syndrome induced by adjuvant)

イスラエルの免疫学者シェーンフェルド氏によって 2011 年に提唱された。

 

 CFS(慢性疲労症候群)

健康な生活を送っていた人が日常行動を損わしめるような著しい疲労感、倦怠感を生じ、かつ持続することを主徴とした原因不明の疾患。2005年より日本疲労学会においてより客観的に診断できる基準の策定が検討されている。また全身痛を主症状とした線維筋痛症とは近縁の病態とされる。

 

 CRPS(複合性局所疼痛症候群)
CRPSは契機となる外傷後などに,その外傷に比して不釣り合いな強い痛みやアロディニアのほか,浮腫,発汗異常,萎縮性変化などを伴う疾患です1)。CRPSの原因と発症機序は明確になっていませんが,単一の原因によって発症するというよりは複数の要因が複雑に関連して発症する多因子疾患であると考えられています。

 

ワクチン接種によってCRPSを発症したとする症例報告がありますが、ワクチン成分は様々で,CRPSは些細な外傷や採血行為によっても発症することから、ワクチン成分よりも針刺し行為(注射)という痛みを伴うイベントが原因として考えられています。


CRPSを発症しやすい条件として,女性,複雑骨折,上肢遠位の骨折,外傷後の強い痛みが知られています2)。CRPSを発症しやすい心理傾向や性格はない3)とされますが,患肢の過度な不動化のように外傷後早期から運動機能の低下が観察される患者はCRPSを発症しやすいとした報告2)があります。

また,患肢運動により痛みを惹起することに対して恐怖心を持っている患者では運動機能が低下していること4)等から,痛みに対する恐怖心を持ちやすい性格傾向の患者では患肢をかばう行動が顕著になりCRPSを発症しやすいのではないかと考えられます。

 

特に,小児・思春期の患者においては,患者だけでなく痛みや運動に関連する家族の不適切な恐怖心がCRPSの発症に関連5)することが考えられており,逆に,家族が患肢の運動を行うように患者に対して積極的に働きかけるとCRPSの発症率が少ないとする報告6)もあります。

 

その他,医療行為を含む第三者行為によって発症したCRPS患者を診療する機会が少なくないことから,心理社会的要因(被害者感情,経済的補償など)も誘因になると考えられています7)。

 

【文献】

1) Sumitani M, et al:PAIN. 2010;150(2):243-9.

 

2) Birklein F, et al:Nat Rev Neurol. 2018;14(5): 272-84.

 

3) Convington EC:Progress in Pain Research and Management 6. IASP press, 1996, p192-216.

 

4) Osumi M, et al:Med Hypotheses. 2018;110: 114-9.

 

5) Simons LE:Pain. 2016;157(Suppl 1):S90-7.

 

6) Braus DF, et al:Ann Neurol. 1994;36(5):728-33.

 

7) Ochoa JL:J Neurol. 1999;246(10):875-9.

 

【回答者】住谷瑞穂 神尾記念病院、住谷昌彦 東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部部長/麻酔科・痛みセンター准教授

 

 

 POTS(体位性頻脈症候群)

体位性頻脈症候群(Postural orthostatic tachycardia syndrome, POTS )は起立不耐症(Orthostatic Intolerance, OI)の1つである。起立不耐症は、身体が横になっている状態から立位へと動かした時に、心臓に戻る血液量が著しく減少して、立ちくらみや失神などの症状が現れる。

 

POTSでは、立位により心拍数が急上昇して立ちくらみや失神などの症状が現れる。横になると症状がやわらぐ。年齢によらず発症しますが、米国では15歳~50歳の女性に好発しやすい(75~80%)と言われている。月経前に症状が悪化する場合がある。

 

POTSは妊娠、手術、身体的精神的外傷、ウイルス感染後の発症がしばしば見られ、失神やめまいで労作が難しい場合がる。立位で心臓に戻る血液量が減少する原因や、頻脈となる原因はまだはっきりわかっていない。しかし最近の研究では、神経障害性、高アドレナリン性、身体機能低下性などのさまざまなメカニズムがあると考えられている。

 

POTSは起立不耐症状が特徴的で起立時に心拍数が急上昇する。

 

