<(鍼灸)東洋医学の話をしようー経絡(1)>

 

 

<はじめに>

 

 

前回「氣」の旅ー「脾」「肺」「腎」との関係』についてお話しました。

 

 

 (1) 「脾」で飲食物を消化して「氣」の元(水穀の精微)を作る。

 

 

(2)「肺」による呼吸の力で「氣」を全身にめぐらせる。

 

 

 (3)「腎」は「氣」を貯蔵する

 

 

ということと

 

 

「氣」を全身に巡らせるために「深呼吸」することをおすすめしました。

 

 

しかし、胃腸の調子が悪く、不安や抑鬱が強い場合には全身のエネルギーが消耗してしまいます。

 

 

そのため「深呼吸」をしてみようという気力が湧かないこともあります。

 

 

「深呼吸」できない人は、体幹部を緩めたり、胃腸の状態を改善することにより「深呼吸」ができるようになります。

 

 

ぜひご相談ください。

 

 

 

今回から「経絡」と「ツボ」のお話をしていきます。

 

 

「ツボ」を刺激して健康になりましょう。

 

 

 

<経絡とは>

 

 

経絡」とは「氣」というエネルギーが流れる通り道です。

 

 

そこに「経穴(つぼ)」が分布しています。

 

 

「経穴」を刺激して体の不調を治療してきます。

 

 

「経絡」には

 

(1).肺経

 

(2).大腸経

 

(3).胃経

 

(4).脾経

 

(5).心経

 

(6).小腸経

 

(7).膀胱経

 

(8).腎経

 

(9).心包経

 

(10).三焦経(さんしょうけい)

 

(11).胆経

 

(12).肝経

 

と体の正中に流れる

 

(13).督脈(とくみゃく)

 

(14).任脈(にんみゃく)

 

があります。

 

 

「経穴」の種類はWHOの分類で361(昔、私が学校で習ったときは365ありました)

 

 

左右に分布している「経穴」もあるので、全身に670ほどあります。

 

 

次回は「肺経」の経絡と「経穴」について説明していきます。

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 (図1)

スクリーンショット 2019-05-03 時刻 12.50.38 

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

 スクリーンショット 2019-05-03 時刻 12.49.29

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、 17名の平均で    31.9点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効4名(32.5%)、有効7名(41.2%)、無効6(35.3%)でした。(図2)

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

高円寺南診療所は杉並区高円寺南3丁目46番5号に立地しています。

 

<高円寺南>という地名を冠する医療機関を引き継いだ医師として、開院以来30年間、常に意識せざるを得なかったことがあります。

 

それは、地域への医療貢献でした。

 

24時間医療、往診、在宅医療、介護などすべての柱を確立することが達成できれば、地域医療として立派な責任を果たすことは可能だと思い、地域密着型のプライマリケアの確立に心がけていた時期がありました。

 

プライマリケアとは患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスです。

 

しかし、開院以来<高円寺南>診療所の受診者の圧倒的多数が現役世代でした。初期の受診者のほとんどは、家族や地域とのつながりも乏しい単身生活者で、かつ局所的症状に対しての応急的対応を望まれる方が多かったためです。

 

特に、午前中の受診者は開院初期には長期にわたり一桁台で夕方以降の時間帯に受診者が集中する状況でした。無料の禁煙指導なども努力すればするほど患者を遠ざける結果を招きました。その限られた夕刻以降の混雑時間帯に限って複合的で長期化した持病についての窮状を長々と訴える方が多数来院されるようになり、そのため待ち時間に耐えられない多くの患者さんを失いました。このようにして経営状態は一挙に暗転していきました。

 

もっとも、こうした経験がなければアレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医ばかりでなく心療内科専門医・指導医の資格取得し、より高度な医療水準の達成は果たせなかったと思われます。

 

