(鍼灸)東洋医学の話をしよう3ー臓腑(2) ー 肝

<東洋医学の話をしよう3ー臓腑(2) ー 肝>

 

<はじめに>

 

 

今回から「五臓」について順番に解説していきましょう。

 

前回の記事はこちら

 

(氣についての記事はこちらにありますので目を通してみて下さい。)

 

 

今回は「肝」の働きを説明していきます。

 

 

まずは、西洋医学の肝臓の働きと比べてみましょう。

 

 

<西洋医学での肝臓の働き>

 

肝臓には主に4つの働きがあります。

 

 

(1)代謝ー食べ物から糖・たんぱく質・脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要な時にエネルギーのもととして供給します。

 

 

(2)体を動かすエネルギーの元であるグリコーゲンやビタミンを蓄え、必要に応じて血液中に放出する。

 

 

(3)解毒ーアルコールや薬、老廃物などの有害な物質を分解し、無毒化します。

 

 

(4)胆汁の生成・分泌ー肝臓でつくられた老廃物を流す「胆汁」を生成・分泌します。胆汁は、脂肪、タンパク質の消化吸収を助ける消化液でもあります。

 

 

<東洋医学での肝の働きー疏泄(そせつ)、蔵血(ぞうけつ)>

 

肝の主な働きは「疏泄」、「蔵血」です。

 

 

体内の氣の運動を調節する働きのことを「疏泄」と言います。

 

 

それにより

 

 

(1)「脾胃(ひい)」による食べ物の消化の調節。

(「脾胃」については、後ほど解説していきます。西洋医学の「胃」とご理解ください。)

 

 

(2)「血」「津液」の運行

 

 

(3)月経の周期の調整を行います。

 

 

血液の貯蔵の働きのことを「蔵血」いいます。

 

 

(1)血液を貯蔵する。

 

 

(2)体に回る血液をどこに送るか決める。つまり体内に巡る血液量を調整します。

 

 

西洋医学の糖・たんぱく質・脂肪・グリコーゲン・ビタミンの貯蔵を東洋医学の「蔵血」、老廃物を流す働きを東洋医学の「疏泄」と見るならば、肝臓の機能に関しての認識に大きな差は無いように感じます。

 

 

しかし、東洋医学と西洋医学との違いは「五蔵六腑」は情緒や人体のその他の器官にも深い関係があると認識していることにあります。

 

 

肝の場合、「怒」の情緒と関係が深いです。

 

 

怒りで頭に血がのぼるって言いますよね、これは「怒り」によって肝の「疏泄」の働きが悪くなるからということが言われています。

 

 

また、「筋」、「目」にも関係が深いです。これも肝の「疏泄」の働きが悪くなると「血」が行き渡らなくなり「筋」がつり易くなったり、「目」の疲れがおきます。

 

 

怒ると血圧が上がります。それにより、血管が収縮します。それが長時間続くようになると「筋」や「目」に栄養の供給が滞ることになります。

 

 

それにより「疏泄」の働きに影響が出るので「筋」「目」にも影響がでるのではないかと思います。

 

 

「目」はビタミンA、B、Cを消費します。「目」の使いすぎは、肝臓に貯蔵されているビタミン類の消費を増大させ「肝」に影響を与えるのではないかと考えられます。

 

 

現在社会は、「目」を酷使するようになってきています。このことは「肝」の負担を増やし「血」を消耗させていると考えられます。

 

 

インターネット上のSNSでの炎上騒ぎは、目を酷使し、血を消耗させ、「肝」の「疏泄」「蔵血」作用に負担をかける生活と関係があるのかもしれません。

 

 

<まとめ>

 

・肝の主な働きは「疏泄(そせつ)」、「蔵血(ぞうけつ)」です。

 

 

・体内の氣の運動を調節する働きのことを「疏泄」と言います。

 

 

・血液の貯蔵の働きのことを「蔵血」いいます

 

 

・「肝」には「怒」の感情、「筋」「目」に関係が深い。

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