『水氣道』週報

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.8

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続々)

 

水氣道は、浮力によって支えられることによって、立位であっても抗重力筋の緊張が緩和されます。それによって、身体の内側の深層筋を活性化させることができます。

また、深層筋の活性化によって、外側の筋をリラックスさせることができます。 

 

このように、水氣道の稽古では直立姿勢を内側から安定させることができます。そのため、水氣道の稽古を続けることによって筋肉を3次元的に活性化させることができるようになります。

 

歌を歌うときにはフレーズの前で息を吸いますが、舌の後方の筋肉(舌骨筋など)と舌の付け根でギクシャクした動きが発生し易くなります。私も例外ではありませんでした。その原因は、口呼吸と鼻呼吸の正しい呼吸バランスがとれていなかったためです。そのような場合には、どうしてもフレーズの始まりに圧力がかかり易くなるために、このとき、筋肉を三次元的に活性化させて、この緊張を補正する必要があります。

 

プロの声楽家でさえも、ほとんど反射的に間違ってしまいかねないのが「舌の支え」方です。これを避けるためには、喉頭の筋肉を意識的に弛緩させることが必要です。これはなかなか習得するのが難しいですが、私はこの難題を克服するために、水氣道で養われる注意力と忍耐力を用いています。

 

私は、「舌根が固くなっている」とよく注意を受けてきました。その状態のままでは、呼吸がアンバランスとなり、歌唱を継続させるために必要な水準のリラックスが得られなくなってしまいまうのです。そのような場合は舌の裏側が「ケーキの生地」のように大きく丸まり、なおかつリラックスした状態を保つことで、呼吸のバランスとリラックスを得るようにしています。こうすることで、喉仏を圧迫することもなくなりました。

 

このような方法で喉頭蓋の活性化により、軟口蓋が持ち上がり、口呼吸と鼻呼吸のバランスが取れるようになります。スローモーションであくびを始め、リラックスしてあくびをする前に少し間をおきます。 

 

今、あなたはこの活性化を感じ、心地よいリラックスした感覚を持ち、鼻と口で同時に息を吸ったり吐いたりすることができます。このエクササイズを完璧にこなすと、息を吸うときと吐くときの音が同じになるのがわかると思います。つまり、息を吸うときも吐くときも、呼吸圧が変わらないということです。

 

水氣道では、脱力状態と緊張状態のバランスの上にリラックスがあると教えています。声楽もこれと同じであり、感情レベルだけでなく、身体にもバランスのとれた緊張と緩和が構築されればされるほど、歌の芸術性が高まると考えられています。このバランスを崩し、リラックスよりも緊張して歌うと、声に負担がかかってしまいます。逆に、リラックスより緊張の方が強いと、色気のない声になってしまい、芸術性のない歌い方になってしまいまうのです。