<曝露法とは? 「パニック障害」のしくみを通して> (第27回の続き)

 

 

曝露法のやり方は理屈ではわかったつもりでいても、

 

実際に自分一人でコントロールしてみようとすると、

 

なかなかむずかしいことに気づくことでしょう。

 

 

たしかに、感情(不安や恐怖など)や

 

身体反応(緊張や動悸、発汗など)を自力で抑えることはなかなか難しいです。

 

誰にとっても難しいことであるにもかかわらず、

 

それに気づかず、また認めようとせず、何とか自分だけで対処しようと無理を重ねると

 

誤った「認知」による不適切な対処「行動」を学習してしまうことになります。

 

 

それは、不愉快で破壊的な「感情」を生んでしまいます。

 

また、それによってストレッサーがかえって増強してしまい日常生活が大きく損なわれ、

 

さらなる「身体反応」をもたらすといった悪循環に陥りやすくなります。

 

 

自己流の対処法で、失敗を繰り返した結果、

 

焦燥感と絶望感と共に自信喪失や抑うつ状態に陥ってから、

 

ようやく相談を受けることが少なくありません。

 

 

もちろん、そうしたケースでも対応は可能ですが、

 

誤った対処法を消去するためには、それなりの時間が必要になります。

 

 

やはり、早めにご相談いただくことが、

 

その後の治療経過を良好なものにします。

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

<曝露法とは? 「パニック障害」のしくみを通して> (第26回の続き)

 

 

もし、「段階的曝露反応妨害法」を行うのであれば、自分を不安に徐々にさらして慣れていきます。

 

例えば、

 

一番破局的と考える乗り物(例:特急電車など)に乗る

 =予期不安にさらす。 <曝露法>

 

 

乗車したまま、途中下車をしない(できない状態にする)

 =安全行動や回避行動をしない。 <反応妨害法>

 

 

前回も書きましたが、不安階層表を作って、

 

不安の弱いものから <段階的> に挑戦していきます。

 

これを不安が下がるまで、段階的に克服できるまで徹底的に持続します。

 

 

まず不安10%くらいのもの、例えば「最寄駅から各駅停車に乗り、1駅で降りる」に挑戦する。

 

その後、1駅ずつ伸ばしていき、

 

慣れてきたら不安50%くらいのもの、例えば「最寄駅から快速電車に乗り、1区間で降りる」

 

に挑戦する。 …という具合です。

 

 

しかし、理屈ではわかっても、実際に感情(不安や恐怖など)や

 

身体反応(緊張や動悸、発汗など)を自力で抑えること、

 

コントロールすることはむずかしいものです。さて、ではどうするか?(続きは次回へ)

 

 

そうなると、やはり専門的なカウンセラーのサポートが大きな助けとなります。

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内) 主任 臨床心理士 宮仕 聖子

<曝露法とは? 「パニック障害」のしくみを通して>

 

- 「曝露法」とは、苦手なものにあえて挑戦して少しずつ慣れていくことです -

 

 

今回は、「パニック障害」について説明いたします。

 

 

例えば、ある日、電車に乗ると突然、息苦しさを感じて

 

「死んでしまうのではないか」という思いをした人がいたとします。

 

そして、その人はまた同じこと(パニック発作)が起こるのではないかと不安になって(予期不安)、

 

その日以来、電車に乗ることを避けるようになりました。

 

 

このような「パニック障害」のしくみは次のように説明できます。

 

 

1)乗車中、「また呼吸が乱れて、人前で倒れてしまうかもしれない」と思う。 <破局的な自動思考

 

 

2)不安や緊張が高まる。

 

 

3)焦って息を整えようとする。手すりにつかまる。 <安全行動

 

 

4)かえって緊張が悪化する。過呼吸や動悸が起こる。 <パニック発作

 

 

5)「もうダメだ!」と思う。かえって不安が増大する。

 

 

6)たまらず途中下車する。その後、電車に乗らないようにする。 <回避行動

 

 

7)“一時的に”不安は下がる。しかし、どんどん電車に乗れなくなる。

 

また、他の乗り物も苦手に感じるようになる。

 

 

では、どう克服していくのでしょうか?(次回へ続きます)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

不安階層表をもちいた「段階的曝露反応妨害法」について>

 

