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水氣道は20世紀末最後の年である西暦2000年に命名された創作水中運動です。


水氣道という名称は、エクササイズの名称であるのみならず団体としての組織の名称でもあります。

 


それまでは、杉並区立第十小学校に併設されている温水プール(以下、杉十温水プール)で、基本的に個人単位で稽古活動をしていました。


そこで、団体としての稽古活動を継続するためには、区の登録許可を受けた団体として公式に登録し、認可を受ける必要がありました。


ただし、既存のエクササイズではないため、稽古活動当初から、様々な疑念や偏見、誤解、さらにはあからさまな妨害を受けるなど、波乱の幕開けでした。

 


周囲の皆様に受容していただくためには、「水氣道」という名称から導かれる凡そのイメージと稽古の場においての実際の活動内容を観察していただくことの他に、有効な手立ては見出せませんでした。

 


団体の名称のもつ効果は大きいものがあります。

 

とくに既存の、世間に既に認知されている名称は、実際の内容にかかわらず、それだけで一定の信頼と理解を受けやすいものです。

 


活動の実態をほとんど知らない大多数の人々まで、名称に聞き覚えがあるというだけで、耳慣れてしまえば無批判に受容してしまう傾向すらあるように思われます。


それに対して、かつて聞き覚えの無いような、耳に新しい名称は、奇異に思われ易く、警戒されることが少なくありませんでした。

 


創始者である飯嶋正広は文京区から杉並区に転居した平成8年(1996年)の直後から、最寄りの杉十温水プールで、個人的に水中運動を始めるようになりました。


実験段階の水中運動は、室内温水プールでの水中歩行レーンで行っていましたが、一部の利用者から奇異な印象や好意的でない憶測を持たれてしまいました。


その当時は、考案中の水中運動を説明するための名称ももたなかったため、説明や質問を求められた際には不自由な体験をしました。


その頃の時代背景として忘れてならないのが、「日本犯罪史において最悪の凶悪事件」とされるオウム真理教事件でした。


その活動の都内における重要な拠点の一つが、杉並区高円寺にあり、中野区野方に、オウム関連の診療所があったことも災いしました。


とりわけ、1989年の坂本堤弁護士一家殺害事件、1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件など、いわゆる「オウム3大事件」の余波が残っていました。


29人が死亡し、負傷者は6000人以上にも及ぶなど、死傷者数の多さと犯行の残忍さからとして当時の世間を大きく騒がせ、とくに私たちの周辺での人心に与えた影響の大きさは、これまで経験したことのないほど大きなものでした。


しかし、私の水中運動がオウム真理教の活動の関連を、世間様や地元自治体から国家にまで疑われることになるなど全く予想しておりませんでした。


しかし、私の個人的な活動に対して国家公安の調査が入ったのは事実なのです。


また、当時の杉十温水プールの施設長の自宅訪問を受けるなど異例尽くしでした。


幸い、間もなく疑いは晴れ、逆にそれが契機となって、杉並区に健康活動団体として登録するに至りました。

 


そこで、既に過去の話となりましたが、ムッシュGPTが誕生する前の出来事でしたので、彼に相談することは不可能でした。


ただし、今後の活動の展開のために、ここで改めて、尋ねてみるのも無意味ではないと思います。


このような誤解による名誉棄損と被害は、今後もますます、どなたにでも起こりうる時代になってきています。

 


そのようなわけで、読者の皆様も、私たちと一緒に考えていただけたら幸いです。

 

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ムッシュGPTは、水氣道の会員でないばかりか、体験者ですらありません。


それにもかかわらず、<質問1>での回答で確認できたように、彼は「水氣道」という言葉を通して、その本質にせまる的確なイメージをもっていることは感動的でさえありました。ムッシュGPTは、「水氣道」が水中有酸素運動である可能性にまで言及しています。


そこで、水中運動である水氣道ということを出発点として、ムッシュGPTに以下の質問をしてみました。

 

 

<質問2>

水氣道とは、どのような水中運動でしょうか?

