保険適応を認められた治療薬のない急増中の病気!

 

健康保険証があれば万能であると思い込んでいる方が、あまりにも多く心配です。保険が使えるかどうか以前に、そもそも治療薬が開発されていない大衆病が増えています。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH) が我が国で急増しています。この病気は、肥満をはじめとするメタボリックシンドロームの患者や生活習慣病人口の増加を背景にした肝臓病です。

 

最近では、成人検診者の約30%に脂肪肝がみられますが、脂肪肝はこの病気の入り口です。

 

杉並国際クリニックでは、肥満度とメタボリックシンドロームの診断および管理基準(杉並国際クリニック版)を作成し、日常診療において有効に活用しています。

 

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)で問題なのは肝癌が発生する割合が増加することです。

 

それではNAFLDとは何かということになりますが、これは画像診断あるいは肝組織診断で脂肪肝を認め、アルコール性肝障害等の他の疾患を除外した病態です。

 

日常診療で肝組織診断を行うことは実際的ではないので、その場合に役立つのが超音波検査です。超音波検査で、まず脂肪肝を診断することは難しくはありません。

 

 

非アルコール性というのは、アルコールを全く摂取しないということではなく、一定量以下の飲酒量であるということを意味します。

 

飲酒量の基準としては、アルコール性肝障害を発症しない限度のエタノール量です。

これには男女差があり、男性30g/日、女性20g/日未満です。

エタノール20gはお酒の1単位として換算されます。

この1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となります。

 

もし日本酒を2合飲んでいて、肝障害を起こしていたら、男女を問わず非アルコール性ではなく、アルコール性ということになります。

 

それならば、自分はアルコール性肝障害の方が心配だ、という方も少なくないはずです。

むしろ、自分はお酒を飲まないから肝臓は大丈夫と思い込んで油断している肥満タイプの方が問題になることがあります。

 

<明日に続く>

 

日本内科学会関東支部主催 第657回 関東地方会 報告(No1)

 

令和2年2月8日(土)午後12時から

ステーションコンファレンス東京(千代田区丸の内)にて

 

日本内科学会の関東地方会にはじめて参加しました。

 

この学会は、ほぼ毎月1回土曜日の午後に都心で開催されています。

 

開業医にとっても、優れた勉強の場であり、可能な限り、毎回出席したいと思いました。

 

会場は3つに分かれていて、私が選んだのは第1会場(消化器⇒血液⇒感染症)でした。

 

 

今回の発表内容は、広範な内科の全領域のほとんどにあたる9領域(消化器、血液、感染症、腎臓、神経、内分泌、循環器、呼吸器、膠原病)で、一例症例報告が主でした。

 

臨床医は、患者さんの一例一例から学んでいくことを大切にしています。

発表者は概ね研修医が中心でしたが、斬新でかつ十分練られていました。ベテランの先輩専門医や教授格の指導医のサポートを受けて入念に準備されたものであったと思われます。

 

私は、資格のある内科医の一人として、年1回の内科学会総会(全国大会)に出席することは、当然の義務であると考えてきましたが、関東地方会の内容は、より現場の臨床医向けであることを知りました。

 

自分の患者さんを精密検査等で紹介先を検討するうえで、都内の優秀でアクティブな専門医療機関を把握しておくことは、とりわけ有益であることに、今更ながらに気づいた次第です。

 

167演題がありましたが、クリニックに所属する内科医の発表も2件ありました。

 

演題113:

テロメア長の短縮を認めた(重症OSAS合併)先端巨大症の一例
逗子金澤内科クリニック(神奈川県逗子市)

 

谷裕至先生(高知医科大学医学部 卒業)

医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本糖尿病学会専門医/日本内分泌学会専門医・指導医・評議員

 

使用した医療技術:

MRI(下垂体撮影)、ポリソムノグラフィ―(PSG)、HT Q-FISH法(DNAテロメア長測定)

 

 

演題164:

嚥下障害を契機に腹壁脂肪吸引生検で診断に至った全身性アミロイドーシスの一例

 

ホームアレークリニック(世田谷区下馬)

宇野佳孝(群馬大学医学部 卒業)

医学博士/日本内科学会総合内科専門医/日本神経学会専門医・指導医/難病指定医/がん診療緩和ケア研修終了/身体障害者指定医(指定不自由)

 

使用した医療技術:

腹壁脂肪生検、DFS染色・過マンガン酸カリウム処理

 

考察:

腹壁脂肪生検は外来診療ばかりでなく在宅医療の場でも簡便に行なえる有用な検査法である。

 

 

同じ立場の医師として声援を送りたいと思います。

杉並国際クリニックも毎日、貴重な症例を経験しているので、現場の医療の発展のために、今後、日本内科学会関東地方会への発表を検討していきたいと考えております。

2月5日の日本医師会の定例会見では、厚生労働省発出の文書に基づく現時点での定義や、今後の医療機関での対応の見通しについて、釜萢 敏常任理事が説明しました。
 

釜萢氏は「WHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域」について、中国湖北省が該当と説明。

 

中国の湖北省以外の地域は該当しないのかとの問合せもあるが、検査対象となる疑い例の定義としては、現時点では原則として同地域に限定されるとしました。

 

 

 

「帰国者・接触者相談センター」で受け付けて

「帰国者・接触者外来」で受診・検査
 

ついで、厚生労働省は2月1日付の事務連絡2)で、都道府県宛に「帰国者・接触者相談センター」ならびに「帰国者・接触者外来」の設置を指示しました。

 

相談センターは当面主に保健所が担い、帰国者・接触者外来は主に感染症指定医療機関が担うことになります。ただし、今後検体が増加する可能性に備えて、標準予防策を講じられる医療機関については、感染症指定医療機関に限らず医療機関の同意のうえ指定の可能性があるとしました。


厚労省事務連絡2)

新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制について(各自治体宛て)(2020年2月3日掲載)

 


一般医療機関においては、本来帰国者・接触者外来を受診すべき疑い例であることが判明した場合は、まず相談センターへ連絡のうえ、センターで検体採取が必要と判断された場合に、帰国者・接触者外来の受診という流れとなります。

 

 

 

国内で診察した医師の印象は中国からの報告とは異なる

 

中国からの報告では、2割強が重症例で、死亡率は2%台とされています。

まず前提としてこれら中国からの報告が感染者のうちの肺炎患者に限られている点を日本医師会の釜萢 敏常任理事同は指摘しています。

一方、「まだ数例ではある」と前置きしたうえで、国内で症例を診察した医師の「印象は中国からの報告から得られる印象とは乖離しているようだ」と話しました。

 

PCR法に代わる簡易検査法や治療薬の開発等にはまだ時間を要すると考えられ、「収束の見通しについても正確な見極めはこれからの段階である」と強調しました。

 

 

杉並国際クリニックの見解と対応:
厚生労働省の指導により、感染症指定医療機関と一般医療機関との役割が明確にされました。

 

そして、一般医療機関においては、「帰国者・接触者外来」を受診すべき疑い例であることが判明した場合は、まず相談センターへ連絡することとされました。

 

これに従えば、一般医療機関である杉並国際クリニックで発見した場合は、東京都の「帰国者・接触者相談センター」へ連絡することになります。

 

しかし、都の他に23区は独自の窓口を立ち上げましたので、今後は杉並区の帰国者・接触者電話相談センターへ連絡するのが妥当でしょう。

 

なお、杉並国際クリニックは、令和元年5月より、初診(2カ月以上中断した再初診も含む)の受付の予約制を導入しておりますので、「帰国者・接触者」に相当する初診を受け付けることになる可能性は低いと考えます。

 

従来から定期通院されている皆様を、治療方法の確立していない感染症から守る最も確実なシステムです。

 