このようにプライマリケアの実践のためには教科書的なひな形はなく、優れた指導者も皆無に等しいことを知りました。そして置かれた現場ごとに医師が自ら手探りで展開し、現場に必要な知識や技能は、そのつど貪欲に習得していかなければならないものであるという現実に直面しました。そこで自分なりの新たな方向性を模索する必要に迫られ、今日のシステムを展開していくことにしました。

 

そのお蔭で現実の困難から逃げず、避けず、誤魔化さず、ピンチの状況にあって、チャンスを生み出す技を学び続けるという姿勢を確立することができたことは感謝すべきことです。

 

最近の診療所の傾向としては、超高齢社会を反映してか高齢者さらには後期高齢者に達した皆様も徐々に比率を増しています。しかし、それでもほとんどの皆様が生涯現役を望み、私を生涯の主治医として選んでくださっています。

 

診療圏については、地元高円寺という貴重な方はごく少数で、23区内よりも都下をはじめ、千葉、埼玉、神奈川など近県から長期間定期通院されている方が多いことが特徴です。

 

 

生涯現役を目指したいという多くの患者の皆様の願いと私自身の健康維持の必要性が独自の「生涯エクササイズ」着想を得ました。そうして平成12年(2000水氣道が誕生しました。

 

水氣道の活動会員は現在何とか70余名を維持している状況です。発足以来20年近くを経過しているにもかかわらず会員が100名にも達していない理由は、水氣道の真価を伝えることが難しいからだと思います。

 

水氣道は、身体のコンディションを向上させるだけでなく、精神を涵養し、さらに芸術や学問的活動のための潜在的能力を引き出す効能を持っています。それは、多忙でストレスフルな毎日を送っている向上心に満ち溢れた方には特に有効です。

 

杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)や水氣道会員に御縁があるすべての皆様に水氣道をお勧めしたい理由がここにあります。

 

 

さて、現状としては、国際化を背景としてか外国籍の方の受診が顕著に増えて参りました。特にアジア圏からの皆様は知識層が多く、待合室でもお名前を伺うまでは余り目立ちません。また欧米圏の出身の方の増加も同様に顕著です。

 

こうした傾向とともに英語での診療の必要性は急激に増加しています。私がデザインする「生涯エクササイズ」とは体一つで実践できる全人的習慣をベースとしているのが特徴なので、水氣道の他、外国語学習、歌唱を併行しています。

 

水氣道によって人体を楽器(人生を楽しむ器、他者を幸福にできる器)化することで歌うことの素晴らしさを再発見し、特にクラシックの声楽は、イタリア語、ドイツ語、フランス語その他の外国語の歌詞を伴います。これが、平成27年(2015)発足の聖楽院の活動を生み、外国語診療を促進する契機となりました。

 

高円寺南診療所は、水氣道、聖楽院の誕生とともに当初のからの使命追及を終え、新たなる時代に向けての体制を整え、杉並国際クリニックが誕生します。院長である私自身が水氣道と聖楽院活動を継続発展させることによって生涯現役を確かなものとしていきたいと思います。

 

地域限定の母国語である日本語による従来のプライマリケア思想の呪縛から解放され、多言語による医療・保健・文化を統合するグローバルな創造的活動によって広く国際社会に向けて、皆様とともに楽しく有意義な貢献への第一歩を踏み出していきたいと思います。

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(8) ー 番外編 氣ー脾ー肺ー腎2>

<はじめに>

前回ー「氣」「脾」「肺」「腎」の働きについて復習しました。

 

 

今回は氣がどのように循環していくか説明した後に、私の体験をふまえ健康のために大切なことをお話します。

 

 

<「氣」の旅ー「脾」「肺」「腎」との関係について>

 

 

身体を「氣」というエネルギーが循環することで健康を保つ事ができると東洋医学では考えています。

 

 

「氣」が巡らないと生命活動ができなくなるからです。

 

 

それでは「氣」が全身に巡っていく過程を説明していきましょう。

 

 

