糖尿性腎腎臓病の分類:

糖尿病患者においては、糖尿病管理の向上と患者の高齢化とともに、以前よく見られていたネフローゼから腎機能低下に至る古典的な糖尿病腎症患者が減る一方で、蛋白尿を伴わずに腎機能低下を示す症例が増えてきました。

 

そこで、これらを総括して糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)と捉えるようになっています。

 

日本腎臓病学会と日本糖尿病学会の合同委員会で「糖尿病性腎症」の病期分類が改訂されました。

 

血清クレアチニンにより算出されるeGFR30mL//1.73m²未満であれば蛋白尿の程度に関わらず、ステージが進むことになります。

 

ただし、2期を診断するにあたり微量アルブミン尿は必須です。そして、これは実際的には「糖尿病性腎臓病」の分類になっています。

 

 

糖尿病性腎症は糖尿病に罹患後、5年以上経過してから生じます。

 

診断する上で参考になるのが、微量アルブミン尿の検出の他、網膜症や神経障害などの合併症の存在です。

 

一般に、網膜症が腎症に先行することが多いです。

 

糖尿病性腎症初期には、検尿試験紙で蛋白尿を検出できないことが多く、また腎機能が低下しても腎が委縮しないことも多いです。

 

さらに血清クレアチニンは進行期にならないと上昇しません。

 

また糸球体濾過量(GFR)は、初期には糸球体過剰濾過によって増加しますが、末期には著明に低下します。

 

 

尿中微量アルブミン量測定は、早期診断に有効であり、糖尿病性腎症第2期(早期腎症)の診断根拠となり、このステージが糖尿病性腎症のうち76%を占めます。

 

なお尿アルブミン30~299mg/gCr、eGFR30mL/分/1.73m²以上であれば微量アルブミン尿と診断します。

 

このステージの尿中微量アルブミン尿は、不可逆的ではなく、治療によって正常アルブミン尿に戻せることがあります。

 

 

糖尿病性腎症に合併するキンメルスティール-ウィルソン症候群では、光学顕微鏡でキンメルスティール-ウィルソン病変と呼ばれる糸球体結節病変が認められることがあります。

 

 

<糖尿病・耐糖能異常の治療>

糖尿病は糖尿病腎症の原因であり、他の慢性腎臓病(CKD)の悪化因子でもあります。

 

また糖尿病はそれ自体で心血管系疾患(CVD)の強力な危険因子です。

 

糖尿病腎症の管理目標はHbA1c6.9%未満です。

 

しかし、腎機能が低下すると低血糖の危険も増すことに留意します。

 

重篤な腎障害ではインスリン治療を原則とします。インスリン自己注射を行っている者の多くにインスリン抗体が検出されますが、インスリン抗体の存在自体は治療の対象にはなりません。

 

 

糖尿病性腎症の食事療法として、顕性腎症期あるいはG3以上では低蛋白食が推奨されます。

 

 

糖尿病性腎症第4期(腎不全期)は尿アルブミン300mg/gCr以上,eGFR30mL/分/1.73m²未満ですが、このステージでは多量の蛋白尿が漏出し、ネフローゼ症候群を伴うものも少なくはありません。

 

糖尿病性腎症に伴って糸球体硬化が認められる場合は、腎機能が進行性に低下し腎不全となりやすいです。

 

病期分類4期に相当する2型糖尿病患者において、体液貯留に対しては利尿薬を投与し、高カリウム血症が是正されればRA阻害薬投与を検討します。

 

しかし、ビグアナイド薬とSU薬は禁忌です。

 

 

糖尿病性腎症に合併した高血圧にはACE阻害薬、ARBが第一選択です。

 

ACE阻害薬であるイミダプリル(タナトリル®)は糸球体の輸出細動脈をアンジオテンシンⅡ生成阻害作用により拡張して糸球体内圧を低下させることで腎症の発症や進展を予防します。

 

他のACE阻害薬、ARBも同様の作用を示すと考えられます。

 

Ca拮抗薬が追加される場合もありますが、サイアザイド利尿剤は血糖値を上げることがあるため、第一選択にはなりません。

 

なお、高度腎機能低下時に使用可能な経口血糖降下薬は限られています。

 

 

糖尿病性腎症での透析導入は、慢性腎不全の透析導入基準に従って、臨床症状、腎機能、日常生活障害度から判定します。

 

しかし、高齢者や糖尿病患者では血清クレアチニン値が5~7mg/dLでも早期から導入せざるを得ない場合があります。

 

なお、糖尿性腎症で透析導入患者では心血管イベントでの死亡率の割合が増加し、5年生存率は50%程度です。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、日本透析学会のガイドライン透析によると患者の血糖コントロールの指標には、HbA1cは参考程度に用いること、管理目標をGA20.0%未満(心血管イベントの既往があり、低血糖傾向のある患者では、GA24.0%未満を暫定的目標値)とすることが提唱されています。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、赤血球寿命が短縮し、透析に伴う失血やエリスロポイエチン製剤投与による幼弱赤血球増加などの要因によりHbA1cは平均血糖値と乖離して低値となります。

