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声楽の理論と実践から学ぶNo.7


水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続・続々)

 

歌をうたうという芸術の神髄と水氣道(その3)

 

声楽というと、腹式呼吸が代名詞代わりですが、胸式呼吸の要素を排除するものではありません。むしろ腹式呼吸と胸式呼吸が統一的に連動しないとオペラのような大曲を歌いきることはとうてい叶いません。
 

水氣道も、これと全く同じです。腹式呼吸とか胸式呼吸とかを厳密に区別する健康上の実益が乏しいからです。そして、水氣道では、ごく自然な呼吸に委ねながら稽古を始めていくことになります。なぜならば、呼吸というものは意識しすぎると、リズムが崩れ、非効率的な動きになりかねないからです。
 

水位にもよりますが、水面が臍のあたりに達すると、腹腔に大きな水圧がかかってくるため、意識せずして腹式呼吸のパターンになります。また水位が乳首あたりの深さになると、腹腔ばかりでなく胸腔にもかなり大きな水圧の負荷がかかるため、おのずと腹式呼吸だけでなく胸式呼吸が働きだし、両者は一体となって、水中運動の継続を可能としてくれます。水圧という、自然で安全な加圧メカニズムによる有酸素運動が展開していくことになります。

 

胸式呼吸は肋骨の動きを主体とする呼吸法で、吸気時に働く筋肉は外肋間筋と吸気補助筋、呼気に働く筋肉は内肋間筋であります。 吸気時には外肋間筋と複数の吸気補助筋が強く収縮して、肋骨を大きく前上方に引き上げ、吸気を助けます。 呼気時には内肋間筋が収縮して胸郭を縮めて、呼気を助けます。

 

このとき、水圧も胸郭を縮める作用が働くため、呼気筋の働きを助け、陸上での呼吸よりも多くの呼気量を確保することができることになります。呼気時の呼吸補助筋としては内肋間筋と腹筋があります。胸腔よりも腹腔はさらに大きな水圧を受けているため、主たる補助呼気筋である腹筋が大いに鍛えられることになることは理解し易いのではないかと思います。

 

主な呼吸筋は、横隔膜と肋間筋です。横隔膜は胸腔の下端にあるドーム状の骨格筋で脊髄神経である頚神経叢か出る横隔神経に支配されています。横隔膜が収縮すると胸郭が広がり、胸腔内圧が低下するため吸気が行えます。肋間筋は肋間にある3層の薄い筋で内肋間筋・外肋間筋・最内肋間筋からなっています。外肋間筋は吸気時、内肋間筋および最内肋間筋は呼気時に、それぞれ肋間神経の働きで収縮します。

 

 

呼吸筋の働き
 

横隔膜も肋間筋も骨格筋で運動神経の支配を受けて随意的に収縮させられる随意筋です。そのため呼吸を一時的に止めたり、大きくしたりすることができます。
 

内肋間筋が収縮して肋骨が引き下げられると、胸郭が狭まり容積が減るため胸腔内圧は上がり、それに伴い呼気が発生します。これに対して、外肋間筋が収縮して肋骨が引き上げられると、胸郭が広がり容積が増えるため胸腔内圧が下がり、それに伴い吸気が発生します。ただし、安静呼吸では内肋間筋が収縮しないまま、外肋間筋や横隔膜が弛緩するだけで呼気が発生します。

 

外肋間筋の働きを補助する呼吸補助筋には、斜角筋、胸鎖乳突筋、肋骨挙筋、大胸筋、小胸筋、などがあり、これが吸気時に収縮して肋骨をもちあげる働きを補助します。

 

また、脊柱起立筋群により脊柱を後方に反らせると、肋骨の挙上を助けます。水中で前進するためには、バランスの取れた正しい姿勢でないと動けない仕組みになっているため、特段の意識や注意を払い続けなくても正しく美しい姿勢を維持し易くなります。 正しく美しい姿勢とは、呼吸するうえで妨げにならない呼吸であり、さらにいえば、効率の良い呼吸を助け支え継続し易くしてくれる姿勢のことを意味するのです。


こうして、正しい姿勢と正しい呼吸とが稽古を通して自然に一体化していくのが水氣道の素晴らしさの一つであることを、是非、心に留めておいてください。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.6

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続・続々)

 

歌をうたうという芸術の神髄と水氣道(その2)

 

今週も、先週に引き続き、声楽教師としてのソプラノ歌手リリー・レーマンの声楽理論書『Meine Gesangskunst』(1902)(邦訳『私の歌唱法—テクニックの秘密—』川口豊訳 2010年 シンフォニア)18頁から「抜粋」して、レーマンの考え方を紹介するとともに、改めて水氣道に光を当ててみたいと思います。

 