(1).「脾」で飲食物を消化し「水穀の精微」という「氣」のもと(栄養素に相当)を作ります。

 

 

(2).「水穀の精微」が「肺」に運ばれます。

 

 

(3).外気である「清氣(せいき)(酸素に相当)」と「水穀の精微」が混ざって「氣」が作られます。

 

 

(4).「肺」による呼吸で全身に「氣」が巡ります。

 

 

(5).夜間に睡眠を取ることにより「腎」に「氣」が貯蔵され身体の活動を支えていきま す。

 

 

つまり、飲食物を「脾」で消化して「氣」のもと(水穀の精微)を作り

 

 

「肺」による呼吸の力で「氣」を全身にめぐらせます。

 

 

そして「腎」は「氣」を貯蔵するというわけです。

 

 

 

<健康のために大切なこと>

 

 

「食べる」「寝る」「呼吸」、活動を支えていくためにどれも大切なものです。

 

 

その中で、どれが一番大切でしょうか?

 

 

私は、「呼吸」であると考えています。

 

 

「食べる」「寝る」は1週間程度できなくても死ぬことはありません。

 

 

しかし、「呼吸」は5分もできないと死んでしまうからです。

 

 

「呼吸」によって「氣」が巡らないと「臓腑」が働けません(推動作用の障害)。

 

 

それにより、生命活動のもとである「氣」が作られなくなります。

 

 

「氣」が作られなければ体調の悪化が避けられません。

 

 

数年前、私は体調を崩し「食欲不振」「睡眠障害」になりました。

 

 

何より困ったのは、「呼吸がままならない」ことでした。

 

 

体に力が入らず、深い呼吸ができないのです。

 

 

溜め息ばかりついていました。

 

 

体は温まらず(温煦作用の障害)、手が冷えてしまい患者様に冷たい手で触れることになり迷惑をかけることもありました。

 

 

「氣」が巡らない(推動作用の障害)ので臓腑の働きが低下してしまいます。

 

 

「脾」の働きがさらに低下し飲食物の消化がままならなくなり、「氣」が作られないこと により体力が低下していきました。

 

 

「氣」が作られなくなれば「腎」に貯蔵された「氣」を消費してしまいます。

 

 

これを「腎虚(じんきょ)」といいます

 

 

さらに眠れないので「腎」に「氣」が貯蔵されることもないわけですから、

 

 

さらなる体力の低下が待っていました。

 

 

歩くのが辛くなり、何もかもが億劫になりました。

 

 

正しい姿勢を維持するのが困難で背中が丸くなってしまいました。

 

 

そうなるとさらに「呼吸」がしずらくなりました。

 

 

そこから回復するきっかけになったのは何だったのだろうかと今考えると、「深呼吸」であったと思います。(水氣道では金澤さんの理氣航法で習得できます)

 

 

胸部をのばすストレッチをして丸まった胸を開き、できる範囲で深呼吸を試みました。

 

 

ほんの少しだけですが、気持ちと体が楽になった感覚がありました。

 

 

(水氣道では姿勢が改善し呼吸が改善することによって動作や意識が改善します)

 

 

毎日少しずつ繰り返していきました。

 

 

少しずつ深い呼吸ができるようになるにつれ、体調が回復していったように思います。

 

 

薬の服用だけで体調が回復することは困難だったでしょう。

 

 

呼吸によって「氣」が巡らないと「血液」も巡らない(推動作用の低下)ので薬がきちんと運ばれないわけですから。

 

 

今は、暇を見ては「深呼吸」をするようにしています。

 

 

「呼吸」が健康の第一歩なのだと実感しています。

 

 

「呼吸」できることの喜びを日々感じて生きていきたいと思っています。

 

 

 

<まとめ>

 

 

「呼吸」「睡眠」「食事」は生きていくために大切なものです。

 

 

その中でも「呼吸」がいちばん大切です。

 

 

