消化器系の病気

 

<心療内科は内科医だから責任重大なのです!>

 

3回シリーズその1

 

 

 50代女性。夫よりDVを受けていることで精神科

 

(本人は、心療内科と言ってはいますが・・・)に通院中だそうです。

 

高円寺南診療所に通院中の妹さん(看護師)のお話では、

 

最近、飲酒量も増えてきたそうです。

 

郷里から訪れた母親と共に部屋を訪れた際、

 

空の空き瓶が散在していて驚いたとのことでした。

 

なお、精神科の担当医はDVを専門とする、とあるマスコミ有名医ですが、

 

アルコール依存に関しては専門外とのことで、薬物治療のみの対応であったそうです。

 

 

高円寺南診療所では、患者さん本人の意思で来院される場合でない限り、

 

ご相談をお受けしないのを原則としておりますが、

 

相談者が継続的な通院患者さんである場合は、

 

最低限の必要な助言だけはお伝えできるように努めています。

 

そこで、まず基本的な身体状況・生活状況の確認をお願いしました。

 

 

お二人のお話から得られた情報は、

 

当該女性の眼球結膜(瞳の周囲の白目の部分)が黄色くなり、

 

お腹が異様に膨満していること。

 

 

その日は朝から、お酒を飲んでいないのに異様な口臭がすること。

 

 

身長152㎝、体重48㎏、脈拍(安静時)110/分、血圧94/52mmHg、呼吸数16/分。

 

SpO₂95%(高円寺南診療所の経皮的動脈血酸素飽和度測定装置をナースである妹さんにお貸しして測定)

 

 

ここまで、私は一切、話題の病人を診察しておりません。

 

しかし、暫定的診断はほぼ可能です。

 

 

<アルコール性肝障害>です。

 

ただし、重症度をきちんと評価しなければ適切な対応はできません。

 

そこで、ご本人に受診を促していただくことにしました。

血液・造血器の病気

 

<のどの痛みや腹痛は、単なる風邪とは限りません!>

 

咽頭(のど)が痛いので他院を受診し、

 

感冒薬を処方され症状が改善したので風邪は治った、と自己判断した20歳男性。

 

1週間後に腹痛とともに下肢に盛り上がった湿疹が出現したため、

 

一石二鳥の安上がりを狙って高円寺南診療所を受診することになったそうです。

 

 

この方は、今どきの平成生まれのお兄さんで、

 

帽子を被ったまま診察室にお入りになるのでした。

 

意識は清明、発熱なし、血圧126/80mmHg、脈拍数68拍/分、

 

バイタルサインには異常を認めませんでしたが、

 

そのためか尿検査がお気に召さないようでした。

 

<腹痛と湿疹できたのに、なぜ尿まで調べるんだ。>とのたまうのでした。

 

 

尿検査所見:蛋白(+)、潜血(+)、

 

これで腎機能障害、ときに腎炎合併が疑われるので血液検査が必要なのですが、

 

聞く耳持たぬ若者への説明に苦慮しました。

 

 

<検査の結果すべて異常が無かったら診療代は払いたくない。>という若者に対して、

 

<私の眼には狂いがないので>と応じると、

 

<先生おもしれえ、オッサン大門(ドラマ、ドクターXの主人公)かよ!わかったよ。

 

痛くねえように血取ってよ。俺、医者と注射が大の苦手なんで>

 

と急に弱気な態度に。

 

 

採血後<先生、スゲー名医だ!ちっとも痛くなかった>、

 

やはり、この男の子、身長は180センチ近いが、

 

先月まで未成年のお子ちゃまでありました。

 

 

 

 初診時診断の手掛かり:

 

①隆起性の病変、②急性の腹痛その他、

 

最低、これだけで、米国リウマチ学会の基準で

 

<シェーンライン・ヘノッホ紫斑病>と診断できます

 

その他、この症例は③20歳以下(つまり、未成年者の病気)に一応該当しています。

 

