》往く週《 8月16日:第20回聖楽院週例コンサート(90分スタンダードプログラム)

 

先任ピアニスト佐々木理之(聖楽院ピアノ演奏科主幹)

 

 

演奏者はお馴染みサックスの冨士田紗季、

 

音海内外で定期的な演奏活動を継続している実績が

 

音色にも表れてきているとの評価を受けています。

 

まさに「継続は力なり」です。

 

 

ソプラノ若月櫻子は、品川プリンスと地元新潟県新発田での

 

個人リサイタルを成功させてから、ますます円熟味が増し、

 

魅力的で説得力のある表現で魅了させてくれました。

 

 

若干20歳のテノール藤原拓実、入念に吟味されたイタリア歌曲の選曲、

 

現在の課題に対する研究を積み重ねて挑戦していく姿勢と解釈力が、

 

声楽家としての彼の将来を、より輝かしいものにしてくれることでしょう。

 

 

ゲストのオカリナ奏者、有延千尋さん。

 

先任ピアニスト佐々木氏の企画によるオカリナの生演奏の披露は、

 

聖楽院協力アーティストを含めて、初めての経験でありました。

 

掌にも収まってしまうほどの小楽器であるオカリナが

 

存在感と安定性のある表現を生み、

 

個性的な音色もピアノとのアンサンブルで

 

より引き立ってくることも体験することができました。

 

今回は、元来フルート奏者である有延さんと

 

オカリナとの出会いについて伺う時間がなく心残りでした。

 

次の機会を楽しみにしたいと思います。

 

 

 

 

来る週8月23日:第21回聖楽院週例コンサート(60分ショートプログラム)

 

先任ピアニスト吉田奈津子(聖楽院ピアノ伴奏科主幹)

 

 

ショート・プログラムながら、4人の演奏者が、それぞれの個性を発揮します。

 

 

まず、注目していただきたいのは、バッハの作品。

 

これを2つの管楽器、すなわちサックスの冨士田紗季、

 

フルートの西巻有希子がそれぞれの表現で楽しませてくれることでしょう。

 

実は、この二人の女性には、管楽器奏者というだけでなく、

 

もう一つ重要な共通点があります。

 

それは、レパートリーです。

 

クラシック音楽とジャズ演奏の両方をライフワークとしています。

 

 

次にピアノの吉田奈津子はショパンのノクターン、

 

聖楽院週例コンサートのサブタイトル、“希望”と“癒し”の夕べ、

 

を想わせる演奏をお届けできると思います。

 

 

なお吉田奈津子氏は聖楽院での大きな貢献者の一人です。

 

ヴァッカイおよびコンコーネ50番による稽古は、

 

主に彼女の安定した誠実な助けによるものです。

 

また、今年後半はトスティ50番を進めています。

 

なお、本年4月開校の聖楽院は、現在のレッスン生18名、見学生8名(うち、3名がピアノ科希望)を数え、

 

本年の11月23日(勤労感謝の日)に第一回聖楽院レッスン生内部発表会を開催する運びとなりました。

 

これに関しては、別便で改めてお知らせする予定です。

 

 

 声楽については、定番の“小倉百人一首”シリーズ、トスティの歌曲に続き、

 

ヴェルディのオペラ・アリア、<仮面舞踏会>に挑戦します。

神経・精神・運動器

 

<突然、顔面に生じる耐え難い痛みの正体は?>

 

4回シリーズ(第三話)

 

 

50代半ばの主婦。主訴は顔面痛発作、初回発作は1週間前。

 

痛みの部位は右中顔面、持続時間は1分程度、

 

右中顔面を洗顔時に刺激したり、右上の歯を磨いたり、などの動作に伴い痛みが誘発。

 

三叉神経痛:右第Ⅱ枝(上顎神経)という見立て。

 

 

<振り返り>

三叉神経痛は、一側三叉神経領域の強い痛みを来す疾患です。

 

