安倍首相:国際協力・決断と実行の成果は如何

WHOのテドロス事務局長は今月11日に至って、新型コロナウイルス感染症について「パンデミック(世界的大流行)と表現できるとの判断に至った」とわざわざ表明しました。

 

この用語は、WHOの規定上はインフルエンザに対してのみ使用され、新型コロナウイルスでは本来適用されない用語とのことです。

 

コロナウイルスによる大規模感染症は、これまでにも重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などが発生しましたが、WHOがこうした大規模なエピデミックの事態をパンデミックと称したのは今回が初めてであるということを確認しました。

 

それならばWHOの事務局長が今頃になってなぜ異例の「パンデミック宣言」に踏み切ったのか、ますます謎だらけです。テドロス氏は「パンデミックの定義は明確なものではないが、それでもまだパンデミックと呼ぶまでには至っていない」という発言もあったことを考えると、今回の事象をパンデミックと形容することで事態の深刻さを訴える緊急の必要性が生じたものと考えざるを得ません。

 

テドロス氏は、各国に呼び掛けてきたウイルス封じ込めは「依然主要な柱だ」と強調しましたが、今後は感染経路特定などの拡大防止策一辺倒ではなく、社会的・経済的な影響の緩和や、発症者の治療といった対症療法にも注力する必要があると訴えました。

 

テドロス氏はまた「感染者や死者、国の数は今後も増えるとみられる」と予測しました。

感染が世界に拡大し早期終息が見通せなくなってきた現状を受け、WHOの規定上存在しない表現をあえて用いることで、各国に一層の取り組み強化を促したものと受け止めるのが妥当ではないかと考えます。

 

流行が進むに従い「パンデミック期」に入ったと宣言することでワクチン増産を促す狙いがあるとの見方もできそうです。パンデミック(Pandemic)とは、ギリシャ語のパン(全ての)とデモス(人々)を語源とする英単語(名詞もしくは形容詞)です。これは一般用語としては、一国全体あるいは全世界の(あるいは大部分の)国々に蔓延している病気を意味します。

 

ただし、WHOのニュアンスでは、世界中の人に感染する可能性がある病気が、制御不能で大規模に流行している状態を示唆しているものと思われます。

 

noun:

a disease that spreads over a whole country or the whole world

名詞(一国の全土もしくは全世界におよび拡大する病気)

<Oxford 現代英英辞典>

 

adj:

(of a disease) prevalent over a whole country or large part of the world.

 

形容詞(一国の全土もしくは世界の大部分にわたって蔓延する<病気の>)

 

noun:

an outbreak of such a disease.

 

名詞(そうした病気の勃発)

 

<Concise Oxford 英英辞典>

 

 

 

新型コロナウイルス(COVID-19)による大規模感染は現在までに、中国やイタリア、韓国、日本、イラン、エジプトなどのクラスターから他国に拡大し、世界の感染者数は約12万人、死者は約4380人に上っています。

 

トランプ米大統領は同じ11日に、感染拡大防止措置として、英国を除く欧州から米国への入国を13日から30日間停止すると発表しました。

欧米諸国の交流が滞れば、世界経済の悪化懸念が強まりそうです。

 

安倍晋三首相は官邸で「国際社会と協力し対応を強める。必要な対策は躊躇なく決断して実行する」と述べました。   

はじめに、この記事は2月25日に記載しました。この記事がアップされるまでの間に、新しい情報が公開される可能性があることを予めお断りしておきます。

 

短報:中国の肺炎患者から検出された新型コロナウイルス(COVID-19)

 

ニューイングランドジャーナル オブ メディシン 

 

Lirong Zou, et al. NEJM. 2020 Feb 19. [Online ahead of print]

 

< 無症状でも発症者と同等のウイルス量 >
 

中国・広東省疾病管理予防センターのLirong Zou氏らが、COVID-19の患者18例の症例報告がNEJM誌オンライン版2020年2月19日号CORRESPONDENCEにて発表。

COVID-19の患者18例の鼻と喉から採取したサンプルを調査。

 

対象:

中国・広東省珠海市で新型コロナウイルス陽性と確認された患者18例

 

方法:

❶ 鼻腔スワブと咽頭スワブから検体を採取

 

❷ 発症日とウイルス量の相関を連続的にモニタリング

 

