今日は前回挙げたAさんの『自動思考(頭の中にパッと浮かぶ考え)』から、

 

よくあるパターン1)~ 3)をお話しします。

 

 

例)Aさんは職場の会議のプレゼンの時に、

 

「資料の数値に間違いがある」と指摘されました。

 

 

Aさんが即座に思ったこと=『自動思考』は…

 

1)これでプレゼンは台無しだ。

 

2)上司の評価も下がり、もう昇進はなくなった。

 

3)自分は肝心な時にいつもミスばかりしている。

 

みんなにダメな人間と思われている。

 

 

 

 1)「全か無か思考」:

 

物事を白か黒か、0点か100点か、善か悪か、

 

と両極端に考えやすい傾向のことです。

 

完全・完璧を求めやすいです。

 

 

Aさんは少しのミスから「プレゼンは完全な失敗」と考えています。 

 

このような考え方ですと、柔軟な捉え方、解決策が思い浮かべにくくなります。

 

 

2)「論理の飛躍」:

 

根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう傾向のことです。

 

 

 Aさんははっきりした根拠もなく、状況も確定していないのに、

 

不安を先取りしてしまう傾向があります。

 

その結果、事態は確実に悪くなると決めつけてしまいます。

 

そうすると、気持ちも落ち込みやすくなります。

 

 

 

3)「一般化のし過ぎ」(過度な一般化):

 

たった一つの良くない出来事があると、

 

「いつも」「必ず」「何もかも」「みんなが」と一般化してしまう傾向のことです。

 

Aさんは一回のミスから「肝心な時にいつも」と、

 

また、たった一人からの指摘を「みんなが私に否定的」と解釈を広げ過ぎています。

 

すると、ミスした体験ばかりが

 

量的・質的に強調され、印象づいてしまいます。

 

 

 

みなさんの中で「あるある」はありましたか。

 

もし、あてはまるものがあったとしても心配しないでくださいね。 

 

認知のクセは誰にでもあるもの。  

 

工夫してより生きやすくなるきっかけにしていただければよいのではと。

 

次回は残りのよくあるパターン④~⑤についてお話しします。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回は「自動思考」のお話をしました。

 

今回は具体的な例を挙げてわかりやすく説明したいと思います。

 

今回のキーワードは、自動思考、認知のクセ(歪み)です。

 

 

 

例)Aさんは職場の会議のプレゼンの時に、

 

「資料の数値に間違いがある」と指摘されました。

 

 

Aさんは即座にこう思いました。以下はAさんの自動思考です。

 

「これでプレゼンは台無しだ。上司の評価も下がり、もう昇進はなくなった。

 

自分は肝心な時にいつもミスばかりしている。

 

みんなのように完璧な資料を作らなければならないのに。

 

業績が伸びないのも、全て自分のせいだ。もう会社の人に顔向けできない…」

 

 

(と思ってひどく憂鬱になり、Aさんは翌朝、起き上がれず、会社に行けなかった。)

 

  ↑これも認知、感情、身体反応、行動に当てはめて考えてみてくださいね!

 

 

 

この自動思考には「認知のクセ」がぎっしり詰まっています。

 

客観的には「そこまで思い詰めなくても…」と思えますが、

 

本人にとっては当然の思考なので、考え方が偏っている=思い込みである、

 

とは自力では気づきにくいものです。

 

 

ですので、認知行動療法では、まずはカウンセラーとともに

 

「認知のクセ」に気づけるようなワークをやっていきます。

 

 

次回はAさんの自動思考から、よくあるパターンを紹介します。

 

皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回の答えは「怖がらず、興味を持った。」でした。

 

 

赤ちゃんは「イヌ」より

 

「ライオンのぬいぐるみ」に近いと認知したのでしょうね。

 

 

しかし、イヌが怖い大人の場合、話は違うでしょう。

 

タテガミをつけても「イヌはイヌ」、

 

このイヌを見てやっぱり逃げ出すでしょう。

 

 

 

このように出来事や相手に対して、「カワイイ」とか「危ない」とか、

 

絶えず浮かんでは消える思考を、「自動思考」と呼びます。

 