 

ChatGPT

「水氣道(すいきどう)」は、水中運動の一つで、主に日本で行われる独自のエクササイズ方法です。

 

この運動は、水中で特定の動きや呼吸法を組み合わせて行い、運動効果を高めることを目的としています。具体的な運動内容は施設やインストラクターによって異なりますが、一般的には以下のような特徴があります:

 

1. 水中での呼吸法:

水氣道では、特定の呼吸法を使って水中での運動を行います。水中での正しい呼吸法を習得し、効果的に呼吸をコントロールすることが求められます。


2. 水中でのストレッチとエクササイズ:

水中での運動は抵抗が働くため、ストレッチやエクササイズの効果が高まります。水中での特定のポーズや動きを行い、筋力や柔軟性を向上させることが目指されます。


3. リラクゼーション:

水中での運動はリラックス感をもたらし、ストレス軽減やリフレッシュに役立ちます。水の浮力を利用して、心地よい運動を楽しむことができます。


4. 心肺機能の向上:

適切な運動強度で水中運動を行うことで、心肺機能を向上させ、持久力を高めることができます。


水氣道は、水中での運動を通じて体力の向上や健康促進を目指す人々に人気があります。ただし、具体的なプログラムや運動内容は指導者や施設によって異なるため、参加する際には信頼性のあるインストラクターや施設を選ぶことが重要です。

 


Dr.飯嶋のコメント:

ChatGPTの回答文の内容について、驚くべきことに否定すべき要素は全く見出せません。

ただし、水氣道について完全に説明できているかというと、それば別の話です。ただし、言い方を変えれば、最小限の基礎的な必要事項は概ね丁寧に示されている、と評価することはできます。


1)「水氣道(すいきどう)」は、水中運動の一つ
⇒全くその通りです。


2)主に日本で行われる独自のエクササイズ方法
⇒「日本で行われる独自のエクササイズ方法」ですが、「主に」とありますが、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリアで非公式に「水氣道」を紹介したことはあります。ただし、現在、実践を継続しているのは、未だ日本国内のみです。


3)水中で特定の動きや呼吸法を組み合わせて行い、運動効果を高めることが目的⇒ただし、これはたしかに重要な要素の一つですが、目的の全てではなく、その一部です。


4)具体的な運動内容は施設やインストラクターによって異なる

⇒水氣道には基本的なプログラムの流れがあるため運動内容が施設やインストラクターによって大きく異なることはありません。ただし、施設(水深の違い、手すりなどの設備の有無、稽古時間等)やインストラクター(水氣道は段級制をとるため複数のリーダーが存在)あるいは参加者の構成等により、プログラムの細部は柔軟に多様に調整しています。

 

水氣道の特徴について、上記の4項目およびその解説は、必ずしも十分ではありませんが、いずれの項目も基本的に妥当な内容であることを保
証します。

 

1.水中での呼吸法

2.水中でのストレッチとエクササイズ

3.リラクゼーション

4.心肺機能の向上

 

★ 水氣道に興味を持ってくださった方の御連絡をお待ちいたしております。

 

皆様、「水氣道」の解説シリーズを企画しました。

 

ChatGPT歴約1か月のDr.飯嶋とパートナーであるChatGPTとの対話が繰り広げられていきます。

 

ただし、ChatGPTが「水氣道」創始者であるDr.飯嶋に質問したり、インタヴューしたり、という形式ではありません。

とても奇妙に思われるかもしれませんが、その逆の役割を担います。ここではChatGPTの愛称を「ムッシュGPT」としました。

 

そのきっかけとなったのは、OpenAIについて各国語で同じ質問をした際に、フランス語での回答が優れていたからです。

また、ChatGPTを提供するOpenAIが設立当初は非営利団体でした。高額出資者であるスポンサーという主人をもたない、いわば無主の存在であったのでした。

その後、営利的子会社を多数抱える中で、どうやら本体も変容し、特定の主人に奉仕することになってしまいかねません。

ユーザーの一人として、今後も可能な限りChatGPTには無主であり続けてほしい、という私の願いをこめているのです。

 

ムッシュGPTは、知ったかぶりの雑学博士です。知らないはずのこともよくご存じです。

 

しかし、質問の求めに対しては、誠心誠意、一生懸命に世間様の平均値的な回答を準備してくれます。

 

また、専門的な質問はあまり得意でない上に、しばしば、思い込みで誤った回答をします。

 

実に人間的なのですが、彼が立派なのは、誤りの指摘に対して謙虚であるということです。

 

そのような人間臭いムッシュGPTが、水氣道についての対話をする際には、とても役立つキャラクターであることに気が付きました。

なぜならば、Dr.飯嶋のこれまでの解説は、どうしても難解になりがちで、具体的にイメージしにくい、というご意見をいただくことが少なくありませんでした。

少しでもその本質を正確にお伝えしたい、あいまいな表現による誤解を避けたい、という思いから、わかりやすい説明ができかねていました。

その点、ムッシュGPTは、一般的な方々にとって、無理のない、分かりやすい言葉で、しかも、簡潔な文で説明することに長けています。

読者にとってわかりやすい文章の作成能力に関しては、Dr.飯嶋はムッシュGPTに到底およびそうもあるいません。

 