 

結果:

18例中1例が無症状。

1例を除く17例の鼻腔スワブ72本と咽頭スワブ72本から検体を採取。
 

主な疫学的・臨床的特徴は以下のとおり。

 

・患者の年齢中央値は59歳(範囲:26~76)
男性・女性ともに9例ずつで、うち4例は2つの家族内における2次感染例。

 

・初めに発症した14例は2020年1月7日~26日までに武漢市帰りで37.3度以上の発熱が見られ、COVID-19と診断。

このうち13例については、CTで肺炎の所見あり。

その後3例はICUでの治療を要した。

他の10例はいずれも中程度~軽度の症状。

 

・1例は臨床症状が見られなかったが、発症者との接触7~11日後に採取された鼻腔スワブ(サイクル閾値[Ct]:22~28)および咽頭スワブ(Ct:30~32)から新型コロナウイルス陽性の反応が確認。

 

・発症者17例については、発症直後に高いウイルス量が検出。
また、咽頭よりも鼻腔においてより多くのウイルスが検出。

 

・COVID-19におけるウイルス核酸の放出パターンはインフルエンザと類似。
ウイスルの広がり方は、ゲノム配列が類似しているSARS-CoVよりもインフルエンザに近い。

 

・無症候者から検出されたウイルス量は、発症者のウイルス量と同程度。

 

 

考察:

無症候者およびごく軽症者からの感染の可能性が示唆。

 

 

杉並国際クリニックの見解

いかがでしょうか。中国からの論文ですが、信用に足る有益な報告です。

 

誤解が多いようですが、中国の医師や研究者の中には、政府からの迫害や自らの生命の危機をも顧みずに、使命を果たそうとする立派な方々が多数活躍しています。

 

国家からの不当な干渉を受けていなければ、現代の中国の医学のレベルは日本と同様に決して低くないことが理解できると思います。

 

日中共に医学研究者は輝かしい業績を挙げ、医学は今日でも進歩を続けています。低いのは現場の医療をコントロールする行政機構の水準です。医学水準と医療水準との大きな格差を生み出しているのが行政機構です。

 

年明けの正月5日の時点の新聞情報で、都内の片隅の一開業医ですら、早くも想定できていた事態は、どのように推移していったでしょうか。

 

内閣総理大臣や厚生労働省その他の担当大臣の分析・管理能力の水準は、彼らの動静を冷静に観察するならば、おおよそその知れてきます。

 

いまや日本国の言論封殺・情報統制は、中国以上であるという見方もあながち誇張した意見ではないと考えます。

 

このような為政者が憲法改正を主張していますが、笑止千万、危険極まりない、ということの認識を国民一般が持ち得ていないとしたら、それこそ一大事ではないでしょうか。

 

自分たちや将来の子孫たちの運命に直結する医療・環境・平和に関する課題について、国民の側から真剣に考えていく動きが生まれなければなりません。

 

そうしたステップを踏まえて改憲すべきであれば、しっかりと改憲に向けて踏み切るための明確な意思表示をすることが必要だと考えます。

<新型コロナ『世界的大流行』 感染拡大、終息見通せず> 

 

世界保健機関(WHO)は1月30日、新型コロナウイルス感染症を巡り、国際保健規則に基づく最高レベルの警告である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

 

この「緊急事態宣言」がWHOは最高レベルの警告であるということは、この時点で事実上の「パンデミック」宣言であったのかもしれません。

 

なぜならば、WHOの現行規定では、「緊急事態宣言」を上回る「パンデミック宣言」は存在しないからです。

私は、なぜWHOのテドロス氏がこれまでの間に「パンデミック」を宣言しなかったかについてこれまで疑念を持っていましたが、不勉強の極みでした。

 

WHOは2月28日にはさらに、世界全体の危険性評価を中国と同じ「非常に高い」に引き上げ、世界的な流行と既に認定しました。

遅くともこの段階で確実なパンデミックであったと考えても良いでしょう。

 

これまでは、ニューヨークタイムズの紙面でもエピデミック(epidemic)という単語ばかりが用いられていました。

 

エピデミック(Epidemic)とは、元来は病気の蔓延を意味するギリシャ語のepidemiaに由来し、後期ラテン語を経て、さらにフランス語のépidémieからépidémiqueを経て英単語(名詞もしくは形容詞)になったようです。