杉並国際クリニックは、感染症指定医療機関に該当しない一般医療機関としての役割分担をしっかりと果たしていきたいと考えております。

<はじめに>

 

 

前回は「歯の痛み」に効果のある「合谷(ごうこく)」ツボを紹介しました。

 

 

「合谷」は親指と人差し指の間にあります。

 

 

今回は「喉の痛み、咳、痰」に効果のあるツボを紹介します。

 

 

 

<喉の痛み、咳、痰に効果のあるツボ>

 

2020-02-04 15-40

 

 

今回は「天突(てんとつ)」「天鼎(てんてい)」「尺沢(しゃくたく)」を紹介します。

 

 

「天突」は左右の鎖骨を結んだ中央の窪みにあります

 

 

「天鼎」は下顎角の直下で胸鎖乳突筋中の1寸下方胸鎖乳突筋の後縁にあります。

 

 

「尺沢」は肘前面のしわの上にあり、肘を曲げることで出てくるの腱のすぐ外側にあ

 

ります。

 

 

特に尺沢にお灸をすると良いでしょう。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

新型コロナウイルス感染症蔓延の状況刻々と状況が変化し続けています。

医療機関としての最重要情報は、確立した診断基準です。

突発的な新規の感染症は、治療法がありません。

そのため予防対策の確定が最優先課題です。

予防法と密接に関連するのは早期発見です。

こうしたなかで、厚生労働省は「臨床的特徴」や「感染が疑われる患者の要件」について、適時アップデートしています。

 

 

“濃厚接触”とは?・・・初めての具体的定義
 

厚生労働省は、2月4日付の感染症法に基づく届出基準の一部改正について都道府県宛通知1)しました。

そこで同感染症の「臨床的特徴」および「感染が疑われる患者の要件」を下記のように定義しています。

 

通知1)感染症の予防及び感染症の患者に関する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について(一部改正)(2020年2月4日掲載)

 

 

<臨床的特徴(2020年2月2日時点)>
臨床的な特徴:潜伏期間は2~10日であり、その後、発熱、咳、全身倦怠感等の感冒様症状が出現する、としています。

一部では、主に5~14日間で呼吸困難等の症状を呈し、胸部 X 線写真、胸部 CT などで肺炎像が明らかとなります。

とくに高齢者及び基礎疾患を持つものにおいては重症化するリスクが一定程度あると考えられています。

 

<感染が疑われる患者の要件>
患者が次のア、イ、ウ又はエに該当し、かつ、他の感染症又は他の病因によることが明らかでなく、新型コロナウイルス感染症を疑う場合、これを鑑別診断に入れます。
ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではありません。

 

ア)発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって、
新型コロナウイルス感染症であることが確定したものと濃厚接触歴があるもの

 

イ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたもの

 

ウ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から
新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたものと濃厚接触歴があるもの

 

エ)発熱、呼吸器症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し
(法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当)、
新型コロナウイルス感染症の鑑別を要したもの

 

 

※濃厚接触とは、次の範囲に該当するものです。

 

・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居
あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があったもの

 

・ 適切な感染防護無しに新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を
診察、看護若しくは介護していたもの

 

・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものの
気道分泌液若しくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高いもの

 

 

 

杉並国際クリニックの見解:
新型コロナウイルス感染を疑う上で、臨床症状は参考程度にしかならないということを肝に銘じておくべきでしょう。

発熱その他の症状が現れていなくても、流行地の渡航歴や居住歴、あるいは流行地から来訪した人々との接点がある場合は、感染の可能性を完全に否定できないということになります。

杉並区公式ホームページより(2年1月21日、2月7日更新)

中華人民共和国の武漢市を含む湖北省において、元年12月以降、新型コロナウイルスによると思われる肺炎の発生が複数報告されています。

他の感染症と同様、ご家庭や学校・職場などでも対策に努めていただくようお願いいたします。
 

具体的には、流水と石鹸による手洗いを頻回に行いましょう。

特に、外出後、咳をした後、口や鼻や目を触る前には、手洗いを徹底しましょう。

また、周りの人への感染を予防するために、咳エチケット(マスクをつける、袖で口・鼻を覆う、ティッシュやハンカチで口・鼻を覆う)を守り、人が多く集まる場所は避けましょう。