40歳以降の女性に多発し、多くは片側性で第2枝・第3枝に多いです。

 

発作的な激痛が数秒から数分間続き、発作間歇期には感覚異常を認めず無症状です。

 

痛みは神経の走行に沿い、多くの場合痛みの誘発点が存在します。

 

洗顔、歯磨きなどの動作で疼痛発作が誘発されます。

 

以上より、この女性の症状は典型的な三叉神経痛の特徴を備えているといえそうです。

 

 

 

<検討課題>

三叉神経痛の診断には病歴聴取が重要であることは、しばしば強調されています。

 

それでは、病歴聴取だけで診断は確定し、有効な治療に結びつくのでしょうか?

 

 

病歴聴取を補う検査としてはMRI検査があります。

 

その理由は、近年特発性(典型的)三叉神経の多くが、

 

血管による三叉神経の圧迫により生じていることが明らかになったからです。

 

MRI検査は血管や神経の位置関係より、神経圧迫部位を確認することができるからです。

 

 

高円寺南診療所にはMRI検査設備はないので、

 

紹介により検査を受けていただくことになりますが、

 

MRI検査の結果が出るまでの間に、この患者さんにどのような対応が必要かが大切だと思います。

 

適切な治療のためには、適切な診断、適切な診断のためには、適切な原因究明が必要になります。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「湧泉(ゆうせん)」です。

 

IMG_1869

場所は足の指を足底の方に曲げへこんだ土踏まずのところです。

 

 

「下肢の冷え」「食欲不振」「便秘」「せき」「のぼせ」「浮腫」等に効果があります。お灸やマッサージをしてみてください。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<情緒不安定、易刺激性、うつ状態は内科の病気かも?>

 

4回シリーズ(第三話)

 

 

42歳女性。公務員。情緒不安定でイライラしやすく、

 

部下にうっかり暴言を吐きパワハラを訴えられ、

 

うつ状態になり、某有名病院の神経科を受診していました。

 

諸事情により高円寺南診療所を受診、再診時に以下の結果を得ました。

 

 

 

<検査>

 

血液検査:

血清カルシウム12.2mg/dL, 血清リン2.3mg/dL,

 

高カルシウム血症、低リン血症

 

血清アルブミン3.9g/dL、

 

血清ALP432IU/L(基準115~359)

 

血清アミラーゼ428IU/L(基準37~160)⇒膵炎の疑

 

 

尿検査:

尿中カルシウム、尿中リン

 

 

内分泌検査:

血漿PTH204pg/mL(基準10~60)、

 

Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)

 

 

骨X線検査:

骨塩定量(digital image processing:DIP)法

         

指骨の骨膜下吸収所見、DIP法による骨年齢95歳相当

          

続発性骨粗しょう症

 

 

頸部超音波検査(甲状腺領域):

 

副甲状腺の右下腺に12.5mm×9.8mmの腫大を認める。

 

その他3つの副甲状腺に異常を認めない。

 

原発性副甲状腺機能亢進症

 

 

 

<検査後臨床診断:原発性副甲状腺機能亢進症>

 

高カルシウム血症の原因は原発性副甲状腺機能亢進症であると考えられます。

 

この女性の心身両面の多岐にわたる諸症状は高カルシウム血症によってもたらされたものと考えられます。

 

国家公務員共済病院の整形外科医がオーダーした血液検査によって高カルシウム血症が見いだされたことは大いなるヒントです。

 

 

これに対して、

 

>婦人科専門医の診断について、

 

骨粗しょう症の存在は指摘の通りです。

 

ただし、更年期障害ではありません。

 

患者はKKSI(クッパーマン更年期障害インデックス)という質問票調査の結果、

 

重症の更年期障害と診断されたようですが、

 

高カルシウム血症によって見かけ上更年期障害様の症状スコアが高くなったものと思われます。

 

女性ホルモンや活性型ビタミンD製剤は、

 

高カルシウム血症を増悪させるので使用すべきではありません。

 

