非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の治療の実際

 

NAFLD/NASHの治療は、内臓肥満を是正するための運動及び食事等の改善が第一であることは、多くの医師が認識しています。

 

しかし、残念なことに、こうした地道な健康管理を遂行・持続するように指導しても、そうした患者さんにはあまり感謝されることもなく、実行に至らず困難に直面するというシナリオが相場です。

 

そうした現実もあってか、我々医師は、ややともすれば、早期にお薬を処方するしかないと考えがちになるようです。

 

とても残念なことですが、生活リズムの是正をはじめ運動療法や栄養食事療法に熱心な医師は、とても少なく、自らが患者と共に運動療法に励むような医師は、特別天然記念物扱いです。

 

杉並国際クリニックは、水氣道®という運動療法の実践を20年間続けていますが、肥満者の体重を10%以上減量させることは無理なく達成可能です。

 

ガイドラインでは7%減量の達成を唱えていますから、水氣道®を始めていただけるのでしたら、有力な治療手段となります。


そうは言っても、現在NASHに対する直接的な薬物療法は確立していないことが多くの患者さんやその患者さんのサポートを担当するほとんどの医師にとっての大問題になっています。

 

そのため、NASHの背景にあるメタボリックシンドロームに合わせた治療方略が、少し古きなった診療ガイドライン「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」(日本消化器病学会、2014年)で推奨されています。幸い今年の4月に改訂版が公表される予定です。

 

NASHに対する薬物療法は、種々試みられていますが、長期予後等に関するエビデンスには乏しく、評価困難です。日常臨床では、NASHの背景にあるメタボリックシンドロームの基礎疾患である糖尿病、脂質異常症ならびに高血圧症等に準じた薬物療法が考慮されています。

 

杉並国際クリニックでは、これらの基礎疾患に対応する個別データに基づく、以下の治療計画シートを作成しています。糖尿病早期発見および治療管理基準(杉並国際クリニック版)、動脈硬化症予防・治療管理基準(杉並国際クリニック版)、高血圧治療管理基準(日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2014、改変)は、一般にも公開することにしました。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の大多数は肝生検を施行しないのでNASHという確定診断が得られませんが、その場合はNASHの可能性を検討して治療します。

 

基礎疾患の有無にかかわらずNASHは、抗酸化剤としてビタミンEが選択肢となりますが、保険適応になっていません。

 

そして高血圧症が基礎疾患の場合はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、高コレステロール血症が基礎疾患の場合はスタチン、インスリン抵抗性の2型糖尿病にはピオグリタゾンを追加投与することがあります。

 

 

もっとも、基礎疾患のあるNASHへの治療を検討すべき基準としては、

 

(1) BMI≧37(肥満度Ⅲの基準をも超えた肥満です)

 

(2) BMI≧32(肥満度Ⅱの基準を超えた肥満です)で、

 

糖尿病を合併するもの、または他の肥満に起因する合併症を2つ以上ある場合
です。

 

ビタミンEはNASH患者の血液生化学検査のみならず、肝組織も改善することが示されています。しかし、長期の服用によって脳出血や前立腺がんの発症を増加させる可能性があります。


NASH患者の70%に高血圧が合併しています。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬のロサルタン(ニューロタン®)、テルミサルタン(ミカルディス®)は、安全性の確立した降圧薬であり、肝臓の炎症及び線維化を抑制します。
 

スタチン系薬剤のアトルバスタチン(リピトール®)はNASH患者の血液生化学検査と肝組織を改善させます。
 

ピオグリダゾン(アクトス®)によって脂肪組織のインスリン抵抗性が改善しますが、それは肝細胞の改善とも相関します。

 

ただし、長期投与では、前立腺がん、膵臓がん、体重増加ならびに女性における骨折等の副作用に対する注意が必要です。

第53回日本痛風・尿酸核酸学会総会(小倉・北九州国際会議場)にて正式発表

 