 

これは一般用語としては、一つの共同体内で急激に発生し周囲に拡大する伝染病や感染症を意味します。

 

皮肉にもこの言葉自体が伝搬しています。

ただし、今日のWHOのニュアンスでは、世界中の人に感染する可能性がある病気が、制御不能で大規模に流行している状態を示唆しているものと思われます。

 

noun:

a large number of cases particular disease happening at the same time in a particular community:

名詞(特定の共同体内で同時に発生する多数の事例、とりわけ疾病)

 

<Oxford 現代英英辞典>

noun:

a widespread occurrence of an infectious disease in a community at a particular time. 

 

名詞(特定の時期の一定の共同体で感染性疾患が拡散的に発生すること)

 

 A sudden, widespread occurrence of an undesirable phenomenon.
(厄介な現象が、突発的に拡散的に出現すること)

 

adj:

relating to or of the nature of an epidemic.

 

<Concise Oxford 英英辞典>

 

 

 

Développement et propagation rapide d'une maladie contagieuse, le plus souvent d'origine infectieuse, dans une population.

 

集団における伝染性疾患の拡大と急速な伝播で、主として感染に起因する。

< La Rousse仏語辞典>

 

フランス語のニュアンスでも、特定の集団からの突然の発生、急激な拡大と伝播を呈する感染症といった感じであり、疫病発生の初期の相対的に限局された地域の疫病という印象を受けます。

 

英語の例では、厄介な性質であることも含意され、対処が容易でなく更なる拡大の可能性を示唆しますが、危機的な警告を与えるまでのインパクトは持っていません。

 

しかし、言葉のもつ影響力は大きいものであることを感じずにはおれません。

 

WHOの事務局長のテドロス氏の発言は、世界に対して誤った印象を世界中の指導者に与えたまま、迷走を続けてきたように思われてなりません。

 

またわが国の安倍首相をはじめ、厚労省幹部、一部の無責任かつ無能力な感染症の自称エキスパート等が、習近平氏に対する忖度やオリンピック利権ばかりでなく、テドロス氏の能力と発言の真意を読み違えていたのではないかと、残念に思います。

昨日に引き続き、一般社団法人 日本感染症学会のHPの症例報告から、国立国際医療センターの症例報告を掲載します。

 

ただし、すでに1カ月以上を経過している情報であり、現在は異なる見解になっている可能性があることにご注意ください。

 

楽観的に過ぎる見解本来あるべき注意に色分けを施しました。
なお、最後に、杉並国際クリニックの見解を付記しました。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対応について 医療従事者の方へ

 

• 一般診療として患者を診られる方々へ(2020年2月3日現在)
一般診療として患者を診られる方々へ 新型コロナウイルス感染症に対する対策の在り方について (2020 年 2 月 3 日現在)

 

 

5. 感染対策の基本は標準予防策+飛沫・接触感染予防策です。

コロナウイルスは、新型コロナウイルスを含めて主に飛沫感染により伝播します。

現時点では空気感染の可能性はきわめて低いと考えられます。

したがって、外来での対応は通常のインフルエンザ疑い患者への対応に準じて標準予防策、飛沫予防策・接触予防策の徹底が基本となります。

ウイルスで汚染した手指を介して目・口の粘膜から感染が伝播される可能性にも注意しなければなりません。

手指衛生の徹底は感染対策の基本です。患者および医療スタッフが飛沫を直接浴びないように、サージカルマスクやガウンを着用して診療にあたることになります。

正しいマスクの着脱、適切な手洗いが重要であることは言うまでもありません。

気管吸引、挿管などのエアロゾル発生のリスクが高い処置を行う場合には、一時的に空気感染のリスクが生じると考えられているため、N95 マスクを含めた対応も考慮します。

 