 

そのため、糖尿病を合併した血液透析患者の血糖管理の指標として適切にはなりえないからです。適切な指標としてグリコアルブミン(GA)が用いられます。

 

GAはアルブミンの糖化産物であり、赤血球寿命やエリスロポイエチン製剤投与の影響を受けず、過去約2週間の平均血糖値を反映します。

 

より具体的には、なおCペプチドはプロインスリンの構成成分でありインスリンと同じモル等量が分泌されるため、インスリン分泌能評価のために測定されます。

 

しかし、腎で代謝され尿に排泄されるため腎機能低下時の評価には注意を要します。

 

透析を要する高度腎機能低下時にはインスリン分泌が枯渇しているか否かの判断のみが可能です。

 

つまり、インスリン分泌の多寡の判断に用いることはできません。

 

血小板が減少すると、皮下出血や粘膜出血を来します。

 

健常人では、止血機構が正常なので、出血傾向血栓傾向はみられません。

 

その理由は、血栓形成作用と抗血栓形成作用が均衡しているからです。

 

もし、このバランスが崩れると出血傾向や血栓傾向が生じます。

 

出血傾向は血栓形成作用より抗血栓形成作用が優勢出る場合に生じ、その原因は、血小板数の低下・機能異常、凝固因子の欠乏・機能異常、線溶系の亢進です。

 

 

さて、血小板数の減少により出血傾向を呈するものには、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)があります。

 

国際的には一次性免疫性血小板減少症(primary immune thronbocutopenia)という病名に置き換えられています。

 

重症度分類でステージⅡ以上のITPは指定難病の対象となります。

 

 

ITPでは、骨髄において自己血小板に対する抗体が産生され、抗体に感作された血小板が早期に網内系で破壊されます。

 

つまり、ITPは血小板の寿命が短縮する病気であり、正常の寿命は7~10日であるのに対して、急性期では3日以下となります。

 

また、赤血球数は通常正常範囲ですが、鉄欠乏性貧血を示すことがあります。

 

 

除外診断が主体で、自己血小板抗体の標的抗原は、GPⅡb-ⅢaおよびGPⅠb-Ⅸであることが明らかにされているので診断に有用ですが、残念ながらこの自己抗体測定検査は普及しておらず、また保険適応もないのが問題です。

 

またPAIgGは自己抗体のみならず、非特異的IgGも測定するため診断的意義は低いです。

 

 

一方ITPの原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌があります。

 

国内における高齢者のITP患者の約半数はヘリコバクターピロリ菌と関連があるため、『成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2011年版』では、診断後緊急時を除き、まずピロリ菌検査(尿素呼気試験、便中ピロリ抗原)をすることが求められています。

 

ヘリコバクターピロリ抗体陽性の場合は2010年に承認されたヘリコバクター・ピロリ除菌療法を行うと血小板増加が期待でき、奏功することがあります。

 

 

骨髄検査:

巨核球数が増加傾向となり、巨核球の大きさも増大傾向を示します。

 

ITPにおいて、個々の血小板の機能は亢進傾向にあるため、血小板数が5万/μL以下になっても、必ずしも著しい出血は生じません。

 

 

ステージⅠ:

無症状もしくは皮下出血(点状出血紫斑斑状出血、血小板数5~10万/μL

ステージⅡ:

無症状であっても、血小板数5万/μL未満

粘膜出血(歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多を含む)

 

ステージⅢ:

無症状であっても、血小板数2万/μL未満

皮下出血があれば、血小板数5万/μL未満

 

 

重症出血(生命を脅かす危険のある脳出血や重症消化管出血があればステージⅣ以上

 

さらに血小板数2万/μL未満でステージⅤ

 

 

 

治療:

ITPの治療は血小板数と出血症状によって決まります。

 

 

急性型ITP(血小板数≦2万/μL)では短期ステロイド投与(ステロイドパルス療法)の適応となります。

 

緊急時には血小板輸血が基本ですが、血小板数<1万/μLで、広範な紫斑や明らかな粘膜出血があるケースでは、大量免疫グロブリン静注療法およびステロイド療法を行います。

 

なお、免疫グロブリン製剤の投与は、

 

無症状+血小板数>3万/μL(ステージⅠおよびⅡの軽症型):無治療

 

無症状+血小板数2~3万/μL(ステージⅡの進行型):注意深い経過観察

 

血小板数<2万/μL、あるいは重篤な出血症状:少なくとも血小板数>3万/μLを保てるように治療する

 

 

1次:ステロイド(プレドニゾロン経口投与)

 

2次:脾摘(術前に血小板数を上昇させたり、著明な血小板数低下をきたしたりしたときの治療として免疫グロブリン製剤投与が行われます)

 

3次:トロンボポイエチン(TPO)受容体作動薬免疫抑制剤(アザチオプリンなど)

 

 

TPO受容体作動薬の効果は、脾摘の有無とは無関係であり、また内因性TPOとは構造が全く異なるため、抗体産生は誘導されません。

 