2月13日(木)に、痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートとして、上記学会の認定痛風医に認定されました。正式には4月1日から認定医の資格が与えられることになります。

 

 

日本痛風・尿酸核酸学会認定痛風医

 

英語表記:

Board Certified Member of the Japanese Society of Gout and Uric&Nucleic Acids

 

 

認定期間は2020年4月1日から2025年3月31日まで、となります。

 

 

私は、開業医となってから資格取得のための準備をはじめたため、研修指定病院における業績報告等の代わりに筆記試験を受験し合格することが条件でした。

 

幸に試験に合格できましたが、合格後も業績を積み増すことが要件であったため、本年に至ってようやく認定されるに至りました。

 

伝統ある上記学会についてご紹介すると

「本学会は、痛風認定医をはじめとする痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートのみならず、尿酸・核酸代謝をキーワードとする分子遺伝学、分子生物学、薬理学、栄養学、内科学、小児科学、腎臓病学、血液病学、泌尿器科学、整形外科学など多くの基礎医学・臨床医学分野の会員が参集し、一会場制で多様性に富む議論が展開されるところが魅力です。」

と総会会長が開催にあたって宣言しているとおりです。

 

食生活の欧米化に伴ってわが国の高尿酸血症患者数は年々増加し、2010年頃は成人男性の20~25%に高尿酸血症が認められ、女性でも5%に上ると報告されていました。

 

そして2016年の国民生活基礎調査で推定された痛風患者数は全国で100万人を超えていました。

 

これに対して、痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートであると公認される認定痛風医は、令和2年4月1日の段階で私を含め新たに4名が新規に登録されても全国で55名に過ぎません。

 

このことは、日本全国の痛風・高尿酸血症の患者さんのほとんどが非認定医による診療を受けざるを得ないことを意味します。

 

 

以下が、総会で公表された令和元年度第9回認定痛風医(新規)4名の氏名・勤務先です。

 

No1 飯嶋正広 杉並国際クリニック 院長

 

No2 石井健夫 善仁会 横浜第一病院 副院長 (日本腎臓病学会学術評議員)

 

No3 川口真  防衛医科大学校病院 泌尿器科

 

No4 森田美穂子 福井大学医学部 血液・腫瘍内科 病院助教

 

 

新規認定医4名のうち3名が首都圏に勤務していますが、東京都では私一人のみであることを改めて認識しました。

 

令和2年度は、これまで実績を積み重ねてきた診療守備範囲の中でも、痛風・高尿酸血症を重要な柱の一つとして明確に位置付けて、新たな体制を汲んでいくことを計画しております。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)肝癌リスク評価

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)において、脂肪肝の診断は超音波画像によって行われてきましたが、軽度の脂肪肝を見逃してしまうという問題点が指摘されています。

 

NAFLDでは、肝線維化が生じやすく、これが発癌や予後と相関するため、とくに高度線維化症例の拾い上げが最も重要な課題です。

 

 

肝障害を指摘された症例、肥満、糖尿病ならびに脂質異常症などの代謝性危険因子を有する症例は、腹部超音波検査(Bモード)を行ないます。

 

そこで脂肪肝の所見が確認された場合には、肝線維化マーカーを評価する必要があります。

 

またBMI高値や糖尿病の合併を契機として超音波検査を用いて肝硬変合併例を発見し、肝癌サーベイランスを行なうことが現時点での肝癌早期診断への方策になります。

 

 

肝臓の線維化マーカーを評価するための基礎データを得るためには、まず血液検査によるスクリーニング(ウイルス性肝疾患、アルコール性肝疾患当を除外)をすると同時に(FIB-4,NFSなど)の評価のための基礎データを確保します。

 

FIB-4<1.3、NFS<-1.45は低リスクと考えられるため、採血や画像検査のフォローアップで問題はありません。その他の症例は中・高リスクの可能性があるため、さらなる精密検査を行います。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診の意義

 

NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度です。

そして、これにより生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることが考えられます。

 