 

>神経科(実は精神神経科)専門医の診断について、

 

精神科のマニュアル診断では、

 

確かに双極性障害(躁うつ病)のうつ病相に該当するようですが、

 

原因は高カルシウム血症です。抗うつ剤は不要です。

 

消化器症状(悪心・嘔吐など)は抗うつ剤の副作用というよりも

 

高カルシウム血症が進行した場合の症状なので、吐き気止めも不要です。

 

 

>消化器内科専門医の診断について

 

胃潰瘍は検査結果の通りだと思います。

 

 

しかし、背部痛の訴えについては骨粗しょう症によるものと想定していたらしく、

 

膵炎の可能性は疑わなかったようです。

 

高カルシウム血症は、消化性潰瘍ばかりでなく膵炎を合併することがあります。

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

<むくみを見たら癌を疑え!>その2

 

 

発症は慢性的で緩慢な経過なので気づきにくいのが難点ですが、むくみと蛋白尿がそろえば膜性腎症の可能性を忘れてはなりません。

 

しかしながら、膜性腎症の診断は、開業医にとっては少し厄介です。

 

その理由は、他の多くの腎臓病とは異なり血圧は正常であり、

 

腎機能障害も軽度であるため、診断の手掛かりが少ないからです。

 

それでは、膜性腎症を確実に診断するにはどうしたら良いのでしょうか?

 

 

それは腎生検です。

 

これは腎臓の組織を採取して調べる病理学的診断です。

 

ふつうの光学顕微鏡ではPAS染色による腎糸球体の基底膜肥厚、PAM染色による基底膜のスパイク形成を見出します。

 

蛍光法では、IgG、C3が糸球体係蹄壁に沿って顆粒状に沈着している所見を見出します。

 

これらの本体は電子顕微鏡では基底膜の上皮側に高電子密度沈着物として観察され免疫複合物に相当するものと考えられています。

 

 

膜性腎症は40歳以上に多く、約70%が一次性であり、約30%が二次性です。

 

最近、この病気は、M型ホスホリパーゼA2受容体に対する自己抗体(主にIgG4)自己免疫疾患で、一次性膜性腎症の発症や病勢と強く関連することが明らかになってきました。

 

一次性膜性腎症の治療原則は、予後不良因子のある患者には寛解導入を目標とした免疫抑制療法が推奨されていることです。

 

 

予後不良因子は、①男性、②60歳以上での発症、③発症時の腎機能低下、④尿細管間質病変、⑤ネフローゼ症候群の遷延など

 

一次性膜性腎症の多くは、ゆっくり進行し、一部では自然寛解することがあります。

 

約80%以上は治療により完全ないし不完全寛解となります。

 

 

来週は、二次性膜性腎症について説明します。

 

<第6ステップ> その3

 

「社会的スキル」の向上には、失敗を恐れず、過去の経験を顧みて、絶えずトライ・チャレンジすることが必要です。

 

まずは勇気を出して助けを求めること。

 

その結果、問題が解決の方向に向かったならば、相手に「ありがとう」と伝えること。

 

それが実行できるならば、助けを求められた相手も「お役に立てて良かった」と思えることでしょう。

 

そうなれば、最高の結果がもたらされたと言えるでしょう。

 

 

しかし、身近な人に知られたくない気持ちが強い場合、適切なサポーターが見つからない場合、

 

その相手にうまく伝えられない、またはその自信がない場合、助けを求めても問題が一向に解決しない場合など、

 

もしそうした状態が長く続くならば人間関係にヒビが入ったり、問題がかえってこじれたりしてしまいかねません。

 

そのような場合は、ためらわずに専門家に相談しましょう。

 

 

臨床心理士はまず来談者の皆さまの苦しい胸の内に謙虚に耳を傾けます。

 

協力チームの全員で秘密を厳守します。そして安易で独善的な解決法を提示したりはしません。

 

 