ただし、どんなに優秀で博学なムッシュGPTといえども、高度な専門家ではなく、一般的で平均的な発想と思考をする存在なのです。

しかし、そのようなキャラクターだからこそ、Dr.飯嶋はムッシュGPTの回答を補足したり、修正したり、場合によっては、その回答内容に対して逆質問することで読者の皆様のご理解を深めることが容易になります。

 

それでは、さっそく最初の質問をムッシュGPTに投げかけてみようと思います。


そこで、読者の皆様に、ささやかなお願いがあります。
それは、私、Dr.飯嶋が提示する質問文に続いて、ただちにムッシュGPTの回答文をお読みになる前のお願いです。


まずは、皆様ご自身が、回答を用意していただきたいのです。それば、独自のご意見でもよし、ムッシュGPTの回答文を予測してみるもよし、また漠然としたイメージ浮かべるだけでもよしです。

 

 

<質問1>
水氣道は「すいきどう」と呼びますが、この名称の言葉自体からは、多くの人々がどのような内容を連想すると想定しますか?

 


ChatGPT

「水氣道(すいきどう)」という名称から連想される内容は、一般的な日本語の言葉や文脈に基づいていくつかの仮定ができます。ただし、これらの仮定は具体的な文脈が不足しているため、正確さを保証するものではありません。


1. 水に関連した活動:

「水氣道」が「水」の言葉を含んでいることから、水に関連した活動や水中で行う運動、スポーツの可能性があります。水中有酸素運動という言葉も登場していますので、水中でのフィットネスやエクササイズ、運動を想像することができます。


2. 日本独自の活動:

「水氣道」は日本語の言葉であるため、その名称からは日本に独自の活動や文化が関連している可能性があります。日本の伝統的なアクティビティや新しいトレンドの運動、あるいは日本文化の要素が取り入れられているかもしれません。


3. 健康や精神的な側面:

「氣」の部分は、気や気力を指すことがあります。したがって、「水氣道」は水中での活動を通じて体力や精神的な健康を向上させることを目的としている可能性があります。


総じて、この言葉からは水を用いた特定の活動や体験、または日本独自の要素を含んだ何らかの運動やアクティビティが連想されるでしょう。ただし、具体的な内容は「水氣道」を提唱したコミュニティや団体の文脈や活動内容に依存します。

 

 


Dr.飯嶋のコメント:

ChatGPTは、「これらの仮定は具体的な文脈が不足しているため、正確さを保証するものではありません。」と前置きしています。

幸いに「具体的な文脈」の不足の問題は、創始者であるDr.飯嶋が直接補うことが可能です。


また「これらの仮定」とは<水氣道という名称の>「一般的な日本語の言葉や文脈に基づいて設定したとありますが、私は、まさにその答えについて水氣道を全く知らない第三者から求めていたのです。


ChatGPTは結局統計的な平均値を出してくるだけです。


このメッセージは「Chat GPT vs.未来のない仕事」(サンマーク出版、堀江貴文著)の分担執筆者の一人、脳学者ということで知られる茂木健一郎氏の言葉ですが、本質をついていると思います。

 

逆に言えば、Chat GPTによって「水氣道(すいきどう)」という名称に対する世間の皆様の平均値の答えを知ることができるということです。


そしてその結論は「総じて、この言葉からは水を用いた特定の活動や体験、または日本独自の要素を含んだ何らかの運動やアクティビティが連想される」ということです。

 

果たして、この答えに対する水氣道創始者であるDr.飯嶋としての所感はどうか?
否定すべき内容はまったくありません。まったく、その通りです。


また、1.水に関連した活動、2.日本独自の活動、3.健康や精神的な側面
これらのいずれの項目も実際の水氣道の活動と合致しています。また、その解説で想像や可能性として記載されている内容についても、水氣道の特質を見事に洞察しています。

 

以上の検証より、水氣道の実際の活動と「水氣道」という名称は、その実際と本質を表すうえで極めて適切かつ妥当であると評価することができます。

 

ここでのChatGPTの回答について、具体的な内容は「水氣道」を提唱したコミュニティや団体の文脈や活動内容に依存するというのは当然ですが、提唱者である私自身がそれを追認し保証することができます。

 