そこで、日常診療に際しては、これまで通り、性・年齢等を考慮し、生活習慣病の範疇にある種々の病変にも十分な注意を払うなかで、肝病変への対応を強化していくことを含めて長期にわたる経過観察をしていくことが大切だと考えます。

 

 

健診受診成人において肝障害を呈していた頻度は約30%、性別としては男性40%(30歳代から70歳代まで)、女性では15%(若年層)から約30%(閉経後に急増)とされ、かなりの頻度に登ります。

 

ですから、日頃通院していない方のためには、たとえば区の健診や人間ドックの機会を有効に活用していただくことが大切だと思います。

 

ただし、最近懸念されることは、健診や人間ドックを収益を上げるための効率的ビジネスとする一方で、最も重要で専門性と手間暇のかかる結果の説明やフォローアップの部分を臨床現場の担当医に無報酬で丸投げして事足れり、としている実施機関が少なくないことです。

 

私は現在の自動化健診は医師不在の無責任システムと化しているのではないかと残念に思っております。

 

 

さて、区の健診には超音波検査までは含まれていませんが、肝臓のためには不可欠です。

 

超音波検査による健診では、NAFLDの診断がついた頻度は、男性で20.8%、女性で12.8%であったという信頼性の高い報告があります。

 

 

それでは、どのようにして非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)を拾い上げていけばよいかということになります。

 

NAFLD/NASHは、肥満との関係が極めて強いことが報告されているので、最も初歩的で簡便な方法は、身体計測です。腹囲の計測からはじめて、体重と身長をもとにBMIを算出してみることです。

 

そして肥満はメタボリックシンドロームの最も重要な危険因子とされます。腹囲は内臓脂肪蓄積を反映し、内臓肥満とNAFLD/NASHの頻度は強い相関がみられます。

 

また、BMI30㎏/m²以上の高度肥満者(肥満度Ⅱ以上)では約80%がNAFLD/NASHを合併しているとの報告があります。

 

 

杉並国際クリニックでは、概ね3カ月に1回程度のフィットネスチェック(体組成・体力測定票)を行っています。

 

これは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の早期発見のためにも有用性が極めて高いことを自負しています。

 

本日の冒頭で、NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度であって、生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることを紹介しましたが、これらの基本的なリスク因子の評価を統合的にスクリーニングできるからです。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診結果をより有効に評価するためにも、こうしたフィットネスチェックをスポーツジム等に任せずに、医療機関が医学的な側面からきちんと捉えなおして他の医学データと総合的に組み合わせて評価・診断することが望ましいという信念から、今後も積極的に推進していきたいと考えております。

 

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染患者の臨床症状について、健康人集団や武漢以外の患者について、はじめて、まとまった報告が北京からなされました。

 

中国・北京の中国人民解放軍総医院のDe Chang氏らは、北京市内の病院に入院し2019-nCoV感染が確認された13例の初期の臨床的特徴を、JAMA誌オンライン版2020年2月7日号のリサーチレターに報告しました。
 

 

対象:

著者らは、中国の首都北京にある3つの病院に2020年1月16~29日に入院した患者(北京清華長庚医院8例、首都医科大学附属北京安貞医院4例、中国人民解放軍総医院1例)を、2月4日まで調査しました。

 

調査方法:

2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離し、咽頭スワブのサンプルを収集して中国疾病管理予防センターで2019-nCoVについて定量的PCRアッセイを用いて調べました。また、胸部レントゲンもしくは胸部CT検査を実施しました。

 

調査結果:
診断された患者は専門病院に移送されました。
 

主な疫学的・臨床的特徴は以下のとおりです。

 

・患者の年齢中央値は34歳(25〜75パーセンタイル:34〜48歳)

 

1)2例が小児(2歳および15歳)で、10例(77%)が男性

 