深呼吸」で「氣」を巡らせ健康を維持していきたいものです。

 

 

「呼吸」ができる喜びを噛み締めて生きていきたいものですね。

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

国内地域医療診療所から国際標準クリニックへの変革に向けて②

 

杉並国際クリニック開設に向けて、医療機関として最も大切な強化項目として、第一に医療安全を挙げたいと思います。

 

最近の日本医学会およびその専門分科会が主催する学会プログラムには、必ず医療安全・医療事故・医療法制・医療倫理に関する教育研修会・講演会が準備されています。

 

専門医は高度な医療の担い手であるため、必然的にリスクの大きな専門業務に携わることになるため、専門医資格更新のためには、この領域での研修が必須となっています。

 

概ね退屈な内容なのですが、これまでとは違って、抜群に優れた講演を聴くことができました。リウマチ学会が主催するレクチャーなので、リウマチの臨床を題材にしたものですが、その内容は、日常臨床のあらゆる領域で役立つ内容であることに感服しました。

 

講師の門野先生は1995年に東大医学部卒業後、1999年に東大大学院医学系研究科に進学され、途中、米国ペンシルバニア大学医学部への留学を経て、2006年に医学博士号取得をされた方です。埼玉医科大学の整形外科教授に就任して、大学病院全体のリスクマネジメントの管理者として指名されたとのことで、必ずしもご自分が進んで入りこんだ領域ではなさそうでした。

 

同じような経歴の方でも、話の上手な方と、そうでない方がいます。しかし、頭の良い人の話は、ややもすれば地味で退屈しそうな話題の中にも、キラリと輝くような宝物を掘り当ててくれます。話の展開もとてもすっきりしていてストレスが溜まらず、どんどん話に引き込まれていきます。私は、地頭が悪いせいか、とても彼のようにはいかないので、きっとまわりの人をイライラさせていることでしょう。それでも物事の必要性に気が付けば、<逃げず、避けず、胡麻化さず>取り組むべきことには、好むと好まずとを問わず、きちんと取り組んできたことだけは誇りにしたいと思います。

 

今後も、<日々精進あるのみ、継続は力なり>の<努力より工夫を>の精神で参りたいと思います。

 

 

医療機関の安全性の向上・リスクマネジメントの基本は、従業員に対する徹底した教育にあるようです。しかし、それにはいろいろな工夫と仕掛けが必要になってきます。

 

今後の<Mr.NoGucciの懺悔>のための格好の材料も満載されていました。

 

 

日本リウマチ学会2019アニュアルコースレクチャー

 

4月14日(日)

14:15~15:15am

 

ACL6:

医療安全という観点からみた関節リウマチ治療~何に気をつけるか?~

    

演者:門野多峰(埼玉医科大学整形外科)

 

 

医療安全管理

安全な医療提供のための条件:

1)リスクマネジメント

リスクとベネフィットのバランス

 

例1)リウマチ治療薬は感染症のリスクが伴う

 

例2)リウマチ患者の悪性新生物発生率は低いが、悪性リンパ腫は例外

 

 

有害事象の予防策

例1)腎機能障害があればメトトレキサートの投与量を減らす

例2)免疫抑制をかけている場合は肺炎球菌ワクチン接種を促す

 

 

有害事象の早期治療開始

2)セイフティマネジメント

ヒューマンエラー(標準的行為からの逸脱行為):教育が重要!