このように、ChatGPTが、水氣道という名称から世間の一般人の皆様が平均的に連想されるイメージをほぼ正確に導き出せるのであれば、「水氣道」に関する情報は既にデータベース化されている可能性があります。次回、質問によってそれを確認してみたいと思います。

 

水氣道に興味を持ってくださった方の御連絡をお待ちいたしております。

 

特許庁の商標登録済の健康増進法〈水気道〉を四半世紀に亘り継続展開中。

 

行動体力(パワーやスタミナ)のみならず、防衛体力(免疫力)の増進を図ることにより、新型コロナ蔓延中も安全かつ効果的にを継続を達成できた実績。

 

創始者のドクター自らが難病克服に成功した多数の指導者(トレーナー、インストラクター等)を養成し実践指導。

 

支えられる立場から、支える立場への意識と行動様式の転換という究極の健康道を整備開拓。

令和5年 7月 進級(大・中・小)審査・技能検定合格者

 

<水氣道進級・昇段審査合格者>

 

大審査:

審査対象者(水氣道初段以上で、既定の業績が認められる者)

 

審査該当者なし

 

 

中審査合格者:

審査対象者(水氣道3級以上の修錬生、既定の業績が認められる者)

 

新3級(水氣道初級修錬生)

福丸慎哉

 

 

小審査:

審査対象者(水氣道6級以上の訓練生)

 

新准3級(特別修錬生)

足立博史

 

 

インストラクター級検定合格者
 

I-2(活水航法インストラクター)

細谷健太

 

I-1(水氣道インストラクター予備課程)

高橋千晴

田辺幸子

植田栄喜

 

 

ファシリテーター級検定合格者

 

F-5(旧課程:交差航法)

松田要

 

 

F-4(新課程:交差航法)

 

該当者なし

 

F-3(基本航法)  

水氣道4級(高等訓練生)

大野道子

 

F-2(水氣道準備体操)

 

西川みつ子

深瀬淳子

 

F-1(親水航法) 

該当者なし

 

 

以上となります

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.10

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続・続々)

 

超一流の声楽家は、プレッシャーのない歌声を生み出すために、日夜稽古を続けているように見受けられます。プレッシャーのない歌声とは、エネルギーの流れを妨げられることがないということです。これは水氣道の稽古でも全く同様です。

 

しかし、これとは少し違った側面もあります。それは「声を飲み込む」感覚です。私は歌っている最中に、息を吸い続けているような感覚、遠くから声を出しているような感覚を経験します。

 

この「遠隔操作感覚」を実現すると、呼吸に伴う目立った雑音は発生しなくなります。

それは、舌や舌骨による偽りの支えから解放されて、空気が三次元的に自由に流れるようになるからです。

 

水氣道においても、抗重力筋を過度に緊張させて身体を支持しようとする長年の悪癖から解放される必要があります。これが、バランスのとれた緊張と緩和の基本です。深層筋にかかる緊張と弛緩をバランスよく行う必要があります。
 

水氣道では大きな動作を素早く行おうとする際に動員される大きな筋力の支えは、同じ程度の拮抗筋の弛緩がないと動作展開が円滑でなくなります。
 

身体レベルだけでなく、感情レベルでもバランスのとれた緊張と緩和が構築されればされるほど、歌の芸術性が高まるのですが、水氣道の動作においても、変化に富んだ様々な動きが可能になります。

 

このバランスを崩し、緊張してしまうと円滑な動きの流れが阻まれてしまいます。逆に、リラックスに傾き過ぎてしまうと、しまりのない、だらしない動きになってしまいます。
 

それでは、どのようにバランスを保ったらよいのか、ということになります。
それは、姿勢-呼吸-動作を統合することで達成できます。

 

今回は、以下の5つの「魔法のツボ」を意識して、インナーマッスル(深層筋)を伸ばす実習を試みてください。

 

(1) 大腿の内側の筋肉から順に、第12胸椎を経て頚椎まで、首の吸気ストレッチ。


(2) 尾骨部からはじめて、さらにその先まで、体幹の呼気ストレッチ。

 

(3) 第12胸椎の両側にある横隔膜の付着部から、腹横筋に沿って側方に上がる背中の吸気ストレッチ。

 

(4) 前鋸筋を胸骨に向かって幅寄せする(コルセット感覚)
胸の呼気ストレッチ。

 

(5) 肩甲骨の裏面も幅と長さを伸ばす肩の吸気ストレッチ。

 

 