平たく言うと、認知行動療法では、

 

この自動思考が悪さをして、ネガティブな感情を生むので、

 

もっと良い結果を生むような新たな思考を考え出して

 

身につけようというのです。

 

 

 

また自動思考を生み出す元になっているのは「信念」です。

 

信念とは、今まで生きてきて、経験の積み重ねによってできた、

 

あるいは印象の強い出来事によって根付いたものです。

 

 

例えば、イヌが怖い大人は、

 

これまで何回か、あるいは子どもの頃に

 

すごく、イヌで怖い思いをしてきたのでしょう。

 

ですから、どのイヌを見ても、

 

瞬時に「危ない、怖い」と自動思考が湧くのです。

 

 

 

今日は少し固いお話でした。次回はゆるくいこうと思います。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

高円寺南診療所では、

 

慢性疼痛に関する症例の院内検討会・勉強会を毎週行っています。

 

最新の参考テキストについてご紹介いたします。

 

 

 

慢性疼痛の認知行動療法“消えない痛み”へのアプローチ

 

(日本医事新報社、2016.2.2第1版)

 

編集:伊豫雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学)

 

   斎藤 繁(群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学)

 

   清水栄司(千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学)

 

 

 

「はじめに」より

 

○慢性疼痛の保有率13.4%、うち医療機関の受診経験者約70%、

 

通院中断率は半数以上(服部らの大規模調査、2004)。

 

 

○慢性疼痛の特徴:検査ではっきりした異常所見が出ないことも多く、

 

有効な治療法も少ないため、多くの医師にとっても厄介な疾患

 

 

○慢性疼痛患者の傾向:ドクター・ショッピングに陥りやすい。

 

 

○近年の知見:

 

①疼痛の程度は注意や気分に大きく影響される。

 

 

②「疼痛と思考、行動、感情の関係」のメカニズムの解明

 

疼痛への恐怖が行動を制限⇒日常生活上の支障

 

  ⇒能力喪失による否定的な思考⇒気分の落ち込み

 

 

③「疼痛と思考、行動、感情の関係」への直接的アプローチ法

 

認知行動療法:疼痛への恐怖に少しずつチャレンジ(行動療法)し、

 

また考え方を修正(認知療法)ことによって気分を改善し、

 

疼痛の軽減とともに気分や行動を改善させるという治療法です。

 

 

 

第1章:認知行動療法

 

<認知行動療法の基本的な考え方>

 

 

第2章:痛みの理論と治療アプローチ

 

<認知行動療法的な慢性疼痛の捉え方と治療法> 

 

 

第3章:ケーススタディ

 

<専門外来、入院治療、一般外来、グループ療法など

 

様々なタイプの慢性疼痛とその認知行動療法的アプローチ>

 

 

 

高円寺南診療所では、

 

線維筋痛症をはじめ変形性関節症、骨粗しょう症、

 

関節リウマチ、はじめ慢性頭痛、慢性腰痛など

 

治りにくいとされている慢性疼痛の対策に積極的に取り組んできました。

 

 

これらの慢性疼痛に対して、高円寺南診療所では、

 

先端的な独自のアプローチ(水氣道・聖楽療法・統合的鍼灸物理療法)を含め、

 

認知行動療法的なアプローチが良好な成績を収めていることを

 

多く患者の皆様と享有しています。

 

 

このテキストは、高円寺南診療所において

 

慢性疼痛に対して取り組んできた方法論に重なるため、

 

大いに共感し励ましを得ることができました。

 

 

高円寺南診療所 院長 医学博士 飯嶋正広

前回は「 個々人で異なる認知のクセを、基本モデルの要素に分解して理解しよう 」

 

というお話をしました。

 

今日は例を用いて説明したいと思います。

 

 

 

最近、私が魅かれた某会社のCMがあります。どんなCMかと言うと

 

-父親と母親が赤ちゃんを小さなライオンのぬいぐるみであやすと、

 

-赤ちゃんはぬいぐるみに手を伸ばします。

 

 

これを基本モデルに当てはめてみると…?

