これまでメインテーマにしてきた認知行動療法。

 

 

これと関連してストレッサーへの直接的なコーピングについてお話してきました。

 

 

「ストレスに対処すること」、これを「コーピング」と呼びます。

 

 

今回は「コーヒーブレイク」と題して、少しリラックスしてお読みください。

 

 

それでは今回と次回の2回で、コーピングの方向性と相互性について一緒に考えてみましょう。

 

 

さて、オーソドックスなコーピングといえばストレッサーへの直接的なコーピングです。

 

しかし、現実の世界はストレッサーに立ち向かうだけでは疲れて、さらに参ってしまうこともあります。

 

そこで、問題からいったん離れる、休憩をとる、気分転換をする、楽しいことを考える。

 

そのようなコーピングもときには必要です。

 

 

みなさんはどのくらいの数のコーピング技術を持っていますか?

 

5個くらいじゃまだまだ少ないですよ。

 

「ため息」だって深く息を吐くコーピング。幸せは逃げたりしません (^^)

 

 

先日の話ですが、私は台風の中、何回か外出する用事があって、ぐったりしてしまいました。

 

外に出ると、目の前にカエルがたたずんでいました。

 

私はカエルを見て「あら、かわいいー」と思わず頭をナデナデしました。

 

疲れがとんで、ほっこりした気分になりましたよ。

 

 

でもカエルはプクーッとふくれていました。

 

 

…さて、私のこの対処法の問題点を挙げるとしたら何だと思いますか?

 

この問題は結構大事なことなので、次回もぜひ読んでくださいね。

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

「ストレス」は曲者!?(その4)

 

 

私たちは毎日、仕事でもプライベートでも様々なストレッサーにさらされ続けています。

 

 

そこで参ってしまう人と参ってしまわない人の違い。

 

 

二つ目は、出来事の捉え方=認知のクセです。

 

ここで大切なことは、参ってしまう人はダメ、ということではないことです。

 

 

それはストレッサーとストレス反応との関係で判断すべきだからです。

 

 

ストレッサーとストレス反応との関係を詳細に検討しなければなりません。

 

 

自分に今、どのような出来事が起こり、どれだけのストレッサーが襲いかかっているか?

 

 

それを客観的に捉える視点が必要です。

 

 

誰でも大きな出来事(ストレッサー)が重なれば、それだけストレス反応も増大します。

 

 

逆に言えば、大きな出来事(ストレッサー)が重ならないようにすれば、

 

ストレス反応を軽減することも可能です。

 

 

ホームズ&レイの「ライフイベンツにおけるストレスの度合い」

 

というスケールがあります。

 

 

個々のライフイベントのストレッサーの大きさを数値化したものです。

 

 

今皆さんにかかっているストレスの量を客観的に把握することで、

 

「あぁ、実は私は今こんなにストレッサーがかかっていたのか、

 

疲れやすい(ストレス反応)わけだ」と気付くことができると思います。

 

気付くだけでも、気持ちが落ち着くことがあります。

 

 

ご興味があれば、一度測定してみてください。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

「ストレス」は曲者!?(その2)

 

 

ストレスと言うと、ネガティブな気分にさせる出来事だけを思い浮かべがちです。

 

 

この場合のストレスは結果としての不愉快な気分という自覚症状ですから、

 

「ストレス反応」に相当します。

 

 

 

しかし、結婚や昇進など、喜ばしい出来事もストレスになります。

 

 

この場合のストレスは、因果関係でいえば原因となるイベントですから、

 

結婚や昇進などは「ストレッサー」ということになるでしょう。

 

 

常識的に考えると、結婚や昇進などのライフイベントは一般的に好ましいものとされます。

 

 

実は、その思い込みがあるためか、その場合の「ストレス反応」には気づけないことがあります。

 

 

なぜ、結婚や昇進などが「ストレッサー」になりうるのでしょうか。

 

 

なぜなら、結婚や昇進などは、日常生活に大きな変化をもたらしかねないからです。

 

 

そして、大きな変化に適応するためには、多くのエネルギーを必要とするからです。

 

 

ところで結婚や昇進などが「ストレッサー」になり得るからといって、

 