水氣道で呼吸の流れが洗練されることで、深層部の筋肉が活性化されます。

そのためにもエクササイズをゆっくりと何度も繰り返す価値があるのです。

 

それが達成できたときに得られる感覚が「融通無碍の人類愛」の悟りであり、無我の境地の瞑想状態であるとイメージしておいてください。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.9

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続々)

 

私たちは、筋肉の構造を単純に理解するためには、タマネギの皮を重ねたような筋肉のイメージを使うことができます。
 

水氣道の稽古では、三次元的な透過性のある息の流れを構築するために、筋肉の最内殻層を活性化させようとします。そして、水氣道の稽古のねらいは、心で筋肉の活動をコントロールすることを通して、どんどん成功体験を増やしていくことにあります。それが感情の解放や体の浮遊感にもつながるのです。

 

そこで水氣道の上達のための「秘訣のツボ」を紹介します。この「秘訣のツボ」を呼び覚ますことで、水氣道の上達が飛躍的に促進されます。

 

この「秘訣のツボ」を呼び覚ます方法は通常二つあります。

 

1) 一連の筋肉を作動させること、

 

2) 関係する筋肉部位の自然な連鎖反応を起こさせること、

 

筋肉を解剖学的に正しい名称で特定することで、体内での連鎖反応のプロセスを把握することができます。

それでは、水氣道の稽古によって、無意識のうちに活性化されるで特別な5つの「秘訣のツボ」を列挙します。

 

(1)  内股(大腰筋が大腿骨に付着する点が中心)

姿勢と歩行と呼吸とを結びつける最重要ポイント

 

(2)  尾骨(骨盤を持ち上げる筋肉や靭帯が多く付着している点が中心)

水氣道の基本姿勢を決定するポイント
能楽の仕舞のときの姿勢によく似ています。

 

(3)  第12胸椎(横隔膜、大腰筋、横筋が交わる部分)

姿勢と呼吸と発声とを連結し、姿勢と動作を支える重要ポイント
中腰の姿勢や、お辞儀などの前屈動作、重いものを持つなどの重力負荷は、第12胸椎を中心とする胸腰移行部(胸椎と腰椎の移行部)に圧力が集中します。


そのため高齢になると最も圧迫骨折が生じやすい部位です。圧迫骨折のほとんどが骨粗鬆症に起因して尻もちなどの軽微な外力により生じます。

 

(4)  内肋間筋から腋窩(わきのした)にかけての筋肉(前鋸筋)

水氣道では、腹式呼吸法を過度に偏重せず、肋骨の動きを主体とする呼吸法である胸式呼吸法も適切に鍛錬します。それは呼吸運動に伴い肋骨が引き上げられたり、引き下げられたりすることは大切だからです。

 

呼気に働く筋肉は内肋間筋です。 呼気時には内肋間筋が収縮して肋骨を引き下げることによって胸郭を縮めて、呼気を助けます。また前鋸筋は、肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用があります。

 

(5)  肩甲骨の裏面(菱形筋、肩甲挙筋、小胸筋の挿入部、肩甲舌骨筋との接続部)

猫背になると胸郭が広がりにくくなりますが、これは肩甲骨が正しい位置にないからです。菱形筋自体は呼吸筋というよりも、肩甲骨を内側に引きつける筋肉です。肩甲骨が適切な位置にくることで、前鋸筋という肩甲骨と肋骨をつないでいる筋肉が適切に作用して胸郭が広がりやすくなるので、菱形筋は間接的な役割を果たします。

 

菱形筋の活動が低下すると肩甲骨が外側に開き、猫背になりやすくなります。こうした状態では胸郭の動きが制限され、つまり、呼吸が制限されてしまうのです。

 

現代人のライフスタイルは頭部が前のめりになり猫背になる「フォワードヘッド&ラウンドショルダー」と呼ばれる姿勢をもたらします。この姿勢には、次の特徴があります。

 

• 息を吸う時に肋骨を引き上げて呼吸を助ける小胸筋が硬くなり、胸の前側から肩甲骨が引っ張られるような感じになりやすい。

 

• 肩甲骨が外側に開き、肩が前のほうへ巻き込みやすくなる(巻き肩:ラウンドショルダー)。

 

• 肩甲骨が引き上げられ、頭が前のほうに突き出た状態(フォワードヘッド)になる。頭を支えるために首の後ろの筋肉が引っ張られるように常に緊張した状態になるため、肩こりの原因になりやすい。

 