2)12例は武漢を訪れた家族(両親と息子)や、2019-nCoVの流行発生後に武漢を訪問3)小児(2歳)の祖父母などで、1例は武漢との関連が不明であった。

最年少患者(2歳)は発熱が1週間断続的に続き、2019-nCoV診断前の13日間、咳が持続していた。

C反応性タンパク質などの炎症マーカーが上昇し、リンパ球数がわずかに上昇した。

 

4)12例は入院前から発熱(平均1.6日)がみられた。

・症状は、咳嗽(46.2%)、上気道うっ血(61.5%)、筋肉痛(23.1%)、頭痛(23.1%)などがみられた。

 

・専門病院に移送されるまで(平均2日)に呼吸補助を必要とする患者はいなかった。

 

・4例が胸部レントゲン、9例が胸部CT検査を実施した。5枚の画像で浸潤影も瘢痕像も認められなかった。胸部レントゲン写真の1枚で、左下肺に陰影が散在していた。6例で、右肺または両肺にスリガラス状陰影がみられた。

 

・2月4日時点ですべての患者が回復したが、12例はまだ病院で隔離されていた。

 

 

考察:
今回調査した患者のほとんどは、武漢を訪問もしくは武漢から来た人と濃厚接触していたが、1例は当てはまらないことから、著者らは「北京でのウイルス感染が活発である可能性を示唆している」という。


また、患者のほとんどが健康成人で、50歳以上と5歳未満の患者は1例ずつのみであったが、著者らは「小児や高齢者のウイルス感受性が低いからではなく、これらの人々は旅行することが限られているためではないか」と推測している。

 

 

杉並国際クリニックの見解

北京からのリポートは、北京市内の複数の国際水準の医療機関からの具体的報告であり信頼性があるものと思われました。

北京での新型コロナウイルス感染は、すでに活発であり、今後も当面の間は、感染者が増え続けるであろうと推定されます。

 

感染者の症状は、インフルエンザ様であるが、通常のインフルエンザより症状が重く、しかも発熱や咳などの症状が長引き回復までの日数が長い傾向にあることがうかがわれます。
 

日本の一般の医療機関では2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離せず、咽頭スワブのサンプルを収集するところまでは可能です。

しかし、これは感染のリスクを増やすだけであり、しかも、そのリスクを冒して得た検体を直ちに受け取って2019-nCoVについて定量的PCRアッセイを用いて調べてくれる専門の検査センターがありません。

また、日本では保険医療制度が完備していますが、この検査は、保険収載されていないため、患者さんから実費を徴収せざるを得ませんが、どのくらいの検査コストがかかるかも明らかにされていない状況です。

 

つまり、外来診療での検査実施は事実上困難であるということを承知しておくべきでしょう。

もはや「保険証一枚で、いつでも、どこでも、国内での必要な医療が受けられる」というのは、もはや国民の勝手な幻想に過ぎないということになります。

 

画像検査としては、まずは胸部レントゲンでしょう。報告された所見から想定されるのは、急性間質性肺炎類似の所見のようです。

 

北京で2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離していることは、とても重要なことです。

これに対して「軽症の場合は、すべての医療機関で対応」という日本での国策に基づく指針は無責任極まりない勧告である、ということは、この報告から考えても明らかではないでしょうか。

私たちは、独自の対策を講じていかなければならないと考えます。

 

 

原著論文: Chang, et al. JAMA. 2020 Feb 7.[Epub ahead of print]

【日本感染症学会・日本環境感染学会から】

 

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症は、現時点ではまだパンデミックではなくエピデミックとされています。

 

現在は湖北省からの渡航者の入国を拒否しています。しかし、それ以前に多数の入国者がいたことから、既に日本国内に2019-nCoVが入り込み、市中において散発的な流行が発生し、また感染者の症例数の増加に伴い重症例が増えるであろうことをあらかじめ想定して備えておく必要があります。

 

しかし、世界保健機関(WHO)のSylvie Briand氏は「根拠のない情報が大量に拡散するインフォデミックが起きている」と指摘しています。また、国の機関である国立国際医療研究センターも政策的な配慮を加えた見通しを立てている可能性が否定できません。