結婚や昇進を避けながら生きている方々も、実際にいらっしゃいます。

 

 

仮に「ストレス」という言葉が曲者だとしたら、

 

「ストレッサー」はすべて悪者なのでしょうか。

 

 

次回、ドクトル飯嶋と一緒に考えてみましょう。  

 

臨床心理士 宮仕聖子

 

「ストレス」は曲者!?(その1)

 

 

「ストレスへの対処法」をテーマとする臨床心理士の宮仕聖子先生のこれまでのシリーズ、

 

お読みになってくださいまして、ありがとうございます。

 

 

さて、このあたりで再び基本に立ち返ってみましょう。

 

 

そもそも「ストレス」とは本当に曲者なのです。

 

 

なぜなら「ストレス」というカタカナ語自体が曲者だからです。

 

 

とくに「ストレス」に限らずカタカナ日本語は、ときに混乱をもたらします。

 

 

言葉を使う個人個人が勝手な思い入れや都合で使いまわす、一見便利な言葉だからです。

 

 

また使い勝手が良い言葉は、偏った善悪・優劣等のイメージが膨らみ、

 

漠然とした思い込みをもたらしやすいからです。

 

 

そのためにも「ストレス」という言葉に遭遇したり、使用したりするときに、

 

吟味していただきたいことが一つあります。

 

 

それは「ストレス」が「ストレス刺激(ストレッサー)」を意味するのか、

 

「ストレス反応」を意味するのかということです。

 

 

 

心療内科専門医 飯嶋正広

 

このお話は、次回、臨床心理士 宮仕聖子にリレーされます。

認知行動療法の柱の一つである「問題解決法」は、「行動」に変化を与える方法です。

 

「行動」に変化を与えるには、ほんの少し、人によってはかなりの勇気が必要です。

 

とくに、「人間関係がうまくいかない、苦手だ」とおっしゃる方は、工夫を試みてみましょう。

 

 

「ひとりでは無理、自信がない、勇気がない」と思っている方でも、カウンセラーと一緒に

 

作戦を立てることからはじめてみるのはいかがでしょうか。

 

 

工夫すればうまくいく人間関係もたくさんあります。

 

それを端から「苦手」と決めつけていては、克服する大事なチャンスを失います。

 

ますます苦手になって支障が出てきます。

 

 

さらに別の場所に移っても、同じようなタイプの人・状況に出くわします。

 

「苦手意識」がずっとくっついてくることになります。

 

 

確かに行動に移さなければ、それによる直接的な、

 

その場の小さな失敗だけは避けられるでしょう。

 

しかし、それは長い目で見れば問題の先延ばしに過ぎません。

 

 

結局、その繰り返しとなり、将来へのツケを大きくしてしまうことになります。

 

 

『まずは実行あるのみ!但し、綿密な計画を立てて‼』というのが「問題解決法」です。

 

将来への展望や自身に繋がる成功への道を、少しずつ確かなものにしていきましょう。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

前回からのテーマである認知行動療法のもう一つの柱、「行動」に変化を与える方法、

 

すなわち「問題解決法」について具体的にお示しいたしましょう。

 

 

例えば、職場に怖くて苦手だなと思う上司がいたとしましょう。

 

「できればその上司とはやりとりしたくない。」

 

でも避けていると、ますます慣れずに苦手になってしまいます。

 

 

そこで、「逃げずにあえて上司と会話をする」というミッションを掲げます。

 

 

まず、成功するためにどんな準備をしたらいいのか、カウンセラーと作戦会議をします。

 

そこで、自分と上司との間に起こりうることを予測します。

 

そうすることで、その時、具体的にどう対処するのかを予め用意しておくのです。

 

 

もちろん失敗するかもしれません。

 

しかし、一度や二度の失敗でへこたれてはいけません。

 

これは「実験」だと思ってください。

 

「実験」してみることで検証することができます。

 

 

何事も試しに取り組んでみること、実行することこそ大事なことです。

 

たとえ失敗しても、そこから学ぶことはたくさんあります。

 

それを無駄にせず、次の機会に生かせばよいわけです。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回は「認知再構成法」についてお話しいたしました。