また以下のようなさまざまな症状があらわれることがある。

目がぼやける、立ちくらみ、めまい、失神、動悸、頭痛、集中力の低下、疲労感、
胃腸障害(吐き気、腹痛、腹部膨満感、便秘、下痢)、息切れ、頭部・頸部・胸部の不快感、脱力、睡眠障害、活動困難、四肢の冷えや痛み、不安感

 

参考

 

1. The National Institute of Neurological Disorders and Stroke, NINDS Postural Tachycardia Syndrome Information Page

 

2. Genetic and Rare Diseases Information Center, GARD Postural orthostatic tachycardia syndrome

 

 

 マクロファージ(大食細胞)性筋膜炎

あまり一般的ではない疾患名です。今後注目される可能性はあります。

 

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種後症候群/HPVワクチン接種関連神経免疫疾患症候群

HPVワクチン接種後に発症することが話題になっている症候群です。未だ一般的には認められていないようですが、今後の検討が望まれます。

 

 シックハウス症候群
近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれている。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまである。

シックハウス症候群の原因としては、住宅の高気密化・高断熱化などが進み、化学物質による空気汚染が起こりやすくなっているほか、湿度が高いと細菌、カビ、ダニが繁殖しやすくなる。

それだけではなく、一般的な石油ストーブやガスストーブからも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出される。たばこの煙にも有害な化学物質が含まれている。

シックハウス症候群は、それらが原因で起こる症状である。人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応してしまう人もいる。

 

生活環境におけるシックハウス対策(厚生労働省HP)

 

 

2)炎症指標関連:

以下のいずれも線維筋痛症では異常を認めないのが普通です。

 

 CRP (C反応性蛋白)

 

 ESR(赤血球沈降速度)

 

 

3)治療法関連

 IVIG(静脈内免疫グロブリン)

 

 SCIG(皮下免疫グロブリン)

 

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中方愿同东盟国家一道推动双方关系提质升级

 

中国はASEAN諸国と協力して、双方の関係の質的なアップグレードを推進していきたいと考えている
  

 

第23次中国—东盟(10+1)领导人会议12日通过视频形式举行,国务院总理李克强和东盟十国领导人出席会议。汪文斌介绍了会议成果,并表示,中国始终视东盟为周边外交优先方向,坚定支持东盟共同体建设,坚定支持东盟加强在区域合作中的中心地位,坚定支持东盟在构建开放包容的地区架构中发挥更大作用。
 

12月12日、第23回中国・ASEAN(10+1)首脳会議がビデオ会議で開催され、李克強首相とASEAN10カ国の首脳が出席した。王文斌氏は会談の成果を紹介し、中国は常にASEANを近隣外交の優先方向とみなし、ASEAN共同体の構築を断固支持し、地域協力におけるASEANの中心的地位の強化を断固支持し、開放的で包摂的な地域建築を構築するためにASEANがより大きな役割を果たすことを断固支持していると述べた。
  

 

“中方愿同东盟国家一道,落实此次领导人会议成果,推动双方关系提质升级,为下一个30年打下坚实基础,更好维护东亚发展繁荣大局。”他说。
 

「中国はASEAN諸国と協力して、今回の首脳会談の成果を実行し、双方の関係のアップグレードを促進し、次の30年のための強固な基盤を築き、東アジアの全体的な発展と繁栄をより良く保護することを望んでいる。」と言った。

 

 

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昨年の3月にウィーンで開催された第1回の線維筋痛症の国際学会に参加してきましたが、残念なことに日本人医師は私一人でした。第2回の今年は、Covid-19パンデミックのため延期に加えてバーチャルでの開催となりました。

 

本日ご紹介する演題は、私が以前から注目し、実践しているアプローチ法に近い考えが示されています。一言で言えばポイントは脳腸相関と腸内細菌叢です。

 

脳腸相関とは、中枢神経系と消化器の機能的関連をいいます。

日常臨床での代表例は過敏性腸症候群などの機能性腸疾患です。

これは「心理社会的ストレスによって過敏性腸症候群患者の消化器症状が発症もしくは増悪する」あるいは「消化器刺激に対する過敏性腸症候群患者の内臓知覚が過敏である」という現象です。