なお、④バイオプシーといって生検組織で、

 

小動静脈壁の顆粒球を見出せば、確かですが、ふつうそこまでしません。

 

これは、全身性のアレルギー性血管炎が本体で、

 

血管の炎症によって毛細血管の透過性が亢進して、浮腫や組織への出血を来す病気です。

 

 

先行感染があり、隆起性の紫斑、腹痛、腎炎などの所見が揃えば、

 

概ね誤診はないと思いますが、医学には100%確実ということはありません。

 

素人の一般大衆はそれがわからないのは仕方ないから

 

裁判に訴えることもやむなしだとしても、

 

裁判官がそのレベルだとこの国の司法も大いに心もとないと思います。

 

 

追加の検査として、腹部レントゲン検査をしました。

 

その理由は、腸重積を来すことがあるため、見落としを防ぐためです。

 

幸い腸重積の所見はありませんでしたが、

 

腸管ガス像が顕著でしたので、ガスを駆除することにしました。

 

像が顕著でしたので、ガスを駆除することにしました。

 

 

 

処方:

ガスコン®【消化管ガス駆除剤】のみを処方(前医で処方され、飲み残していた鎮痛剤の内服を許可する)

 

 

血液所見(再診時に説明):

赤血球474万、Hb14.2g/dL, 白血球9,800好酸球15%、血小板32万、

 

PT-INR1.0(基準0.9~1.1),APTT32秒(基準対照32.2)、

 

血清IgA612mg/dL、血沈15mm/時間(基準値2~10)

 

 

幸いにも血小板・凝固系は正常であったので、特別な治療は必要ではありません。

 

ただし、炎症所見があり、特に血清IgAが高値なのでIgA腎症との鑑別が必要です。

 

 

前医で処方された飲み残しの薬を呑み切ってしまうと、関節が痛みだしたというので、

 

精査しましたが関節リウマチの合併は認められませんでした。

 

 

現在は、軽度のネフローゼ症候群のため、定期的に尿検査をしています。

 

今では素直で誠実な青年に成長しています。

 

 

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その4)

 

<反り腰>この不健康なる姿勢の矯正法

 

今回は、水氣道関連の話題から、姿勢矯正についてお話いたしましょう。

 

姿勢の大切さについては、健康な皆様は普段あまり関心がないかもしれません。

 

実は、医師とりわけ最近の整形外科医の先生方も、患者さんの姿勢について

 

あまり積極的にコメントされない傾向があるかもしれません。

 

 

次の例は、よくあるケースです。

 

初診の患者さんに、しばしば受診理由をお尋ねすると、

 

いろいろなお答えに遭遇します。<家の近くだから>なるほど!

 

<ネットで検索して良さそうだったから>どこが?

 

<医者に見放されたので>私も医者の端くれなんですが・・・

 

 

腰痛や膝痛の相談をしたら、

 

<レントゲンに異常がないから、シップと鎮痛剤を出しておきましょう>

 

という対応だったので、軽く考えていました。

 

しかし、5年後には、かなり腰や膝が変形してきたので、

 

同じ病院の同じ先生にみていただきました。

 

今度は<どうしてこうなるまで放置していたのか、毎日電気を充てに来なさい>、

 

というので半年通ったが一向に改善しないので、おそるおそる理由を尋ねると

 

<年のせいだから現実を受け入れなさい>といわれ、どうにも納得がいかないので、

 

メイドの土産ついでに、前から気になっていた高円寺南診療所にでも行ってみるか、

 

ということになった次第というお話・・・

 

 

こうしたケースの患者さんは、姿勢の悪さに気づかないまま、

 

また、整形外科医に指摘されないまま、

 

あるいは指摘されても具体的な対策をとらないまま年余を過ごされ、

 

重症化させてきているのです。

 

 

大抵の場合、姿勢の悪さは、非効率的で不健康な日常動作をもたらします。

 

