今月のテーマ「感染症の最新医療」
<新興感染症>
国内で発生していなくとも、
近年世界的に流行地域が拡大している感染症については警戒が必要です。
今後、とくに東京オリンピックの開催などで海外からの渡航者の増加が予想されるため、
感染患者の流入による大流行の予防対策が必要と考えられます。
専門家でなくとも診断・初期対応についての基礎的知識が必要とされます。
○デング熱:2014年に60年ぶりで国内流行が確認されました。
日本国内に生息するヒトスジシマカが媒介可能です。
原因ウイルスはフラビウイルス科に属します。
症状:発熱・関節痛・頭痛・皮疹
経過:多くの場合、自然軽快し、初感染での重症化はまれです。
検査:ELISA、HI法などを用いた血清学的診断、抗原蛋白(NS1抗原)の検出、
RT-PCRによる遺伝子検出などがあります。血小板減少症がみられます。
RT-PCR法や抗原蛋白の検出は発症後1週間程度経過すると感度が著しく低下します。
複数回感染すると重症化リスクが高まります。
重症デング熱は、血管透過性の亢進による血漿漏出によるショック・DICにより
死の転帰をとることもあります。
5つの血清型があり、同一の血清型であれば終生免疫が得られます。
異なる血清型のウイルスでは一過性の免疫しか獲得できないため
複数回感染することがあります。
治療:ウイルスワクチンは開発中です。
○チクングニア熱:世界的に流行地域が拡大しています。
日本国内に生息するネッタイシマカ、ヒトスジシマカが媒介可能です。
原因ウイルスはトガウイルス科に属します。
症状:発熱・強い関節症状(関節痛/関節腫脹)・頭痛・皮疹
経過:多くの場合、自然軽快し、重症化はまれです。
急性期症状が改善した後も、数か月間残存することがあります。
○中東呼吸器症候群(MERS):2012年にサウジアラビアで報告されました。
2015年より2類感染症に指定されています。
原因ウイルスはMERSコロナウイルス科に属します。
詳しい経路は不明。接触・飛沫感染とされ、約1週間の潜伏期間を経て発症します。
症状:消化器症状(嘔吐・下痢)が1/3、発熱・咳
経過:重症化すると肺炎・腎不全により死亡することもあります(致死率20~40%)。
背景:発症者のほとんどが何らかの基礎疾患を有しています。
流行の多くは医療施設内で起こっています。
予後不良因子:免疫不全、合併症(肥満・糖尿病・心疾患・肺疾患など)、
併発する感染症、低アルブミン血症、65歳以上の高齢者など。
○エボラウイルス感染症:2014年にギニア・リベリア・シエラレオネで大流行
1類感染症に指定(指定医療機関のみ入院可能)されています。
原因ウイルスはフィロウイルス科に属するエボラウイルス。
感染した動物(コウモリ・霊長類など)との接触によりヒトに感染します。
ウイルスが含まれている血液などの体液へ直接接触感染とされます。
症状:インフルエンザ様症状、消化器症状(嘔吐・下痢)約半数、出血症状は半数以下。
経過:進行するとDIC・多臓器不全により死に至ります。
予後:致死率は高いが流行ごとに変動し、25~90%。
症状:消化器症状(嘔吐・下痢)が1/3、発熱・咳
経過:症状が改善した後も精液中にウイルスは長期間残存しており、
性行為で完成した事例もあります。
重症化すると肺炎・腎不全により死亡することもあります(致死率20~40%)。
対策:接触感染対策(感染防御具の正しい着脱)、医療機関内での二次感染予防。