なお、ITPに対して血漿交換は無効です。

 

 

 

<妊娠合併ITP

妊婦の5~12%が15万/μL未満の血小板減少を来します。そのうち70~80%が妊娠性血小板減少で、妊娠2期の後半から3期に7~15万/μLの軽~中等度の血小板減少症です。

 

ただし、8万/μL未満の場合は経過観察と原因検索が必要です。

 

妊娠中のITPの治療は、血小板数を妊娠中は3万/μL以上、分娩時は5万/μL以上を維持することを目標とします。

 

 

妊娠中にITPを合併した場合には、出産に備え、血小板を増加させておくことが必要です。

 

妊娠合併ITPで安全に使用できる薬剤は副腎皮質ステロイドと免疫グロブリン製剤です。

 

ステロイドは中止せず継続します。ただし、胎児への影響や、帝王切開や会陰切開の縫合不全、感染のリスクを考え、緊急時でなければ、プレドニゾロン10~20mg/日で内服を開始し、血小板の反応をみて少量投与にとどめることが推奨されています。

 

副腎皮質ステロイドが無効または禁忌の場合や緊急時には、免疫グロブリン大量療法がおこなわれます。血小板数は投与後1週間程度で最大値となり、2~3週間で前値に戻ります。

 

 

なおTPO受容体作動薬は妊娠時に使用したデータは無く、胎児への影響も不明であるため、現時点では妊娠時に投与するのは勧められません。

 

また、ヘリコバクターピロリ抗体陽性の約60%が除菌により血小板が上昇しますが、除菌に用いるプロトンポンプ阻害薬と抗菌薬の妊婦と胎児に対する安全性と妊娠中の除菌の血小板増加効果は確立していません。

 

そのため、「妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド」では、除菌療法は分娩後に行うことが推奨されています。

 

 

参考:成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版(厚生労働科学研究班)

 

消化器症状がありながら、その症状を説明できる器質的病変を特定することができない病態を機能性消化管障害といいます。

 

つまり、内視鏡検査や造影検査、血液検査などでは原因となる異常を認めません。

 

そのうち、大腸・小腸由来の消化器症状(下痢・便秘・腹痛)を呈するものを過敏性腸症候群(IBSといいます。

 

IBSでは、機能的疾患であるため下痢、便秘、腹鳴がみられますが、発熱や粘血便、体重減少などの警告症状は伴いません。

 

 

また急性胃腸炎は感染後過敏性腸症候群ともいわれます。IBSは一般人口の約15%にみられる頻度の高い疾患です。

 

ストレスの関与が考えられていますが、その明確な原因はいまだ不明です。

 

また、便の性状により、便秘型、下痢型など4つのサブタイプに分けることができます。

 

 

受診の数か月以上前から、腹痛・腹部不快感(排便で軽快する)、下痢や便秘(排便回数や便性状の変化)が見られます。

 

患者さんの性格、労働適応、ライフスタイル(特に食習慣など)が発症に関連します。

 

 

過敏性腸症候群の重要な診断基準:排便で腹痛と腹部不快感とが軽快します。

 

 

治療は、心療内科で心身医学療法を行うなど、本人の不安を軽減したうえで、薬物治療を行います。

 

1)患者さんへの説明:癌などの重大な病気ではないので、慌てないで治療に取り組むことの大切さをお伝えします。

 

2)生活指導:生活習慣やストレスも大いに影響するので、規則正しい生活や暴飲暴食・欠食の是正を指導します。

 

3)薬物療法:一般的には高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム)ラモセナロン塩酸(男性下痢型に有効)や消化管運動調整薬(マレイン酸トリメプチン)を投与した上で、腹痛・下痢・便秘に対して対症的に薬剤を選択します。高円寺南診療所では、漢方薬による治療を主体に行っています。

 

 

なお、過敏性腸症候群にも整腸剤が有効であり、整腸剤を用いたプロバイオティクス治療は症状改善に有用です。

 

三環系抗うつ薬は、抗コリン作用をもつため下痢型では効果がありますが、便秘型では悪化する可能性があります。

 

 

2016年Rome委員会より改訂RomeⅣが発表され、IBSの診断基準が示されました。

 

2017年に新たな過敏性腸症候群治療薬リナクロチド(リンゼス®)が承認されました。

 

 

参照:過敏性腸症候群の診断基準(RomeⅣ,2016

 

機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)(日本消化器病学会、2014

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒間以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸が睡眠中に頻回に生じるものす。

 

そのいくつかはノンレム期にも出現し、昼間の過眠、集中力の減退や夜間の不眠が生じる病態を言います。

 

患者さんの受診動機としては、パートナーや同室者から指摘された睡眠中のいびきや無呼吸が最も多く、本人の自覚症状ではありません。

 

受診者本人は無呼吸に気づいておらず、自覚症状として最も多いのは日中の過剰な眠気ですが、これを感じていない受診者は不眠のみを訴えます。

 

また、逆に眠気あるいは睡眠障害を訴えても睡眠時無呼吸が見逃され、睡眠薬等を投与されることによってさらに増悪するケースもみられます。

 