 

これらの制御分子が同定されつつあります。また、脳機能画像によっても脳腸相関を科学的・視覚的に分析することができます。

 

また腸内細菌叢についての研究の進歩は、近年目覚ましいものがあります。フィッツシャルル先生のサマリーの冒頭に、「線維筋痛症の患者さんのほとんどが、食事と線維筋痛症との関連を質問する」ということの問題提起ではじまっていますが、線維筋痛症の患者さんも、内心では、それにうすうす気づいている可能性があるのではないか。

 

あるいは、食生活を是正することによって病気を治すことが出来るのではないか、という大きな期待を寄せているのではないかと推測することができます。

 

そういえば昨年3月の第1回の線維筋痛症国際学会では、臨床栄養学の立場から、FMにとって食事療法や食生活の見直しが重要であるという立場から、積極的に発言を試みていた年配の女性研究者のことを想い出します。

 

ただし、こうした医師主導の学会にありがちなことは、薬物療法についての興味・関心が中心になりがちであり、とくに栄養学的アプローチに対しては冷淡であるということです。私はとても残念であった記憶が残っています。

 

厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)には「腸内細菌と健康」についての解説が掲載されています。

 

 

 

The Microbiome and Fibromyalgia: The Gut-Brain Axis

 

マイクロバイオームと線維筋痛症:腸脳枢軸

 


Mary-Ann Fitzcharles

(メリーアン・フィッツシャルル)

 

McGill University, Canada

(マギル大学、カナダ)

 

 

Summary

 

A Minerbi, Institute for Pain Medicine, Rambam Health Campus, Haifa, Israel
M Fitzcharles, McGill University, Montreal Canada
Almost every patient with fibromyalgia (FM) asks the question whether diet may affect symptoms of FM. Furthermore, abdominal complaints consistent with irritable bowel syndrome are common in FM. The emerging understanding of the gut microbiome in both health and disease may hold pertinence for FM.
The human body exists in a complex and dynamic ecosystem with extensive microbial colonization of the gut and other tissues. This symbiosis influences health status and can be affected by environmental and genetic factors, and is a driver for metabolic and immune physiology, but alternately can play a role in pathology. The physiological effects of the gut-brain axis in both health and disease result in a bidirectional interplay between the gut (hormonal mechanisms and microbiome) and the nervous system. Neurological effects mediated via the autonomic nervous system as well as the hypothalamic pituitary adrenal axis are directed to intestinal functional effector cells, which in turn are under the influence of the gut microbiota. Gut bacteria, in turn, have been shown to affect the activity of central-nervous-system functions, with several putative mechanisms, including, but not limited to the secretion of short-chain fatty acids, bile acids, neurotransmitters and other biologically active metabolites. Perturbations of the microbiome have been associated with a wide variety of pathologies, including the metabolic syndrome, gut related disorders, mental health conditions, immunologically mediated diseases, and with increasing evidence for effect in pain conditions. Pathological states may occur when there are perturbations of the microbiome composition, leading to alteration in its metabolic function and its interactions with the host physiology.
Any assessment of the microbiome requires meticulous attention to factors known to influence composition, including diet, age, physical activity, medications and other factors. The composition of the microbiome is typically evaluated by DNA sequencing of either bacterial specific sequences, such as 16S rRNA or by metagenomic sequencing. The function of the microbiome can be inferred by transcriptomic, proteomic and metabolomic analyses. Machine learning algorithms are used to identify specific microbiome-related patterns that distinguish patients from healthy controls.
There are emerging reports that FM patients can be differentiated from controls by their specific gut-microbiome composition, with either over- or underabundance of some taxa [1]. Furthermore, there is report of association between abundance of some taxa and severity of symptoms in FM, including pain intensity, fatigue, sleep disturbance and cognitive symptoms, findings that are independent of dietary differences, comorbidities or disease independent variables. Some of these abundant bacterial taxa are involved in metabolic pathways with effect on FM symptoms that is biologically plausible. It is too early to attribute specific microbes as “bad” or “good” in the context of FM, but further study is needed to explore causal associations between the gut microbiome and FM.
This first step in assessing the microbiome in FM may hold promise for a better understanding of mechanisms operative in FM and other chronic pain conditions, provide hope for a possible biomarker to aid diagnosis and hold potential for therapeutic interventions. At this time, we must still offer patients pragmatic advice regarding good lifestyle practices with attention to a balanced diet, sufficient exercise, and stress reduction, but with the hope that further microbiome study may unlock some of the mysteries of FM and other chronic pain conditions.