 

もし極端な曝露法を行うのであれば、いきなりMaxの不安にさらします。

 

一番汚いと思うもの(例:公衆トイレのドアノブ)を触る=不安にさらす。 <曝露法>

 

そのまま手を洗わない=強迫行為をしない。 <反応妨害法>

 

これを不安が下がるまで徹底的に持続します。

 

 

しかし、実際はよりソフトに行う方法がよく用いられます。

 

まず不安階層表というものを作ります。

 

そして、不安の弱いものから <段階的> に挑戦していきます。

 

 

まず不安10%くらいのもの、例えば「家のトイレで、1分間、石鹸を使って手を洗う」に挑戦する。

 

 

次は不安20%のもの、例えば「家のトイレで、1分間、石鹸を使わずに手を洗う」に挑戦する。

 

という具合です。

 

 

名付けて、「段階的曝露反応妨害法」と言います。長いですね。

 

ソフトな方法とはいえ、やはり専門的な見地から適切な方法で取り組むことが重要です。

 

効果的で確実に克服するために、カウンセラーがしっかりバックアップをしていきます。

 

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

 

<曝露法とは? 「強迫性障害」のしくみを通して>

 

 

「曝露法」とは、苦手なものにあえて挑戦して少しずつ慣れていくことです。

 

今回は、よりソフトな曝露法について説明いたします。

 

対人恐怖、強迫性障害、パニック障害などによく用いられます。

 

 

例えば、トイレのドアノブを触ると汚れが過剰に気になって

 

長時間手を洗い続ける人がいたとします。

 

 

このような「強迫性障害」のしくみは次のように説明できます。

 

1)トイレのドアノブを触る。

 

2)手にばい菌が付いて汚れたことが気になって仕方がない。<強迫観念

 

3)不安になる。

 

4)長時間、手を何回も洗う。<強迫行為

 

5)“一時的に”不安は下がる。

 

しかし、またトイレのドアノブを触ると、強迫観念と不安が湧き、

 

くり返し強迫行為をせずにはいられなくなる。

 

または、外出先などでトイレに行くことを極力我慢する(苦手な場面を避け続ける)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

これまで「馴化」や「情動処理理論」という言葉が出てきました。

 

 

人は脅威的な出来事に出くわすと、不安や緊張、恐怖といった強い感情が生じます。

 

 

最初、感情の度合いは最大ですが、

 

そこをピークとして時間が経つにつれて、その度合いは必ず軽減していきます。

 

 

そこで「曝露法」では、脅威にあえて立ち向かい、

 

強い感情が軽減するまで(馴れるまで)自らをその感情にさらし続けるのです。

 

 

そして次に再び同じ脅威を前にすると、今度は感情のピーク(最大値)が下がっている、

 

つまり一度目よりは不安や緊張、恐怖が軽くなっています。

 

 

これをくり返してピークを下げていき、

 

最終的に強いネガティブな感情の度合いを「苦手ではない」くらいまで軽減させて、

 

苦手なものの克服を目指します。

 

 

次回は、実際的にカウンセリングでよく用いられる、

 

もう少しソフトな曝露法についてお話しします。

 

 

私もよく用いる方法で、

 

「対人恐怖」「強迫性障害」「パニック障害」などの方をサポートしています。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回、ご紹介いたしました「曝露法」の動画はご覧になりましたか?

 

動画のリンク先(注:自分が怖くない生き物での動画を観ることをオススメします)

 

http://www.animalplanet.com/tv-shows/my-extreme-animal-phobia/videos/what-scares-animal-planet/

 

 

動画の曝露法はかなり強烈です。

 

しかし、その分だけ確かな効果も見込める方法です。

 

「フラッディング法」とも呼ばれます。

 

 

この方法では初回から自分にとって最強の脅威に立ち向かいます。

 

まさに不安や緊張、恐怖の洪水のまっただ中に自分をさらすことを反復して実行します。

 

いつまで繰り返せばよいかというと、脅威がおさまるまで(馴れるまで)さらし続けるのです。

 

 

言うまでもなく、一人ではそうそう取り組めません。

 

 

カウンセラーは専門的な見地から、このむずかしい課題に立ち向かうクライエントを

 