骨にも筋肉にも神経にも良くない刺激を与え続けています。

 

それから、浅くて不規則な呼吸も、

 

姿勢の悪さが関与している例を多く観察しています。

 

 

姿勢の悪い患者さんに遭遇したとして、

 

私たち医師は何をして差し上げることができるでしょうか。

 

医療というシステムとの付き合い方がポイントです。

 

 

現行の医療には限界があることを多くの一般人も医療従事者も、

 

気づいているはずなのですが、自分自身の問題として、

 

あまり真剣には考えていない風潮があるのではないでしょうか。

 

患者さんが求める医療ケアは、

 

限定された医療機関の施設の中だけでは実現できないことが多い、

 

ということに気づいたとして、そこから何かを独自に始めてみようという

 

気概を持って行動している医師にはとんとお目に掛れないのは残念なことです。

 

そこで、苦節十数年、工夫と実践の積み重ねによって

 

体系化することができた鍛錬法が水氣道®です。

 

 

病気を治すには、病気の原因に気づくことが大切です。

 

自覚症状は、自分で感じるほかはありません。

 

すぐには自覚できない症状も、定期的な鍛錬と養生を繰り返すことによって、

 

次第によくわかってくるものです。

 

 

症状が悪化するときばかりでなく、改善するときも観察が必要です。

 

それによって、<気づき>が促されるからです。

 

また、顔見知りの親しいグループで鍛錬することによって、

 

自分で気づけないことでも、気づかせてもらえる機会が増えます。

 

さらに、<他人のふり見て、わがふり直せ>という教えも至極もっともだと思います。

 

 

 そして、新たな<気づき>は<新鮮な驚き>と<感動>をもたらします。

 

頭で納得するだけでなく、<腑に落ちる>ということができて、

 

はじめて自然治癒力が発動されるからです。

 

水氣道は単なる自己整体法ではなく、心身の均衡と再統合を図ることができるため、

 

治療やリハビリテーションのみならず、

 

病気の早期発見や健康の維持・増進などすべての領域に関与します。

 

本来、予防とはこれらすべての概念を統括するものなのです。

 

TCさん

神経・精神・運動器

 

テーマ:ギラン-バレ症候群

 

<風邪を引いた後で、手足が動かなくなる病気>

 

 

私にとって懐かしい方の貴重な症例をご紹介いたします。

 

初診1992年(平成4年)~最終診2008年(平成20年)

 

症例は男性T・O氏(喉頭がんにて死去)

 

 

私が若い頃、W教授(故人)率いる東大医学部の衛生学教室(現、分子予防医学教室)で、

 

微量栄養素の研究<リチウムの必須性の研究>をしていたときの指導者です。

 

衛生学すなわち健康医学を専門としているのにもかかわらず、

 

教室員のほとんどが喫煙者なのには驚きました。

 

W教授は心臓病を患ったため禁煙されたと伺っておりましたが、

 

O博士は相当なヘビースモーカーで大酒家でした。

 

 

O博士との思い出は懐かしいです。

 

私の国際学会デビューはオーストラリアのアデレードでした。

 

それはO博士のご指導により実現したものでした。

 

それ以来のご縁で、私が高円寺南診療所を開設して3年目に来院され、

 

それ以降、主治医を務めさせていただいておりました。

 

当初から禁煙をお勧めしておりましたが実行していただけませんでした。

 

 

そのO博士が、ある日<風邪を引いた後で、手足が動かなくなった>

 

ということで診察いたしました。

 

 

その結果、1995年(平成7年)9月26日にギラン-バレ症候群の診断のもとに、

 

入院加療目的で即座に河北総合病院を紹介しました。

 

この病気は、感染症(急性胃腸炎、呼吸器感染症など)の治癒から数日後に発症する

 

末梢神経障害により筋力低下など運動麻痺をきたす病気です。

 

両下肢から脱力が始まり、上肢、顔面領域、最重症だと呼吸筋麻痺へと進行し、

 

