2月12日 非アルコール性脂肪性肝疾患(その3)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診の意義

 

NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度です。

そして、これにより生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることが考えられます。

 

そこで、日常診療に際しては、これまで通り、性・年齢等を考慮し、生活習慣病の範疇にある種々の病変にも十分な注意を払うなかで、肝病変への対応を強化していくことを含めて長期にわたる経過観察をしていくことが大切だと考えます。

 

 

健診受診成人において肝障害を呈していた頻度は約30%、性別としては男性40%(30歳代から70歳代まで)、女性では15%(若年層)から約30%(閉経後に急増)とされ、かなりの頻度に登ります。

 

ですから、日頃通院していない方のためには、たとえば区の健診や人間ドックの機会を有効に活用していただくことが大切だと思います。

 

ただし、最近懸念されることは、健診や人間ドックを収益を上げるための効率的ビジネスとする一方で、最も重要で専門性と手間暇のかかる結果の説明やフォローアップの部分を臨床現場の担当医に無報酬で丸投げして事足れり、としている実施機関が少なくないことです。

 

私は現在の自動化健診は医師不在の無責任システムと化しているのではないかと残念に思っております。

 

 

さて、区の健診には超音波検査までは含まれていませんが、肝臓のためには不可欠です。

 

超音波検査による健診では、NAFLDの診断がついた頻度は、男性で20.8%、女性で12.8%であったという信頼性の高い報告があります。

 

 

それでは、どのようにして非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)を拾い上げていけばよいかということになります。

 

NAFLD/NASHは、肥満との関係が極めて強いことが報告されているので、最も初歩的で簡便な方法は、身体計測です。腹囲の計測からはじめて、体重と身長をもとにBMIを算出してみることです。

 

そして肥満はメタボリックシンドロームの最も重要な危険因子とされます。腹囲は内臓脂肪蓄積を反映し、内臓肥満とNAFLD/NASHの頻度は強い相関がみられます。

 

また、BMI30㎏/m²以上の高度肥満者(肥満度Ⅱ以上)では約80%がNAFLD/NASHを合併しているとの報告があります。

 

 

杉並国際クリニックでは、概ね3カ月に1回程度のフィットネスチェック(体組成・体力測定票)を行っています。

 

これは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の早期発見のためにも有用性が極めて高いことを自負しています。

 

本日の冒頭で、NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度であって、生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることを紹介しましたが、これらの基本的なリスク因子の評価を統合的にスクリーニングできるからです。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診結果をより有効に評価するためにも、こうしたフィットネスチェックをスポーツジム等に任せずに、医療機関が医学的な側面からきちんと捉えなおして他の医学データと総合的に組み合わせて評価・診断することが望ましいという信念から、今後も積極的に推進していきたいと考えております。