抜粋2「歌をうたう芸術の神髄は、腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てるところにある。それらの筋肉の働きによって呼気の空気圧が作り出される。次に、胸郭にある反発する筋肉 ― 息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる ー についてよく理解し、それを意識的に働かせるところにある。息が胸の筋肉を押し広げることによって、声楽家は息をコントロールすることができるようになる。そして、息は声帯を通り抜け、長い通路を通り、たくさんの共鳴腔や頭腔へと振動を伝える。」
 

呼吸とは、本来、意識して人為的に組み立てられるシステムではなく、そのほとんどが無意識に、つまり、自然に繰り返されている生命活動です。そして、私たちは腹筋や横隔膜(横隔膜は、それ自体が筋肉で、主たる吸気筋)の働きを知らなくても呼吸し続けています。

歌をうたう行為も、呼吸という生命現象が基本にあります。ただし、声楽教師のリリー・レーマンは、歌をうたう芸術の神髄が「腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てる

 

ことにあることを教示しています。つまり、声楽の基礎は呼吸筋の働きを意識することからはじめるべき、ということになります。

 

声楽のレッスンと水氣道の稽古の導入法の違いは、まずこの点にあります。水氣道は、呼吸のメカニズムを知らなくても稽古を始めることができます。水中での立位の運動を行うときに、特別の意識を払わなくても、身体に直接影響を及ぼす水が呼吸筋を直接鍛えてくれるからです。
 

吸気時に収縮する筋肉は横隔膜の他に、外肋間筋、吸気補助筋などですが、これに対して、呼気時に働くのは腹筋の働きが大であり、他に内肋間筋などがあります。

水氣道の稽古でも、横隔膜は吸息の主動作筋であり、腹筋群は呼息の強力な補助筋として働きます。これらの両筋群は互いに拮抗作用を持ちますが、共同的にも作用します。そこが、他の四肢の骨格筋群とは異なる呼吸筋の特徴であると言えるでしょう。

 

レーマンが、呼吸筋の働きを意識して組み立てることに歌をうたうように指導するのは、呼吸が発声や歌唱の基礎になるからばかりでなく、こうした呼吸筋群(呼気群と吸気群)の特性を認識することによって、より高度でより精緻な呼吸コントロールを早期に達成できるようになるからであると推測することができるでしょう。

 

一般に、互いに相反する運動を行う2つの筋肉または筋肉群のことを拮抗筋といいます。たとえば,上腕二頭筋 (屈筋) と上腕三頭筋 (伸筋) は互いに拮抗筋です。拮抗作用は,筋肉が円滑な運動をするうえに重要な役割を果しています。

 

くり返しますが、呼吸を司る筋肉である腹筋群(呼気群)と横隔膜(吸気筋)は互いに拮抗作用を持つだけでなく、共同的(協働的)にも作用します。拮抗作用については特別な注意を払わなくても無意識のうちに自動的に繰り返されていますが、腹筋群と横隔膜を協働的に作用させるためには意識的にトレーニングする必要があります。

そのためには、呼吸に関する解剖学・生理学・心理学等の科学的・医学的な知識が必要になってくるのです。

 

水氣道の稽古の課程においては、入門期(体験生)から初期(訓練生)までの時期においては、無意識の自然体の呼吸に委ねて稽古をくり返すことになります。

 

水氣道の体験生や訓練生が被る帽子の色は「白」と定めていますが、これは「肺」という臓器の色を表しています。「肺」は呼吸を司りますが、「肺」自体は筋肉ではないので自主的に収縮や拡張をくり返すことはできません。これらは呼吸筋によって委ねられているからです。つまり、「肺」は受け身の臓器であり、それ自身が意思の力によって直接コントロールされる臓器ではないことを理解しておいてください。

 

しかし、水氣道の稽古が進んでいくと、呼吸を意識的にコントロールする技術が必要になってきます。訓練生から修錬生になるということは、呼吸に関して、レーマンが教えている通り「腹筋と横隔膜筋の働きを知り、その働きを意識して組み立てることが必要になってくるのです。

 

修錬生の帽子の色が「朱」であるのは、筋肉の色を象徴しています。ただし、ここで筋肉というのは四肢の骨格筋ばかりでなく、呼吸筋が含んでいるし、心筋(心臓は筋肉性の臓器)も含んでいるものと理解しておいてください。

 

なお、「胸郭にある反発する筋肉 ― 息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる "ー" についてよく理解し、それを意識的に働かせるところにある。

と訳されていますが、「胸郭にある反発する筋肉」とは胸郭にある呼吸筋群を意味するものであり、また「反発する筋肉」とは、互いに拮抗する筋群、すなわち、呼気筋群(胸郭内では主に内肋間筋)と吸気筋群(主に横隔膜、他に外肋間筋など)を意味するものと考えると理解しやすくなるでしょう。