生命の危険すらあります。

 

 

この病気による脱力は上肢から発症するケースもあり、

 

O博士もこのタイプであったため入院後も全く仕事が手に就かず、

 

幸い呼吸筋筋力低下が生じなかったため人工呼吸器は使わずに済んだものの、

 

唇が動かしづらくなり(顔面神経麻痺)、ろれつも回らず、

 

嚥下困難となり(迷走神経運動枝・舌下神経の麻痺)、

 

起床どころか寝返りもままならず、とても辛い経験をされていました。

 

 

その当時は、治療としてステロイドが有効であると信じられていた時代でしたので、

 

河北病院でもステロイドの全身投与が行われましたが、

 

やはりなかなか改善しませんでした。

 

現在ではその治療法の有用性は否定されておりますが、

 

医学の進歩による治療法の変遷には、つくづく隔世の感がします。

 

 

東大第三内科の御出身であるW教授は、初期に精確な診断が下せたということで、

 

私を大いに褒めてくださいました。

 

しかし、肝心の治療との間には大きなギャップがありました。

 

そこで、後輩の専門医が府中の東京都立神経病院にいらっしゃるということもあり、

 

さらなる精密検査と専門的治療からリハビリテーションを目的に

 

転院していただくことになりました。

 

 

 

少し専門的な話になりますが、

 

ギラン-バレ症候群では、脳脊髄液検査では蛋白細胞乖離、

 

血清検査では抗ガングリオシド抗体が陽性となります。

 

つまり、症状は末梢神経の病気ですが、

 

原因は私が専門とする自己免疫病(アレルギー・リウマチ関連疾患)です。

 

現在の神経免疫疾患治療ガイドラインによれば、

 

血漿交換療法(血液浄化療法:抗ガングリオシド抗体という自己抗体を除去する治療法)と

 

γ-グロブリン大量静注療法が推奨されています。

 

 

この2つの治療法について有意差がないことが明らかとなったため、

 

患者状態を考慮して治療法を選択します。

 

簡便性からγ-グロブリン大量静注療法が選択されることが多いです。

 

幸いにO博士は、 当時の段階でγ-グロブリン大量静注療法と禁煙実行が

 

徐々に功を奏し、無事退院し、研究生活に戻ることができました。

 

 

その後、O博士は、<咽喉の違和感が続いている>

 

とおっしゃるので喉頭鏡で拝見したところ、立派な病変が見つかりました。

 

そこで、私はO博士に<先生は、禁煙をされて10年以上絶ちますね>とお尋ねしました。

 

するとO博士曰く

 

<実は、ギラン‐バレが治ってきたころから、また吸い始めちゃってね>

 

と悪びれもせず、茶目っ気たっぷりにお答えになるのでした。

 

残念ながら私の診断は喉頭がんでした。

 

 

念のため河北病院の耳鼻科で確認を済ませ、

 

手術目的で御茶ノ水の東京医科歯科大学に転院しました。

 

しかし、手術の甲斐なく、闘病ののちご他界されました。

 

そのころ、私は東大の研究室に足繁く通っていたため、

 

その道すがら、たびたびO博士をお見舞いしました。

 

手術により声を失ったO博士は、それにめげることなく

 

筆談で私に多くの激励のメッセージをくださいました。

 

その後、私は衛生学教室を離れ、

 

心療内科やリハビリテーションの勉強をはじめたのですが、

 

東大から2つの学位(保健学修士、医学博士)を次々と取得できたのも

 

O博士の叱咤激励の賜物だと思って感謝しています。

 

 

私が禁煙指導に熱心な理由、水氣道®という健康増進法を開発し、

 

さらに近年に至って聖楽院を主宰するに至った動機は、

 

このあたりに源を発するものではないか、と振り返っているところです。

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「太谿(たいけい)」です。

IMG_1877

場所は内踝とアキレス腱の中間で窪みがあるところです。

 