 

こうした状況では2019-nCovというウイルス感染症をより冷静に客観的に捉えられるはずの専門家の提言が重要になります。そこで、日本感染症学会と日本環境感染学会が2月3日に公表した「一般診療として患者を診られる方々へ」を紹介します。

 

日本感染症学会と日本環境感染学会は、一般診療として診察に当たる医療従事者における対策の在り方について提言していますので、その概要を列記します。

  • 2019-nCoVの感染性は、基本再生産数推定1.5〜2.5
  • 感染性・病原性はインフルエンザ相当か、やや強い程度と推察
  • 患者家族、担当する看護師/医師における感染例の報告は今のところない
  • 基礎疾患のある人や高齢者における肺炎合併、重症化に要注意
  • 他の入院患者などへの伝播の可能性を可能な限り低減させる。

 

医療従事者の安全を守るなどの観点から、飛沫などの発生が予想される診察時に

 

N95マスクの使用を考慮するなどの方策は否定しない

  • 日本国内で分離された2019-nCovは、中国での初期ウイルスと99.9%の相同性が保持されており、遺伝子変異は起きていない。

現時点では過度に心配する必要はない

  • 中国以外での感染報告例のほとんどは、中国(多くが武漢市)からの旅行者
  • 輸入国における二次感染例/重症例の報告はほとんどない.
  • 武漢市に死亡者が集中している理由は明らかではない.

しかし、医療機関への受診の遅れ高齢者や免疫不全者における感染例の増加二次性の細菌性肺炎の合併などが考えられる

 

  •  現時点での死亡率は約2%とされている。

しかし、多数の検査未実施患者の存在を考えると、今後さらに低下する可能性がある

  • 高齢者における感染例の集積があり、小児における重症例が少ない
  • 日本の長期療養型施設における高齢者はさまざまな基礎疾患を有し、

インフルエンザやノロウイルス、メタニューモウイルスに対する感受性が高い

  • 高齢者施設で流行しないよう、細心の注意を払って対応する必要がある
  • 発熱に加えて呼吸器症状が見られた患者は、

速やかに隔離対応を行う必要がある

  • コロナウイルスは、2019-nCoVを含めて主に飛沫感染により伝播する
  • 外来での対応は通常のインフルエンザ疑い患者への対応に準じて、

感染対策の基本は標準予防策飛沫予防策・接触予防策の徹底

特別な治療法はない

  • 治療は脱水に対する補液、解熱剤の使用などの対症療法が中心
  • 抗HIV薬(ロピナビル・リトナビル配合剤)や抗インフルエンザ薬

(ファビピラビル)が有効との意見もあるが、まだ医学的には証明されていない

  • ステロイドなどの使用に関する知見も不十分
  • 国内での2019-nCoVの分離、培養が成功

このことから、将来的なイムノクロマト法による迅速診断法の確立、SARSやMARSを含めたnCoV感染症に対する特異的な治療法の開発が期待される

 

 

杉並国際クリニックの見解:安心できる情報は少なく、不安な情報がほとんどです。

新型コロナウイルスに感染した可能性のある初診患者の受付を制限すること以上に、現在当クリニックに通院中の皆様の安全と健康を確保するための確かな方法は見出せない、ということが判明しました。

 

当クリニックでは、当面の間、国等の機関の勧告より一層慎重な対応を検討することになりそうです。

NASHについて

 

非アルコール性脂肪性肝疾患のうちNAFLDについては、昨日紹介ましたが、NASHは、単に肝細胞に脂肪が蓄積するだけでなく、肝臓に炎症や線維化が惹起され、最終的に肝硬変や肝癌に進行します。

 

組織学的には、肝細胞の脂肪変性を主体とNASH非アルコール性脂肪肝と、脂肪変性に加えて、炎症、肝細胞の風船様変性、線維化を呈します。

 

