最新の臨床医学:神経病学<多系統萎縮症(MSA)>

多系統萎縮症(MSA)は、孤発性(非遺伝性)の神経変性疾患です。

 

病理学的な特徴としては、オリーブ-橋-小脳系、線条体-黒質系、および自律神経系に神経細胞脱落を認めることです。

 

 

比較的急速に進行する錐体外路症状(パーキンソニズム:パーキンソン病様症状)と自律神経障害が主要所見であるため、パーキンソン病との鑑別が難しいことがあります。

 

 

小脳失調錐体路症状を伴っていれば、多系統萎縮症を疑います。

 

 

具体的には、3疾患があります。

 

画像所見としては、橋・小脳、中小脳脚、被殻の萎縮とMRIでのT2高信号、T2強調像で橋底部に十字サインを認めます。

 

病理組織学的に共通する特徴的なマーカーはグリア細胞内に封入体を認めることです。

 

MSA-C(オリーブ橋小脳萎縮症OPCA)

小脳失調(四肢協調運動障害、ふらつき、構音障害、眼振など)優位:経過が進むにつれて筋強剛(固縮)に置き換っていきます。

 

CT・MRIで小脳・橋下部の萎縮、MRIにて第四脳室拡大、MRI(T2強調像)で橋底部の十字サインを認めます。

 

 

MSA-P(線条体黒質変性症SND)

錐体外路症状優位:MRI(T2強調像)で被殻外側にスリット上の高信号域を認めることもあります。

 

 

シャイ-ドレイガ-症候群(SDS)

自律神経症状(起立性低血圧、膀胱直腸障害、発汗障害など)優位

 

ただし、病状が進行するにつれて、いずれの疾患も、パーキンソニズム(錐体外路症状)、錐体路徴候および自律神経症状が出現します。

 

わが国に多いのは、MSA-Cです。

 

 

 

根治療法はなく、対症療法が中心です。

 

たとえば、自律神経症状である起立性低血圧に対しては、血圧上昇効果を期待して、アドレナリン前駆物質であるドロキシドパ(ドプス®)を投与しますが、この薬剤は、パーキンソン病(ヤール重症度Ⅲ)におけるすくみ足、立ちくらみ;シャイ・ドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチーにおける起立性低血圧、失神、立ちくらみなども適応になっています。

 

リハビリテーションは、感覚や動きのトレーニングによる日常生活の活動度(ADL)や生活の質(QOL)の維持と向上を目的としています。

 

MSAの根本的な治療法ではありませんが、適切に行うことで症状を和らげ、身体の機能の低下を防ぎ、普通の社会生活を支障なく長く続けていくことが十分に可能となります。

 

 

また、なかには身体を動かさないため、廃用症候群と呼ばれるさまざまな障害を起こすケースがありますが、こうした症状も継続的なリハビリテーションにより改善できます。

 

MSAは原因が不明で進行性のため、途中でリハビリテーションをあきらめる方もおられます。

 

しかし、「難病だからこそ」「進行性だからこそ」、それを少しでも遅らせるために水氣道®によるリハビリテーションが必要です。