B型肝炎治療の現状
HBV感染患者に対する治療の目標は、慢性肝不全の予防と肝癌発生予防です。その目標を達成するために肝炎の活動性と肝線維化進展抑制が図られています。
また抗ウイルス治療の長期目標はHBs抗原の消失です。しかし、HBs抗原の消失を達成することは難しく、そのためガイドラインでは、まずALTの持続正常化、HBe抗原の陰性化ならびにおHBV DNAの陰性化を短期目標とし、最終的に長期目標に向かうように設定しています。
抗ウイルス療法には大きな変遷があります。1987年に従来型のインターフェロン(IFN)が登場し、2011年にPEGインターフェロンの48週間治療が可能となり、現在では、医療徐盛を2回まで使用して治療を行うことができます。また、核酸アナログに関しては、ラミブジン(2000年)、アデホビル(2004年)、エンテカビル(バラクルード®2006年)、テノホビルDF(TDF:セノゼット®2014年)、テノホビルAF(TAF:ベムリティ®2017年)が使用可能となり、エンテカビル、TDF、TAFが第一選択薬となっています。
ガイドラインによる抗ウイルス療法の基本指針としては、慢性肝炎の場合はPEGインターフェロンか核酸アナログ製剤ですが、肝硬変の場合は核酸アナログ製剤となります。しかし、慢性肝炎でのPEGインターフェロンによる治療効果は限定的であり、多彩な副作用や週一回の通院を要するなどの制限があるため、実臨床としては核酸アナログ製剤を用いることが多いようです。
杉並国際クリニックからのコメント
B型肝炎のキャリア症例を含め、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を発見した場合、杉並国際クリニックでは、どのように、どこまでフォローし、どの段階で肝臓専門医に紹介するかについてまとめてみたいと思います。
まず、基本となるのは血液検査でHBVのDNA量を測定することです。HBV DNAが3.3logIU/mLを下回る程度であれば、そのまま経過観察をします。そして「無症候性キャリアの定義」を満たしている場合には、1年に1~2回のフォローをします。ただし、血小板数が減少し15万/μl程度になったら肝臓専門医に紹介するようにしたいと考えています。
そして、無症候キャリアであっても、最低限1年に1回以上、超音波検査等でフォローアップする必要があると思います。また、B型肝炎ウイルスには再活性化の問題が議論されていますが、その問題については明日ご紹介します。
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