ですから、診断のためには肝生検によって、肝臓の組織を取り出して調べなくてはなりません。

 

これは侵襲的な検査であることに加えて、取り出したサンプルが必ずしも肝臓全体の状態を反映するとは限らないため、別の非侵襲的な方法が開発されています。超音波検査、MRI検査での肝弾性度測定や、簡易スコア(FIB-4index、NAFLD fibrosis scoreなどの非侵襲的肝線維化予測式)が報告されています。

 

 

肝臓の線維化は肝硬変や肝癌に繋がる病態として注目されています。

 

これまでは肝弾性度測定とともに日常の診療で評価することは容易ではありませんでしたか、On lineで自動計算できる簡易スコアを用いることが可能となったので、杉並国際クリニックは、直ちにこれを導入する準備に入りました。

 

 

FIB-4indexの計算について、これは、予め年齢、血小板数(10⁹/l)、AST(IU/l)およびALT(IU/l)のデータがあれば算出できます。

 

NFS(NAFLD fibrosis score)について、これは上記データの他にBMI値、血清アルブミン(g/dl)および空腹時血糖障害もしくは糖尿病の有無の情報が必要になります。

https://nafldscore.com/

 

血清以上をまとめると、非アルコール性脂肪性肝疾患の管理のためには、性別、体重・身長によるBMI値、血液検査項目としては、血小板数、AST、ALT、血清アルブミン、空腹時血糖、糖尿病の診断が必要であること、腹部超音波検査で脂肪肝等の診断を行うことが必須となるでしょう。

 

そこで杉並国際クリニックは、上記を踏まえた非アルコール性脂肪性肝疾患の統合的なアプローチのための診療シート(杉並国際クリニック版)の作成に取り掛かることにしました。

 

2月中には完成の予定です。完成した暁には、このHPの新着情報で公開する予定です。

 

<明日に続く>

感染症の流行は、その規模に応じて

(1)エンデミック、

(2)エピデミック、

(3)パンデミック

に分類されます。

 

このうち最も規模が大きいものがパンデミックです。

 

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症は、現時点ではまだパンデミックではなくエピデミックとされています。

 

しかし、パンデミックとは何らかの病気、特に感染症が、ある国の中のそこかしこや、国境を越えて世界中で流行することですから、すでにパンデミックであるとみるべきでしょう。

 

 

endemic エンデミック(地域流行)

特定の人々や特定の地域において、「regularly (ある程度の割合、ポツポツと)」見られる状態。地域的に狭い範囲に限定され、患者数も比較的少なく、拡大のスピードも比較的遅い状態。

「流行」以前の段階。風土病もエンデミックの一種に当たります。中国の武漢市の初期対応は、エンデミック・レベルだったのではないかと考えます。

 

epidemic エピデミック(流行)
特定のコミュニティ内で、特定の一時期、感染症が広がること。特に突発的に規模が拡大し集団で発生することをアウトブレイクと呼びますが、武漢市ではすでにアウトブレイクとなり1カ月以上を経過しています。

 

pandemic パンデミック(汎発流行)
(さらに流行の規模が大きくなり)国中や世界中で、感染症が流行すること。広大な国土をもつ中国の国境を越えて、世界中に感染症が流行しています。日本においても、すでに多数者が感染しています。

しかし、世界保健機関(WHO)のSylvie Briand氏は「根拠のない情報が大量に拡散するインフォデミックが起きている」と指摘しています。如何でしょうか?