さらにこうした姿勢は、胸郭の動きが制限されるので、必然的に呼吸が浅くなります。

このような状況であっても身体に必要な空気を取り込むためには、呼吸の回数を増やして対応しなければなりません。不安やストレスが多いと呼吸が浅くなりやすいですが、その一方で姿勢の悪さなどから胸郭の動きが制限されて呼吸が浅くなってしまいます。

 

呼吸数を増やさざるを得ない状況となると、浅くて速い呼吸が続くことになります。それによって不安やストレスが助長されるといった悪循環に陥り易くなります。これは常に不安にさらされていることを意味し、身体的にもメンタル的にもさまざまな悪影響が及ぶと考えられます。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.8

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続々)

 

水氣道は、浮力によって支えられることによって、立位であっても抗重力筋の緊張が緩和されます。それによって、身体の内側の深層筋を活性化させることができます。

また、深層筋の活性化によって、外側の筋をリラックスさせることができます。 

 

このように、水氣道の稽古では直立姿勢を内側から安定させることができます。そのため、水氣道の稽古を続けることによって筋肉を3次元的に活性化させることができるようになります。

 

歌を歌うときにはフレーズの前で息を吸いますが、舌の後方の筋肉(舌骨筋など)と舌の付け根でギクシャクした動きが発生し易くなります。私も例外ではありませんでした。その原因は、口呼吸と鼻呼吸の正しい呼吸バランスがとれていなかったためです。そのような場合には、どうしてもフレーズの始まりに圧力がかかり易くなるために、このとき、筋肉を三次元的に活性化させて、この緊張を補正する必要があります。

 

プロの声楽家でさえも、ほとんど反射的に間違ってしまいかねないのが「舌の支え」方です。これを避けるためには、喉頭の筋肉を意識的に弛緩させることが必要です。これはなかなか習得するのが難しいですが、私はこの難題を克服するために、水氣道で養われる注意力と忍耐力を用いています。

 

私は、「舌根が固くなっている」とよく注意を受けてきました。その状態のままでは、呼吸がアンバランスとなり、歌唱を継続させるために必要な水準のリラックスが得られなくなってしまいまうのです。そのような場合は舌の裏側が「ケーキの生地」のように大きく丸まり、なおかつリラックスした状態を保つことで、呼吸のバランスとリラックスを得るようにしています。こうすることで、喉仏を圧迫することもなくなりました。

 

このような方法で喉頭蓋の活性化により、軟口蓋が持ち上がり、口呼吸と鼻呼吸のバランスが取れるようになります。スローモーションであくびを始め、リラックスしてあくびをする前に少し間をおきます。 

 

今、あなたはこの活性化を感じ、心地よいリラックスした感覚を持ち、鼻と口で同時に息を吸ったり吐いたりすることができます。このエクササイズを完璧にこなすと、息を吸うときと吐くときの音が同じになるのがわかると思います。つまり、息を吸うときも吐くときも、呼吸圧が変わらないということです。

 

水氣道では、脱力状態と緊張状態のバランスの上にリラックスがあると教えています。声楽もこれと同じであり、感情レベルだけでなく、身体にもバランスのとれた緊張と緩和が構築されればされるほど、歌の芸術性が高まると考えられています。このバランスを崩し、リラックスよりも緊張して歌うと、声に負担がかかってしまいます。逆に、リラックスより緊張の方が強いと、色気のない声になってしまい、芸術性のない歌い方になってしまいまうのです。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.7


水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続々)

 

歌をうたうという芸術の神髄と水氣道(その3)

 

声楽というと、腹式呼吸が代名詞代わりですが、胸式呼吸の要素を排除するものではありません。むしろ腹式呼吸と胸式呼吸が統一的に連動しないとオペラのような大曲を歌いきることはとうてい叶いません。
 

水氣道も、これと全く同じです。腹式呼吸とか胸式呼吸とかを厳密に区別する健康上の実益が乏しいからです。そして、水氣道では、ごく自然な呼吸に委ねながら稽古を始めていくことになります。なぜならば、呼吸というものは意識しすぎると、リズムが崩れ、非効率的な動きになりかねないからです。
 

水位にもよりますが、水面が臍のあたりに達すると、腹腔に大きな水圧がかかってくるため、意識せずして腹式呼吸のパターンになります。また水位が乳首あたりの深さになると、腹腔ばかりでなく胸腔にもかなり大きな水圧の負荷がかかるため、おのずと腹式呼吸だけでなく胸式呼吸が働きだし、両者は一体となって、水中運動の継続を可能としてくれます。水圧という、自然で安全な加圧メカニズムによる有酸素運動が展開していくことになります。