ヒューマンエラーのタイプ分類

 

1)知識不足・スキル不足の防止

 

2)意図的な不遵守の防止

①守るべきことを明確にする

②守れるだけの技能を身につけさせる

③守れる環境を整える

④守る必要性・理由を納得させる

⑤監督者等によるパトロール・監督と指導を徹底させる

 

 

対策の基本パターン

エラープルーフ化:

 

目的)人的エラーに起因する問題を防ぐ

 

内容)作業を構成する人以外の要素(薬剤、機器、文書、手順等)の「作業方法」を改善すること

 

原理)

①排除(Elimination)

②代替化(Replacement)

③容易化(Facilitation)

④異常検出(Detection)

⑤影響緩和(Mitigation)

 

 

有害事象の予防対策

コミュニケーションエラーは最大のリスクとなりうる

 

①誤伝達⇒口頭指示を受けて複唱

②誤解釈⇒勘違いを減らすために、普段から思い込みやこだわりを減らす

③確認・注意不足⇒後で実施しようとして忘れることがあるため、備忘システムを構築する:確認・注意のコミュニケーション(情報の共有・意識の共有・スキルの向上・システムによる指摘)

④伝達の欠如⇒

⑤リスクコミュニケーション⇒一方向性でなく双方向性のコミュニケーションに

 

 

チーム活動

ステップ1:改善の機会をみつける

ステップ2:対策案を作成する

ステップ3:対策案を評価・選定する

 

 

エラーがあったときの早期発見・早期対策

患者とのコミュニケーション

知識格差があるので歩み寄るコミュニケーションスキルを

 

1)Teach-back Technic:患者さんに理解した内容を話してもらう

守るべきこと、なすべきことのみでなく、その理由も答えてもらう

 

2)質問することを奨励する雰囲気を形成する

 

 

 

<ボランティア募集>

5月1日(水)の午前中および2日(木)の午後から、杉並区内全域に約100か所に及ぶ無料掲示板「でんごんくん」に水氣道の広報のためのポスター貼付ラリーを始めます。

飯嶋班(担当:高円寺・和田・方南町地区)、野口班(担当:西武線沿線)、金澤班(担当:成田地区)、加藤班(担当:阿佐ヶ谷地区)などがスタンバイしています。

 

目下、ポスター貼付ラリー同行ボランティアを募集中です。

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(8) ー 番外編 氣ー脾ー肺ー腎1>

 

<はじめに>

 

 

前回まで「五臓( 「肝」「心」「脾」「肺」「腎」)」のお話をしてきました。

 

 

聞き慣れない言葉が多く難しく感じられた方も多いのではないかと思います。

 

 

今回は、その中の「脾」「肺」「腎」と「氣」の関係を説明していきます。

 

 

それによって「食事」「呼吸」「睡眠」の大切さをお伝えできたらと思います。

 

 

最初に「氣」それから順に「脾」「肺」「腎」の働きを復習してから本題に入ります。

    

 

 

 

    <「氣」の働き>

 

 

「氣」は生命活動を支えているエネルギーです。

 

 

氣の役割にはいろいろありますが、その中でも今回重要なのは「推動(すいどう)作用)」

と「温煦(おんく)作用」です。

 

 

「推動作用」とは 「氣」が*臓腑(ぞうふ)や**経絡(けいらく)の活動、血液循環の機能を推し進めます。(*臓腑ー内臓のこと   **経絡ー氣の通り道で全身に分布します。)

 

 

「温煦作用」とは全身を温める作用です。

 

 

その他の作用は以前こちらで解説してありますので、御参照ください。

 

 

 

<「脾」の働き>

 

 

「脾」の働きにもいろいろありますが、「氣」と「脾」の関係で重要なのは「運化(うんか)」と「昇清(しょうせい)」です。

 

 

運化とは食べ物を消化吸収し水穀の精微(すいこくのせいび)という「氣」のもとををつくります。

 

 

昇清(しょうせい)ー水穀の精微を心肺へと昇らせる

 

 

その他の作用は以前こちらで解説してありますので、御参照ください。

 

 

 

<「肺」の働き>

 

 

「肺」の働きにもいろいろありますが、今回大切なのは「氣をつかさどる」ことと「宣発(せんぱつ)作用と「粛降(しゅくこう)作用」です。

 

 

「氣をつかさどる」とは空気中の「清氣(せいき)」を取り込んで「脾胃」で作られた「水穀の精微」を組み合わせて「氣」を作ることを言います。

 