 

「息は胸の筋肉に向かって広げられるように押しつけられる

という場合の息は、すなわち呼吸ですが、呼吸は呼気と吸気によって成り立っています。この場合の息とは吸気の息であり、息を吸うことによって肺が拡張し、その結果、胸郭全体が外側に向かって、つまり胸郭の壁を形成している内および外肋間筋が伸展することになります。
 

そして、進展させられた筋肉は、収縮するためのエネルギーが蓄積していきます。声楽家になるためには、呼吸筋の進展と収縮のメカニズムを知ることによって、呼吸を十分にコントロールできるような訓練が必要だ、といのがレーマンの教えであるといえるでしょう。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.5


水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点(続)

 

歌をうたうという芸術の神髄と水氣道(その1)

 

私は今年、武蔵野音大に通っていますが、現在すでに62歳です。そして、今年63歳を迎えます。クラシックの声楽家歌としての今後の活躍についてとなると、多くの皆様から期待していただける可能性は乏しいかもしれません。   

 

しかし、師匠の岸本力先生は、先日、デビュー50周年記念リサイタルを立派に成功させているし、私と同年の時に、立派な業績を残したソプラノ歌手の事例によって、勇気を与えられています。そのソプラノ歌手とは、リリー・レーマン (Lilli Lehmann, Elisabeth Maria Lehmann 1848年11月24日-1929年5月17日) です。彼女はドイツのヴュルツブルク出身のオペラ歌手で声楽教師でした。
 

生涯にわたって現役の声楽家であることは至難の業ですが、可能な限り、高齢に至っても進歩を遂げようとする声楽家の姿こそ、生涯エクササイズを名乗る水氣道が目指している方向性なのです。
 

彼女は著書でこう述べます。「科学の目が歌をうたうことにほとんど向けられていない、科学的にものをとらえることのできる声楽家がほとんどいない」と。

 

これは現在に至っても変わらない事実です。私は、科学的な教育を受けてきた医師として声楽に入門したのですが、科学的なメソッドでレッスンを受けたことはほとんどありません。しかし、医師であるからこそ、指導者のアドバイスを医学的な知識や理解を助けとして、再構成して身につける機会に恵まれていたことには大いに感謝しています。
 

 

そこで、リリー・レーマンについて、まず簡単に紹介します。

 

リリー・レーマンは、63歳の時にODEON RECORDに多数の優れた歌唱を録音している。

まだ旧式の機械式録音の時に行ったのであるが、その歌声は非常に張りが在り、綺麗な美声であって、アーティストの名前を知らずに聴くと、既に63歳になっている人が歌唱をしていると、 誰もが気付かないし、いつ録音したか、何歳での録音かを知ら無い人が聴いたら、その歳とは気付くことは不可能である。

 

若い歌手と同様な高音部も難無く熟しており、他の優れていた著名な歌手が衰えて、高音部の歌唱の時に、苦労しているのが観られたり、音程を下げての歌唱に代えたりしているが、リリー・レーマンにはそのような事は無縁であった。
      

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

・声楽教師としてのリリー・レーマンは1902年に『Meine Gesangskunst』という声楽理論書を出版しています。(邦訳『私の歌唱法—テクニックの秘密—』川口豊訳 2010年 シンフォニア)。

 

そこで、水氣道に対して重要な示唆を与えるレーマンの考え方を、この翻訳書の18頁から「抜粋」して、紹介するとともに、そこから、改めて水氣道に光を当ててみたいと思います。

 

抜粋1「歌をうたう芸術の神髄は、特に呼吸について正確に知るということにある。また、鼻、舌、上あご等によって作られるフォームーすなわち歌うためにのどのフォームを組み立てるーを知るところにある。息はそのフォームの中を通り抜けて行く。」
 

水氣道の目指すものは、健やかに生きる姿勢について、仲間と共に生涯を通して探求し続けることにあります。水氣道にもフォーム(形)があり、各種の航法があります。この形(かた)や航法の稽古を通して、健康的な姿勢や呼吸、動作を組み立てていくのが水氣道です。稽古を通して身に着けた形(かた、フォーム)は、水中に限って有効に作動するのではなく、ふだんの陸上での日常生活全般を通してイキイキとして活気に満ち、生産的で創造的な活動を可能とします。
 

水氣道では、まず姿勢、つぎに呼吸、さらに動作という一連のステップが水中では陸上よりも自然に、自動的に整うことに着目して体系が組まれています。

 

ですから、水氣道の稽古を続けていくうちに、歌う人にとっては、特に呼吸について正確に知らなくても、鼻、舌、上あご等によって作られるフォームーすなわち歌うためにのどのフォームが組み立てられていきます。

 