6. 特別な治療法はありません。二次性の細菌性肺炎の合併に注意しなければなりません。

新型コロナウイルスによる感染症に対する特別な治療法はありません。

脱水に対する補液、解熱剤の使用などの対症療法が中心となります。

一部、抗 HIV 薬(ロピナビル・リトナビル)や抗インフルエンザ薬(ファビピラビル)が有効ではないかという意見もありますが、まだ医学的には証明されていません。

新型コロナウイルス感染症による死亡の原因に関しての情報は限定的ですが、高齢者における死亡例が多いことからも二次性の細菌性肺炎の合併には十分注意する必要があります

ステロイド等の使用に関する知見も不十分です。

本邦において新型コロナウイルスの分離・培養が成功したことから、将来的なイムノクロマト法による迅速診断法の確立、また SARS や MERSを含めた新型コロナウイルス感染症に対する特異的な治療薬の開発が期待されるところです。

2019-nCoV アウトブレイク事例は、将来的な新たな新型病原体の出現を示唆するものであり、人類への脅威として備えていく必要があると思われます。

 


7. 新型コロナウイルス感染症および対策に関する重要な情報

(1)厚生労働省: 新型コロナウイルスに関する Q&A

(2)国立感染症研究所:

(3)CDC 情報:

 

(4)中村 啓二 他: 当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告.感染症学会ホームページ(2020.2.5)


2020 年 2 月 3 日

一般社団法人日本感染症学会

舘田 一博

 

一般社団法人日本環境感染学会

吉田 正樹

 

 

 

杉並国際クリニックの見解

現時点では空気感染の可能性はきわめて低いとする一方で、一時的に空気感染のリスクが生じると考えられているという注意を喚起された一般医療従事者は、すこぶる困惑するはずです。

一般市民に対して、このまま責任をもって説明できる内容にはなっていません。

2019-nCoV アウトブレイク事例は、将来的な新たな新型病原体の出現を示唆するものであり、人類への脅威として備えていく必要がある、というのが唯一了解可能な見解です。

 

一般医療従事者に向けては、全文を文字通りではなく、「行間を読め、国や専門学会の立場を忖度せよ、医療従事者なら裏事情を察しなさい」と説教されているような気分です。

昨日に引き続き、一般社団法人 日本感染症学会のHPの症例報告から、国立国際医療センターの症例報告を掲載します。ただし、すでに1カ月以上を経過している情報であり、現在は異なる見解になっている可能性があることにご注意ください。楽観的に過ぎる見解、本来あるべき注意に色分けを施しました。

 

なお、最後に、杉並国際クリニックの見解を付記しました。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対応について 医療従事者の方へ

 

• 一般診療として患者を診られる方々へ(2020年2月3日現在)

 

一般診療として患者を診られる方々へ 新型コロナウイルス感染症に対する対策の在り方について (2020 年 2 月 3 日現在)

 


3. 中国における死亡数の増加に関して引き続き検討が行われています。
武漢市を中心に中国のほとんどの地域から17,000人を超える感染例が報告されており、中国における死亡者数は 360 人以上と報告されています。

また世界的には、日本を含めて、タイ、香港、マカオ、米国、オーストラリア、シンガポールなど 26 カ国で感染例が報告されています。これら中国以外での感染報告例のほとんどは中国(多くが武漢市)からの旅行者であり、輸入国における二次感染例・重症例の報告はほとんどありません

なぜ中国、特に武漢市にこれだけの死亡者が集中しているのかに関しては明らかになっていません。

武漢市の医療機関に多くの方が集中しパニックに近い状況になっていることが繰り返し報道されています。

医療機関への受診の遅れ、高齢者や免疫不全宿主における感染例の増加、二次性細菌性肺炎の合併などの可能性が考えられます。

現時点での死亡率は約2%とされていますが、検査をされていない患者が多数存在することを考えると、その数字は今後さらに低下する可能性があります。


4. 免疫不全宿主、高齢者を守る対策が必要になります。
新型コロナウイルス感染症の特徴の1つとして、高齢者における感染例の集積があり、小児における重症例が少ないことが特徴です。

本邦においても、長期療養型施設における高齢者は、さまざまな基礎疾患を有しており、インフルエンザやノロウイルス、さらにはメタニューモウイルスに対する感受性が高いことが知られています。

新型コロナウイルス感染症がこのような高齢者施設で流行しないように、細心の注意を払って対応する必要があります。

インフルエンザにおいても高齢者や免疫不全患者において重症化がみられることは
良く知られた事実です。

新型コロナウイルス感染症患者では発熱がほぼ必発でみられており、それに加えて呼吸器症状が重要な徴候となります。

発熱に加えて呼吸器症状がみられた患者に対しては、速やかに隔離対応を行うことが必要となります。

また、高齢者においては二次性の細菌性肺炎の合併に注意する必要があります。

 