 

 

これは「認知(≒自動思考)」に変化を与える方法でした。

 

 

今回は認知行動療法のもう一つの柱、「行動」に変化を与える方法、

 

すなわち「問題解決法」についてご紹介いたします。

 

 

この方法は、まず苦手な人や場面から逃げたり避けたりしないことがポイントです。

 

積極的に直面してみよう、そして良い結果が得られるよう、

 

実際に行動を起こしてみよう、という方法です。

 

 

とはいっても、ただやみくもに挑んでいくのは考え物です。

 

いつものパターンにはまって返り討ちにあってしまいかねないからです。

 

 

そこで前もって「実行計画」というものを立てます。

 

 

皆さんとカウンセラーとの二人三脚であれこれ作戦を練るという作業をします。

 

 

そうした過程を大切にしながら綿密に具体的に作る「台本」のようなものが「実行計画」です。

 

 

次回は、具体例を挙げて説明させいただくことにしましょう。

 

前回は「自動思考(認知のクセ)に気づくヒント」のお話でした。

 

カウンセリングでは、自動思考に気づくためのワークをくり返します。

 

すると、ご自身の思い込み・決めつけパターンが見えてきます。

 

そこで、「この考え方では辛いままだな」と問題意識が芽生えてきます。

 

これだけでもある程度の効果が期待できます。

 

 

ただし、自動思考の暴走にブレーキをかけるためには、

 

自動思考に代わる新たな思考を生み出す必要もあります。

 

 

認知行動療法の中には多くの手法があります。

 

今回はその一つである「認知再構成法」をご紹介いたします。

 

 

この方法は、自分を辛くしている元の自動思考をあらゆる角度から検討します。

 

そして、辛くない方へ向かえるよう、新たな思考を考え出します。

 

 

さらに、元の自動思考が出てくるたびに、新たな思考をくり返し思い浮かべます。

 

この手順に使い慣れていく=自然に新たな思考が思い浮かぶように練習を積み重ねます。

 

 

例えば、店員がそっけなかったときに

 

「私が何かしたのかな(自動思考)」

 

と悲しい思いをしたとしましょう。

 

 

元の自動思考を検討するには、

 

(※)「私が何かした」わけではない理由は?

 

    「私が何かしたのかな」を信じるメリットは? 

 

とご自身に聞いてみて下さい。

 

 

もし、この例のような反証やメリットを考えたこともない方は、

 

思考を広げるチャンスです。

 

 

ぜひ、この例を参考にされて上のような質問に答えてみて下さい。

 

 

物事のとらえ方は一つではなく、無数に存在します。

 

一人ではなかなか良いアイデアが浮かばないかもしれません。

 

 

カウンセリングでカウンセラーと一緒に取り組むことの長所。

 

それは、カウンセラーがその人に合わせたガイドができることです。

 

 

そうして、①『自動思考』に気づけたり、

 

②『より良い新たな思考』を生み出せたり、

 

つまり、新しい気づきや思考法を育むことができることだろうと思います。

 

 

※伊藤絵美先生の著書、

 

「ケアする人も楽になる認知行動療法入門」

 

を参考にさせていただきました。

 

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

前回は「ご自身の考えのクセをチェックしてみては」と提案いたしました。

 

しかし、これが実は難儀なことだったりします。

 

 

以前にもお話ししましたように、

 

「考えのクセ」は本人にとっては当然の、半ば無意識的に生じる思考です。

 

 

ですから、考え方が偏っている=思い込み・決めつけである、

 

とは自力では気づきにくいものです。

 

 

そこから気づくためのカウンセラーによるお手伝いがはじまるわけです。

 

 

そこで、今回まで熱心に読んで下さった皆さまに、

 

「気づくヒント」の具体的例をお伝えしたいと思います。

 

 

 

まず、ネガティブな感情が湧きおこった出来事について紙に書いてみましょう。

 

 

1)いつ、どこで、誰が、どうした、という具合です。ここまでなら書きやすいと思います。

 

 

2)次に、「どんな感情が湧いて、私はどうなった・どうしたのか?」を書きます。

 

 