水氣道は声楽家に特化して発展してきた訳ではありませんが、結果的に、水氣道によって整えられた姿勢、呼吸、動作によって構築されたフォームの中を、芸術的な歌唱をするにふさわしい息が通り抜けて行くようになります。

 

私がしばしば、「水氣道は人体を楽器にしてくれる」と発言している根拠はここにあるのです。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.4

 

水氣道の稽古と声楽のレッスンの共通点

 

私が声楽レッスンのためにウィーン国立音楽大学でクラウディア・ヴィスカ先生のマスタークラスで集中レッスンをうけていたとき、医師である私の研究分野を尋ねられたことがあります。

その際に、心身医学(Psychosomatische Medizin)とお答えしたところ、ヴィスカ先生は、ただちに、声楽も心身医学の芸術的表現です。」とお答えになったことを印象深く記憶しています。


わたしは水氣道を心身医学の実践体系として構築してきたためか、水氣道と声楽との繋がりを、ますます密接に感じながら今日に至っております。

 

現代のストレス社会においては、行政による理不尽な行動抑制や社会的同調圧力なども加味して、なかなか自分を解放することが難しくなってきています。  

 

そのような生活環境の中で抑圧された自分の現実を直視することから逃避していては問題を先送りにして解決を困難にするばかりです。そのためには、自分の感情をみずからが否定したり、押し殺したりすることを止めようとする勇気と決断が必要です。

 

つまり、自分を解放するためには、まず抑圧された、あるいは抑圧されて凍り付いていた自分の感情を、温め、解凍し、動き出すことが求められるのです。

動きが無ければ音楽が成り立たないように、水氣道にも動きがありますが、そのためには、まず自由な体の動きを可能とする、とらわれのない心の動きへ働きかけることから始めなければならないのではないでしょうか。

 

ちょっとした不愉快なできごとや心配事、その他ネガティブな体験をした瞬間に、私たちは無意識のうちに自己防衛システムが作動して、自動的に呼吸と筋肉が収縮します。

一瞬ではあっても、呼吸も動作も止まってしまいます。そのような状況下にあると、再び動き始めたとしても、息は浅いまま、動きもぎこちないままとなってしまいがちです。

 

私は水氣道や声楽によって自然に復帰した姿勢・動作・呼吸・発声を通じて、閉ざされていたエネルギーの通路が開いたことをしばしば体験し、その体験をくり返すことによって、そうしたメカニズムが、より確かに作動するようになるという経験を重ねてきました。

 

水氣道の体験生や修錬生たちも私と同じプロセスを経て成長を続けています。

これらの一つ一つはとても感動的な体験であり、また何度でも再現可能な解放的で美しい経験になっていきます。

 

私たちの無意識のうちに「凍りついて流動性を失った」感覚は、水氣道の実践によって、徐々に「解凍」され、溶けていき、流れるような、自由なスイングと感覚を持った本来の自分の心身の状態へ回帰していきます。

その瞬間から、鼓動や呼吸のリズムが再生し、心身の音楽が流れ始めるのです。

 

そこから、水氣道のメソッドに従ってさらに体系的に稽古をしていくこと、水氣道では、それを「修錬」と呼んでいます。この段階に至るためには、水氣道独自の感動的な「体験」を経て、自分の心身のあるがままの姿に対する気づきが促されなければなりません。

つまり、単回の偶然の事象や一過性の受動的な「体験」ではなく、反復して再現させることができる能動的な「経験」を「技」と体得していく必要があります。

そして、こうした「体験」や「経験」は単に主観的で個人的な感覚のレベルにとどまっている限りにおいては、「技」として定着するには至りません。他者との共有が必要だからです。互いに共鳴し、調和することができなくては水氣道は成立しないのです。

 

水氣道の「技」は教えられ、自ら実践して完成するものではなく、自らが教えられた通りに、自らの実践してきた通りに、未体験・未経験の参加者に伝達することができるまでのレベルに達していなければなりません。水氣道における「修錬」は、そこから始まるのです。

 

訓練(クンレン)の「レン」は練習の「練」で糸偏です。これに対して、修錬(シュウレン)の「レン」は鍛錬の「錬」で金偏です。

読みは同じ「レン」であっても、水氣道においては、「訓練」と「修錬」とにおいて存在する格段の質の違いをわかりやすく表示したものなのです。

 

水氣道は、無理なく、皆に楽しく味わっていただける稽古体系です。

多くの皆様を、より楽しくより充実した喜びに誘うためにも、稽古の体験・訓練・修錬という段階を、これからもいっそう丁寧に踏襲していきたいと思います。

 

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水氣道の3カ月周期システムについて

 

生涯エクササイズである水氣道は、稽古習慣を確立し、維持し、発展させるための仕組みをもっています。それが3カ月周期システムです。

 