栄養バランスの良い食事や規則正しい生活を心がけ体力を維持することも大切です。

 

 

杉並区の相談窓口

現在杉並区におり、次の 1・2 を満たす方は、帰国者・接触者電話相談センターにご相談ください。

 

条件を満たさない方は、「新型コロナウイルス感染症についての一般的な電話相談」にご相談ください。

 

1. 発熱(37.5度以上)かつ呼吸器症状を有している。

 

2. 発症から2週間以内に、以下の(ア)、(イ)のばく露歴のいずれかを満たす。

(ア) 武漢市を含む湖北省への渡航歴がある。

(イ)「武漢市を含む湖北省への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴がある。

 

 

杉並区帰国者・接触者電話相談センター 

電話:03-3391-1299 

受付時間:午前9時から午後5時まで(土曜日・日曜日・祝日を除く)

 

上記以外の時間は、以下に相談してください。

都・特別区・八王子市・町田市合同電話相談センター 

電話:03-5320-4592
 

受付時間

平日:午後5時から翌日午前9時まで 

土曜日・日曜日・祝日:終日(24時間)

 

 

新型コロナウイルス感染症についての一般的な電話相談 

杉並保健所保健予防課 電話:03-3391-1025

荻窪保健センター 電話:03-3391-0015

高井戸保健センター 電話:03-3334-4304

高円寺保健センター 電話:03-3311-0116

上井草保健センター 電話:03-3394-1212

和泉保健センター 電話:03-3313-9331

 

受付時間:午前8時30分から午後5時まで(土曜日・日曜日・祝日を除く)

東京都 新型肺炎感染疑い早期発見へ 相談センターを新設


2020年2月3日 20時49分新型肺炎

 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京都は感染の疑いのある人を早期に把握して医療機関の受診につなげるため、「帰国者・接触者電話相談センター」を新たに開設するなど感染拡大の防止に向けた取り組みを強化することになりました。

 

対象は、感染の疑いがある人を早期に把握して医療機関の受診につなげるため、都は37度5分以上の発熱や武漢への渡航歴がある人などです。

相談センターは都と23区のほか、八王子市と町田市の保健所に設置され、感染の可能性が高いと判断された人には「帰国者・接触者外来」を設ける都内のおよそ80の医療機関を紹介するということです。

また、3日の会議では都が国に対し、患者への濃厚接触者で症状のない人のウイルス検査に関する統一的な指針の提示や、ウイルスの有無を迅速に調べることができる診断キットやワクチンの早期開発を要請することなどを決めました。

 

このほか、小池知事はチャーター便で帰国した人でほかの人に感染させるおそれがなくなった場合、住まいが必要な人には都として住宅を用意して支援するよう職員に指示しました。

 

 

予告関連記事:

号外2月8日 

新型コロナウイルス感染症、“疑い例”の定義について/厚生労働省

 

号外2月9日 

新型コロナウイルス感染症/厚生労働省発表に対する日本医師会の見

 

Lancet誌オンライン版2020年1月30日号より。
 

2月を迎えてから、連日コロナウイルスの話題でもちきりです。

新着情報を毎日確認していないとついていけなくなってしまう程です。

 

今週は、新型コロナウイルスの話題を毎日発信していきましたが、掲載時には、すでに古い情報になっているような有様です。

そこで、追加情報のまとめとして、この号外を発信することにしました。

 

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病原体として同定された新型コロナウイルス(2019-nCoV)について、中国疾病予防管理センターのRoujian Lu氏らがゲノム配列を調べました。
 

 

