最新の臨床医学:消化器・内分泌・代謝病学<クローン病 / 潰瘍性大腸炎/腸管型ベーチェット病>

下部消化管疾患では、炎症性腸疾患(IBDが増加し、過敏性腸症候群(IBSが注目されるようになってきました。

 

また、高齢化や抗血栓薬服用者の増加に伴い、憩室出血などの消化管出血が増加しています。

 

 

①クローン病

クローン病は、潰瘍性大腸炎とともに、近年、我が国で増加傾向の炎症性腸疾患です。

 

下痢、発熱、腹痛で発症することが多く、潰瘍性大腸炎に比べて血便の頻度は少ないです。難治性の痔瘻や裂肛を伴います。

 

また、潰瘍性大腸炎ほど特徴的ではないですが陰窩膿瘍がみられることがあります。

 

腸管壁全層の炎症により、小腸では狭窄によるイレウスを来しやすいです。

 

内視鏡では縦走潰瘍が特徴的で、アフタ潰瘍が見られます。

 

クローン病を疑った場合、食道、胃および十二指腸にも病変を起こし得るので、上部消化管内視鏡検査はまず行う前に行っておくことは重要です。

 

内視鏡で観察可能な小腸病変の大半はMRエンテログラフィでの経過観察が可能です。

 

 

クローン病は腹腔内膿瘍や瘻孔を併発することがあるため、腹部造影CTで評価しておくことは必要です。

 

また、消化管狭窄の有無もある程度判断可能であり、特に小腸カプセル内視鏡を行う前に行っておくことは重要です。

 

 

組織病理学的にはサルコイド様の非乾酪性肉芽腫性病変が見られます。

 

合併症として、強直性脊椎炎、結節性紅斑、虹彩炎などがみられます。

 

 

小腸カプセル内視鏡は、2012年より小腸疾患が疑われる場合に保険適応になりました。

 

しかし、消化管狭窄が明らかな場合は禁忌です。

 

そこで、小腸カプセル内視鏡検査を行う場合には腹部造影CTや小腸造影などを先行させる、パテンシーカプセルという模擬カプセルを先に内服して滞留の危険性があるかどうかを評価するなど、慎重な対応が必要になります。

 

 

小腸バルーン内視鏡は、オーバーチューブを用いながら軟性スコープを小腸に勧めていく検査で、経口的と経肛門的の2種類の検査法があります。

 

生検やポリペクトミーなど組織採取や治療が行えるのが利点です。本症例のように狭窄がある場合、その程度、長さによってはバルーンを用いて狭窄拡張も可能であるため、まず行うべき検査の一つと考えられます。

 

 

小腸造影は小腸カプセル内視鏡や小腸バルーン内視鏡の普及で、近年は施行される場面が減少していますが、狭窄の有無が分からないときや、瘻孔が疑われるときに、その部位や程度、多臓器との関係などを体外から確認できるため有用です。

 

経鼻的に挿入したチューブを通して造影剤を注入するため、やや苦痛を伴いますがクローン病を疑う場合には、まず行う検査の一つです。

 

吸収不良や炎症、出血により貧血を来し、また低栄養状態と蛋白漏出性胃腸症のため、低アルブミン血症を来し、そのためコリンエステラーゼ低下や低HDL-C血症を来します。

 

活動期には血小板増加などの炎症所見が見られます。

 

喫煙は発症リスクを高めます。

 

クローン病の初回治療としてメサラジン注腸治療の第一選択は成分栄養剤による経腸栄養により寛解導入をはかります。

 

小腸病変には5-ASA(メサラジン)注腸、大腸病変にはサラゾスルファピリジンを使用します。中等症から重症例ではインフリキシマブやアザチオプリンを用いることもあります。

 

また、抗TNF-α抗体製剤を使用することがありますが、HBV抗原陽性例や活動性結核を有する患者さんには使用できません。

 

2013年に腸管型ベーチェット病治療薬アダリズマブ、2015年に同じくインフリキシマブが保険適用されました。

 

2016年に新たな5-ASA製剤(リアルダ®)、生物学的製剤ゴリムマブ、ウステキヌマブが新たに保険適応となりました。

 

2017年に炎症性腸疾患治療薬ブデソニド(レクタブル®)が承認されました。

 

 

参照:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン(日本消化器病学会、2016

 

 

 

②潰瘍性大腸炎

重症度判定には、発熱(37.5℃以上)、頻回の下痢、粘血便、頻脈、貧血(Hb10g/dL以下)、赤沈(30mm/hr以上)が用いられます。

 

危険因子としては、1)慢性持続型(10年以上の炎症持続例)、2)若年発症型(10歳代発症例)、3)全大腸炎型・左側大腸炎型などがあります。

 

喫煙は発症リスクを下げるとされますが、喫煙は潰瘍性大腸炎の治療にはなりません。

 

 

治療は免疫抑制剤、ステロイド、抗TNF-α抗体製剤、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、白血球成分除去療法を用います。

 

実際には臨床的重症度と罹患範囲に応じて選択されます。

 

軽症から中等症では5-アミノサリチル酸(5-ASA)は主体で、経口または経直腸的投与は再燃予防効果があります。

 

症状や炎症反応が強い場合には副腎皮質ステロイドを加えます。

 

全身障害を伴う中等症例や重症例では入院による全身管理が必要です。

 

重症例、劇症例および副腎皮質ステロイド抵抗例では専門医に相談することが望ましいです。

 

白血球成分除去療法としては2000年4月に顆粒球除去カラム(GCAP)、2001年10月に遠心分離による白血球アフェレーシス(LCAP)が保険適用になりました。

 

内科療法不応例のほか、コントロール不良の出血、穿孔、狭窄、中毒性巨大結腸症、大腸癌合併症などでは手術が行われます