3カ月周期システムが端的に表れているのが、<小審査制度>です。小審査制度とは、体験生と訓練生を対象として、稽古への参加状況や目標達成度等を評価して、昇級を吟味する制度です。3月、6月、9月、12月の下旬までに審査を実施し、翌月、4月、7月、10月、年明け1月には合格者の昇格を発表しています。

 

また小審査と期を一にして、訓練生5級(中等訓練生)および4級(高等訓練生)を対象とする<ファシリテーター認定>を実施しています。現在5つの技法のファシリテーター資格を認定しています。

 

 

訓練生になると、まずファシリテーター資格を2つ取得することを目標とします。そして、ファシリテーター資格を2つ取得した訓練生5級(中等訓練生)が、4級(高等訓練生)認定候補者となります。また、残りの3つのファシリテーター資格を取得した訓練生4級(高等訓練生)が、帽子の色を白から朱に替えて准3級(特別訓練生)を目指すための準備段階に入ります。
 

昨年は、このファシリテーター制度が確立し、今年も順調に発展しています。

 

そして、今年の課題は、半年ごとに実施される<中審査制度>に併せて実施している<インストラクター認定>です。
 

中審査の対象者は、准3級(特別訓練生)、3級(初級修錬生)、正・准2級(中等訓練生)、准1級(高等訓練生)です。インストラクター資格は現在のところ7つを予定していますが、詳細は、必要な段階になったら、改めて紹介いたします。

 

このように、水氣道では、3カ月周期で、昇級審査や技法資格授与(ファシリテーターおよびインストラクター)を行っています。

 

そのため、3カ月単位で、月ごとに甲の月(全体で同じプログラムを稽古する月)、乙の月(稽古の前半は全体稽古、後半は階級別稽古をする月)、丙の月(昇級対象者や技法資格取得予定者のための強化プログラムを軸とした稽古をする月)というローテ―トを実施していくことになります。

 

水氣道の3カ月周期システムは3カ月ローテートシステムと一体的に運用していくことによって、無理がかからず、マンネリズムに陥ることもない螺旋的な発展を目指すことが可能になることでしょう。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.3


横隔膜と大腰筋の繋がりと、仙骨運動との関連性について

 

大腰筋は上部腰椎の側面から横隔膜の後を通って、腸骨筋とともに大腿骨の小転子につながっています。股関節を伸ばすと、大腿骨は大腰筋を介して上部腰椎を前に引っ張り、脊柱の動きを制限します。また、上部腰椎と第12肋骨は弓状靭帯でつながり、その弓状靭帯に横隔膜がつながっています。

 

大腰筋は、平地の歩行ではあまり鍛えられません。階段を上ったり、ハイキング登山を楽しむなどして適切に鍛えることができます。しかし、平坦であっても水中歩行であれば、大腰筋は大いに鍛えられます。

 

水氣道の基本航法の中でも第三航法(前蹴り歩き航法)などで、仙骨のうなずき運動が生じると第5腰椎が伸展します。腰椎が伸展運動を起こすと横隔膜の腰椎部である右脚と左脚が下方へ伸張され,横隔膜全体は下方へ牽引されます。それによって,横隔膜が下降し、横隔膜ドームの平坦化によって,胸郭の垂直径が増えます。また,横隔膜の下降によって,腹腔内容の圧縮,腹横筋のような伸張された腹筋群の他動的張力による腹腔内圧の上昇による抵抗を受けます。

 

腹腔内圧の上昇は,下部肋骨を側方へ拡大させます。腹腔内圧の上昇によって一旦固定されると引き続いて生じる横隔膜の肋骨線維の収縮により下位と中位の肋骨が挙上されます。また,仙骨の起き上がり運動により寛骨は外旋‐内転します。それに伴って,大腰筋は緩んだ状態となり,大腰筋と筋連結をもっている横隔膜も弛緩します。

 

これによって,仙骨のうなずき運動により横隔膜全体は下方へ牽引され,仙骨の起き上がり運動により弛緩が促されることになります。

 

水氣道の航法に組み込まれている、このような仙骨のうなずき‐起き上がり運動の反復訓練によって横隔膜の収縮‐弛緩がスムーズに行われるようになります。

 

その結果、呼吸機能が向上し、心肺機能ならびに全身の筋肉活動を高めることに繋がって行くことが期待できます。
呼吸効率の改善と有酸素運動能力の向上は脳の諸機能を活性化し、気分を安定化させ、認知能力を高めるのに役立ちます。
このようにして、水氣道は心身の両面に及ぶ全人的な鍛錬法として発展を続けています。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.2

 

声楽の場合、体が楽器ですから、コントロールする上で、必要な知識が求められます。実は、水氣道にとっても、必要な知識があります。

 