 

(出来事)ライオンのぬいぐるみ →(認知)「小さい、フサフサ、危なくない」

 

→(感情)安心 →(身体)リラックス →(行動)手を伸ばす。

 

 

しかし次の場面、

 

-大きな飼いイヌが赤ちゃんに近づいたところ、

 

-赤ちゃんはイヌを怖がります。

 

 

 

これを基本モデルに当てはめてみると…?

 

(出来事)イヌが来た →(認知)「大きい、キバがある、危なそう」

 

→(感情)怖い →(身体)緊張 →(行動)逃げようとする。

 

 

 

では問題です。次の場面で赤ちゃんはどう反応したでしょうか?

 

-両親がイヌにおもちゃのタテガミをつけ、

 

-ライオンみたいになったイヌが赤ちゃんに近づきます。

 

 

 

答えは実際のCMで、基本モデルに当てはめてみてください。

 

この赤ちゃんはどんな「認知」をしたのでしょうね。

 

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

認知のクセと言っても、

 

それは具体的にどういうこと?

 

と思われるかもしれません。

 

 

第1回では「人によって異なる物事の捉え方のパターン=認知のクセ」

 

と説明しました。

 

 

この「パターン」をつかむためには、

 

何らかの型に当てはめてみると分かりやすくなります。

 

 

今日はその型、

 

つまり「認知行動療法が基本とするモデル」について

 

理解して頂きたいと思います。

 

 

 

下を見てください。これがその基本モデルです。

 

 

            <私の中で起こっていること>

 

出来事、相手  ⇔ 「認知」  ― 「感情」

               |   ×       |

             「身体反応」 ― 「行動」

 

                            

 

このモデルを使って何をするのかというと、

 

何かの出来事を受けて、

 

「私の中で起こっていること」を図のように

 

「認知」「感情」「身体反応」「行動」に分解して

 

理解しようとするのです。

 

 

 

それぞれの要素は影響しあっていますが、

 

出発点は「認知」であり、

 

その結果として「感情」「身体反応」「行動」が起こると考えます。

 

 

結果は物事の捉え方次第、言いかえれば、

 

この「認知」をうまく工夫できるようになれば、

 

そしてさらに行動が伴えば、

 

今まで苦手としていた場面/相手に出くわしても、

 

良い結果を生み出せるようになります。

 

 

ストレスフルだった出来事が

 

ストレスフルでなくなるということです。

 

 

今日はこのへんで。

 

次回はわかりやすい例を用いて説明したいと思います。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回挙げた例をもう一度見ていきましょう。

 

 

 

お店であなたが「これをください」と言った時、

 

店員は「あ、はい…」とそっけない対応でした。

 

 

あなたはどう思いますか?

 

A)私の言い方が変だったかな…(と思って)不安になる

 

B)仕事なんだからちゃんと応対してよ!(と思って)怒る

 

C)何かあったのかなー?(と思って)気にも留めない

 

 

AさんやBさんは不安や怒りといったネガティブな感情が湧いて、

 

ストレスを感じています。

 

 

そのような「感情」が湧いたワケは(と思って)の左にある

 

「考え(認知)」が浮かんだからです。

 

 

誰でもAさんのように考えれば不安になるし、

 

Bさんのような考えが浮かべば腹が立つわけです。

 

 

 

認知行動療法では、この「認知」がネガティブな感情を引き起こすと考えます。

 

 

そこで新たな「認知」を生み出し、身につける練習をしていきます。

 

 

まさに「認知」に工夫を加えることでストレスの軽減を図る療法なのです。

 

 

同様に、自分の「ふるまい方(行動)」は

 

出来事の結果や相手に影響を及ぼします。

 

 

ですから、「行動」にも工夫を加えていくことも

 

有効な方法であることがご理解いただけるでしょう。

 

 

このようにして苦手な場面でも良い結果が出せるよう、

 

実行し練習していきます。

 

 

 

あなたが日々、苦手とする場面はどんな場面ですか?

 

 

苦手とする人はどんな人ですか?