3)そして、「その感情にはどんな考えが込められているの?」とじっくり自分に聞いてみます。  

 

熱心な読者の皆様は既にお気づきかもしれませんが、これこそが「自動思考」なのです。

 

 

例を挙げて説明してみましょう。

 

1)店員がそっけなかった。

 

2)私は頭にきた、飲み物もまずく感じた。

 

3)頭にきたのは、店員がそっけなかったから…

 

 

ここでストップ! ちょっと立ち止まって下さい。

 

「店員がそっけなかったから=当然頭にくる状況」

 

「当然」でも「絶対」でも「ほらやっぱり」でもないのです。

 

この思い込みに飲み込まれないように!

 

 

そして、どうして「A:店員がそっけない」と「B:頭にくるのか」。

 

 

その理由を自分に聞いてみましょう。

 

 

AとBをつなぐものは何でしょうか。

 

 

そこに認知のクセが隠れているのです。

 

 

ここに気づくことが鍵です。

 

 

例えば、「そっけない態度」というのは…

 

 「私に向けられたものだから」、「私をバカにしている証拠だから」、

 

「店員がすべき態度ではないから」、などなど理由(クセ)は人それぞれ。

 

 

「だから私は頭にくる」、確かに、そういう理由なら頭にくるかも。

 

 

でもそれは、真実ではないかもしれません。

 

 

もしかしたら、「私に向けられたものではない」、

 

「私をバカにしているわけではない」、「店員も完璧ではない」から。

 

 

「絶対」と思う度合いが強いほど、ブレーキをかけるのは大変です。

 

 

そこで、大事故につながる前に早めに

 

「これは決めつけかも、思考の暴走をやめてみよう」

 

と思ってみましょう。

 

 

このように気づくだけでも、物事のとらえ方はずいぶん違ってくると思います。

 

 

思考が暴走して極論までいって、感情の嵐でくり返しヘトヘトになってはいませんか? 

 

ヘトヘトな時は一人で悩まずに、ぜひご相談にいらして下さい。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

今日は前回の続き、Aさんの『自動思考(頭の中にパッと浮かぶ考え)』から、

 

よくあるパターン④~⑤をお話しします。

 

 

例)Aさんは職場の会議のプレゼンの時に、

 

「資料の数値に間違いがある」と指摘されました。

 

 

Aさんが即座に思ったこと=『自動思考』は…

 

 

これでプレゼンは台無しだ。上司の評価も下がり、もう昇進の可能性はなくなった。

 

自分は肝心な時にいつもミスばかりしている。みんなにダメな人間と思われている。

 

 

④ みんなのように完璧な資料を作らなければならないのに。

 

 

⑤ 業績が伸びないのも、全て自分のせいだ。もう会社の人に顔向けできない…

 

 

④「すべき思考」:

「~すべき」「~すべきでない」「~しなければならない」

 

「~してはいけない」と考える傾向のことです。

 

この基準を自分に当てはめると自分を追い詰め、

 

実行できないと罪の意識を持ちやすいです。

 

また相手にもその基準を求めるため、怒りや葛藤を感じやすくなります。

 

また、これには④の「完璧な~」は「ストレスへの対処法7」で

 

すでにお話しした「全か無か思考」も関与していることにお気づきでしょうか。

 

 

 

⑤「自分への関連づけ(個人化)」:

 

何か良くないことが起こった時、

 

自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう傾向のことです。

 

Aさんはこの考えにとらわれて、

 

「ではこれからどうするか」「自分ができることは何か」

 

といった生産的な考えが思い浮かびません。

 

 

 

今回までに、自動思考に基づく基本的な考え方のクセを

 

5つの要素に分類してご紹介してきました。

 

 

これまでに挙げてきた、これらのパターンが、

 

いくつも合わせ技で係わってくると、問題はより複雑化しがちになります。

 

そのような状況では、自分一人で振り返って整理することは、より難しくなるでしょう。

 

 

より一層、自分を追い詰めたり相手を責めたりして、

 

落ち込みや不安、怒りを感じやすくなるかもしれません。

 

 

今一度、ご自身の考えのクセをチェックし、

 

機会があればご相談くださいますように。