声楽では、声のコントロールにおいて、脱力と緊張のバランスがどちらかに偏ってしまうと、声の揺れや上ずり、音程の低すぎや高すぎ、レガートやスタッカートができない、等の問題が起きます。

これは水氣道も同様なのですが、水氣道でいうリラックス状態というのは脱力状態とは異なることに気を付けてください。水氣道でいうリラックス状態とは、中庸の状態であり、それには一定の幅があります。脱力状態と緊張状態の間にある、その時点においてもっとも機能的かつ効率的な緊張バランスが水氣道でいうリラックス状態です。

 

 

また大変重要視しなくてはならないのは、舌の訓練です。

 

舌は普段の生活では、本来の長さよりも萎縮しています。そうなると、萎縮した舌と横隔膜が原因で安定した声が出ません。

 

それはなぜでしょうか。声楽のレッスンでは『支え』という言葉を使って指導をうけることがあります。日本語の『支え』とは、素晴らしい言葉ですが、より具体化しなければ体得できない心身の状態です。

 

それから、呼吸は筋運動に伴う生命現象です。しかも、主たる吸気筋である横隔膜でさえも単独では動きません。浅い呼吸によって、声が平坦に聴こえるのは、横隔膜と大腰筋の繋がり(註)である、ある部分を活発に使えていないからです。

 

呼気と吸気のバランスは、人それぞれ違い個人差がありますが、歌唱の際はフレーズとフレーズの間で息を吸う際に、特に注意しなければなりません。

 

(註)横隔膜と大腰筋の繋がり

腸腰筋は腰椎を介して横隔膜と連携しています。その腸腰筋は、大腰筋・小腰筋・腸骨筋からなっています。腸腰筋のうち大腰筋は第12胸椎あたりで横隔膜と筋連鎖することで横隔膜下制が起こり、ドームが平坦化します。吸気時すなわち横隔膜収縮時には腸腰筋は腰椎・骨盤を安定させています。そのため腹腔内圧上昇、下部胸郭拡張が起こります。

もし腸腰筋に過緊張や機能低下があった場合、連結している横隔膜など他の筋にも影響を及ぼします。その結果、呼吸運動が制限されてしまいます。

 

このように一見呼吸とは関係が薄そうな下肢筋でも、呼吸筋との連結を介して呼吸に関連する筋は多数存在します。そのため、筋の作用と繋がりを理解しておくことが大切であり、水氣道の技の体系は、このような理解の上に構築されています。

 

声楽では上半身が脱力すればするほど、下半身のエネルギーをより深く使うことができると教えられます。そうはいっても、下半身のエネルギーをより深く使うことができるようになるのは容易ではありません。その点に関して、水氣道では、水中歩行は下半身のエネルギーを要する運動であるため、必然的に上半身をリラックスに導くことができるのです。

 

以上のように、水氣道と声楽の発声法の共通点は、本来の自然な声に導き、体のバランスを整え、自ら気づくことを目覚めさせることに見出すことができます。

 

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声楽の理論と実践から学ぶNo.1

 

私が水氣道を創始したのは、平成12年(2000)でしたが、同16年(2004)には、本格的に声楽を始めるようになりました。

 

これは、私に限ってのことではなく、水氣道は自然に姿勢を矯正し、呼吸を深くし、動作を円滑にするため、発声や歌唱を容易にしてくれるのです。

 

声楽は、長年にわたる訓練によって鍛えられた発声、音楽解釈、ディクション(註)等によりなる複合的な芸術です。そして、プロの声楽家は音楽解釈の時間、ディクションの時間と同じくらい、発声について研鑽しなければなりません。
 

(註)ディクション:

朗読、演劇、声楽などにおける言葉の発音法を指します。劇場など一定の広さを持つ場所においては、朗読、演劇、歌唱を行う場合、聴衆に言葉が明瞭に聞き取れる発音、すなわち「舞台発音法」が必要となります。

 

 

しかし、私たちアジア人は普段から顎の位置、肩の位置が習慣的に前に重心が倒れやすく、結果的に、本来十分あるはずの喉の空間が狭くなっています。

そのため、気づかないうちに、喉に負担をかけて、過剰に筋肉を疲弊させています。
 

 

水氣道の稽古を続けていると、習慣的に前に重心が倒れやすくなっている顎の位置、肩の位置が自然に矯正されていきます。

自然に、というのは意識せずに、無意識のうちに、ということです。水氣道の稽古理論には<意識性の原則>がありますが、これには無意識のうちに体得できることの意義も含まれています。

意識して稽古したものは、絶えず意識し続けなければならないことでもあるといえるでしょう。

 

これに対して、無意識のうちに修得した技は、日頃、特段の意識をもったり、注意を払ったりすることなく身についている状態に達することができます。

もっとも、意識せずに身に付いたものは、稽古を中断してしまえば、気づかぬうちに忘れてしまいかねないので、いずれにしても稽古の継続は必要です。

 