 

SASの確定診断には終夜睡眠ポリグラフィ検査(ポリソムノグラフィ)が最も有用で必須です。

 

これは睡眠中の脳波、筋電図、眼電図、換気モニター(鼻・口の気流、いびき音、胸・腹部の換気運動)、パルスオキシメーター(SpO₂)、心電図などの様々な生理機能を連続してモニターし、SASの型、無呼吸/低呼吸、睡眠パターンなどを評価します。

 

一般には無呼吸や低呼吸の回数が睡眠1時間あたり5以上の場合、あるいは7時間の睡眠中に30回以上の場合に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断します。

 

また、最近では、スクリーニング検査には、在宅で簡易睡眠時呼吸モニター(携帯型)も行われます。

 

 

閉塞型と中枢型に分けられますが、そのほとんどは閉塞型です。両者の混合型もあります。

 

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSASは、睡眠時に仰臥位をとることで舌根部が沈下し、上気道が狭小化します。

 

上気道が閉塞することによる無呼吸では、その無呼吸中に呼吸努力、すなわち胸部や腹部の呼吸運動は観察されます。

 

これに対して、中枢型では呼吸努力が消失するという特徴があります。

 

 

SASの原因で一番多いのは、成人の場合は肥満です。生活歴では飲酒歴が問題となります。

 

ただし、わが国において閉塞型患者の約30%が肥満を伴わず、欧米より肥満を伴わない患者が多いです。

 

この理由として、頭蓋顔面骨の形態異常の上気道への関与が示唆されています。

 

甲状腺機能低下症(橋本病など)による粘液水腫に伴う巨舌で、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が生じるケースもあります。

 

 

軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態は悪化しないとの報告があります。

 

特にメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの安全性が優れています。

 

 

眠気を自覚症状として感じていない人はあまり苦痛を感じていないため、治療としての鼻マスク式持続陽圧呼吸<nCPAP>の導入および継続が進まないことが多いようです。

 

これに対して、重症例では睡眠薬の影響を否定できないため、低流量の酸素投与持続陽圧呼吸療法(CPAPなどで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬等与が望ましいです。

 

SAS患者においてCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。

 

通常この場合は、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸療法、アセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排泄を促進し、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。

 

 

本症候群の閉塞型に対しては持続陽圧呼吸療法(CPAP)の導入が優先されます。

 

呼吸刺激薬は呼吸中枢を直接(中枢性呼吸刺激薬)あるいは間接的に末梢化学受容体を介して(末梢性呼吸刺激薬)を刺激することにより、換気量を増加させることを目的に用いられます。

 

また閉塞型の場合は口蓋垂軟口蓋形成術(UPPP口腔装置(ORAPなども用いられます。

 

 

睡眠時無呼吸症候群に適応がある炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミド(ダイアモックス®)は腎尿細管でのHCO₃⁻の再吸収を抑制して代謝性アシドーシスをもたらし、pHを低下させることによって化学受容体を介して換気を刺激し呼吸を促進します。ただしその効果は限定的です。

多系統萎縮症(MSA)は、孤発性(非遺伝性)の神経変性疾患です。

 

病理学的な特徴としては、オリーブ-橋-小脳系、線条体-黒質系、および自律神経系に神経細胞脱落を認めることです。

 

 

比較的急速に進行する錐体外路症状(パーキンソニズム:パーキンソン病様症状)と自律神経障害が主要所見であるため、パーキンソン病との鑑別が難しいことがあります。

 

 

小脳失調錐体路症状を伴っていれば、多系統萎縮症を疑います。

 

 

具体的には、3疾患があります。

 

画像所見としては、橋・小脳、中小脳脚、被殻の萎縮とMRIでのT2高信号、T2強調像で橋底部に十字サインを認めます。

 

病理組織学的に共通する特徴的なマーカーはグリア細胞内に封入体を認めることです。

 

MSA-C(オリーブ橋小脳萎縮症OPCA)

小脳失調(四肢協調運動障害、ふらつき、構音障害、眼振など)優位:経過が進むにつれて筋強剛(固縮)に置き換っていきます。

 

CT・MRIで小脳・橋下部の萎縮、MRIにて第四脳室拡大、MRI(T2強調像)で橋底部の十字サインを認めます。

 

 

MSA-P(線条体黒質変性症SND)

錐体外路症状優位:MRI(T2強調像)で被殻外側にスリット上の高信号域を認めることもあります。

 

 

シャイ-ドレイガ-症候群(SDS)

自律神経症状(起立性低血圧、膀胱直腸障害、発汗障害など)優位

 

ただし、病状が進行するにつれて、いずれの疾患も、パーキンソニズム(錐体外路症状)、錐体路徴候および自律神経症状が出現します。

 

わが国に多いのは、MSA-Cです。

 

 

 

根治療法はなく、対症療法が中心です。

 