臨床心理士は来談者の皆さまの気持ちを受け止め、ともに解決方法を探り、

 

そして、その人の社会的スキルの向上も念頭に置きながらサポートする専門家なのです。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

<鑑別困難な膠原病>その2

 

 

広義の膠原病を分類してみます。

 

 

1)いわゆる膠原病(狭義)

全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症(SSc)、

 

多発筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、混合性結合織病(MCTD)、

 

シェーグレン症候群(SS)

 

 

2)血管炎群

 

 

3)関節炎を主徴とするもの

関節リウマチ(RA)、悪性関節リウマチ(MRA)、

 

フェルティ症候群、若年性特発性関節炎(JIA)、成人スティル病、

 

血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎)など

 

 

 

<どのような検査が必要か>

 

膠原病は全身性の自己免疫疾患であり、

 

抗核抗体・リウマトイド因子(RF)などの自己抗体が検出されます。

 

 

 

症例50代女性

 

関節の腫脹と痛みを訴え受診されました。

 

近医より順天堂大学を紹介され入院精査を勧められたがご本人のご事情で拒否されました。

 

 

順天堂大学医学部付属 順天堂医院 膠原病内科のデータを持参されました。

 

 

抗核抗体抗体価40倍 (Homo型40倍Speckled型40倍)

 

RF定量7.3(上限値15.0mg/dL)

 

⇒ 関節炎を主徴とし、かつ抗核抗体が検出され、膠原病を疑います。

 

 

 

<一般検査>

膠原病は慢性炎症性疾患であり、原則として以下の所見がみられます。

 

 

①貧血(赤血球↓)⇔赤血球数3.83(下限3.8)、

 

Hb10.6g/L↓(下限11.1g/L)

 

Hct33.2%↓(下限35.6%)

 

 

②赤沈↑⇔77mm↑(上限20mm)

 

 

③CRP↑⇔2.4mg/dL↑(上限0.2mg/dL)

 

 

④血清アルブミン↓⇔3.5mg/dL↓(下限4.0mg/dL)

 

 

⑤血清フィブリノーゲン↑➡未確認

⇒ 概ね炎症性疾患としての所見を認めますが、慢性炎症かどうかは判断できません。

 

 

 

<比較的特異的な検査>

a.リウマトイド因子(+)⇒RF(-)⇒HLA-B27を確認する

 

SLE(70~80%)、SSc(50~60%)、MCTD(50%)、EGPA(30~50%)

 

血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎)

 

 

b.抗核抗体(+)

抗核抗体抗体価40倍(Homo型40倍Speckled型40倍)

 

 

⇒Homo型:

 

SLE>SS,SSc,(JIA)

 

抗DNA⁻ヒストン抗体 2.0IU/mL(上限6.0 IU/mL)

 

 

  Speckled型:SLE, MCTD,SS, SSc, PM/DM

 

 

抗Sm抗体 

 

➡未確認 SLE関連

 

抗U1-RNP抗体(-)

 

抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)

 

➡未確認 SSc関連

 

抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)

 

➡未確認 PM/DM関連

 

抗SS-A抗体(-)

 

抗SS-B抗体(-)

 

 

C.補体

 

C3、134mg/ⅾL↑(上限128 mg/ⅾL)

 

C4,37mg/dL↑(上限36mg/ⅾL)

 

CH50 53.5 mg/dL (上限54mg/ⅾL)

 

⇒補体↑の場合、関節リウマチ,リウマチ熱,ベーチェット病

 

 ただし、数値より疾患活動性は低い

 

 

ⅾ.抗好中球細胞抗体(ANCA)➡未確認

 

 

e.抗CCP抗体 0.6U/ml(上限4.4 U/ml)

 

⇒関節リウマチの可能性は低い

 

f.血清MMP-3  92.4ng/dL↑(上限59.7 ng/dL )

 

⇒軟骨破壊など関節病変に深く関与する蛋白融解酵素

 

 

g.ヒト白血球抗体(HLA)➡未確認

 