 

「宣発」と「粛降」作用とは、一言で言うと呼吸によって全身に「氣」を巡らせることを言います。

 

 

その他の作用は以前こちらで解説してありますので、御参照ください。

 

 

 

<「腎」の働き>

 

 

「腎」の働きはいろいろありますが「氣」との関係で大切なのは「精」の貯蔵です。

 

 

「精」とは腎に蓄えられているエネルギーのことで、両親から受け継いだ「先天の精」と「脾胃」で消化吸収してできた「後天の精」があります。

 

 

「腎」はこれらの「精」を貯蔵します。

 

 

夜間に寝ることで「精」の貯蔵が進み日中の活動エネルギーになります。

 

 

本来、夜間に休息を取ることが人の生活リズムに合っています。

 

 

したがって夜間にしっかり睡眠を取ることが「腎」の機能が働きやすくなり「氣」を貯蔵しやすくなり心身の疲労回復が可能になります。

 

 

健康的な生活リズムを守ることが大切であることがわかります。

 

 

その他の作用は以前こちらで解説してあります。御参照ください。

 

 

次回「氣」が体の中でどうやって循環していくか解説していきます。

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

 (図1)

JFIQ経過報告201903

 

JFIQ線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

(図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

( 図2)

JFIQ効果201903 

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

50以上点数が下がると「著効」です。

 

20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

<今回の考察>

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

  今回、18名の平均で31.8点改善していたため、全体として鍼治療は有効であったと言えます。

個別でみると、著効4名(22.2%)、有効9名(50%)、無効5名(27.8%)でした。(図2)

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(7) ー まとめ>

 

 

<はじめに>

 

 

前回は「」について解説しました。

 

 

今回は、今までの臓についてのお話をまとめておきましょう。

 

 

(「」についての記事はこちらにありますので目を通してみて下さい。)

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(1)>

 

 

では「五蔵」「六腑」について解説しました。

 

 

・「五臓」とは肝」「心」「脾」「肺」「腎」のことを言う。

 

・「六腑」とは「胆」「小腸」「胃」「三焦」「大腸」「膀胱」のことを言う。

 

・「五臓六腑」の「臓」とは「氣」「血」「津液」を備蓄する臓器である。

 

・「腑」とは「氣」「血」「津液」を動かす中腔性の臓器である。

 

 

というお話でした。

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(2) ー 肝>

 

 

では「肝」の働きについて解説しました。

 

 

・肝の主な働きは「疏泄(そせつ)」、「蔵血(ぞうけつ)」です。

 

・体内の氣の運動を調節する働きのことを「疏泄」と言います。

 

・血液の貯蔵の働きのことを「蔵血」いいます

 

・「肝」には「怒」の感情、「筋」「目」に関係が深い。

 

 

というお話でした。

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(3) ー 心>

 

 

では「心」について解説しました。

 

 

・「心」は血液を体全体に送り出す役割を担う

 

・「心」は「精神活動の源」

 

・「汗」、「舌」と関係が深い

 

 

というお話でした。

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(4) ー 脾>

 

 

では「脾」について解説しました。

 

 

・運化(うんか)ー食べ物を消化吸収し水穀の精微(すいこくのせいび)をつくる

 

・昇清(しょうせい)ー水穀の精微を心肺へと昇らせる

 

・統血(とうけつ)ー血の脈外への漏出(出血)を防ぎます

 

・生血(せいけつ)ー水穀の精微から血を生成する

 

・「脾」は「肌肉(ひにく)」「唇」「涎(よだれ)」「思(し)」と関係がある。

 

 

というお話でした。

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(5) ー 肺>

 

 

では「肺」について解説しました。

 

 

・呼吸器系の機能を司る

 

・氣をつかさどる

 

        「清氣」と「水穀の精微」を組み合わせて「氣」を作ります

 

 

・宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう)

       

     

          宣発作用と粛降作用によって全身に氣を巡らせます

 

 

・水道通調作用ー水分を全身に行き渡らせます

 

・皮毛、鼻と関係がある

 

というお話でした。

 

 

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(6) ー 腎>

 

 

では「腎」について解説しました。

 

・「精」の貯蔵

 

・生長・発育・生殖をつかさどる

 

・骨や髄をつかさどり脳を栄養する

 

・尿道・生殖器、聴力、骨と関係する

 

・水分の代謝

 

・納気(のうき)をつかさどる

 

 

          肺の呼吸の役割の吸気を助ける

 

 

というお話でした。

 

 

いろいろと難しい話になってしまったと思います。

 

 

それぞれの表題をクリックすると、該当するページに飛びます。

 

 

繰り返し読んでいただけたら幸いです。

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

運動器症候群(ロコモ、と略す)対策としての水氣道

 

ロコモの概念

以下の原因により、歩行障害をきたし、生活活動制限、社会参加制限、要介護

に至る病態を指します。

 

Ⅰ:局所の形態障害

  1. 体を支える部位(骨粗鬆症)⇒ 易損性・易骨折性 ⇒ 組織損傷・骨折
  2. 曲がる部位(変形性膝関節症、変形性腰椎症)⇒ 疼痛、可動域制限
  3. 動かす/ 制御する部位(骨格筋萎縮症:サルコペニア
  4. ⇒ 筋力低下、筋拘縮、バランス低下

 

Ⅱ:全身の機能障害

A 神経障害 ⇒ 易損性・骨折、疼痛、可動域制限、筋力低下、筋拘縮

B バランス低下 ⇒ 歩行障害 ⇒ 生活活動制限、社会参加制限、要介護

 

 

日本整形外科学会公式、ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト

「ロコモチャレンジ」

 

 

ロコモの診断法:「ロコモチェック」

1)片足立で靴下がはけない

2)家の中でつまずいたり滑ったりする

3)階段を上るのに手すりが必要である

4)横断歩道を青信号で渡りきれない

5)15分くらい続けて歩けない

6)2㎏程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である

7)家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である

 

1つでも当てはまると「ロコモ」です。

 

現在の移動能力評価:「ロコモ度テスト」

1)下肢筋力:立ち上がりテスト

2)歩幅:2ステップテスト

3)身体状況・生活状況:ロコモ25

 

テストの結果を「該当せず」「ロコモ度①」「ロコモ度②」で判定します。

 

ロコモ度①:移動機能の低下が始まっている状態

筋力やバランス力が落ちてきているので、ロコトレ(ロコモーショントレーニング)を始めとする運動を習慣づける必要があります。

また、十分なたんぱく質とカルシウムを含んだバランスの取れた食事を摂るように気をつけましょう。

 

ロコモ度②:移動機能の低下が進行している状態

自立した生活ができなくなるリスクが高くなっています。

特に痛みを伴う場合は、何らかの運動器疾患が発症している可能性もありますので、

医療機関の受診をお勧めします。

 

 

立ち上がりテスト・2ステップテスト

 

ロコモ25

 

トレーニング法:「ロコトレ」片足立・スクワット

 

 

 

ロコモの予防の具体的方略:『水氣道®

水氣道の稽古(トレーニング)内容は、体の支え、関節、動作および運動の制御、神経機能の回復・強化、バランス機能の向上という、ロコモの原因となるすべての要素を万遍なく鍛錬します。

 

水中で多様な歩行訓練を行うため、陸上での通行の歩行機能の向上のみならず、転倒防止訓練にも役立ちます。

 

なお、水氣道は集団稽古(グループ・エクササイズ)であるため、参加者の生活活動制限、社会参加制限を直接解消し、要介護に至るプロセスを強力に阻止することができます。

 

したがって、水氣道はロコモ予防に対する理想的な方略であるということができます。