 

 

杉並国際クリニックの見解

楽観的に過ぎる見解本来あるべき注意に色分けを施しましたが、楽観的に過ぎる見解の中には、すでに誤りであったことが判明している情報が複数含まれていることにご注意ください。

微妙な個所は、新型コロナウイルス感染症患者では発熱がほぼ必発という記述ですが、新型コロナウイルス感染症患者の中には発熱はおろか無症状のまま、感染に気付かずに他者に感染させてしまうケースが多発しています。

繰り返しになりますが、この見解を、一般市民ではなく、医療従事者向けで発表し、この記事を書いている2月18日現在に至っても書き改められていないのは残念なことです。

一般社団法人 日本感染症学会のHPの症例報告から、国立国際医療センターの症例報告を掲載します。

ただし、すでに1カ月以上を経過している情報であり、現在は異なる見解になっている可能性があることにご注意ください。


なお、最後に、杉並国際クリニックの見解を付記しました。

 

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対応について 医療従事者の方へ

 

 一般診療として患者を診られる方々へ(2020年2月3日現在)

 

一般診療として患者を診られる方々へ 新型コロナウイルス感染症に対する対策の在り方について (2020 年 2 月 3 日現在)

昨年の 12 月から中国武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症の流行を受けて、本邦の医療機関の先生方におかれましては多大なご尽力をいただき誠に有難うございます。

指定感染症としての認定、武漢市からの邦人の移送、経過観察のための滞在など、政府関係者のご尽力による水際対策、多くの関係者の多大なご協力により本邦においては感染者数も限定的であり、幸いなことにこれまでのところ重症例の発生はみられておりません。

この間、国立感染症研究所により、本邦患者から分離されたウイルスの全ゲノム解析が実施され、中国で初期に公表された遺伝子から大きな変異がみられていないことが確認されました。

また新たに、臨床症状を伴わない宿主からの本ウイルスの分離も報告されているところです。

このような事実は重要です。現在は武漢からの渡航者の入国は禁止となっております。

しかし、それ以前の数週間の間に多数の入国者があったことを考えると、すでに本邦にウイルスが入り込み市中において散発的な流行が起きていてもおかしくない状況と考えられます。

今後、症例の増加にともない重症例が報告されてくることを覚悟しておかなければなりません。

このような背景のもと、我々は新型コロナウイルス感染症に対する感染対策の在り方に関して以下のように考えております。

診療の現場において患者を診られる関係者の方々におかれましては、引き続き冷静な対応をお願い申し上げます。 

 


1. インフルエンザ対策に準じて、ただし地域・施設の状況に応じた対応が求められます。

本邦における感染者数は 2 月 3 日時点で 20 例となっております。

幸いなことに、これら感染患者の状態は落ち着いており、重症例はみられておりません。

本ウイルスの感染性に関しては、基本再生産数(1 人の患者から何人に感染が広がるか)は 1.5~2.5 と推定されており、通常のインフルエンザと同程度であることがわかってきました。

患者の家族、担当する看護師・医師における感染例は現在までのところ報告されていません。

これから感染患者数が増加するにつれて、基礎疾患を有する宿主や高齢者において重症例がみられてくることを想定していなければなりません。

しかし、これまでの本邦における感染事例の解析から、新型コロナウイルスの感染性および病原性はインフルエンザ相当、あるいはやや強い程度と考えてもよいと推察されます。

これまでのところ軽症~中等症ですが、高齢者や免疫不全患者においては肺炎合併・重症化には十分注意しなければいけません。

本感染症に対する対応には、地域・施設の特性も考慮することも重要となります。

他の入院患者等への伝播の可能性を可能な限り低減させる、医療従事者の安全を守るなどの観点から、飛沫等の発生が予測される診察時には N95 マスクを使用するなどの方策を否定するものではありません。

 


2. 新型コロナウイルスの遺伝子変異は起きていませんでした。

昨年末の武漢市の新型コロナウイルスの流行を受けて、中国の研究機関によるウイルスの分離および全ゲノム解析が行われ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)や中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)との相同性が比較されました。