 

 

「排尿障害」「膀胱炎」「咽頭炎」「歯痛」「耳鳴り」「腰痛」「踵痛」「喘息」「足の冷え」等に効果があります。

 

 

 

お灸やマッサージが良いでしょう。

 

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:甲状腺クリーゼ

 

   <インフルエンザとの鑑別にご注意!>

 

 

医師は知識だけではダメ、経験の蓄積、それに優秀なチームに恵まれていないと

 

対応できないことがあります。

 

 

かつて、診療所の受付の職員から「甲状腺クリーゼの対応が可能ですか」

 

という電話での問い合わせについての返答を求められたことがあります。

 

 

私は、職員が即座に「対応可能です。ご来院はいつが可能ですか。」

 

と対応できない問い合わせについては、

 

「申し訳ございません。現段階では、十分な対応ができません。」

 

と答えるように指示しています。

 

 

医師ではない事務職員に高度な医学知識を求めることは無理なことではありますが、

 

せめて病名としての認識ができるように、

 

ふだんから教育しておくことは医師として、責任者として、

 

日々怠ってはいけない責務の一つだと考えています。

 

 

この、<日々の臨床>のシリーズも、

 

患者の皆様に対して最先端の臨床情報を提供することと同時に、

 

高円寺南診療所の職員に対する教育の役割をも兼ねています。

 

 

 

その残念なケースの一つが、本日のテーマ、甲状腺クリーゼです。

 

 

その後は、甲状腺クリーゼの対応が可能か、という問い合わせ自体が一件もありません。

 

最近の高円寺南診療所は、甲状腺疾患を未病(自覚症状が出現していない病気の初期の段階)

 

のうちに発見して、計画的かつ専門的な対応をし、予防策を講じているためか、

 

甲状腺クリーゼは全く経験していません。

 

むしろ甲状腺病に関しては、

 

他の専門病院に通院している方の相談も日常的に対応しています。

 

甲状腺などのホルモン関連の病気は、病状が変化しやすいので、

 

大学病院などのように2,3か月に1回程度の受診では、

 

細やかな対応ができないのは仕方がないことです。

 

 

 

甲状腺クリーゼとは、

 

甲状腺中毒症の患者さんに強いストレス(感染、外傷、手術、精神的ストレスなど)

 

が加わった際に、症状が極度に進行し、

 

甲状腺ホルモン作用不足に起因して

 

複数臓器の機能不全(重篤な心不全や中枢神経症状など)がもたらされる病態です。

 

 

したがって、甲状腺クリーゼは対応が遅れると死亡する危険を伴うため、

 

甲状腺ホルモンの検査結果を待たず緊急に治療することが必要な病態です。

 

 

<風邪をひいて38℃以上の熱がでて動悸がひどくなり、吐き気が出て下痢になり、

 

うとうとしてしまうのに、気持ちも落ち着かなくなり、たまりません。>

 

という患者さんの訴えは珍しくありませんが、

 

医師までもが風邪のせいと即断すると命とりです。

 

 

ポイントは、病歴です。通院中の患者さんであれば、その点、まず問題はないです。

 

しかし、初診の場合は特に、甲状腺の病気に気が付かないと

 

大変な事態を招いてしまいます。

 

 

 

最近では、患者さんが勝手に自己診断して、

 

たとえば<インフルの症状なので、インフルに良く効く風邪薬と解熱剤を出してください。>

 

などと、診断も処方内容も決めつけて要求する方も、

 

お見えになるのでさらに注意を要します。

 

 

以下に、甲状腺クリーゼの症状と診断基準を紹介いたします。

 

 

症状:

Ⅰ.甲状腺中毒症(遊離T3および遊離T4の少なくともいずれか一方が高値)

 

Ⅱ.①中枢神経症状(不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡)、

 

②発熱(38℃以上)、③頻脈(130回/分以上)、

 