たとえば、自律神経症状である起立性低血圧に対しては、血圧上昇効果を期待して、アドレナリン前駆物質であるドロキシドパ(ドプス®)を投与しますが、この薬剤は、パーキンソン病(ヤール重症度Ⅲ)におけるすくみ足、立ちくらみ;シャイ・ドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチーにおける起立性低血圧、失神、立ちくらみなども適応になっています。

 

リハビリテーションは、感覚や動きのトレーニングによる日常生活の活動度(ADL)や生活の質(QOL)の維持と向上を目的としています。

 

MSAの根本的な治療法ではありませんが、適切に行うことで症状を和らげ、身体の機能の低下を防ぎ、普通の社会生活を支障なく長く続けていくことが十分に可能となります。

 

 

また、なかには身体を動かさないため、廃用症候群と呼ばれるさまざまな障害を起こすケースがありますが、こうした症状も継続的なリハビリテーションにより改善できます。

 

MSAは原因が不明で進行性のため、途中でリハビリテーションをあきらめる方もおられます。

 

しかし、「難病だからこそ」「進行性だからこそ」、それを少しでも遅らせるために水氣道®によるリハビリテーションが必要です。

一般に、狭心症の心臓発作発現のメカニズムは、心筋が必要とする酸素量と供給のバランスの破綻が原因になります。

 

冠攣縮性狭心症は安静時狭心症と呼ばれることもあります。

 

このタイプの狭心症は、冠動脈スパズム(攣縮)による血流量の低下が主たる要因です。

 

つまり、冠動脈が攣縮により閉塞するとその灌流領域に虚血を生じ、これによって狭心症をきたすということです。

 

異形狭心症とも呼ばれますが、我が国にはこのタイプの狭心症が多いです。

 

 

日本循環器学会からの冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインによれば、参考項目として、自然発作の特徴は、硝酸薬により速やかに消失する狭心症様発作であるとされます。

 

そして、以下の4項目が記載されています。

 

1)特に夜間から早朝にかけて、安静時に出現する

 

2)運動耐容能に著明な日内変動が認められる(特に早朝の運動能低下)

 

3)過換気(呼吸)により誘発される

 

4)カルシウム拮抗薬により発作が抑制されるが、β遮断薬では抑制されない

 

 

さらに、冠攣縮性狭心症確定診断の基準としては、

 

1)発作時の心電図で明らかな虚血性変化が認められた場合

 

2)その心電図変化が境界域の場合は、病歴、発作時の症状に加え、明らかな心筋虚血所見もしくはアセチルコリンあるいはエルゴノビンを用いた冠攣縮薬物誘発試験で、狭心痛および虚血性心電図変化を伴う冠動脈の一過性の完全または不完全閉塞(>90%狭窄)が誘発される場合

 

3)発作時の心電図変化が陰性もしくは心電図検査非施行の場合でも参考項目を1つ以上満たし、明らかな心筋虚血所見もすくは冠攣縮所見が諸検査により認められる場合であると明記されています。

 

 

冠攣縮性狭心症の治療の目的は、胸痛発作の抑制だけでは不十分であり、急性心筋梗塞の発症を阻止し、また治療に対する患者のアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を長期間に保てるものでなくてはなりません。

 

 

発作時は労作性狭心症と同様に対処します。

 

危険因子の治療も大切であり、禁煙、脂質異常症、糖尿、肥満、高血圧のコントロールは不可欠です。

 

また攣縮性狭心症に対する薬物治療として最も重要な第一選択薬はカルシウム拮抗薬です。

 

ただし、複数のカルシウム拮抗薬のなかで、どのような種類のカルシウム拮抗薬が最も有効であるのか、いつまで内服を続行するかについては、客観的なエビデンスもなく、そのためガイドラインにも述べられていないので、患者さんに説明して担当医の臨床経験に基づいて選択することになります。

 

なお非発作時はカルシウム拮抗薬硝酸薬と硝酸イソソルビド(ISDN)とが中心となります。

 

 

カルシウム拮抗薬は、強い血管拡張作用をもっています。

 

冠攣縮性狭心症では、狭心発作時間に注意し、その発作時間帯に有効な血中濃度が得られるように投与時間に注意します。

 

もし症状が消失しなければ、やはり冠血管拡張作用のあるニコランジルを併用することが有用であることはガイドラインで述べられています。

 

ニコランジルは硝酸薬とアデノシン三リン酸(ATP)感受性Kチャンネル開口薬の性質を持ちます。

 

また冠動脈拡張作用と虚血心筋保護作用が示されています。

 

さらに再灌流障害防止薬として推奨されています。

 

 

その際、硝酸薬〔ニトログリセリン〕との併用は注意します。

 

冠攣縮性狭心症リスクスコアの高値例は、特に厳重な薬剤の服薬管理が必要です。

リスクスコア

 

 

なお、冠攣縮性狭心症(異形狭心症、安静時狭心症)は、安定狭心症の一つです。

 

安定狭心症というのは、経過が安定し、発作はあまり出現しないか、または出現しても一定の条件で出現し、予測がある程度可能です。

 

このような場合は、予後が比較的良好で、発作のコントロールのための薬剤も1~2製剤で可能な例が多いです。

 