私は、国際オリンピック委員会(IOC)のような組織に対するネガティブな評価程ではないにせよ、以前ほど世界保健機関(WHO)の見解を無条件に信じてはいません。

こうした状況では2019-nCovというウイルス感染症を冷静に客観的に捉えられる専門家の提言が重要になります。しかし、日本の感染症専門家も新型ウイルスに対しては控えめに過ぎる見解を発表していました。

日本はWHOの見解を鵜呑みにして、対策が遅れたことを教訓にすべきです。オリンピック開催国として、国際的に責任がある立場であることを十分に認識して、慎重を期して諸外国より厳格で早期の対応があってしかるべきであったし、それは必ずしも不可能ではなかったと考えます。

 

 

以下は、国立国際医療研究センターが2月5日に公表した症例報告です。

 

【国立国際医療研究センター症例報告から】

中国湖北省武漢市からの中国人旅行者とチャーター便帰国者における2019-nCoV感染症患者の治療に当たった症例報告から、日本国内では軽症の感染者が増加すると考えられます。

同センターは、今後について「封じ込めよりも致命率の低下と医療体制の維持を目指し、軽症例は全ての医療機関で対応し、指定病院は重症例の治療に当たる体制が必要」と述べています。

 

当初はヒト-ヒト感染が否定され、無症候性発症者からの感染防御や診断基準が確定していない段階で、どのように軽症例と診断すべきなのか、すこぶるあいまいであり、国立医療研究センターの見解も甚だ無責任だと思います。 

 

2月5日付で、国立国際医療研究センターにおける3例の症例報告が公表されました(表1~3)。いずれも軽症で3例中1例は非肺炎例、肺炎2例についても1例は抗HIV薬ロピナビル・リトナビル配合剤を投与、酸素吸入を要したが最大2L/分と少なく、現在は改善しているとの報告です。

 

表1. 2019-nCoV感染症の症例(湖南省在住の中国人)

 

202002表1

 

 

 

表2. 2019-nCoV感染症の症例〔2018年5月から仕事で武漢滞在中の日本人(54歳男性)〕

 

202002表2

 

 

表3. 2019-nCoV感染症の症例〔2019年12月20日から仕事で武漢滞在中の日本人(41歳男性)〕

 

202002表3

 

(表1~3とも国立感染症研究所が公表した症例報告を基に編集部作成)
 

 

死亡例が中国(主に武漢市)に多く、現地では重症例を中心に診断されているために見かけ上の死亡率が高くなる、と分析しています。

 

これに対し、中国国外では無症状者も含め軽症例が検知されているため、中国での症例との間に重症度の乖離が生じている、と分析しています。

 

また、基本再生産数はWHOでは1.4〜2.5、中国からの報告では4.0と推定されており、中国国内での発生に歯止めがかからないことから、同センターでは、日本国内で流行が広がる可能性は十分にあると考察しています。
 

 

こうした現状に鑑み、日本における2019-nCoV感染症への対策としては「感染そのものを封じ込めることを目的とするより、致命率の低下と医療体制の維持を目指すことがよいと考えられるとのことです。
 

 

分析というより推測の結果に過ぎないことを前提として、具体的には、重症例は感染症指定医療機関や都道府県の指定する診療協力医療機関で治療を行い、致命率低下を目指すとのことです。

 

「軽症例は、全ての医療機関で診療を行う体制の構築が望ましい」としています。「封じ込め」よりも「致命率の低下と医療体制の維持」を目指すべき、という見解は国策ではあっても、個々の医療機関やその医療機関に通院中の患者さんに対する対策には全くなっていないというのが、杉並国際クリニックの見解です。

 

 

保険適応を認められた治療薬のない急増中の病気!

 

健康保険証があれば万能であると思い込んでいる方が、あまりにも多く心配です。保険が使えるかどうか以前に、そもそも治療薬が開発されていない大衆病が増えています。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH) が我が国で急増しています。この病気は、肥満をはじめとするメタボリックシンドロームの患者や生活習慣病人口の増加を背景にした肝臓病です。

 

最近では、成人検診者の約30%に脂肪肝がみられますが、脂肪肝はこの病気の入り口です。

 

杉並国際クリニックでは、肥満度とメタボリックシンドロームの診断および管理基準(杉並国際クリニック版)を作成し、日常診療において有効に活用しています。

 

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)で問題なのは肝癌が発生する割合が増加することです。

 