④心不全症状、⑤消化器症状(嘔気・嘔吐、下痢、黄疸を伴う肝障害)

 

 

診断:

甲状腺中毒症状に加えて、①中枢神経症状と②~⑤の1つ以上、

 

あるいは②~⑤の3つ以上を満たす場合、甲状腺クリーゼと診断します。

 

 

甲状腺中毒症状の他に中枢神経症状の見分けがとても大切です。上記の例では、

 

<うとうとしてしまうのに、気持ちも落ち着かなくなり、たまりません。>

 

というところが鍵になります。

 

確かに、このような症状に見舞われたら、

 

<とても、たまったものではありません。>

 

 

傾眠(うとうとしてしまう)、不穏(気持ちも落ち着かなくなる)など、

 

心身医学や心療内科などで十分なトレーニングを積んできた医師でないと判断が難しいと思います。

 

また、このような患者さんは精神科医に相談するケースはごく稀ではないでしょうか。

 

 

治療の要点は、甲状腺ホルモン分泌および活性化の抑制、

 

作用の遮断(主として交感神経β作用)、水・電解質代謝の是正の3点です。

 

 

①甲状腺ホルモン分泌および活性化の抑制

 

抗甲状腺薬大量投与、無機ヨード(甲状腺ホルモン分泌を抑制)、

 

ステロイドホルモン(T4から活性型の甲状腺ホルモンであるT3への変換を抑制)

 

 

②甲状腺ホルモン作用の遮断・・・特に高度な頻脈を伴う場合、

 

β遮断薬の投与(ただし、低拍出性心不全の場合は禁忌!)

 

 

③水・電解質代謝の是正・・・ショック対策  

 

気道確保、補液、酸素投与、ステロイド投与

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:感染症によって引き起こされる腎障害

 

<Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)について>

 

 

<かぜは万病の元>と言いますが、本当のことです。

 

風邪をひいて、治療をはじめ、症状が軽くなり始めた頃に油断して

 

病気をこじらせてしまう方が、後を絶ちません。

 

なぜ、感染症には油断大敵なのかについて、お話をいたしましょう。

 

 

 さてアレルギー・リウマチ専門医は、心療内科専門医と同様に、

 

一般の皆様の理解が進んでいない領域であることを常日頃感じています。

 

特別な限定された専門領域であると思いきや、決してそうではありません。

 

むしろ、現代医学のほとんどの領域に密接にかかわっている

 

扇の要となる医学領域だと言えます。

 

 

 たとえば、感染症と腎臓病、これだけでもややこしいのですが、

 

この両者をつなげるのが免疫異常、

 

つまり、アレルギー・リウマチ医学の専門領域になります。

 

 

感染症によって免疫複合体が産生されることがあります。

 

この免疫複合体が二次性に腎障害を来すことが多いのです。

 

 

さて、免疫複合体とは抗原と抗体が結びついてできた抗原・抗体複合体のことで、

 

これを免疫複合体と呼びます。

 

感染症に関与する病原体などが抗原であり、

 

これに反応して病原性を中和するために身体で生成されるタンパクが抗体です。

 

免疫複合体とは、いわば外来の病原体と体内のタンパクが結合したものなのですが、

 

これで感染症を終息させるどころか、新たな病気をもたらしてしまうことがあります。

 

これが免疫複合体病です。アレルギー学の立場からはⅢ型アレルギーといいます。

 

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)は、

 

抗原と抗体が結びついた抗原抗体複合体(免疫複合体)により

 

活性化された補体は、好中球を局所に集めます。

 

その好中球が免疫複合体を貪食(どんしょく)する際に

 

タンパク分解酵素や活性酸素を放出します。

 

これらが正常な組織までも障害してしまいます。

 

また免疫複合体が血小板に結合し、血小板を凝集させると小血栓ができますが、

 

それが血管壁に付着して血行を妨げ組織を障害します。

 

 

このように、病原体や毒素による免疫複合体産生によって、

 