 

胸式呼吸は肋骨の動きを主体とする呼吸法で、吸気時に働く筋肉は外肋間筋と吸気補助筋、呼気に働く筋肉は内肋間筋であります。 吸気時には外肋間筋と複数の吸気補助筋が強く収縮して、肋骨を大きく前上方に引き上げ、吸気を助けます。 呼気時には内肋間筋が収縮して胸郭を縮めて、呼気を助けます。

 

このとき、水圧も胸郭を縮める作用が働くため、呼気筋の働きを助け、陸上での呼吸よりも多くの呼気量を確保することができることになります。呼気時の呼吸補助筋としては内肋間筋と腹筋があります。胸腔よりも腹腔はさらに大きな水圧を受けているため、主たる補助呼気筋である腹筋が大いに鍛えられることになることは理解し易いのではないかと思います。

 

主な呼吸筋は、横隔膜と肋間筋です。横隔膜は胸腔の下端にあるドーム状の骨格筋で脊髄神経である頚神経叢か出る横隔神経に支配されています。横隔膜が収縮すると胸郭が広がり、胸腔内圧が低下するため吸気が行えます。肋間筋は肋間にある3層の薄い筋で内肋間筋・外肋間筋・最内肋間筋からなっています。外肋間筋は吸気時、内肋間筋および最内肋間筋は呼気時に、それぞれ肋間神経の働きで収縮します。

 

 

呼吸筋の働き
 

横隔膜も肋間筋も骨格筋で運動神経の支配を受けて随意的に収縮させられる随意筋です。そのため呼吸を一時的に止めたり、大きくしたりすることができます。
 

内肋間筋が収縮して肋骨が引き下げられると、胸郭が狭まり容積が減るため胸腔内圧は上がり、それに伴い呼気が発生します。これに対して、外肋間筋が収縮して肋骨が引き上げられると、胸郭が広がり容積が増えるため胸腔内圧が下がり、それに伴い吸気が発生します。ただし、安静呼吸では内肋間筋が収縮しないまま、外肋間筋や横隔膜が弛緩するだけで呼気が発生します。

 

外肋間筋の働きを補助する呼吸補助筋には、斜角筋、胸鎖乳突筋、肋骨挙筋、大胸筋、小胸筋、などがあり、これが吸気時に収縮して肋骨をもちあげる働きを補助します。

 

また、脊柱起立筋群により脊柱を後方に反らせると、肋骨の挙上を助けます。水中で前進するためには、バランスの取れた正しい姿勢でないと動けない仕組みになっているため、特段の意識や注意を払い続けなくても正しく美しい姿勢を維持し易くなります。 正しく美しい姿勢とは、呼吸するうえで妨げにならない呼吸であり、さらにいえば、効率の良い呼吸を助け支え継続し易くしてくれる姿勢のことを意味するのです。


こうして、正しい姿勢と正しい呼吸とが稽古を通して自然に一体化していくのが水氣道の素晴らしさの一つであることを、是非、心に留めておいてください。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.6

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続々)

 

歌をうたうという芸術の神髄と水氣道(その2)

 

今週も、先週に引き続き、声楽教師としてのソプラノ歌手リリー・レーマンの声楽理論書『Meine Gesangskunst』(1902)(邦訳『私の歌唱法—テクニックの秘密—』川口豊訳 2010年 シンフォニア)18頁から「抜粋」して、レーマンの考え方を紹介するとともに、改めて水氣道に光を当ててみたいと思います。

 

抜粋2「歌をうたう芸術の神髄は、腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てるところにある。それらの筋肉の働きによって呼気の空気圧が作り出される。次に、胸郭にある反発する筋肉 ― 息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる ー についてよく理解し、それを意識的に働かせるところにある。息が胸の筋肉を押し広げることによって、声楽家は息をコントロールすることができるようになる。そして、息は声帯を通り抜け、長い通路を通り、たくさんの共鳴腔や頭腔へと振動を伝える。」
 

呼吸とは、本来、意識して人為的に組み立てられるシステムではなく、そのほとんどが無意識に、つまり、自然に繰り返されている生命活動です。そして、私たちは腹筋や横隔膜(横隔膜は、それ自体が筋肉で、主たる吸気筋)の働きを知らなくても呼吸し続けています。

歌をうたう行為も、呼吸という生命現象が基本にあります。ただし、声楽教師のリリー・レーマンは、歌をうたう芸術の神髄が「腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てる