著者らは、入院患者9例(うち8例は海鮮卸売市場を訪れた症例)の気管支肺胞洗浄液サンプルと培養分離株の次世代シークエンシングを行ないました。

これらの症例から全体および部分的な2019-nCoVゲノムシークエンスを取得し、2019-nCoVゲノムとほかのコロナウイルスの系統解析を用いてウイルスの進化について同定し、可能性のある起源を推定したものです。
 

 

主な解析結果:

❶ 9例から得られた新型コロナウイルス(2019-nCoV )の10のゲノム配列は非常に類似し、同一性は99.98%以上だった。

 

❷ 2018年に中国東部の舟山で収集された2匹のコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(bat-SL-CoVZC45、bat-SL-CoVZXC21)は、新型コロナウイルス(2019-nCoV) と88%の同一性であった。

 

以上の結果より、
2019-nCoVは系統解析では、コウモリがこのウイルスの最初の宿主(第1宿主)である可能性が示唆されました。

ヒトに感染する新たなβコロナウイルスと考えられ、βコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に分類されます。

 

さらに武漢市の海鮮卸売市場で販売されている生け捕りのままの動物はヒトでのウイルス出現を促進する中間宿主(第2宿主)である可能性が示されました。

 

ホモロジーモデリングから、新型コロナウイルス(2019-nCoV)は受容体結合ドメイン構造がSARS-CoVと似ていることがわかりましたが、SARS-CoVとは異なるタイプです。

最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21より比較的長い分岐長を有し、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが認められました。

 

さらに構造解析から、新型コロナウイルス(2019-nCoV)がヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体に結合できる可能性が示唆されました。

 

 

杉並国際クリニック院長からのコメント:

私は、今回の新型コロナウイルス流行については、1月5日付けの産経新聞「中国 原因不明の肺炎 武漢で44人発症 11人重症」という見出しの記事を家内から見せられた段階で、おおよその予測がついていました。

政府の対応が遅いことも家内とともに心配していましたが、ついに1月末には、日本の対応の杜撰さを抗議する英国人の友人からメールを受け取るにいたりました。

とりあえずの返信をしましたが、それ以降の反応はありません。

初動は遅かったのは否めませんが、それ以降の政府は概ね適切な対応となりつつあるように見られます。

危険なコロナウイルスがもう一つあります。それはMERS-CoV(中東呼吸器症候群)です。MERS-CoVは12年9月にサウジアラビアのジェッダで1例目が発見されました。

このコロナウイルスも最初は野生のコウモリからヒトに感染したと考えられています。

その後ヒトコブラクダに感染が広がり、今では多くの症例がラクダからヒトへの感染によるものと考えられています。
 

MERS-CoVに関しては15年の韓国での大流行が記憶に新しいところです。

韓国では中東地域から仕事で帰ってきた1人の会社員の男性からこの流行が始まり、同年5月から7月にかけて大流行となりました。

この時の流行では多くの患者さんが病院などの医療機関で感染したことが明らかになり、院内感染対策の重要性が改めて強調されました。
 

東京オリンピックの開催国である日本は、中国以上に、テロ対策ばかりでなく、このような感染症の国内発生や輸出入などに対する防衛管理が求められることになるでしょう。
 

私が最も恐れているのは、自然災害と人災の区別があいまい化し、複合的になりつつある昨今の災害状況についてです。

最悪な結果をもたらすのは、病原体がテロ兵器として用いられることです。テロ対策と感染症予防は別々に実施するのではなく、並行して対策を講じる必要があるのではないかと考えています。

 

<完>

コロナウイルスの仲間は、今回発見されたウイルスを含めて7種が同定されています。

 

そのうちの4つ、229E、OC43、NL63、HKU1は、ごく普通の風邪でみられる、いわゆる「風邪の原因ウイルス」です。

しかし、前4者とは明らかに臨床像が異なるコロナウイルスがこれまでにも知られていました。

 

2002年と12年にSARS-CoVとMERS-CoVが感染症を起こしています。

この2つは下気道感染を起こすコロナウイルスです。

ですからSARSやMERSなど重症の呼吸器疾患を起こすウイルス種まで実に広範であることを忘れてはなりません。

コロナウイルスは、さまざまな野生動物からヒトに感染するリスクがあると考えられています。

 