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懸垂理論から学ぶNo4

 

懸垂のパラドックス<結論>時間をかける

 

簡単な運動ですが、正しく行うには時間と努力が必要です。

文責:クリスティ・アシュワンデン

 

The Pull-up paradox
It’sa simple exercise,but getting it right takes time and efforts
By Christie Aschwanden

 

 

 

水氣道の稽古を続けていくうえで学ぶべきエッセンスは、懸垂のような一見シンプルな競技ほど豊かです。

 

時間をかけること、辛抱すること、トレーニングの一貫性を保つこと、周期的に継続すること、目的とするパフォーマンスを習得するためには、その手段としての準備的なエクササイズを用いること、生まれつき有利な人と不利な人や向き不向きはあるがトップアスリートを目指すのでなければ努力と工夫で達成できること、など。

 

そうして得られるものは、より強くなれること、達成の暁には大きな満足感が得られること、スーパーヒーローになったような気分になれること、他の動きや技も軽々と行えるようになること、など・・・

 

懸垂や重量挙げには、身長や体重、腕の長さや筋力、体形などによって向き不向きがあり、かなりの根気や辛抱が求められるようです。また孤独に打ち勝たなければなりません。

 

これに対して、水氣道には、ほとんど向き不向きはありません。老若男女が同じ土俵(プール)で一緒に楽しく稽古できることが水氣道の素晴らしさであることを改めて感じさせられます。団体での生涯エクササイズは、自然で健康的な世代間交流の場を提供しています。

 

 

 

<結論>時間をかける

 

「辛抱してください」とキングさん。一晩でできることではありません。

一貫性が重要だと彼女は言う。

「これは避けて通れない道です。毎週、毎月、取り組まなければならないのです。

 

健康科学ライターで、ウェイトリフティングのガイドブック「Liftoff」の著者であるケイシー・ジョンストンにとって、これは重要なことです。健康科学ライターで、重量挙げのガイドブック『Liftoff: Couch to Barbell』の著者であるケイシー・ジョンストンにとって、懸垂はより強くなるための大きな探求の一部にすぎませんでした。

懸垂ができるようになるまでには、1年ほど重量挙げを続けていましたが、その甲斐あって達成感を味わうことができました。「懸垂をする必要はないんです。「私は腕が長く、そして、比較的体が大きく、その両方ともが難題です。」

確かに、懸垂が簡単にできる人とそうでない人がいるのは事実です。

「一般に、体重が増えるほど、体重に対する強度の比率は下がる」とは、StrongerBySceience.comの創設者で、3つの世界記録を持つパワーリフト競技者のGreg Nucklosの述懐です。背の高い人は、同じような体格であっても、背の低い人よりも引き上げる質量が多くなる可能性が高いのです。

 

手足が長い私が懸垂の記録を出すことはないだろう。しかし、私にはいくつかの有利な点がある。

クロスカントリースキーで鍛えた上半身の強さと、中年体型でないことだ。 懸垂はまだまだ努力が必要だが、その分、満足感も大きい。

 

「鉄棒、塀の上、壁の上など、何かに向かって体を引き上げると、スーパーヒーローになったような気分になります」とキャラウェイさんは言います。それだけでなく、近くの遊び場の鉄棒も少し楽しくなります。

 

 

以下、 原文

 

TAKE YOUR TIME

“Be patient,” Ms.King said. Your first pull-up “takes time and a lot of consintency; it doesn’t happen overnight.”

 

Consistency is important, she said.
“There is no way around this. You have to work at it, week after week and month after month.”

 

For Casey Johnston, a health and science writer, and author of the weight lifting guide “Liftoff: Couch to Barbell,” pull-ups were just one part of a larger quest to get stronger. She’d been weight lifting for about a year before she could finally do one, but it was worth it for the sense of accomplishment. “No one is required to do pull-ups,” she said. “I have long arms and I’m relatively big, which are both challenges.”

 

It’s true that pull-ups are easier for some people than for others. “ In general, as mass goes up, strength to weight ratios go down,” said Greg Nucklos, founder of StrongerBySceience.com and a powerlifter who’s held three world records. A tall person is likely to have more mass to pull up than a shorter person, even if they are similarly built.

 

I will never set any pull-up records with my long arms and legs. But I do have a few advantages:

Good upperbody strength from years of cross-country skiing and not too much middle-aged pudge. I still have to work at pull-ups, but the payoff is deeply satisfying.

 

“Pulling yourself up onto something- a bar, over a fence, up a wall- makes you feel like a superhero,” Ms.Callaway said. Not only that, she added, it also makes the monkey bars at the nearby playground a little more fun.