その結果、今回の新型コロナウイルスは、遺伝学的に SARS-CoV に近縁であることが報告されています。

細菌、ウイルスなどの病原体は、外来遺伝子の獲得や突然変異により常に高病原性化する可能性が考えられます。

日本に持ち込まれる過程でウイルスの遺伝子が変異し病原性が高まることが危惧されておりました。

しかし幸いなことに、本邦で分離されたウイルスは、中国での初期ウイルスと 99.9%の相同性が保持されており、遺伝子変異は起きていないことが確認されました。

もちろん、今後ウイルス遺伝子の変異が起きて来ないとは言えませんが、現時点では過度に心配する必要はありません。

 

 

杉並国際クリニックの見解

楽観的に過ぎる見解本来あるべき注意に色分けを施しましたが、楽観的に過ぎる見解の中には、すでに誤りであったことが判明している情報が複数含まれていることにご注意ください。

この見解を、一般市民ではなく、医療従事者向けで発表し、この記事を書いている2月18日現在に至っても書き改められていない、ということはとても残念です。

一般社団法人 日本感染症学会のHPの症例報告から、国立国際医療センターの症例報告を掲載します。ただし、すでに1カ月以上を経過している情報であり、現在は異なる見解になっている可能性があることにご注意ください。

なお、最後に、杉並国際クリニックの見解を付記しました。

 

 

当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者3例の報告

(国立国際医療研究センター)(2020.2.5)

 

症 例:

当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告

 

国立国際医療研究センター


Key word:

2019-nCoV 感染症

 

 

序 文
新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症は中国武漢市で 2019 年 12 月以降報告されている. 2020 年 2 月 3 日現在,世界では 17,267 人の患者が報告されている.

 

内訳として武漢市で 5,142 人(死亡者 265 人: 致命率 5.15%),武漢市以外の湖北省で 6,035 人 (死亡者 85 人; 致命率 1.4%),湖北省以外の中国 全土で 6,090 人(12 人; 0.19%),中国以外の国 183 人(死亡者 1 人; 致命率 0.5%)となっており,中国での症例が大半を占めており,本邦での臨床像の詳細な報告はまだない.

 

臨床像の把握は今後の 2019-nCoV 感染症の診療および感染防止対策に寄与すると考えられるため当院で経験した 3 症例をここに報告する.

 

 

考 察

当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染 症患者の 3 例を報告した.

 

症例 1 は診断に至るまでに 1 週間を要しているが,本症例のように初期は咽頭痛などの上気道症状のみで,発熱も 37℃台の微熱に留まることがあり 1)2) , 臨床像のみで 2019-nCoV 感染症を診断することは困難と考えられる.

症例 2、症例 3 についても臨床像は急性上気道炎であり,肺炎患者にみられるような咳嗽、呼吸困難といった所見はみられなかった.

 

今回報告した3例はいずれも武漢で感染したと考えられる症例であり,現状では過去 14 日間の武漢への渡航歴の聴取が重要である.

 

しかし,現在は武漢市以外の中国全土で症例が報告されていることから,臨床症状から疑われる事例では,武漢市以外でも 2019-nCoV 感染症を鑑別に上げるべきと考えられる.

 

Huang らは 41 例の武漢市における 2019-nCoV 感染症の症例の臨床像について,発熱 98%,咳嗽 76%,呼吸困難 55%,筋肉痛・倦怠感 44%,痰 28%,頭痛 8%,血痰 5%,下痢 3%と報告している.また,39%が集中治療室に入室し,17%が急性 呼吸促迫症候群(ARDS)になっているが,これらの報告の対象集団は全て入院が必要であった重症例である.

よって,Huang らが報告した所見は,軽症例には当てはまらないと考えられる.

 

 

現在日本国内では無症候性感染者を含め 20 例の症例が報告されているが,2 月 3 日時点で死亡例は報告されていない.

当院の 3 例の中には,肺炎を伴 わない症例も含まれており,残り 2 例の肺炎を伴う 事例についても,1 例は酸素を必要としたが最大 2L/分と酸素需要は少なく,また現在は改善している.

これら 3 例は重症ではなく,日本から死亡例が出ていない.

 

中国での報告とは重症度の乖離がみられる. 2020 年 2 月 3 日現在,世界では 17,267 人の患者が報告されている.