重症の呼吸器疾患を起こす既存のコロナウイルス感染症として注意すべきなのが、上記のSARS-コロナウイルス(SARS-CoV)とMERS(中東呼吸器症候群)-コロナウイルス(MERS-CoV)です。

そして今回の新型コロナウイルス2019-nCoVです。
 

 

SARS-CoVは02年11月に中国の広東省で1例目が発見され、03年の3月までに世界中に広がりました。

SARS-CoVは重症の肺炎を起こし、65歳以上の高齢者では死亡率が50%以上になる危険な感染症でした。

その後、患者の早期発見と厳重な隔離によって、流行は終息しました。
 

このSARS-CoVはジャコウネコやハクビシンといった野生動物からヒトに感染したものではないかと考えられています。
 

 

中国では野生動物を食べる習慣があり、そのための市場も籠に入れた動物を売買するなど非衛生的であり、『動物は病原体のパッケージである(“Each animal is a package of pathogens,”)』というメッセージ表現は意味深長というよりもショッキングですらあります。

 

<明日に続く>

今回の新型肺炎の原因と疑われるコロナウイルスはどんなウイルスでしょうか?
 

コロナウイルスにはヒトや鳥類に感染するさまざまな種類のウイルスがあり、遺伝学的には4つのグループに分かれます。

ヒトに感染するすべてのコロナウイルスは呼吸器疾患の原因となります。
 

コロナウイルスは風邪の原因としては、ありふれたウイルスです。

 

冬や春の初めに毎年流行し、熱や咳など普通の風邪を起こすウイルスで、大人の風邪の15%はコロナウイルスが原因であるという報告もあります。

 

ですから、コロナウイルスが原因であることが判明すると、単なる通常のかぜ程度の認識や先入観をもってしまう専門家がいても不思議はない、と私は考えていました。

 

新型肺炎の原因ウイルスは未知の新種ウイルスでした。
 

 

NEJM 論文:コウモリのベータコロナウイルス類縁のsarbecovirus亜属ウイルス

 

Zhu N, Zhang D, Wang W, Li X, Yang B, Song J, et al. A Novel Coronavirus from Patients with Pneumonia in China, 2019. New England Journal of Medicine [Internet]. 2020 Jan 24 [cited 2020 Jan 26]
 

これまで人間に病気を起こすコロナウイルス(RNAウイルス)は6つが知られていました。そして昨年12月下旬に、中国武漢市で7番目の人間に感染を起こすコロナウイルスが発見されました。

 

動物由来の別のコロナウイルスが人間に感染する事例は、今後も出現するであろうと予測されています。
 

このNEJMの論文では、新しいウイルスの検出、同定のプロセスが報じられています。

昨年12月21日以降に武漢の海鮮市場と関連のある肺炎患者から、4つの下気道検体が採取されました。

対照コントロールとして、北京の病院に入院中の原因不明肺炎患者の7つの検体が採取されました。

検体から遺伝子配列の同定がなされ、またウイルス同定のための細胞培養が行われました。
 

武漢の49歳女性、61歳男性(後に死亡)、32歳男性の肺炎患者から、検体が採取されました。

ここでコロナウイルス共通のRNAが検出され、新種のコロナウイルスである2019-nCoVが同定されました。

ウイルスの全ての遺伝子配列から、コウモリから検出されるベータコロナウイルス類縁のsarbecovirus亜属に属するウイルスと判明しました。

 

今回の中国での原因不明の肺炎の原因について、WHOも新型コロナウイルスであると確認しました。

 

当初は、ヒトからヒトへの感染の可能性は乏しいとされ、しかも、患者数の急激な増加も報告されていませんが、こうした甘い予想はことごとく覆されながら現在も進行中です。今後の状況を冷静に判断して対処することが大切です。

 

<明日に続く>