テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その4)
朝起きが辛い方へ、1ヶ月でセルフ・リポーターA.Oさんからのメッセージをどうぞ!
現代人は多忙な毎日を過ごしています。そこで、自分自身の身体の大切さを忘れがちになったり、
健康の大切さはわかっていても行動が伴っていなかったり、というパターンに陥りがちです。
特に出産可能年齢の女性では、心身の不調が月経異常として現れることが多いことも特徴の一つだと思います。
心身不調の早期発見という観点からすれば、女性のデリケートな身体反応は、健康維持のためには必ずしもマイナスな点ばかりではないと考えています。
そうしたA.Oさんが取った最初の賢明な行動は、専門家の支援をとりつけたこと、つまり、受診したことです。
初診カードには、むくみ(ひざ下)と書かれていました。
喫煙者であり1日10本を5年間続けてきたが、直ちに禁煙しようと考えている、というところにクリックされていました。

問診により、月経前症候群(PMS:Pre⁻Menstrual Syndrome)があること、
体がだるくて起床困難であることがわかりました。
尿検査では浮腫(むくみ)の原因の一つである蛋白尿は認めず、わずかですが血尿を認めたため、鉄欠乏状態の疑いと見立てました。
基本的な信頼関係は直ちに構築できたため、ただちに血液検査を実施することができました。
血液検査の結果:
血中ヘモグロビン濃度13.5g/dl(≧12g/dlのため貧血ではありません)
血清鉄 94㎍/dl
総鉄結合能 428㎍/dl(>360㎍/dlのため鉄欠乏状態ではありません)
血清フェリチン6ng/ml(<12 ng/mlなので貯蔵鉄欠乏状態です)
区民検診など一般的な健康診断では、ヘモグロビン濃度検査は行いますが、
血清鉄、総鉄結合能、フェリチンなどの項目は測定しません。
つまり、貧血は検出できても、その前段階の未病である鉄欠乏状態や貯蔵鉄欠乏状態は見落とされている、ということになります。
早期発見・早期治療のためには未病段階での発見が大切ですが、一般検診には限界があることを知っておいてください。
原因:
#1月経前症候群(PMS)および月経困難症,
#2前潜在性鉄欠乏性貧血,
#3ニコチン依存症
治療:
#1健康意識の改善,
#2禁煙,
#3食事療法,
#4ミネラル・ビタミン・漢方薬
処方:
#1.カルシウム・ビタミンC・パントテン酸(シナール配合®【200mg】錠)
#2.ビタミンB1(ノイビタ®【25mg】錠)
#1.2は3食後に内服
#3.加味逍遥散エキス顆粒2.5g 朝食前
#4.当帰芍薬散エキス顆粒2.5g 昼食前・夕食前
経過:
#1.月経前症候群:月経血量の減少(過多月経の改善)、月経困難:月経痛の軽減
#2.前潜在性鉄欠乏性貧血:過多月経の改善により、貯蔵鉄の回復可能性が高い
#3.ニコチン依存症:禁煙に成功し、夫と共に禁煙を維持する段階
<まとめ>
受診前の問診票への記入は、それ自体が行動療法です。
正しい健康意識を刺激することによって行動の変容を促すという意味では認知行動療法にもつながります。
初診時問診票への記入の段階で、喫煙の有害性を認識して、直ちに禁煙の決意をされる方がいらっしゃいます。
A.Oさんもその一人です。また、A.Oさんは
<薬ばかりに頼るのではなく、これを機に生活を見直し、これまで怠っていた身体のメンテナンスをしなくてはと思い>と書かれています。
きちんとした医学的に根拠のある養生を心掛けたうえで、必要なお薬を使う方は、お薬ばかりに頼っている方とは区別して、お薬を上手に活用している方であると思います。
それにしても、共に禁煙に踏み切ったというA.Oさんの御主人も素敵な方ですね。