内訳として武漢市で 5,142 人 (死亡者 265 人: 致命率 5.15%),武漢市以外の湖 北省で 6,035 人(死亡者 85 人; 致命率 1.4%),湖 北省以外の中国全土で 6,090 人(12 人; 0.19%), 中国以外の国 183 人(死亡者 1 人; 致命率 0.5%)となっており,中国での症例が大半を占める.致命率は武漢市が最も高く,湖北省,中国,世界となるに従い致命率も低下する傾向にある.

 

これは,おそらく武漢市には実際にはもっと多くの 2019-nCoV 感染症の患者がいるが Joceph らの報告では推定感染者は 75,815 人と見積もられ,情報が限られていることから重症例を中心に診断されているため見かけ上の致命率が高くなっていると推測される.

 

一方,中国以外の国では無症状者も含め軽症例が検知されているため,このような重症度の乖離が生まれるものと考えられる.

ただし,基本再生算数は WHO の報告によると 1.4-2.5,中国からの報告によると 4.0 と推定されており ,中国国内での発生に歯止めがかからないことから,日本国内でも流行が広がる可能性が十分に考えられる.

 

これらの現状を鑑み,我が国における 2019-nCoV感染症では、感染そのものを封じ込めることを目的とするよりは,致命率の低下と医療体制の維持をめざすことが良いと考えられる.

 

具体的には感染症指定医療機関や都道府県の指定する診療協力医療機関で重症例を対象として治療を行って致命率を低下させることを目指し,軽症例は全ての医療機関で診療を行う医療体制を構築することが望ましい.

 

また,感染防止対策については,日頃からの標準予防策の徹底と,接触予防策・飛沫予防策を遵守することが 重要と考えられる.

 

2 月 4 日時点では国立感染症研究所・国立国際医療研究センターからの「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策(2020 年 1 月 21日改訂版)」が参考となる.

 

当院での新型コロナウイルス感染症患者に対する診療時の個人防護具について図を添付する(Fig.9) 省略

 

利益相反自己申告:

申告すべきものなし

 

 

杉並国際クリニックの見解

国を代表する医療センターの報告書としては、推測が多く、矛盾に満ちていて残念な内容です。

3例の症例報告は貴重ですが、誤った結論を導き出しています。

 

その誤った結論とは、軽症例は全ての医療機関で診療を行う医療体制を構築することが望ましい、という見解です。

 

当該医療センター報告の1例目は、診断に至るまでに 1 週間を要している、としたうえで、臨床像のみで 2019-nCoV 感染症を診断することは困難という見解を述べています。

 

軽症例であるか重症に至る症例かの判断が全ての医療機関で可能であるとは考えていないはずです。

 

それにもかかわらず、理想論を述べるのは、国内の大多数の個々の医療機関に無理な責任と虚しい努力を押し付けているのは、国策を過度に忖度している姿勢が伺われて残念な思いがいたします。

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に効く漢方と鍼灸No1

 

中国と言えば漢方薬の本場、その中国政府が中医学(中国伝統医学)を活用しないはずがないと考え、ネット検索を試みました。すると、第一に、藿香正気散(かっこうしょうきさん)が推奨されていて、思わず納得してしまいました。

 

この処方は「和剤局方(わざいきょくほう)」という漢方の古典で 紹介されています。

 

処方名の頭についた藿香(かっこう)は、体に取り付いた邪( ウイルスなどの病原菌)を発散させる生薬で、この処方の主薬でもあります。そこで、今月は、逐次その情報をご紹介することにしました。

 

 

そこで、改めて中国の医政医管局(我が国の厚生労働省かその医政局に相当する部局か?)から中国全土の医療機関を管理する行政部門に宛に送られえた電子文書の資料を検索してみました。

 

 

予めお断りいたしておきますが、私は中国語の入門級程度の知識しか持ち合わせておりませんので、あくまでも参考程度にご覧くださいますようにお願いいたします。

 

 

<試訳:杉並国際クリニック、医学博士・飯嶋正広>

新型コロナウィルス肺炎の診療計画(試行第6版)の通知の印刷配布に関して

発表時間:2020―02―19出所:医学政治医管局

国衛弁医通知〔2020〕145番

 

各省、自治区、直轄市および新疆生産建設兵団衛生健康委員会、漢方薬管理局:

新型コロナウィルスの肺炎症例の診断と応急医療を更に確かなものとするため、私達は初期医療に対して実施した応急対応について分析した研究を総括し、基礎データを判定する上で専門家を組織し、診療計画に対して改正を行い、《新型コロナウィルスの肺炎の診療計画(試行第6版)》を発行しました。

 

現在貴機関等に印刷配布しますので、現場での医療実践の際に参照させてください。

関係各医療機関は応急的医療対応において漢方医薬の効果発揮を積極的に促して、中西医結合(中国医学と西洋医学の統合的協力)を強化し、中医(漢方医)と西洋医の連合医療制度を設立して診療にあたることによって、良好な効果が得られるよう促進してください。
  

 

添付文書:新型コロナウィルスの肺炎の診療計画(試行第6版)

国家衛生健康委員会事務局 国家漢方薬管理局事務室

 

 

 

原文を添付します。

通告公告


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关于印发新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)的通知

 

发布时间: 2020-02-19 来源: 医政医管局
国卫办医函〔2020〕145号

各省、自治区、直辖市及新疆生产建设兵团卫生健康委、中医药管理局:
为进一步做好新型冠状病毒肺炎病例诊断和医疗救治工作,我们组织专家在对前期医疗救治工作进行分析、研判、总结的基础上,对诊疗方案进行修订,形成了《新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)》。现印发给你们,请参照执行。各有关医疗机构要在医疗救治工作中积极发挥中医药作用,加强中西医结合,建立中西医联合会诊制度,促进医疗救治取得良好效果。  

  

附件: 新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)

国家卫生健康委办公厅   国家中医药管理局办公室

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 (図1)

スクリーンショット 2020-03-03 16.06.50

 

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

スクリーンショット 2020-03-03 16.06.42

 

 

 

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

 

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、11名の平均で32.2点改善していたため、全体として鍼治療は有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効2名(18.2%)、有効6名(54.5%)、無効3名(27.3%)でした。(図2)

 

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

考察:

肺MAC症では、1年以上排菌がなくなった後の再排菌は、再発ではなく"再感染"であることが多いという報告(Chest 2014;146:276-282)があるためか、専門医の間では「2回目のMACは再感染」という見解が浸透しつつある。

 


肺MAC症の治療を受けた患者466例のアウトカムを調べた報告(J Infect Chemother 2017;23:293-300)によれば、微生物学的再発率は排菌陰性化から15カ月未満の治療を受けた患者に高かったことが示されている。
 

そして、線維空洞型や気管支拡張を有する肺MAC症は一般的に予後不良である(Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 575-583、Eur Respir J 2020;055:1900798)。これは肺の構造改変が進むほど、正常に換気できる肺胞が減り、続発性の感染症が起こりやすいためである。
 

これまで標準治療とされていた「喀痰培養陰性化後12カ月」という通説に疑問を投げかける結果が得られた。治療期間は「喀痰培養陰性化後15カ月以上」という基準が推奨されることになるでしょう。
 

 

主治医が気を付けなければならないのは、

① エタンブトールの視神経症のリスク

 

② クラリスロマイシン単独治療の回避

 

③ 再発例においては、初発のときの遺伝子型と異なることがあり、抗菌剤の薬剤感受性も異なる可能性を念頭に置く
―の3点だと思います。
 

 

エタンブトールは内服が長期になると、視神経症のリスクが増えます。

 

発症時期は、中央値で278日とかなり先にあるため(Int J Tuberc Lung Dis 2018;22:1505-1510)、この副作用を処方医は常に念頭におき、定期的な眼科受診が必須であることを患者に伝えるべきでしょう。
 

 

日本のあるデータでは、肺MAC症に対するクラリスロマイシン単独治療の頻度は9.2%とされています(Pharmacoepidemiol Drug Saf 2019年12月25日オンライン版)。少量マクロライド療法などを長期投与する場合は、初回治療の時点ですでにMACがクラリスロマイシン耐性になっていることもあるので、MACの感受性は治療開始時に必ず確認しておく必要があります。

 


なお、非空洞結節気管支拡張型の肺MAC症患者の再発例のうち、75%が再感染とされています。初回に検出したMACと再発時に検出したMACが異なる遺伝子型であることが示されています。

 

<完>