『水氣道』週報

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.10

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続・続・続々)

 

超一流の声楽家は、プレッシャーのない歌声を生み出すために、日夜稽古を続けているように見受けられます。プレッシャーのない歌声とは、エネルギーの流れを妨げられることがないということです。これは水氣道の稽古でも全く同様です。

 

しかし、これとは少し違った側面もあります。それは「声を飲み込む」感覚です。私は歌っている最中に、息を吸い続けているような感覚、遠くから声を出しているような感覚を経験します。

 

この「遠隔操作感覚」を実現すると、呼吸に伴う目立った雑音は発生しなくなります。

それは、舌や舌骨による偽りの支えから解放されて、空気が三次元的に自由に流れるようになるからです。

 

水氣道においても、抗重力筋を過度に緊張させて身体を支持しようとする長年の悪癖から解放される必要があります。これが、バランスのとれた緊張と緩和の基本です。深層筋にかかる緊張と弛緩をバランスよく行う必要があります。
 

水氣道では大きな動作を素早く行おうとする際に動員される大きな筋力の支えは、同じ程度の拮抗筋の弛緩がないと動作展開が円滑でなくなります。
 

身体レベルだけでなく、感情レベルでもバランスのとれた緊張と緩和が構築されればされるほど、歌の芸術性が高まるのですが、水氣道の動作においても、変化に富んだ様々な動きが可能になります。

 

このバランスを崩し、緊張してしまうと円滑な動きの流れが阻まれてしまいます。逆に、リラックスに傾き過ぎてしまうと、しまりのない、だらしない動きになってしまいます。
 

それでは、どのようにバランスを保ったらよいのか、ということになります。
それは、姿勢-呼吸-動作を統合することで達成できます。

 

今回は、以下の5つの「魔法のツボ」を意識して、インナーマッスル(深層筋)を伸ばす実習を試みてください。

 

(1) 大腿の内側の筋肉から順に、第12胸椎を経て頚椎まで、首の吸気ストレッチ。


(2) 尾骨部からはじめて、さらにその先まで、体幹の呼気ストレッチ。

 

(3) 第12胸椎の両側にある横隔膜の付着部から、腹横筋に沿って側方に上がる背中の吸気ストレッチ。

 

(4) 前鋸筋を胸骨に向かって幅寄せする(コルセット感覚)
胸の呼気ストレッチ。

 

(5) 肩甲骨の裏面も幅と長さを伸ばす肩の吸気ストレッチ。

 

 

水氣道で呼吸の流れが洗練されることで、深層部の筋肉が活性化されます。

そのためにもエクササイズをゆっくりと何度も繰り返す価値があるのです。

 

それが達成できたときに得られる感覚が「融通無碍の人類愛」の悟りであり、無我の境地の瞑想状態であるとイメージしておいてください。