 

 

 

認知行動療法は、それを克服するための大きな助けになると思います。

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

認知行動療法、これを私たちはCBTと呼んでいます。

 

代表的なストレス対処法の一つとして、わかりやすくCBTをご紹介させていただきます。

 

 

 

 

例えばこのような場面を想像してみて下さい。

 

 

お店であなたが「これをください」と言った時、店員は「あ、はい…」とそっけない対応でした。

 

あなたはどう思いますか?

 

 

A)私の言い方が変だったかな…(と思って不安になる)

 

B)仕事なんだからちゃんと応対してよ!(と思って怒る)

 

C)何かあったのかなー?(と思って気にも留めない)

 

 

このように同じ場面でも、人によって様々な捉え方があります。

 

 

そしてストレスの受け方にも違いが生じ、

 

ある人は不安になったり、腹を立てたり、胃が痛くなったり、

 

一方である人は気にも留めないといったことが起こります。

 

 

このように、人によって異なる物事の捉え方のパターンを「認知のクセ」と呼びます。

 

 

 

認知行動療法では、まずこの自分の「認知のクセ」に気づくことが第一歩です。

 

 

ご自身の「認知のクセ」を知り、より柔軟なものにすることで、

 

今まで苦しんでいたストレスも「ストレス」と感じなくなることでしょう。

 

 

 

「認知行動療法」と言うと何かむずかしいものと感じられるかもしれません。

 

 

でも心配はいりません。

 

 

カウンセラーが認知のクセに気づけるようリードします。

 

 

また、より良い物事の捉え方を納得して身につけるために、一緒にワークをやっていきます。

 

 

「こんな風に考えたことがなかった!」と驚きや発見があると思います。

 

 

この方法は「ご自身の捉え方を変える」ことでストレスにうまく対処するという、

 

一度身につければ生涯使い続けられる方法でもあるのです。

 

 

上のAやBの人が少しCのような考えを浮かべられたら楽ですよね。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

これは、5月11日付けのINTERNATIONAL NEW YORK TIMESの10面

 

HEALTH + SCIENCEの欄で見つけた記事です。

 

 

 

悩みや心配事は、放置しておけば習い性になり、悪循環から脱却できなくなります。

 

悩みや心配事が無い人はいないので、完全に消去しようとしてアクセクするかわりに、認知行動療法によって上手な対処法を身に着けておくことが有用です。

 

以下は、記事の最後に書かれていた対処法です。

 

よくまとまっていましたので、ご紹介いたします。

 

 

マインドフルネスという言葉は英語圏ではすでに日常用語化していると思われます。

 

ご興味のある方は、高円寺南診療所の「水氣道」のタグをクリックしてください。

 

 

 

 

DIVE AND CONQUER問題に取り組むことで克服していきましょう

 

Try to come up with a solution to a worrisome problem

by breaking it down into 4 parts:

煩わしい問題に対しては、それを4つの部分に分割して

解決法を見つけることに努めましょう。

 

 

(1)Defining the problem

   問題の所在を確かめること

 

(2)Clarifying your goals

   自分の目標を明らかにすること

 

(3)Generating solutions and experimenting with solutions

   対策を練って得られた解決策を実際に試してみること

 

(4)Grab a pen and paper and brainstorm

   ペンと用紙を使ってブレーンストームをしてみましょう。

 

 

 

PRACTICE MINDFULNESS (マインドフルネスを実践しましょう

 

Choose a routine activity or part of the day and try to experience it fully

 日頃の活動を一つ選んで、それを十分に味わってみましょう

 

 

 

SCHEDULE A WORRY SESSION心配事をする時間帯を設定しておきましょう

 

Pick a designated time of day to mull your problems.

 一日のうちで一定の時間を決めて自分の問題をじっくり吟味してみましょう

 

If a worrying thought enters your mind outside of your scheduled worry session,

jot it down so you can think about it during your scheduled worry time.

 心配事をするために割り当てておいた時間帯以外で心配しはじめそうになったら、

 その内容を書き留めておいておけば、心配事をするための時間帯に

 考えることができます。

 

Then get back to your day.

 そうしてご自分の本来あるべき正常な日常を取り戻してください。