 

ことにあることを教示しています。つまり、声楽の基礎は呼吸筋の働きを意識することからはじめるべき、ということになります。

 

声楽のレッスンと水氣道の稽古の導入法の違いは、まずこの点にあります。水氣道は、呼吸のメカニズムを知らなくても稽古を始めることができます。水中での立位の運動を行うときに、特別の意識を払わなくても、身体に直接影響を及ぼす水が呼吸筋を直接鍛えてくれるからです。
 

吸気時に収縮する筋肉は横隔膜の他に、外肋間筋、吸気補助筋などですが、これに対して、呼気時に働くのは腹筋の働きが大であり、他に内肋間筋などがあります。

水氣道の稽古でも、横隔膜は吸息の主動作筋であり、腹筋群は呼息の強力な補助筋として働きます。これらの両筋群は互いに拮抗作用を持ちますが、共同的にも作用します。そこが、他の四肢の骨格筋群とは異なる呼吸筋の特徴であると言えるでしょう。

 

レーマンが、呼吸筋の働きを意識して組み立てることに歌をうたうように指導するのは、呼吸が発声や歌唱の基礎になるからばかりでなく、こうした呼吸筋群(呼気群と吸気群)の特性を認識することによって、より高度でより精緻な呼吸コントロールを早期に達成できるようになるからであると推測することができるでしょう。

 

一般に、互いに相反する運動を行う2つの筋肉または筋肉群のことを拮抗筋といいます。たとえば,上腕二頭筋 (屈筋) と上腕三頭筋 (伸筋) は互いに拮抗筋です。拮抗作用は,筋肉が円滑な運動をするうえに重要な役割を果しています。

 

くり返しますが、呼吸を司る筋肉である腹筋群(呼気群)と横隔膜(吸気筋)は互いに拮抗作用を持つだけでなく、共同的(協働的)にも作用します。拮抗作用については特別な注意を払わなくても無意識のうちに自動的に繰り返されていますが、腹筋群と横隔膜を協働的に作用させるためには意識的にトレーニングする必要があります。

そのためには、呼吸に関する解剖学・生理学・心理学等の科学的・医学的な知識が必要になってくるのです。

 

水氣道の稽古の課程においては、入門期(体験生)から初期(訓練生)までの時期においては、無意識の自然体の呼吸に委ねて稽古をくり返すことになります。

 

水氣道の体験生や訓練生が被る帽子の色は「白」と定めていますが、これは「肺」という臓器の色を表しています。「肺」は呼吸を司りますが、「肺」自体は筋肉ではないので自主的に収縮や拡張をくり返すことはできません。これらは呼吸筋によって委ねられているからです。つまり、「肺」は受け身の臓器であり、それ自身が意思の力によって直接コントロールされる臓器ではないことを理解しておいてください。

 

しかし、水氣道の稽古が進んでいくと、呼吸を意識的にコントロールする技術が必要になってきます。訓練生から修錬生になるということは、呼吸に関して、レーマンが教えている通り「腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てることが必要になってくるのです。

 

修錬生の帽子の色が「朱」であるのは、筋肉の色を象徴しています。ただし、ここで筋肉というのは四肢の骨格筋ばかりでなく、呼吸筋が含んでいるし、心筋(心臓は筋肉性の臓器)も含んでいるものと理解しておいてください。

 

なお、「胸郭にある反発する筋肉 ― 息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる "ー" についてよく理解し、それを意識的に働かせるところにある。

と訳されていますが、「胸郭にある反発する筋肉」とは胸郭にある呼吸筋群を意味するものであり、また「反発する筋肉」とは、互いに拮抗する筋群、すなわち、呼気筋群(胸郭内では主に内肋間筋)と吸気筋群(主に横隔膜、他に外肋間筋など)を意味するものと考えると理解しやすくなるでしょう。

 

「息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる

という場合の息は、すなわち呼吸ですが、呼吸は呼気と吸気によって成り立っています。この場合の息とは吸気の息であり、息を吸うことによって肺が拡張し、その結果、胸郭全体が外側に向かって、つまり胸郭の壁を形成している内および外肋間筋が伸展することになります。
 

そして、進展させられた筋肉は、収縮するためのエネルギーが蓄積していきます。声楽家になるためには、呼吸筋の進展と収縮のメカニズムを知ることによって、呼吸を十分にコントロールできるような訓練が必要だ、といのがレーマンの教えであるといえるでしょう。