 

前回はこちら

 


懸垂理論から学ぶNo3

懸垂のパラドックス<各論> 構成要素を練習する

 

簡単な運動ですが、正しく行うには時間と努力が必要です。

文責:クリスティ・アシュワンデン

The Pull-up paradox
It’sa simple exercise,but getting it right takes time and efforts
By Christie Aschwanden

 

<各論> 構成要素を練習する

懸垂は誰でも一回でできるわけではありません。完全な懸垂ができるようになる前でも動作を構成するパーツに分解して、それぞれをトレーニングするとよいでしょう。以下の4つのエクササイズで、懸垂動作の重要な部分をより強く、より上手にできるようにしましょう。

 

 

Step1)バーハング

 

まず、弛緩した状態ではなく、硬直した状態でぶら下がる方法を学ぶことです。キングさんは、初心者にバーをつかみ、腹筋と大臀筋を鍛えて板状に体を硬くし、30〜45秒キープするぶら下がり練習をさせています。

 

 

Step2)肩甲骨はがし

 

懸垂の初期動作の練習をする場所があります。まずバーにぶら下がり、背中の真ん中から上の筋肉を動かして、肩甲骨を背骨のほうに寄せます。このとき、ほんの少し体が高くなるのを感じるはずです。この状態でしばらくキープし、ゆっくりと元の位置まで下ろします。肘は曲げないでください。腕は最後までまっすぐのままです。

 

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写真:a scapula pull-ups

 

『コメント』

スカルプ・プルアップは「スキャプ・プルアップ」と短く呼ばれることもあるようです。  

プルアップをする時のように、手幅は肩幅より若干広めでバーからぶら下がります。   

腕は真っ直ぐにしたままで、肩と背中上部の筋肉を使い、バーを引き下げます。     

肩甲骨を上下に動かすようにイメージで行います。

バーにぶら下がってこれが出来なければ、足を使って体重を支えます。

 

スキャプ・プルアップのメリット

まず、肩の筋肉を収縮と弛緩を繰り返すことで、首周り、肩、背中の筋肉が徐々に大きくストレッチされます。

また、プルアップの最初のトレーニングにもなり、一番下の位置で筋力が鍛えられること、腕ではなく背中を使うことを修得することができます。

そして、握力の向上にもなります。

 

 

 

Step3)遠心性懸垂

 

懸垂の一番上の位置で、頭をバーの上に出し(必要であれば椅子の上に立って)、コントロールされた滑らかな動きでゆっくりとぶら下がる位置まで体を下げます。

 

 

 

Step4)斜め懸垂

 

背中を鍛え、肩の動きをよくする運動です。ベンチプレスをするように、ウエイトバーの下に身を置きます。ただし、ベンチに寝転がるのではなく、バーにぶら下がり、かかとを床につけます。体をまっすぐに保ち、腕ではなく背中の筋肉を使いながら体を引き上げる。ゆっくりとした動作で、元の位置に戻ります。肩甲骨を背骨から離し、胸郭の周りに移動させるイメージで行いましょう。

 

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写真:a version of inverted rows

 

『コメント』
斜め懸垂(インバーテッドロー)、は上半身の引く筋肉群である広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋に効果がある自重トレーニング種目です。

 

 

以下、原文

 

PRACTICE THE COMPONENTS

Not everyone can do a pull-up the first time. Even before you can do a complete pull-up,
You can break the movement down into its component parts and train for each of them. Use these four exercises to help get stronger and more skilled at the essential parts of the pull-up motion.

BAR HANGS

The first step is to learn how to hang in a rigid position, rather than flaccidly. Ms. King has beginners practice hanging by grabbing the bar, engaging their abs and glutes to make their body stiff like a board, and then holding for 30 to 45 seconds.

SCAPULA PULL-UPS

There are away to practice the initial pull-up movement. Start by hanging on a bar and then engage the muscles in your mid and upper back to move your shoulder blades in toward your spine. As you do this, you’ll feel yourself elevating just a tiny amount. Hold for a moment in this elevated position, then slowly lower yourself to the starting position. Don’t bend your elbows. Your arms should be straight for the entire motion.

ECCENTRIC PULL-UPS

Begin at the top position of a pull-up with your head above the bar (stand on a chair to get up there if you need to) and then slowly lower yourself to a hanging position using a controlled, fluid motion.

INVERTED ROWS

This exercise strengthens the back and improve shoulder mobility. Position yourself underneath a weight bar as if about to do a bench press. But instead of lying on a bench, hang from the bar, your heels on the floor. Hold your body in a straight, rigid line and pull yourself up, initiating the movement using your back muscles, rather your arms. Return to the starting position in a slow, controlled motion. Imaging moving your shoulder blades away from your spine and around your rib cage.