腎障害を来すことが多いのです。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),

 

溶血性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、ヒトパルボウイルスB19,

 

HIV(エイズウイルス),肝炎ウイルスなどによる腎症が知られています。

 

 

・黄色ブドウ球菌はメチシリン耐性菌あるいは透析中のシャント腎炎のような場合、

 

スーパー抗原による反応で免疫複合体を産生します。

 

これがメサンギウム増殖性糸球体腎炎、管内増殖性糸球体腎炎などを発症させます。

 

これは臨床的にはMRSA腎炎と診断されます。

 

 

・溶血性連鎖球菌は感染性心内膜炎を引き起こすほか、

 

免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着し、補体活性を高め、炎症を誘発し、

 

毛細血管内を閉塞し、管内増殖性糸球体腎炎を引き起こします。

 

これは臨床的には溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されます。

 

 

・緑色連鎖球菌は、巣状分節性糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎、

 

半月体形成性糸球体腎炎(管外増殖性糸球体腎炎)など様々な糸球体腎炎を引き起こします。

 

 

・ヒトパルボウイルスB19は小児科医にとっては

 

伝染性紅斑の原因ウイルスとしておなじみですが、

 

成人でも管内増殖性糸球体腎炎を発症することがあります。

 

 

・B型肝炎ウイルス(HBV)はB型肝炎ウイルスの

 

e抗原(HBe抗原)を抗原とする免疫複合体が関与していると考えられています。

 

セロコンバージョンに際して大量の免疫複合体が産生され、

 

これが腎臓の糸球体に沈着して発病します。

 

膜性腎症をはじめ膜性増殖性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎などが生じます。

 

臨床てきにはHBV関連腎症と診断されます。

 

なお、C型肝炎ウイルスが関与するHCV関連腎症もあります。

 

 

その他、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫)、HIV(エイズ)関連腎症、悪性腫瘍など

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)に関連する主な疾患としては、次のものがあります。

 

・血清病

 

・全身性エリテマトーデスSLE(ループス腎炎を含む)

 

・慢性関節リウマチ

 

・糸球体腎炎

 

<第6ステップ> その1

 

あなたは、いま、すでに助けを求める人を、頭の中で特定できた段階にあるとしましょう。

 

その次の段階は、「助けの求め方を考え、実行する」ことです。

 

 

もし比較的軽い、小さな頼みごとといった助けが必要なら、実行しやすいかもしれません。

 

例えば、助けを求める人が親しい間柄であれば、

 

気軽に声をかけたり、電話やメールで尋ねたりすることができるでしょう。

 

また、例えば道に迷ってしまった時などは、

 

通りがかった見知らぬ人に声をかけてみたり、交番に行って聞いてみたりするでしょう。

 

 

これに対して、自分が抱えている問題が重大であれば、

 

行動に移す前に、予め助けの求め方を考えて、

 

綿密に計画を練っておかなければなりません。

 

たとえ親しい間柄であったとしても、まず声のかけ方・連絡の方法、

 

最初にかける言葉、タイミング、時間や場所などをよく考え吟味する必要があるでしょう。

 

 

それにはまず自分が何にどんなふうに困っているか、

 

相手にわかるように具体的に説明できることが必要です。

 

そのうえで、自分の苦しい胸の内が相手に伝わるように表現する能力も必要です。

 

 

このような能力、つまり、他者と良い信頼関係を築き、社会との望ましい適応をするために、

 

有効な行動を適切に実行する能力のことを「社会的スキル(social skill)」と呼びます。  

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:肺血栓・塞栓症

 

<慢性血栓塞栓性肺高血圧症>

 

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)には、

 

過去に急性肺血栓塞栓症を示唆する症状が認められる反復型と、

 

明らかな症状がないまま病態の進行がみられる潜伏型があります。

 

 

 

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療

 

1)内科的治療

 

①抗凝固療法(ワルファリンによる、血栓再発防止、二次血栓の予防)