 

以下に、慢性化した安定狭心症の治療の要点を示しますが、冠攣縮性狭心症には重要な例外があるので、指摘しておきます。

 

 

慢性安定狭心症治療の要点(ABCDE

 

A:アスピリンと抗狭心症療法(Aspirin and Antianginal therapy)

 

B:β遮断薬と血圧(β-blocker and Blood pressure)

 

C:喫煙とコレステロール(Cigarette smoking and Cholesterol)

 

D:食事と糖尿病(Diet and Diabetes)

 

E:教育と運動(Education and Exercise)

 

ただし、冠攣縮性狭心症に関しては、アスピリン投与の有用性についてのエビデンスはなく、またβ遮断薬は、冠攣縮が誘発されることがあるため原則として用いません。

 

 

 

冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)

(日本循環器病学会ほか)

慢性腎不全患者は、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症および貧血を合併し、心血管疾患の発生頻度や死亡率が高いほか、認知症の原因になることがあります。

 

そのため慢性腎不全患者では腎障害の進展を抑制する治療とともに、高血圧、脂質異常症の管理が重要です。

 

降圧剤の選択は、保存生慢性腎不全例ではレニン-アンギオテンシン系を抑制する薬剤(ACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬)が有用です。

 

糖尿病、非糖尿病いずれにおいても腎障害進行阻止に有効で、降圧効果と尿蛋白減少効果とが認められるからです。

 

ただし、これらの薬剤を使用する場合には血清カリウム値や血清クレアチニンの上昇に注意する必要があります。

 

血清カリウムが5.5mEq/L以上の場合は中止することが望ましいです。

 

 

脂質異常症の治療に用いるフィブラート系誘導体は、肝臓での超低密度リポ蛋白質<VLDL>の合成を抑制し、血中中性脂肪の低下やHDL<高密度リポ蛋白>コレステロール増加作用を有するが、腎不全患者では使用禁忌です。

 

また、クレアチニン2.0mg/dl以上では横紋筋融解症の危険性が高いです。

 

 

高尿酸血症には尿酸生成抑制剤(アロプリノールなど)を投与します。

 

ただし、活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄型で、腎機能低下時には血中濃度が上昇し、骨髄抑制やスチーヴンス・ジョンソン症候群などの副作用発現に繋がるので、投与量を適宜減量する必要があります。

 

また、腎不全には代謝性アシドーシスが伴い、蛋白異化亢進、骨塩減少および線維性骨塩をきたします。

 

高ガストリン血症(高カルシウム血症⇒胃・十二指腸のG細胞刺激⇒副甲状腺機能亢進症)の原因)となることがあります。ガストリンは腎で代謝されるためです。

 

ALPの小腸性分画ALP₅が上昇することがあります。

 

 

2017年にCa受容体作動薬エテルアルセチド塩酸塩(パーサビル®)が承認されました。

 

腎不全の原因を鑑別する上で、日常診療に有用な検査として尿中ナトリウム排泄率と腹部超音波検査があります。

 

尿中ナトリウム排泄率は腎前性腎不全である場合には尿細管機能は正常です。

 

腹部超音波検査では、腎臓の大きさを測定するだけでも臨床的な意義があります。

 

急性腎不全では腎臓のサイズが正常範囲を超えて大きくなり、また慢性腎不全では萎縮して小さくなります。

 

 

また慢性腎不全になると骨髄を刺激して造血作用をもたらすエリスロポイエチンを賛成できなくなるために貧血を引き起こします。それを腎性貧血といいます。

 

その場合はエリスロポイエチン製剤による治療が必要になってきます。

 

それによって、腎機能低下の進行抑制、心不全の悪化の抑制などが期待されています。

 

 

長期に透析を受けている人が手のしびれを訴えて受診してこられた場合には、手根管症候群を疑わなければなりません。

 

その原因は正中神経の障害によるものです。

 

 

血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症に対して、Ca受容体に作用してPTHの分泌を抑制するものです。

 

透析患者の透析ルートからの投与が可能です。

 

血液透析を受けている人の多くは糖尿病が原因となっています。

 

糖尿性腎障害といって適切な管理をしないと腎不全になります。

 

一般的に糖尿病患者の血糖管理の指標は空腹時血糖とHbA1cですが、糖尿病を合併した血液透析患者の血糖管理の指標にはなりません。

 

その場合に適切なのはグリコアルブミンです。

 

 

糖尿病の管理が不十分であると腎機能は徐々に低下していくのですが、糖尿病の治療に用いる血糖降下剤の中には腎機能低下につれて作用が減弱するものがあります。

 

それは比較的新しい薬でSGLT2阻害薬という治療薬です。

 

貧血と腰痛などの骨痛を訴える高齢者が増えてきました。

 

そうした方の血清にM蛋白を求める場合は多発性骨髄腫(MM)を強く疑います。

 

 

多発性骨髄腫(MM)は形質細胞の腫瘍性増殖と、その産物であるM蛋白および間質細胞との相互作用によって生産される各種サイトカインによって多彩な臓器障害を来す疾患です。