HLA-B27(血清反応陰性脊椎関節症)

  

HLA-B51、A26(ベーチェット病)

  

HLA-B52(高安動脈炎)

  

HLA-DR4(関節リウマチ)

 

 

h.梅毒血清反応(生物学的疑陽性):SLE、APS

 

 

 

特記事項:

 

経過中に天疱瘡もしくは水疱性類天疱瘡が出現しました。

 

天疱瘡⇒抗デスモゾーム抗体、水疱性類天疱瘡⇒抗BP180抗体

 

 

以上より、次回受診時に予定する検査項目を列挙してみます。

 

血清フィブリノーゲン

 

抗Sm抗体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)、

 

抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)、HLA-B27、

 

梅毒血清反応(RPR,TPHA)、抗デスモゾーム抗体、抗BP180抗体

消化器系の病気

 

<心療内科は内科医だから責任重大なのです!>

 

3回シリーズその3

 

 

大坂の大学病院からの情報です。腹部CT検査を実施したところ、

 

腹水(肝臓表面に認める)、肝臓のびまん性腫大、

 

CT値の著明な低下(高度な脂肪肝を示唆)にて

 

診断は高円寺南診療所の最終診断と同様、

 

重症型アルコール性肝炎(SAH)として精査・加療をするとの返事でした。

 

 

アルコール性肝炎では禁酒しても肝炎や肝腫大が続き、

 

1ヶ月以内に死亡する予後不良な病型が存在し、

 

これが重症型アルコール性肝炎(SAH)と定義されます。

 

SAHでは肝性脳症、肺炎、急性腎不全、消化管出血、エンドトキシン血症を伴います。

 

 

その後、大学病院では、ステロイド療法、白血球(顆粒球)除去療法の他、エンドトキシン吸着療法、

 

最終的に血漿交換療法(凝固因子の補充、過剰なサイトカインの除去などの目的)、

 

持続血液濾過透析(腎機能の代償、有害物質の除去などの目的)

 

などを行って何とか救命できたようです。

 

 

このような最先端の集学的治療によっても致死率は40%であり、

 

重症型アルコール性肝炎(SAH)は、重篤な病態です。

 

高円寺南診療所を受診する以前に、

 

自分の足で精神科を受診していたことが不思議に思われるくらいです。

 

 

心療内科医は、内科医ですから、

 

生命に直結する身体面での責任も同時に果たさなければならないので、

 

特に、責任が重大になってくる次第なのです。

血液・造血器の病気

 

<風邪?をひいて赤血球が溶ける病気>その2(3話連続)

 

 

25歳のイケメン男性Mさん。

 

普段は元気いっぱいに働いているという筋肉質の立派な体格の方でした。

 

病歴からは急性気管支炎や肺炎を疑い聴診しましたが、

 

呼吸音は正常で雑音もありませんでした。

 

咳が強いのにラッセル音(異常な呼吸雑音)を聴取できない場合は、

 

百日咳、ニューモチシスチス肺炎もしくはマイコプラズマ肺炎を疑います。

 

そこで念のために胸のレントゲンを撮りましたが、これが正解でした。

 

というのは、レントゲンにスリガラス状陰影をはじめとする

 

間質性陰影を認めたからです。

 

このような経験をすると、胸部聴診上異常が無くても

 

発熱とひどい咳がある場合は胸部エックス線写真をとることが

 

当然であるという認識をもつに至ります。

 

 

それからMさんには特有の赤く盛り上がった発疹(多型滲出性紅斑)がありました。

 

発疹を伴う肺炎は、まず第一にマイコプラズマ肺炎を疑います。

 

そこで、血液検査を実施したあと、

 

アジスロマイシン(ジスロマック®)を3日分処方しました。

 

 

ここまでであれば、普通のケースなので、

 

血液病に関係があるなどとは考えないのですが、

 

医療において油断は大敵なのでした。

 

 

来週に続く