励まし、後押しし、克服をサポートするのです。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

(第20回、「曝露法」の話の続き)

 

緊張するような状況であっても、何度も繰り返されれば緊張の度合いは次第に軽減していき、

 

だんだんと緊張しなくなってきます。

 

これを「情動処理理論(emotional processing theory)」と呼びます。

 

 

さて、「曝露法」の実際ですが、アメリカの「Animal Planet」という番組があります。

 

そこで、動物恐怖症に悩む人たちがセラピストを介して

 

その恐怖症を克服するまでのドキュメンタリーが紹介されていました。

 

 

とりあげられている生き物は、犬、猫、鳥、昆虫、爬虫類などです。

 

この動画を見れば、「曝露法」がどういうものかが一目瞭然です。

 

(日本でこのような極端な曝露法を実際に行っている専門家は多くないようです)

 

 

私はごきぶりが大嫌いです。そんな動画を観たら、血の気が引いてしまいます。

 

 

ですから、自分が怖くない生き物についての動画を観ることをオススメします。

 

「Puppy Scares Man to Tears(子犬を怖がる大男)」などは観やすいと思います。

 

動画のリンク先を貼っておきます。

 

 

http://www.animalplanet.com/tv-shows/my-extreme-animal-phobia/videos/what-scares-animal-planet/

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

第10回から第13回では認知行動療法の中の代表的な技法、

 

「認知再構成法」、「問題解決法」について紹介いたしました。

 

 

前回(第18,19回)、「カエルをナデナデした」ことにゾッとされた方がいるかもしれない

 

…と思い、反省した次第です。

 

 

そこから頭の回線が、認知行動療法の技法の一つである「曝露法」につながりました。

 

 

そこで今回からはその「曝露法(エクスポージャー法)」についてご紹介します。

 

 

非常に簡単に言ってしまうと「曝露法」とは、

 

苦手なものにあえて挑戦して少しずつ慣れていくことです。

 

 

この方法はおもに恐怖症の克服に用いられています。

 

 

ただし、最初に申し上げておきますが注意が必要な方法なので、

 

むやみに自己流で行わないようにしましょう。

 

必ず「曝露法」の専門家の指導のもと、行ってください。

 

 

(次回ご紹介する動画をご覧になれば、自分だけでやろうとは思われないことでしょう)

 

 

私たち人間は、脅威を感じるような状況にさらされると、

 

強い感情(恐怖など)が生じるように できています。

 

そして脅威が去れば、通常はその感情は軽減していきます。

 

また脅威であっても、 それが何度も繰り返されると次第にその脅威に慣れていき、

 

強い感情が生じにくくなります(これを 「馴化(じゅんか)」と呼びます)。

 

(次回へ続く)

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

前回のお話は…

 

「先日、疲れていた私はカエルを見て「あら、かわいいー」と思わず頭をナデナデ。

 

疲れがとんで、ほっこりした気分になりました。

 

でもカエルはプクーッとふくれていました。

 

私のこの対処法の問題点を挙げるとしたら何だと思いますか?」でした。

 

 

何が問題かといいますと、

 

自分にとってはストレス発散でも、

 

相手(カエル)にとってはストレッサーになってしまったことです (^^;;)

 

 

もし、あなたが自分のストレスを上手に発散できる方法をいくつも持っているとしたら、

 

それはたいへん素晴らしいことです。

 

 

しかし、その次のステップは

 

身近な周囲の人々の関係性の維持と改善に心がけることが求められます。

 

 

自分のストレス発散法が身近な相手へのストレッサーになってしまったのでは

 

中・長期的にみて、その技法を使い続けることは困難になってしまいます。

 

 

そうならないためには、使用できるコーピング技法を複数習得しておいて、

 

状況に応じて、また必要に応じて臨機応変にベストな方法を選択できることが望ましいです。

 

 

認知行動療法ではストレス対処法を習得できるだけではなく、

 

そうした複数のコーピング技法を、

 

いつ、どこで、どのような状況で、どの技法を選択するのが良いのかを

 

判断できるようになることも目標となります。

 

 

そうした判断能力はなかなか自分一人では身に付きにくいように思われます。

 

 

そこでカウンセリングでは、お一人お一人に応じてアドヴァイスすることも可能なのです。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子