 

線維筋痛症(FM)のほぼすべての患者は、食事がFMの症状に影響を与える可能性があるかどうかを質問する。

さらに、過敏性腸症候群と一致する腹部の愁訴はFMでは一般的である。健康と病気の両方で腸内マイクロバイオーム(細菌叢)について新たに高まりつつある理解は、FMのために適切であり続ける可能性がある。

 

 

人体は、腸や他の組織の広範な微生物の植民地化と複雑でダイナミックな生態系に存在している。

この共生は健康状態に影響を与え、環境要因や遺伝的要因の影響を受け、代謝生理や免疫生理を促進するが、病理学的な役割を果たすこともある。

 

健康状態と疾患の両方における腸-脳軸の生理学的効果は、腸(ホルモン機構と腸内細菌叢)と神経系の間の双方向の相互作用によってもたらされる。

 

自律神経系と視床下部下垂体副腎軸を介して媒介される神経学的効果は、腸の機能的な効果器細胞に向けられ、腸内細菌叢の影響下にある。

 

腸内細菌は、短鎖脂肪酸、胆汁酸、神経伝達物質、その他の生物学的に活性な代謝物の分泌を含むがこれらに限定されないいくつかの仮説的なメカニズムで、中枢神経系機能の活性に影響を与えることが示されている。

腸内細菌叢の乱れは、メタボリックシンドローム、腸関連疾患、精神疾患、免疫介在性疾患などの様々な病態と関連しており、痛みの状態に影響を与える証拠が増えている。

病理状態は、腸内細菌叢の組成の摂動があり、その代謝機能および宿主生理との相互作用の変化につながるときに発生する可能性がある。

 

腸内細菌叢を評価する際には、食事、年齢、身体活動、薬物、その他の要因を含む組成に影響を及ぼすことが知られている要因に細心の注意を払う必要がある。

腸内細菌叢の組成は、通常、16S rRNAなどの細菌特異的配列のDNA配列決定、またはメタゲノム配列決定によって評価される。

 

腸内細菌叢の機能は、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、メタボローム解析によって推測することができる。機械学習アルゴリズムは、患者を健康な対照者と区別する特定の腸内細菌叢の関連パターンを同定するために使用される。

 

FM患者は、特定の腸内細菌組成によって対照群と区別できるという報告が出てきており、いくつかの分類群の過剰または過少のいずれかである[1]。

さらに、いくつかの菌種の豊富さと、痛みの強さ、疲労、睡眠障害、認知症状などのFM患者の症状の重症度との間に関連性があることが報告されており、これらの知見は、食事の違い、併存疾患、または疾患に依存しない変数とは無関係である。

これらの豊富な細菌群の中には、生物学的にもっともらしいFM症状への影響を持つ代謝経路に関与しているものもある。

特定の微生物をFMの文脈で「悪」または「善」とするのはまだ早いが、腸内細菌叢とFMの間の因果関係を探るためにはさらなる研究が必要である。

 

このようにFMの腸内細菌叢を評価する最初のステップは、FMや他の慢性疼痛疾患のメカニズムをよりよく理解するために有望であり、診断を助ける生物学的指標としての可能性に希望を与え、治療介入の可能性を保持することができるかもしれない。

 

現時点では、バランスのとれた食事、十分な運動、ストレスの軽減に注意を払いながら、良い生活様式を実践するためのアドバイスを患者に提供しなければならないが、さらなる腸内細菌叢研究がFMやその他の慢性疼痛疾患の謎を解き明かす可能性があることを期待している。

 

1. Minerbi, A., et al., Altered microbiome composition in individuals with fibromyalgia. Pain, 2019. 160(11): p. 2589-2602.