 

②酸素療法(在宅酸素療法HOTによる、低酸素血症性血管攣縮解除)

 

③利尿薬(ループ利尿薬による、右心不全の改善)

 

④肺高血圧治療薬(NYHAクラスⅡ以上で手術困難な心不全に対して、血管拡張薬による治療)

 

 

2)肺動脈拡張術(手術困難例に対して、肺動脈バルーン拡張術、経皮経管的肺動脈拡張術

 

肺動脈の物理的狭窄や閉塞を解除する代替手段

 

手術困難理由:末梢側の病変、高齢、合併症

 

 

 

 3)外科的治療

 

①肺動脈血栓内膜摘出術NYHA クラスⅢ以上、肺動脈平均圧≧30mmHg以上、           

 

もしくは肺血管抵抗≧300dynes・sec・cm(⁻5)で、少なくとも肺動脈区域枝より中枢側に血栓がある場合

 

 

②肺移植術:年齢55歳以下で、末梢血管に病変があり、内科的治療をしても病態が

進行する場合

消化器系の病気

 

テーマ:アルコール性肝障害の特徴について

 

<重症型アルコール性肝炎(SAH)>

 

 

アルコール性肝障害は大量かつ常習的なアルコール摂取に基づく肝障害です。

 

 

アルコール性肝障害の基準は、5年以上の長期にわたる過剰な飲酒

 

(エタノール換算で60g以上、3単位)が主体ですが、

 

女性、肥満者、アセトアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)に変異がある場合には、

 

それ以下の飲酒でも肝障害となります。

 

 

疫学的にはアルコール性肝障害は男性に多いです。

 

しかし、女性では男性より少ない飲酒量(エタノール換算で40g程度、2単位)でも

 

アルコール性肝障害を引き起こすことが知られています。

 

問題飲酒者は増加を続け300~400万人以上とされます。

 

気を付けないとすぐに2単位や3単位を越して問題飲酒者になってしまいます。

 

 

お酒の1単位(純アルコールにして20g)の換算表

 酒

 

 

5病型があります。

 

まずアルコール性脂肪肝、アルコール性肝線維症、アルコール性肝炎などの病態を示しますが、

 

最終的にはアルコール性肝硬変、アルコール性肝がんに至ります。

 

 

アルコール性脂肪肝では、肝小葉の30%以上にわたる脂肪化、大滴性脂肪肝が特徴です。

 

CTで評価可能です。肝臓のCT値が低下し、L/S(肝臓CT値 / 脾臓CT値)比が0.9以下になります。

 

 

アルコール性肝線維症では、中心静脈や肝細胞の周囲などでの線維化が特徴です。

 

 

アルコール性肝炎では、小葉中心部の肝細胞膨化・壊死、

 

マロリ小体(アルコール小体)の出現の他、多核白血球の浸潤がみられます。

 

 

アルコール性肝炎の一部では、禁酒しても炎症や肝腫大が続き、

 

多くは1ヶ月以内に死亡する予後不良な病型が存在します。

 

これは重症型アルコール性肝炎(SAH)と定義されます。

 

この重症型アルコール性肝炎(SAH)の認識は医療関係者の中でもまだ低く、

 

単なる急性肝炎と診断され、肝性脳症、感染症、急性腎不全、

 

消化管出血、エンドトキシン血症などの合併症が

 

出現してあわてることが多いようです。

 

 

SAHは白血球除去療法、顆粒球除去、

 

ステロイドや血漿交換(凝固因子の補充、過剰なサイトカインの除去)、

 

持続血液濾過透析(有害物質の除去、腎機能の代償)、

 

エンドトキシン吸着療法、肝移植などの集学的治療の導入で

 

救命率が上昇しているとはいえ、致死率は40%に達する重篤な病態です。

 

50歳以上でのリスクは高いです。生体肝移植の際には6か月以上の禁煙が必要です。