 

このように症状を伴う多発性骨髄腫(症候性多発性骨髄腫)では、貧血、腎不全を含む腎障害、病的骨折などの骨病変、高カルシウム血症などを来します。

 

IgG型骨髄腫が最も多いです。

 

M蛋白以外の正常な免疫グロブリンの産生が抑制されることも特徴の一つです。

 

 参考)くすぶり型多発性骨髄腫(SMM : Smoldring multiple myeloma, 無症候性骨髄腫)

 

 

骨髄腫に関連した臓器障害(CRAB)を伴わない骨髄腫です。

 

血清M蛋白量≧3g/ⅾLもしくは尿中M蛋白量≧500mg/24時間

 

または骨髄のクローナルな形質細胞の比率が10~60%で骨髄腫診断事象およびアミロイドーシスの合併がないことが特徴です。

 

また無症候性であり腫瘍性格が不明確なM蛋白血症であるMGUSとの鑑別は、骨髄中の形質細胞、M蛋白量が多いことなどが挙げられます。

 

たとえばDurie & Salmon(DS)分類で病期ⅠではM蛋白量は少ない、とされます。

 

 

多発性骨髄腫の治療

〇若年例では初回治療としてボルテゾミブ+デキサメサゾンを含む寛解導入療法に続いて自家移植併用大量メルファラン(L-PAM)療法を行います。さらに、レナリドミドによる維持療法を行うこともあります。

 

〇自家移植非適応例には、初回治療としてL-PAM+ボルテゾミブ+プレドニゾロンやレナリドミド+デキサメサゾンを行います。さらに、再発・再燃例や治療不耐性の場合には治療変更を行います。

 

 

殺細胞性抗悪性腫瘍薬

アルキル化薬:DNAをアルキル化してDNA複製を阻害し、細胞死をもたらすものです。

 

 

①マスタード類(シクロホスファミドなど)

シクロホスファミド(CPA)は、多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などの血液腫瘍や様々な悪性腫瘍に用いられています。

 

 

②ニトロソウレア類(ラニムスチンなど):DNAへの作用とともに蛋白に対する作用があります。ラニムスチン(MCNU)は多発性骨髄腫や悪性リンパ腫に用いられるが、遅発性骨髄抑制があります。

 

 

 

③抗体製剤(分子標的治療薬)

抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)

骨髄細胞及びNK細胞のSLAMF7に結合し、NK細胞による抗骨髄腫作用を増強します。

 

再発・難治性多発性骨髄腫の患者でレナリドミド・デキサメサゾンと併用します。

 

小分子化合物

プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ)

 

プロテアソームを阻害することによって、癌細胞の複数の細胞内シグナル伝達系に作用して抗腫瘍効果を発揮します。主にNFκB経路の抑制作用が重要と考えられています。

 

ボルテゾミブは末梢神経障害や薬剤性肺炎に注意を要します。

 

カルフィルゾミブはボルテゾミブより末梢神経障害が少ないようです。

下部消化管疾患では、炎症性腸疾患(IBDが増加し、過敏性腸症候群(IBSが注目されるようになってきました。

 

また、高齢化や抗血栓薬服用者の増加に伴い、憩室出血などの消化管出血が増加しています。

 

 

①クローン病

クローン病は、潰瘍性大腸炎とともに、近年、我が国で増加傾向の炎症性腸疾患です。

 

下痢、発熱、腹痛で発症することが多く、潰瘍性大腸炎に比べて血便の頻度は少ないです。難治性の痔瘻や裂肛を伴います。

 

また、潰瘍性大腸炎ほど特徴的ではないですが陰窩膿瘍がみられることがあります。

 

腸管壁全層の炎症により、小腸では狭窄によるイレウスを来しやすいです。

 

内視鏡では縦走潰瘍が特徴的で、アフタ潰瘍が見られます。

 

クローン病を疑った場合、食道、胃および十二指腸にも病変を起こし得るので、上部消化管内視鏡検査はまず行う前に行っておくことは重要です。

 

内視鏡で観察可能な小腸病変の大半はMRエンテログラフィでの経過観察が可能です。

 

 

クローン病は腹腔内膿瘍や瘻孔を併発することがあるため、腹部造影CTで評価しておくことは必要です。

 

また、消化管狭窄の有無もある程度判断可能であり、特に小腸カプセル内視鏡を行う前に行っておくことは重要です。

 

 

組織病理学的にはサルコイド様の非乾酪性肉芽腫性病変が見られます。

 

合併症として、強直性脊椎炎、結節性紅斑、虹彩炎などがみられます。

 

 

小腸カプセル内視鏡は、2012年より小腸疾患が疑われる場合に保険適応になりました。

 

しかし、消化管狭窄が明らかな場合は禁忌です。

 

そこで、小腸カプセル内視鏡検査を行う場合には腹部造影CTや小腸造影などを先行させる、パテンシーカプセルという模擬カプセルを先に内服して滞留の危険性があるかどうかを評価するなど、慎重な対応が必要になります。