それではNAFLDとは何かということになりますが、これは画像診断あるいは肝組織診断で脂肪肝を認め、アルコール性肝障害等の他の疾患を除外した病態です。

 

日常診療で肝組織診断を行うことは実際的ではないので、その場合に役立つのが超音波検査です。超音波検査で、まず脂肪肝を診断することは難しくはありません。

 

 

非アルコール性というのは、アルコールを全く摂取しないということではなく、一定量以下の飲酒量であるということを意味します。

 

飲酒量の基準としては、アルコール性肝障害を発症しない限度のエタノール量です。

これには男女差があり、男性30g/日、女性20g/日未満です。

エタノール20gはお酒の1単位として換算されます。

この1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となります。

 

もし日本酒を2合飲んでいて、肝障害を起こしていたら、男女を問わず非アルコール性ではなく、アルコール性ということになります。

 

それならば、自分はアルコール性肝障害の方が心配だ、という方も少なくないはずです。

むしろ、自分はお酒を飲まないから肝臓は大丈夫と思い込んで油断している肥満タイプの方が問題になることがあります。

 

<明日に続く>

 

日本内科学会関東支部主催 第657回 関東地方会 報告(No1)

 

令和2年2月8日(土)午後12時から

ステーションコンファレンス東京(千代田区丸の内)にて

 

日本内科学会の関東地方会にはじめて参加しました。

 

この学会は、ほぼ毎月1回土曜日の午後に都心で開催されています。

 

開業医にとっても、優れた勉強の場であり、可能な限り、毎回出席したいと思いました。

 

会場は3つに分かれていて、私が選んだのは第1会場(消化器⇒血液⇒感染症)でした。

 

 

今回の発表内容は、広範な内科の全領域のほとんどにあたる9領域(消化器、血液、感染症、腎臓、神経、内分泌、循環器、呼吸器、膠原病)で、一例症例報告が主でした。

 

臨床医は、患者さんの一例一例から学んでいくことを大切にしています。

発表者は概ね研修医が中心でしたが、斬新でかつ十分練られていました。ベテランの先輩専門医や教授格の指導医のサポートを受けて入念に準備されたものであったと思われます。

 

私は、資格のある内科医の一人として、年1回の内科学会総会(全国大会)に出席することは、当然の義務であると考えてきましたが、関東地方会の内容は、より現場の臨床医向けであることを知りました。

 

自分の患者さんを精密検査等で紹介先を検討するうえで、都内の優秀でアクティブな専門医療機関を把握しておくことは、とりわけ有益であることに、今更ながらに気づいた次第です。

 

167演題がありましたが、クリニックに所属する内科医の発表も2件ありました。

 

演題113:

テロメア長の短縮を認めた(重症OSAS合併)先端巨大症の一例
逗子金澤内科クリニック(神奈川県逗子市)

 

谷裕至先生(高知医科大学医学部 卒業)

医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本糖尿病学会専門医/日本内分泌学会専門医・指導医・評議員

 

使用した医療技術:

MRI(下垂体撮影)、ポリソムノグラフィ―(PSG)、HT Q-FISH法(DNAテロメア長測定)

 

 

演題164:

嚥下障害を契機に腹壁脂肪吸引生検で診断に至った全身性アミロイドーシスの一例

 

ホームアレークリニック(世田谷区下馬)

宇野佳孝(群馬大学医学部 卒業)

医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本神経学会専門医・指導医/難病指定医/がん診療緩和ケア研修終了/身体障害者指定医(指定不自由)

 

使用した医療技術:

腹壁脂肪生検、DFS染色・過マンガン酸カリウム処理

 

考察:

腹壁脂肪生検は外来診療ばかりでなく在宅医療の場でも簡便に行なえる有用な検査法である。

 

 

同じ立場の医師として声援を送りたいと思います。

杉並国際クリニックも毎日、貴重な症例を経験しているので、現場の医療の発展のために、今後、日本内科学会関東地方会への発表を検討していきたいと考えております。