 

 

小腸バルーン内視鏡は、オーバーチューブを用いながら軟性スコープを小腸に勧めていく検査で、経口的と経肛門的の2種類の検査法があります。

 

生検やポリペクトミーなど組織採取や治療が行えるのが利点です。本症例のように狭窄がある場合、その程度、長さによってはバルーンを用いて狭窄拡張も可能であるため、まず行うべき検査の一つと考えられます。

 

 

小腸造影は小腸カプセル内視鏡や小腸バルーン内視鏡の普及で、近年は施行される場面が減少していますが、狭窄の有無が分からないときや、瘻孔が疑われるときに、その部位や程度、多臓器との関係などを体外から確認できるため有用です。

 

経鼻的に挿入したチューブを通して造影剤を注入するため、やや苦痛を伴いますがクローン病を疑う場合には、まず行う検査の一つです。

 

吸収不良や炎症、出血により貧血を来し、また低栄養状態と蛋白漏出性胃腸症のため、低アルブミン血症を来し、そのためコリンエステラーゼ低下や低HDL-C血症を来します。

 

活動期には血小板増加などの炎症所見が見られます。

 

喫煙は発症リスクを高めます。

 

クローン病の初回治療としてメサラジン注腸治療の第一選択は成分栄養剤による経腸栄養により寛解導入をはかります。

 

小腸病変には5-ASA(メサラジン)注腸、大腸病変にはサラゾスルファピリジンを使用します。中等症から重症例ではインフリキシマブやアザチオプリンを用いることもあります。

 

また、抗TNF-α抗体製剤を使用することがありますが、HBV抗原陽性例や活動性結核を有する患者さんには使用できません。

 

2013年に腸管型ベーチェット病治療薬アダリズマブ、2015年に同じくインフリキシマブが保険適用されました。

 

2016年に新たな5-ASA製剤(リアルダ®)、生物学的製剤ゴリムマブ、ウステキヌマブが新たに保険適応となりました。

 

2017年に炎症性腸疾患治療薬ブデソニド(レクタブル®)が承認されました。

 

 

参照:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン(日本消化器病学会、2016

 

 

 

②潰瘍性大腸炎

重症度判定には、発熱(37.5℃以上)、頻回の下痢、粘血便、頻脈、貧血(Hb10g/dL以下)、赤沈(30mm/hr以上)が用いられます。

 

危険因子としては、1)慢性持続型(10年以上の炎症持続例)、2)若年発症型(10歳代発症例)、3)全大腸炎型・左側大腸炎型などがあります。

 

喫煙は発症リスクを下げるとされますが、喫煙は潰瘍性大腸炎の治療にはなりません。

 

 

治療は免疫抑制剤、ステロイド、抗TNF-α抗体製剤、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、白血球成分除去療法を用います。

 

実際には臨床的重症度と罹患範囲に応じて選択されます。

 

軽症から中等症では5-アミノサリチル酸(5-ASA)は主体で、経口または経直腸的投与は再燃予防効果があります。

 

症状や炎症反応が強い場合には副腎皮質ステロイドを加えます。

 

全身障害を伴う中等症例や重症例では入院による全身管理が必要です。

 

重症例、劇症例および副腎皮質ステロイド抵抗例では専門医に相談することが望ましいです。

 

白血球成分除去療法としては2000年4月に顆粒球除去カラム(GCAP)、2001年10月に遠心分離による白血球アフェレーシス(LCAP)が保険適用になりました。

 

内科療法不応例のほか、コントロール不良の出血、穿孔、狭窄、中毒性巨大結腸症、大腸癌合併症などでは手術が行われます

症状は、息苦しさ、胸がゼーゼーする、咳・痰、呼吸数の増加、頻脈などがみられます。

 

 

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症原因で最も多いのは敗血症です。

 

その他、直接的な原因としてはウイルス性肺炎や粟粒結核、溺水など、間接的には急性膵炎、多発外傷、広範囲熱傷、大量輸液などによるショックがあります。

 

また薬物治療による重大な副作用(有害反応)の一つでもあります。

 

 

ARDSの発生のメカニズムは、免疫担当細胞(マクロファージや単球など)が活性化され、サイトカイン(TNF、IL-1、IL-8など)が分泌され、補体の活性化とともに顆粒球の活性化が生じることによります。

 

 

ARDSでは肺コンプライアンスが低下します。

 

 

日本呼吸器学会による診断基準:

 

①両側肺への急性浸潤影

 

②PaO₂/FIO₂≦200

 

③肺動脈楔入圧≦18mmHgまたは理学的に左房圧上昇の所見が無い

 

 

肺胞虚脱の防止のために十分なPEEPを確保します。

 

一方でVALI(人工呼吸器関連肺損傷)を予防するために低用量換気(6~8mL/kg)を行います。

 

人工呼吸開始後24~48時間以内の、可及的速やかな景観経腸栄養の開始が推奨されています。

 

 

参照:ARDS診療ガイドライン2016part1(日本呼吸器学会)